【獣医師監修】猫が痙攣を起こしたらどうすれば良い?何が原因なのか知りたい!

2021.02.27

【獣医師監修】猫が痙攣を起こしたらどうすれば良い?何が原因なのか知りたい!

猫と一緒に暮らしていると、突然の猫の行動に驚かされる飼い主さんは非常に多いことかと思います。 その中でも原因不明の痙攣を愛猫が起こした場合には、飼い主さんはパニックを起こし、自分が何をすべきなのか落ち着いて考えられなくなってしまうことでしょう。 今日が健康であっても明日何が起こるか分からないのは、すべての命を持つ者に言えることですので、突然痙攣を起こしたのであれば、愛猫の身体の中で何かしらの異常が起きていることは明確です。 目の前で愛猫が痙攣を起こしたのなら、飼い主としてまずは何をしてあげれば良いのでしょうか。 そして猫が痙攣を起こす場合、その背景にはどんな原因が隠れているのかを解説していきたいと思います。

愛猫が突然痙攣をおこしてしまった

眠る茶トラ猫

愛猫がもし突然、飼い主さんの目の前で「痙攣(けいれん)」を起こした場合、直視をするのも辛いといった、衝撃的な出来事となりますよね。

痙攣は猫の意思とは関係なく、手足の筋肉がピクピク動く程度の静かな動きから、ガタガタと全身を激しく揺らすような動きまでさまざまです。

どのような症状だったとしても、初めてそのような様子を目撃した場合には、行動に移す前に気持ちが焦ってしまう飼い主さんは少なくないはずです。

なので普段から痙攣に対しての知識を高めておき、冷静な対処ができるように心掛け、他人事と思わず異常事態に備えておくことも大切ですよね。

愛猫の痙攣に飼い主さんが瞬時に気付いてあげられたのなら、まずは何をしてあげるべきなのでしょうか?

◆まず何をする?

愛猫が痙攣を発症した場合、多くの飼い主さんは愛猫の異常を察して大きな声で名前を呼びかけ、身体を揺すったり抱っこしたりといった行動をとろうとすることでしょう。

しかしこの行動は痙攣を起こした猫にとって、絶対にしてはいけないNG行為となります。

痙攣発作中は脳が過剰な興奮状態となっているので、むやみに猫に触れようとすると手を噛まれることや、飼い主さんの手から落ちるなどの危険に繋がっていくことが多いです。

良かれと思って行動に移した飼い主さんの行為は、より症状を悪化させる危険性があるので、愛猫に触れたい気持ちをぐっとこらえて、経過観測に努めるようにしましょう。

まずは猫の周囲にある物などをどかし、二次被害を抑えるように努めてあげてください。

そして心苦しいかとは思いますが、痙攣発作の時間を測り、可能であればその様子を動画に収めたり記録に残したりするようにし、動物病院での診断や治療の一助として役立てるようにしましょう。

◆動物病院へ連れていく

猫の痙攣はほとんどの場合、軽度であれば1分以内におさまり、通常で数分(2~3分)程度、長くても5分以内にはおさまります。

緊急性が低い症状であれば、痙攣が止まったあとに発作を繰り返すことがなく、猫の様子が普段と変わらないことが確認できるはずです。

痙攣がおさまったあとにも、痙攣を繰り返すことや、飼い主さんの声に応じることなく、ぐったりとして元気が無いようでしたら、緊急性が高いのですぐに動物病院を受診するようにしましょう。

痙攣は放っておくと、後遺症が残ってしまう可能性がある上に、最悪の場合死に至るケースもありますので、早い段階で獣医師さんの診断を受けて適切な処置を受けることも大切です。


猫が痙攣をおこす原因は?

猫が痙攣を起こす原因として考えられるのは、「遺伝によるもの」「脳の病気によるもの」「脳以外の病気が原因のもの」「病気が関係しないもの」などさまざまです。

原因がなく痙攣が起こることはありませんので、愛猫の症状をしっかりと見極めるようにしましょう。

◆遺伝によるもの

猫の痙攣でもっとも多いと言われている原因が「てんかん」と呼ばれる病気によるものです。

てんかんとは脳神経細胞が自分の意思に反して、過剰に興奮することにより起きる、慢性的な脳の病気となります。

猫の場合、100頭に1頭以下の発生率と言われていますが、愛猫が突然痙攣を起こしたのであれは、まずはこの病気を疑った方が良いでしょう。

てんかんはある一定期間を空けて痙攣や意識障害を繰り返しますので、このような症状を「てんかん発作」と呼び、ほかにもよだれを垂らす、手足をバタバタさせるなどといった症状が見られることが多いようです。

てんかんは「特発性(真性)てんかん」「症候性てんかん」の2種類に分類され、特発性てんかんは原因が分からないことが多く、遺伝的素因が関与するとも考えられています。

◆脳の異常によるもの

遺伝による特発性てんかんとは別に、症候性てんかんが存在すると前述しましたが、症候性てんかんは別の脳疾患の経過中に起こると言われています。

その原因になりうる脳の異常として挙げられるのが「脳腫瘍」「脳炎」「水頭症」「外傷による脳障害」などの病気や異常です。

脳に腫瘍ができる「脳腫瘍」は、比較的高齢の猫に多く見られますが、特徴的な症状が出にくい病気としても知られていますので、痙攣以外にしゃっくりを繰り返すことや、元気がなく視力や歩行の異常が見られるのであれば注意が必要です。

「脳炎」の原因はさまざまですが、細菌やウイルス感染によって発症することも多く、痙攣のほかに食欲不振や元気消失、歩行の異常などが見られます。

「水頭症」は脳脊髄液が過剰に貯留し、脳内が圧迫されて障害が出る病気ですが、子猫に多く見られることからも先天的な原因が多いと考えられ、元気が無く視力に異常が出るなどの症状が出るようです。

ほかにも脳が何かしらの外傷を受けたことにより、痙攣といった症状を発生させることもあるので、いかに脳が繊細であるかが分かりますよね。

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◆その他の疾患によるもの

痙攣は脳へのダメージだけでなく、ほかの疾患によって発作が起きることもあります。

脳の異常以外で痙攣が起きやすい病気と言われているのが、ウイルスが原因となる「猫伝染性腹膜炎(FIP)」です。

感染したとしてもすべての猫が発症するわけではなく、一部の猫だけが突然変異を起こし発症すると言われていますが、まだ解明されていないことが多いので、注意しておきたい病気と言えるでしょう。

また、痙攣の原因となりえる中毒物質(自然毒・薬品・猫にとって毒となる飲食物など)の影響によって、急性中毒や慢性中毒を引き起こすことも。

ほかにも腎疾患や肝疾患、低血糖や熱中症、交通事故や猫科動物聴覚原性反射発作などが原因となって痙攣を起こすことがあります。

痙攣の原因を追究するのは難しく感じるかもしれませんが、しっかりと観察をして根本的な理由を探ることは予防にも繋がっていきますので、諦めずに原因解明に努めるようにしましょう。

◆寝ているときのピクピクは問題なし

猫が眠っているとき、顔の付近や手足をピクピクと動かすことがありますが、睡眠中のピクピクは問題ありません。

猫も人間と同じようにレム睡眠とノンレム睡眠を繰り返して眠っていますので、レム睡眠中は筋肉が休んでいても脳が活発に働いていますので、身体がピクピクと動いてしまうようです。

ほかにも過剰な運動や寒さによって痙攣を起こすことがありますが、このような場合はしっかりと理由があって身体を震わせているので、特に心配は要りません。

やはり注意すべき猫の痙攣は、起きているときに突然発作的に起きる場合や、痙攣の最中に意識を失い、何度も繰り返すなどの症状が見られる場合です。

この見極めができるだけで、愛猫の異常事態に素早く気付いてあげられますので、普段から愛猫のことをよく観察しておくようにしましょう。


猫の痙攣発作の予防

投薬を受ける猫

猫の痙攣は傍から見ていても穏やかな症状ではないので、飼い主としてどんな対処をしていけばいいかも、課題となってきますよね。

愛猫が痙攣を繰り返す場合には、どんな予防を心掛け、適切に対処をしていけば良いのでしょうか。

◆投薬で抑えていく

てんかんが原因で痙攣発作を繰り返す場合は、投薬で抑える治療が一般的となります。

原因不明な特発性てんかんの場合は、てんかん発作の頻度と血液検査により、投薬の分量を決めていきます。

しかし投薬を開始したからといって、てんかんを完治させることは難しく、発作の頻度を抑えることが目的となるようです。

症候性てんかんや、ほかの疾患が原因となって痙攣が起こる場合には、その疾患に合った治療を進めていきます。

原因がはっきりしない場合には、基本的に対処療法や緩和治療を行いますので、原因によっては根本的な治療が難しいことを覚えておきましょう。

◆早期発見することが大事

痙攣は筋肉が強く収縮する状態となり、ある程度の時間が経過すれば、猫はケロッと意識を取り戻して、何事もなかったかのように元通りになることがほとんどなので、そこまでこの症状を重要視しない飼い主さんもいらっしゃることでしょう。

ですが痙攣を起こすということは、必ず何かしらの原因が根本に存在し、目に見えない場所で症状が進行している証拠でもあります。

たかが筋肉の収縮として放置してしまえば、さらに症状は悪化し、いつ重篤な状態に陥ったとしても不思議ではありませんよね。

もし愛猫が突然痙攣を起こした際に、思い当たるような原因がないのであれば、すぐに動物病院に連れていき、獣医師さんと相談の上検査をすることをおすすめします。

猫は我慢強い動物ですし、どんなに痛みが伴ってもじっとして耐える子が多いので、私たちにできることは、いかに早期発見に繋げてあげられるかなのではないでしょうか。

◆清潔な環境を整える

愛猫が痙攣を起こした際に、二次被害を出さないためにも、普段から生活環境を整えておくことも大切です。

痙攣を必ず飼い主さんの目の前で起こすとは限りませんし、床などではなく棚やキャットタワーなどの高い場所で起こす可能性も否めません。

なので猫が怪我をしそうな物は片付けておき、落下する危険性のある場所には行けないようにするなどの、工夫が必要と言えますよね。

そして中毒症状を起こすような、危険な物を部屋に放置してしまうと、誤飲の恐れがありますので、猫が口にすると困るような物は、部屋に放置しないようにしましょう。

また、極度のストレスが痙攣を引き起こす原因に繋がることもあるので、トイレや食事の場所を清潔に保つ、落ち着ける場所を確保するなどの見直しも必要です。

常に清潔な環境を整えることを心掛け、愛猫に負担がかからないような配慮も怠らないようにしていきましょう。

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まとめ

猫が痙攣を起こす姿を見たことがない方は、はじめてその姿を目にしたとき、その壮絶な光景に気が動転してしまうことかと思います。

そして頻繁に痙攣を起こす場合には、根本に別の原因が隠れていることが多く、理由も分からなければ、ただただ動揺するだけとなってしまいますよね。

しかし痙攣を予防することは難しく、発作を起こしても緩和治療が行われることがほとんどです。

だからこそ飼い主さんは痙攣に対して正しい知識を身に着け、愛猫が突然発作を起こした場合でも、冷静かつ適切に対処をしなくてはいけないのです。

「たかが痙攣」と片付けるのではなく、なぜ痙攣が起きたのかを必ず考えてあげてください。

そして日頃から愛猫の暮らす環境を整え、最低でも年に一度の健康診断を受けることによって、早期発見に繋げることも可能となります。

1日でも長生きしてもらうためにも、日頃から愛猫の様子をよく観察し、小さな異変にも気付いてあげられるように心掛けておきましょう。

●記事監修
drogura__large  コジマ動物病院 獣医師

ペットの専門店コジマに併設する動物病院。全国に15医院を展開。内科、外科、整形外科、外科手術、アニマルドッグ(健康診断)など、幅広くペットの診療を行っている。

動物病院事業本部長である小椋功獣医師は、麻布大学獣医学部獣医学科卒で、現在は株式会社コジマ常務取締役も務める。小児内科、外科に関しては30年以上の経歴を持ち、幼齢動物の予防医療や店舗内での管理も自らの経験で手掛けている。
https://pets-kojima.com/hospital/

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たぬ吉

たぬ吉

小学3年生のときから、常に猫と共に暮らす生活をしてきました。現在はメスのキジトラと暮らしています。3度の飯と同じぐらい、猫が大好きです。

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