猫のお腹のトラブルにも食物繊維が効く?下痢や便秘の対処法と食物繊維

2021.10.29

猫のお腹のトラブルにも食物繊維が効く?下痢や便秘の対処法と食物繊維

猫にとって、便秘も下痢も侮れないものです。便秘が続くと「巨大結腸症」になることがあり、下痢が続けば脱水や栄養不足になり、どちらも命に関わる場合があります。特に、子猫やシニア猫の下痢は危険です。人間の場合、便秘の解消や下痢の改善に食物繊維が効くとされていますが、猫ではどうでしょうか?今回は、猫の便秘や下痢の原因や対処法をご紹介するとともに、食物繊維の効果についてもお伝えします。

猫の便秘とは

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便秘とは、消化管の異常運動や脱水などにより、うんちが固くなって排便が困難になった状態です。
健康な猫は、1日に1~2回うんちをします。丸2日以上排便をしていない場合は、便秘です。また、排便をしていても、うんちがウサギの糞のようにコロコロしていたり、したばかりなのにカスカスしていたりする場合も便秘と考えられます。

◆原因

便秘の原因は、多くの場合、脱水、食物繊維の不足、被毛その他の異物の摂取です。
他に、加齢や腫瘍、外傷または骨折、脊髄疾患、大腸の過敏症、代謝性または内分泌疾患、衰弱、運動不足などが原因の場合もあります。
猫は、あまり水を飲まないことや、毛づくろいによって被毛を飲み込みやすいことから、便秘になりやすい動物です。

◆対処法

食事の見直し

猫が便秘になってしまったら、まず食事を見直します。
フードの種類を変更して便秘になった場合には、便秘になる前の体調の良かったころに食べていたフードに戻して様子を見るのが基本的な対処法です。

水分を補う

水をあまり飲まない子の便秘には、食事から水分を摂る工夫をしてあげましょう。食事をウェットフードに代えたり、肉や魚の茹で汁などをフードに混ぜたりするとよいでしょう。

食物繊維を補う

食物繊維の不足と考えられる場合は、カボチャやサツマイモなどを茹でてペースト状にしたものを少しだけ総合栄養食に混ぜてあげて、食物繊維を補います。ただし、食物繊維の摂りすぎも便秘の原因になるので、ごく少量加える程度でよいでしょう。
総合栄養食には、食物繊維が多く含まれる療法食もあります。療法食は、獣医師の指導の下で与えるものなので、利用する場合には、必ず獣医師さんの診察を受けてください。飼い主さんの自己判断で与えると、逆に便秘が悪化することもあります。


猫の下痢とは

下痢や軟便は、胃腸病や消化器の病気で最もよく見られる症状です。下痢は、病名ではなく、便に含まれる水分が増加した柔らかい状態の症状を指しています。正常な便に含まれる水分は約70%ですが、水分が80%以上の場合を下痢と呼びます。
下痢は、ひどい脱水状態を引き起こすことがあるため、注意が必要です。

◆原因

下痢の原因は、感染症や内部寄生虫、ストレスなどです。
また、フードの変更、残飯やスナック菓子、腐った食べ物の摂取なども原因となりますし、臓器機能不全の場合にも起こります。アレルギーで、下痢になる場合もあります。

◆対処法

フードの影響による下痢が非常に多いため、特に食事管理が重要です。消化管に対する負担や刺激を少なくした食事を与えます。
また、下痢の時には、1回食事を抜いて腸を休ませたり、一時的に食事の量を減らしたりして、消化管に負担をかけないようにすることも大切です。
食事の選び方のポイントは、下記の3つです。

・良質な肉・魚が主原料で、消化の良い食材を使っているものを選ぶ
・食物繊維の量は猫に合わせる
・腸内環境を整える成分が配合されているものを選ぶ

良質な肉・魚

肉や魚が主原料のフードを選ぶ理由は、猫が完全肉食動物だからです。また、肉や魚以外の原料として、サツマイモやバナナ、リンゴなど消化吸収の良い食材を使っていることもポイントになります。穀物を多く使っていると、炭水化物の摂りすぎとなり、下痢を引き起こすと言われているため、量に十分注意をしてください。

食物繊維の量

食物繊維には、大きく分けて、水に溶ける「水溶性食物繊維」と水に溶けにくい「不溶性食物繊維」があります。それぞれの特性については、後述します。
水溶性食物繊維には便を柔らかくする働きがあり、不溶性食物繊維には腸の活動を活発にして、食べ物が消化管を通過する時間を速める働きがあります。
水溶性食物繊維を多く摂りすぎると、食べ物が通過する時間が速まり、下痢を引き起こすことがあります。一方の不溶性食物繊維を多く摂りすぎると、食べ物が通過する速度を弱め、便秘になる可能性があります。
食物繊維の少ないグレインフリーのフードが体に合っている子もいれば、穀物入りの方があっている子もいるなど、適切な食物繊維の量には個体差があります。愛猫に合ったものを、選んであげてください。

腸内環境を整える成分

オリゴ糖などのプレバイオティクス成分や、乳酸菌やビフィズス菌などのプロバイオティクス(微生物)成分は、猫の健康のコンディションを整えると言われています。
プレバイオティクスとは、(1)消化管上部で分解・吸収されない、(2)大腸に共生する有益な細菌(いわゆる「善玉菌」)の選択的な栄養源となり、その増殖を促進する、(3)大腸内のフローラ(細菌叢)の構成を健康的なバランスに改善し、維持する、(4)人の健康の維持に役立つという条件を満たす食品成分を指します。


キャットフードに食物繊維が含まれている理由

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猫は、完全肉食動物であり、主に必要とする栄養成分はタンパク質です。
しかし、ご存じの通り、キャットフードにも食物繊維が含まれています。では、何故、含まれているのでしょうか?

◆腸内環境を整えるため

野生で暮らしていた猫は、獲物の被毛の一部や、内臓を内容物ごと食べることで、一定量の繊維質を摂取していたと考えられています。
繊維質は、お腹の調子を整えるために重要な役割を果たしています。腸内細菌のエサとなって腸内環境を整えたり、うんちを固めたりする働きがあり、便秘や軟便、下痢など猫のお腹のトラブルを解消することが期待されます。
通常のキャットフードの繊維質の量は5%以下のことが多いですが、消化器系療法食では20%ほどのものもあります。

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◆毛玉ケアのため

胃に溜まった毛玉を絡めとったり、腸の運動を刺激したりすることで、毛玉の排出を助けます。

◆体重管理のため

繊維質は消化器内で分解・吸収されないため、食べ応えを出しながらカロリーを抑えるために使用されることもあります。
高蛋白質・高食物繊維食は、筋肉を維持しながら体脂肪を減らすことができ、体重の減少率も高いと言われています。

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食物繊維のはたらき

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ここでは、食物繊維の働きについて詳細に見ていきます。
そもそも食物繊維とは、動物の消化酵素で消化・吸収できない成分を指しています。食べても栄養素として利用できるわけではないため、栄養学的には「食べ物のカス」として扱われていました。しかし、現在は、健康面への効果が高く評価されています。
食物繊維は、大きく水溶性食物繊維と不溶性食物繊維の2種類に分類され、それぞれ働きが異なります。

◆水溶性(可溶性)繊維

水溶性食物繊維は、βグルカン、ペクチン、アルギン酸、イヌリン、ポリデキストロース、難消化性デキストリン、グルコマンナン、グアーガムなどですが、これらが十分に含まれている食品はあまり多くありません。
水溶性繊維の働きは、以下の通りです。

・水に溶けやすく、溶けるとゼリー状に
・粘着性があり、胃腸内をゆっくり移動する
・小腸での栄養素の消化吸収をゆっくりにする
・糖質の吸収を緩やかにして食後血糖値の急激な上昇を抑える
・腸内細菌のエサになる

◆不溶性繊維

不溶性食物繊維は、セルロースやヘミセルロース、リグニン、キチンなどで、野菜などに多く含まれています。
不溶性繊維の働きは、以下の通りです。

・腸の蠕動(ぜんどう)運動を盛んにする
・水分を抱え込んで容積を増やす
・便の量を増やして排せつを促す
・腸をきれいにして大腸がんのリスクを減らす

猫の場合は、過剰に摂取すると便秘を助長する可能性があるため、与える量の調節が必要となります。

◆発酵性繊維質

可溶性繊維の多くは、大腸内で乳酸菌やビフィズス菌などの「善玉菌」の栄養源となり、発酵します。このため、発酵性繊維と呼ばれます。大腸菌やサルモネラ菌といった「悪玉菌」には利用されないため、腸内環境を善玉菌優位に整える効果が期待されます。
善玉菌による発酵には、複数のメリットがあることが報告されており、プレバイオティクス成分として腸内環境を良い状態に保つことに役立つことが知られています。善玉菌は、発酵性繊維をエサにして「短鎖脂肪酸」という物質を産生します。短鎖脂肪酸は、大腸粘膜の栄養源となります。
また、発酵に伴い、結腸内容物が酸性化するため、アンモニアの産生と吸収が減少します。善玉菌は悪玉菌に比べて、アンモニアなどの有害物質の産生が少ないためです。
腸内環境が良好であれば、便が適正な固さに保たれ、臭いも軽減されます。


猫の腸内環境の整え方

腸内環境が整っていれば、便秘にも下痢にもなりにくいです。
ここでは、猫の腸内環境を整えるためのポイントをご紹介します。

◆繊維質・脂質・タンパク質のバランス

繊維質や脂質は、適量であれば便秘の解消に役立ちます。しかし、繊維質を長期的に与えることは、完全肉食動物である猫には適していませんし、脂質の摂りすぎは下痢の原因になる場合があります。
キャットフード自体の繊維質は3%程度を目安とし、便秘解消にはトッピングやオヤツで繊維質を増やしましょう。水溶性食物繊維が豊富なサツマイモやカボチャなどを、皮つきで蒸かしたものがおすすめです。
脂質の量は、15~20%程度がベストです。フード選びの目安にしてください。もし療法食などを与えていてフードを変えられない場合には、オリーブオイルをいつものフードに混ぜて与えます。特にウェットフードに混ぜると、猫ちゃんも違和感なく食べてくれるでしょう。適量は、体重4kgの猫で1日小さじ1/2~1杯程度と言われています。
消化・吸収がよいフードは、動物性食材を多く使ったフードです。目安として、50%以上のものがよいでしょう。

◆水分を摂らせる

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前述したとおり、猫が便秘になる原因の一つに、水分不足が挙げられます。
いつでも水を飲めるように、水飲み場を複数設置して、新鮮なお水を用意してあげましょう。
また、ぬるま湯や流れる水が好きな子もいるので、自動給水器を利用したり、洗面所であげてみたりするのもおすすめです
あまり水を飲まない子には、ウェットフードや肉・魚などの茹で汁を活用するなどして、食事から水分を摂らせるのもよいでしょう。

◆善玉菌を増やす

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善玉菌、悪玉菌、どちらでもない日和見菌のバランスが、善玉菌優位になった状態がよい腸内環境です。悪玉菌が優位になっていると、下痢や軟便になりやすくなります。
善玉菌を増やすには、善玉菌のエサとなるプレバイオティクス成分をしっかりと摂ることです。乳酸菌やビフィズス菌、プレバイオティクス成分の入ったサプリメントを与えるのもおすすめです。
善玉菌は、エサを分解して乳酸や酢酸を作り出します。酢酸は、大腸の運動を刺激するとされており、乳酸はさらに代謝されてプロピオン酸や酪酸、酢酸となることで腸内を酸性に傾けます。このため、バランスの良い腸は弱酸性の状態です。
悪玉菌は、アルカリ性の環境を好み、酸性に傾いた腸内では増殖することができず、毒性物質を作ることもできません。


猫の腸マッサージのやり方

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便秘解消には、お腹のマッサージも効果的です。本格的なものではなくても、猫ちゃんが気持ちよく感じる場所に優しく触れるだけでリラックス効果が得られるので、試してみてくださいね。
時間は、1日5~10分程度で十分です。最初は、短時間から始めましょう。また、発熱や下痢、ひどい便秘など体調の悪い子には控えてください。
マッサージの前に、飼い主さんの爪を短く切っておき、猫ちゃんをビックリさせないよう手を温めておきましょう。
猫を優しく撫でてリラックスさせ、脇腹をそっと優しく揉みます。お腹全体を揉むことで、腸を刺激することができます。猫が十分にリラックスしたら、「の」の字を書くように、時計回りにお腹を優しく撫でてあげましょう。


まとめ

便秘が続けば巨大結腸症につながり、下痢が続くと脱水症状や栄養不足から、それぞれ命に関わることがあります。特に、シニア猫や子猫では深刻な問題なので、軽視しないようにしましょう。
食物繊維は、猫の腸を整えるためにも有用です。水溶性食物繊維には便を柔らかくする働きがあり、不溶性食物繊維には腸の活動を活発にして、食べ物が消化管を通過する時間を速める働きがあります。どちらも、摂りすぎは良くありません。
繊維質・タンパク質・脂質のバランスが取れたフードを与え、水分を十分に摂らせるようにして、愛猫の腸内環境を整えてあげましょう。
ウンチの状態は、猫の健康のバロメーターです。下痢や便秘にならないよう生活を見直すとともに、下痢や便秘が続く場合には、すみやかに動物病院を受診してくださいね。



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SHINO

SHINO

保護犬1頭と保護猫3匹が「同居人」。一番の関心事は、犬猫のことという「わんにゃんバカ」。健康に長生きしてもらって、一緒に楽しく暮らしたいと思っています。


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