一匹の猫と向き合った2ヶ月間

2015.06.15

一匹の猫と向き合った2ヶ月間

動物看護士の仕事は辛い事、悔しい事もたくさん経験しますが、その分嬉しい事もたくさん経験できるとても素敵な仕事です。 それでも最初の頃は自分のやる事に自信が持てず責任の重さに潰されそうになり、逃げ出したいと思う毎日が続いていました。 そんな時に出会った猫ちゃんのお話をしたいと思います。

モモちゃん

私が勤めだして間もない頃に、モモちゃんという猫が診察に来ました。
モモちゃんは顔に大きな傷があり膿んでいてとても酷く、ご飯も食べれずとても衰弱していて横たわっていました。
猫が弱って横になってしまうというのはとても危ないサインです。
きっと人間だったら耐えられないような痛みだったと思います。正直あと何日生きられるかというような状態でした。
なぜそうなってしまったのか原因は分かりませんでしたが、顔の傷は昔交通事故に遭い手術をした場所だということで、手術した場所が炎症を起こしてしまったのではないかとの事でした。

入院生活

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モモちゃんはすぐに入院することになりました。
夜も院長が様子を見に行ったりしますが、最初のうちは朝病院に着いたらすぐに猫舎へ行ってモモちゃんが大丈夫かどうかドキドキしながら確認しては生きているモモちゃんを見てホッとする毎日でした。
全員が出勤したらモモちゃんの顔の傷の処置をすることから1日が始まります。
綺麗に洗浄しお薬を塗って包帯を巻きます。どうやったら早く直るのか、何を使うのが効果的かを話し合いながらいろいろな方法を試しました。
点滴をしていますが、まずは自分の口でご飯を食べれるようになる事がとても大切です。
まだ勤めだして間もなかった私がご飯を食べさせに行く事が多く、1日に何回もドロドロの栄養価の高いご飯をモモちゃんの口に入れますが、顔を怪我しているモモちゃんの口に上手に入れるのはどうにもこうにも難しく、いつも私もモモちゃんもご飯まみれでした。
どうやったらうまくご飯を口に入れる事が出来るのか先輩に教えてもらったり、角度を変えてみたり私なりにいろいろと試してみましたが、結局は時間が経つにつれてだんだん私もモモちゃんもお互いに上手になっていきました。
ある時、口の周りに着いたご飯を取っているとペロッと私の手を舐めてくれた事がありました。自分から手を舐めれるくらいまで回復してくれたのです。
動物の生命力の強さに驚かされたと同時に涙が出るくらい嬉しかったのを覚えています。

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この日から手でご飯をあげると自分から舐めてくれるようになり、ゴロゴロと喉を鳴らしてくれるようになりました。
ご飯を食べれるようになったこの頃から、顔の処置を嫌がったり、飼い主さんが会いに来るととても嬉しそうだったりとちょっとずつ元気な姿も見せてくれるようになりました。
入院してから2ヶ月が経ち、傷もどんどん小さくなり少しずつ毛も生えてきて、いつの間にか食器から自分でご飯を舐めたり、大きな声でニャーニャー鳴いたり、立ち上がることも出来るようになりました。
最初に来たときとは見違えるくらい元気になり、退院する日が決まりました。
退院の日の夕方、飼い主さんがお迎えに来て次の通院日を決めると、大切そうにモモちゃんをタオルにくるみ何度も「ありがとうございました」と言ってくださりモモちゃんが退院していくのを皆で見送りました。

そして1週間後に診察に来たモモちゃんは少し太っていてとても幸せそうでした。

最後に

2ヶ月間一緒に頑張って来たモモちゃんはわが子の様に可愛く思えました。
入ったばかりでうまくいかずに辛い事があった時もモモちゃんが手をペロペロと舐めてくれる姿を見るととても癒されたし、どんなに辛くてもひたすら生きようと頑張っているモモちゃんを見て自分の悩みのちっぽけさに気づき、また前向きな気持ちになる事が出来ました。
そんなモモちゃんが明日からいないと思うとぽっかりと心に穴が開いたように寂しかったけれど、元気になり退院していくモモちゃんの姿はそれ以上に嬉しいことです。
そして飼い主さんが言ってくれた「ありがとう」という言葉で自分に自信を持つことができ心の底からこの仕事を選んで良かったと思えた瞬間でした。
この2ヶ月間を通して、動物看護士としての技術の面でも精神面でもとても成長する事ができモモちゃんには今でも本当に感謝しています。

そしてこれからも飼い主さんとペットが楽しく幸せに暮らしていく事が出来るように、私に何が出来るのかを考えながらずっと動物と関わる仕事をしていきたいと思います。

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おぎゆみ

おぎゆみ

子供の頃から動物が大好きで動物関係の専門学校で数々の資格を取得後、動物病院で看護士兼トリマーの仕事をしていました。 飼い主さんとペットが毎日楽しく幸せに暮らしていけることを願って、私の持っている知識、経験を元にいろいろな情報を発信していきたいと思います。

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