特別天然記念物に指定されるイリオモテヤマネコについて知りたい!

2021.02.07

特別天然記念物に指定されるイリオモテヤマネコについて知りたい!

猫にはたくさんの種類が存在していますが、その中でも特別な存在として扱われているのが、沖縄県の西表島に生息する「イリオモテヤマネコ」です。 名前に島の名前が抜粋されていることもあり、日本特有の固有種であることが分かりますが、存在は知っているけど生態は詳しく知らないといった方も多いのではないでしょうか? なぜイリオモテヤマネコは、日本で特別な存在として認知されているのか、そしてイリオモテヤマネコとはどんな猫なのかを、詳しくご紹介していきます。

イリオモテヤマネコってどんな猫?

イリオモテヤマネコ

現在日本には2種類のヤマネコが生息していると言われていますが、そのうちの1種類が「イリオモテヤマネコ」となります。

イリオモテヤマネコは、もちろん動物園などで飼育されているのではなく、ある一定の場所を生息域として生活する野生生物となり、イエネコのように人の力を借りずに生きている、野生のネコを指すことが一般的です。

より詳しくイリオモテヤマネコを知るために、どんな猫なのかを深掘りしていってみましょう。

◆生息地

西表島の位置

イリオモテヤマネコは1965年に、沖縄県八重山列島の西表島で劇的な発見をされました。

歴史的に考えてみれば、発見されてからそこまで時間が経過しているわけではありませんが、イリオモテヤマネコのルーツは、台湾から渡ってきたのではないかと言われています。

その昔、八重山諸島が台湾と陸続きだったころ、大陸から日本にやってきた野生のネコが、地殻変動によって島々が分断された際に、島内に閉じ込められ、独自の進化を遂げてきたと考えられているようです。

現在イリオモテヤマネコの生息地は西表島のみとなり、面積が289平方キロメートルほどの島となるので、ネコ科の野生動物が生息する場所としては世界最小と言われています。

この狭い島の中でイリオモテヤマネコは、山麓(さんろく)や河川の周辺のような低地部を好んで生活しているようです。

◆生態

猫は水が苦手なイメージが強いですが、イリオモテヤマネコは河川や海岸にかけての湿地帯に生息している通り、水を恐れない性質を持っています。

そして沖縄のマングローブ林や水田などにも現れることがあり、木登りだけでなく水に入ることや潜水することもあるので、いかに生息環境に順応して進化してきたかが分かりますよね。

そんなイリオモテヤマネコは夜行性となり、昼間は岩穴や樹洞などで体を休め、薄明薄暮時に活動的になります。

行動する時間帯は主に、獲物を捕食することが目的となりますが、イリオモテヤマネコは食性が世界一広いと言われることがあるようです。

肉食を中心とした食肉目でありながら、カエル類や爬虫類、鳥類から昆虫類まで、多様な生物を餌として捕食しますので、食性が生態上の最大の特徴と言われるのにも納得ですよね。

このような食性に進化していったのにも理由があり、西表島にはネズミやウサギなどの小型哺乳類が元来存在していないこと、島内が狭く餌資源が限られていることが挙げられます。

狭い島で生き残るためには当然のことのようにも感じますが、この順応性の高さこそが西表島という世界一小さな島で、食物連鎖の頂点に立てる所以なのかもしれません。

◆外見

イリオモテヤマネコはオス、メス共に個体差はありますが、体長は50~60㎝程度、体重は3~5kg程度と言われています。

そして発見当時は珍しい独立種と考えられていましたが、遺伝子分析によって「ベンガルヤマネコ」の亜種であることが判明しました。

ベンガルヤマネコはイエネコとの交雑が認められていることもあり、イエネコに近い外見をしています。

ですのでベンガルヤマネコの亜種であるイリオモテヤマネコも、ぱっと見は普通の猫に見えてしまうほど、イエネコに近い外見をしているヤマネコとなります。

大きな外見的特徴は、太い尻尾に先端が丸い耳、その耳の裏にある白斑(虎耳状斑)や目の周りの白い線などです。

胴長短足で斑点模様が美しい被毛を持ってはいますが、遠目から見るとイエネコと大差ない外見となるので、野良猫と見間違う方が居るのにも納得ですよね。


絶滅の危機にあるイリオモテヤマネコ

イリオモテヤマネコ発見の地

イリオモテヤマネコは天然記念物よりも価値が高いとされる、「特別天然記念物」に指定されている固有種です。

貴重な文化財でありながら、絶滅危惧種にも分類されている固有種でもありますので、その現状をしっかりと理解しておかなくてはいけません。

イリオモテヤマネコは、なぜ絶滅の危険に晒されているのでしょうか?

◆絶滅の理由

西表島はもともと面積の狭い島となり、野生の動物や生物が生息する島としては、世界最小と言われています。

イリオモテヤマネコの行動圏は1~7平方キロメートル程度となりますが、その行動圏がもし人間の手によって脅かされたり、開発事業によって自然が減らされたりしたらどうでしょうか。

ほかの条件の良さそうな生息地を見つけられれば良いですが、環境に適応できなければ命を落とすことに繋がっていきますよね。

そして観光地でも有名な西表島では、狭い島内を一周するのに現地のレンタカーを利用する方も多く、イリオモテヤマネコの生息域である低地部を車が行き来することとなります。

イリオモテヤマネコにとっては行動圏である場所に、いきなり車が侵入してきたとすれば為す術もなく、交通事故に巻き込まれてしまう結果に。

このようなことからもイリオモテヤマネコの数は減少し、絶滅へのカウントダウンが始まっているとも囁かれているのです。

◆現在の生息数はどれくらい?

現在イリオモテヤマネコは、UCN(国際自然保護連合)のレッドリストで、ごく近い将来のうちに絶滅の危険性が極めて高い、絶滅危惧IA類に分類されています。

確認されている生息数は100頭前後と言われており、いつ絶滅してもおかしくない状況と言えるのではないでしょうか。


イリオモテヤマネコに会いたい!

イリオモテヤマネコの像

イリオモテヤマネコは日本を代表する、とても貴重なヤマネコとなるので、100頭前後の個体数が確認されているのなら、是非現地に行って会ってみたいと思う方も多いことでしょう。

西表島に足を運べば、イリオモテヤマネコに会うことは可能なのでしょうか?

◆野生のイリオモテヤマネコに会うのは難しい

西表島で生活をしている野生のイリオモテヤマネコに出会うのは、現地の方でも難しいと言われています。

低地部で暮らしていると言っても、やはり夜行性であることや、あえて自分にとって危険な場所を出歩くことは考えにくいからです。

そして観光目的でイリオモテヤマネコが居そうな生息地に、無知識で侵入してしまえば、生態系を脅かし、自然を壊すことにも繋がっていきますよね。

どうしてもイリオモテヤマネコに会いたいからといって、現地に行き自分勝手に行動することだけは止めておきましょう。

現地では野生生物の生息環境に配慮しながら行われる、ナイトツアーなどもありますので、イリオモテヤマネコに会いたいのであれば、そのようなツアーを利用してみるのもおすすめですよ。

◆西表島野生生物保護センター

沖縄県八重山郡竹富町に「西表島野生生物保護センター」と呼ばれる、環境省がイリオモテヤマネコの保護活動や希少動植物の保護を目的としている施設があります。

西表島へイリオモテヤマネコに会うために足を運んだのであれば、知識を深めるためにも是非訪問しておきたい施設と言えるでしょう。

実際に生きている個体の展示は行っていませんが、イリオモテヤマネコを始めとした西表島を代表する野生生物のはく製やパネル、画像や動画などを見学できるので、自然についての理解や関心を深めるための施設となっています。

また、一時保護をされた個体や終始飼育をしている個体を見学できる、バックヤードツアーが計画段階なので、イリオモテヤマネコに気軽に会いに行けるようになるかもしれませんよね。

◆万が一見かけたら目撃情報の提供を

西表島に出向いた際に、運よく野生のイリオモテヤマネコに会える可能性は、もちろんゼロではありません。

西表島野生生物保護センターでは、常時イリオモテヤマネコの目撃情報を求めています。

これは彼らを守るためにも必要なことですので、もし野生のイリオモテヤマネコに遭遇したときは、下記サイトからの情報提供にご協力ください。

【西表島野生生物保護センター】
https://iwcc.jp/inquiry/report/


西表島に行くときには

西表島に行ったからといって、必ずイリオモテヤマネコに会えるといった確証はありませんが、島に足を運ぶ際にはどんなことを心掛けていけば良いのでしょうか?

◆島内制限速度を必ず守る

西表島野生生物保護センターでは、観光客や現地の方からの目撃情報をもとに、「イリオモテヤマネコ運転注意マップ」が毎月作成されています。

西表島で車を利用する際には、特にこのマップの目撃地周辺は車の運転にも注意したいものですよね。

そして西表島では島内制限速度が設けられており、その制限速度は40kmと定められています。

特にスピードを出しやすい直線道路などは、でこぼこが施された「ゼブラゾーン」と呼ばれる仕様になっているようです。

ほかにも目撃情報があった場所には看板が設置されていたり、道路にネコ注意の文字が表示されていたりと、イリオモテヤマネコを守るための工夫が随所に見られるので、観光の際には必ず島内のルールを守るようにしましょう。

◆西表島でしか見られない自然を楽しもう

イリオモテヤマネコに会う目的で西表島に行ったとしても、イリオモテヤマネコに遭遇できない確率の方が残念ながら高いです。

ですが西表島は自然がとても豊かで、ここでしか見ることのできない生物や景色がたくさんあります。

魅力はイリオモテヤマネコだけではないので、会えたらラッキーぐらいの気持ちで、西表島の自然を楽しみに訪問してみてはいかがでしょうか。


まとめ

イリオモテヤマネコは日本の西表島にしか生息しない希少な固有種となり、日本を誇る特別天然記念物と言っても過言ではないでしょう。

その存在は世界的にも知られており、生息数が少ないことからも絶滅危惧種に分類されています。

人間のせいで数が減ってしまったのに、また人間が必死に守ろうとしているのは、なんとも皮肉な話ではありますが、この貴重なDNAを根絶させるわけにはいきませんよね。

彼らを守るために現地で保護活動を、積極的に行ってくれている方々が多くいらっしゃいますが、それだけではすべての命を守ることは難しいのが現実です。

西表島を訪れる観光客の勝手な行動や、生息地を奪う事業開発などが、一番イリオモテヤマネコの命を脅かしていることに、真剣に一人一人が向き合わなければいけません。

ただ「かわいい」といった感想だけではなく、もっとイリオモテヤマネコに対しての理解や関心を深めることによって、必ず守ることにも繋がっていくはずです。

ですので島に足を運ぶ際にはこれらのことを踏まえた上で、観光をするように心掛けていきましょう。



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たぬ吉

たぬ吉

小学3年生のときから、常に猫と共に暮らす生活をしてきました。現在はメスのキジトラと暮らしています。3度の飯と同じぐらい、猫が大好きです。


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