猫が焼き芋を食べたがる!与えても大丈夫?適切な与え方と栄養

2021.11.27

猫が焼き芋を食べたがる!与えても大丈夫?適切な与え方と栄養

秋の味覚の代表格の一つ、焼き芋。飼い主さんが食べていると、欲しがる猫も少なくないようです。ネットでも、焼き芋を美味しそうに食べる猫ちゃんの動画を見ることができます。しかし、本来は完全肉食である猫に、焼き芋を与えてもいいのでしょうか?結論から言えば、焼き芋は猫が食べても大丈夫な食べ物です。今回は、焼き芋の適切な与え方と栄養をご紹介するとともに、サツマイモの加工品についても触れていきます。

猫は焼き芋を食べても大丈夫?

焼き芋

まずは、猫が焼き芋を食べても大丈夫なのかという疑問にお答えします。

◆さつまいもの栄養成分

サツマイモに含まれる栄養成分について、期待される効果とともに見ていきましょう。
※文部科学省食品成分データベースより(含有量は皮つきの生の場合の可食部100g当たりです)

★食物繊維

さつまいもと言えば、真っ先に思いつくのは食物繊維ですね。さつまいもは食物繊維の豊富な食材で、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維の両方が含まれています。
水溶性食物繊維にはコレステロール値を低下させる作用、不溶性食物繊維には大腸の蠕動(ぜんどう)運動を促進して排便を促す作用があります。これらの作用から、便秘解消の効果が期待されます。また、グルーミングで飲み込んだ毛をうんちと一緒に排出することも期待でき、毛球症の予防にもおすすめです。
皮つきの生のさつまいもには、水溶性食物繊維0.9g、不溶性食物繊維1.8gが含まれています。

★ヤラピン

聞きなれない栄養素ですが、サツマイモなどヒルガオ科植物の一部にできる塊根(いも)や茎に特有の成分です。特に表皮部分に含まれていて、白い乳液状をしています。さつまいもを切ったときに出てくることがある白い物質が、このヤラピンです。
ヤラピンは糖脂質の仲間であり、熱に対して安定しているため、調理によって変性することがありません。非常に細かな難消化性の糖樹脂で、食物繊維に付着するなどして、腸の蠕動運動を促すと考えられています。16世紀ごろのヨーロッパでは、生薬の下剤として用いられていたようです。

★ビタミンE

サツマイモは、野菜類の中でもビタミンEが豊富で、トコフェロールαが1.0mg含まれています。
ビタミンEには抗酸化作用があり、血液をサラサラにしたり、細胞の老化を遅らせたりする効果が期できます。また、癌の抑制にも効果があると言われています。

★カリウムとリン

カリウムには血圧を下げる働きがあり、脳卒中の予防や骨密度の増加につながると言われています。また、利尿作用があり、体内の老廃物や毒素を排出する役割もあります。
リンは、骨や歯を作るのに欠かせないミネラルの一種です。
サツマイモには、カリウム380mg、リン46mgが含まれています。

★ビタミンC

サツマイモには、ビタミンCが25mg含まれています。
ビタミンCは、ストレスに対する抵抗力を高めることができるので、ストレスが多い時にはおすすめの栄養素です。
ただし、猫は体内でビタミンCを生成することができるため、あえて食べ物から摂取する必要はありません。食べ物の栄養バランスが崩れている場合や、高齢でビタミンCを生成する能力が弱くなっている場合には、食べ物で調整してあげるとよいでしょう。

※サツマイモに含まれるビタミンAは、β-カロテンです。猫は、人間と異なり、体内でβ-カロテンをビタミンAに変換することができないため、サツマイモにビタミンAの効果を期待することはできません。

◆猫は焼き芋を食べてもOK

サツマイモは猫にとって有害な物質を含んでおらず、栄養バランスも良いので、焼き芋を食べても大丈夫です。市販のキャットフードにも、穀物の代わりにサツマイモが使われているものがあります。
焼くことにより水分が減少するため、100g当たりの栄養成分は相対的に多くなります。例えば、食物繊維であれば、【生<焼く<蒸す<干す】の順で多くなります。
加熱すると壊れてしまう栄養素は少なくありませんが、サツマイモの場合は加熱しても栄養価が下がりません。手作りごはんをあげている飼い主さんには、調理法を選ばない食材としておすすめです。
皮には、ビタミンCや抗がん物質が多く含まれているので、皮を取り除かずに与えることで、これらの栄養成分を摂取することが期待できます。


猫に焼き芋を与えるときの注意点

焼き芋は猫に与えても大丈夫ですが、与えるときには注意しなければならない点があります。

◆与える量に気を付ける

どんな食べ物でも適量を超えて食べると、健康を損ねることがあります。
焼き芋の栄養成分の約1/3は糖質です。与えすぎると、肥満や糖尿病になる危険性があるため、注意が必要です。
また、食物繊維が豊富で整腸作用が期待できる分、食べ過ぎると消化不良から下痢やガス溜まりの原因となります。
カリウムの過剰摂取は、高カリウム血症や低カリウム血症を引き起こすリスクが高まります。
このように焼き芋の食べ過ぎは猫の健康に害を及ぼす可能性があるので、必ず適量を守って与えましょう。焼き芋を与える際の適量は、1日にティースプーン1杯程度です。毎日与えるのは控え、オヤツとして1週間に1度程度与えるとよいでしょう。

◆持病のある猫には与えない

カリウムが多く含まれているので、腎臓などに疾患のある猫には与えないでください。

◆冷ましてから与える

アツアツの焼き芋は、火傷をしてしまうため、与えないでください。必ず、冷ましてから与えましょう。
適温は、猫本来の獲物である小動物の体温に近い35℃前後です。目安としては、人肌程度と考えてもよいでしょう。

◆細かくして与える

猫は、人間と異なり、食べ物をよく咀嚼してから飲み込むことはなく、ほとんど丸呑みしています。したがって、焼き芋を与える際にも、一口サイズにカットしてから与えましょう。特に皮は消化が悪いので、細かくしてあげてください。
ミキサーなどでペースト状にすると、食いつきがよく、消化も良くなるでしょう。

◆味付けはしない

塩などで味付けしたものは与えないでください。人間の味付けは猫にとっては塩分過多で、高血圧などの病気の原因になります。

◆アレルギーに注意

サツマイモはアレルギーを起こしにくい食材ですが、猫ちゃんによってはアレルギーを起こす可能性があります。
初めて与える場合には、ごく少量にして、愛猫の様子を注意深く観察しましょう。アレルギーを起こした場合に備えて、動物病院の診療時間中に与えることをおすすめします。
アレルギー症状としては、

✓お腹の調子が悪くなる(下痢、痛みなど)
✓嘔吐
✓口の周りのかゆみ
✓発疹

などがあります。このような症状が見られたら、すぐに動物病院を受診してください。


加工したさつまいもは与えられる?

さつまいも自体が猫に与えても大丈夫な食材であり、焼き芋も問題なく与えることができます。
では、焼き芋以外の加工したさつまいもも、猫に与えても大丈夫なのでしょうか?

◆干し芋

干し芋

干し芋は、焼き芋と同様、量に注意すれば猫に与えても問題はありません。
干し芋の場合、生のサツマイモに比べて、水分が約1/3に減少し、100g当たりの炭水化物やカリウム、リンの量は倍になります。
このため、消化に悪く、カリウムの過剰摂取につながる危険もあり、あまり積極的に与えない方がよいかもしれません。
市販の干し芋の中には、砂糖や添加物が加えられているものがあるので、注意が必要です。パッケージの表示を確認して、これらが加えられていないものを選んでください。

◆スイートポテト

スイートポテト

スイートポテトは、猫には与えないでください。
スイートポテトには、砂糖やバター、卵などが使われています。
砂糖を摂りすぎると、糖尿病のリスクが高まります。
また、バターは脂肪分が非常に多く、猫にとってはカロリーが高すぎます。乳製品なので、乳製品にアレルギーのある子にも注意が必要です。
卵もアレルギーになりやすい食品なので、やはり注意が必要です。


なぜ猫は焼き芋が好き?

ネット上では、焼き芋を好んで食べる猫ちゃんの動画を見つけることは難しくありません。
しかし、完全肉食動物である猫にとって、炭水化物や食物繊維の多いサツマイモは、本来、必要のない食べ物です。それでも、焼き芋が好きな猫ちゃんが少なくないのは何故でしょうか?
猫の味覚は、食べ物が傷んでいないかを判別するため、酸味と苦味に対して敏感です。一方、タンパク質や脂質を主に必要としているため、甘味を感じる能力はあまり発達していません。
したがって、約1/3が糖質である焼き芋は、猫にとって味覚的に魅力的なものではないと考えられます。
しかし、焼き芋好きの猫ちゃんの他にも、ケーキやクッキーなどに反応する子も存在するため、何らかの匂い――特に甘い香りやバターの匂いが猫を引き付けているのかもしれませんね。


まとめ

焼き芋を好んで食べる猫は、少なくないようです。
さつまいも自体、猫が食べても大丈夫な食材であり、サツマイモを原材料とするキャットフードも販売されています。したがって、サツマイモを焼いただけの焼き芋であれば、猫に与えても問題ありません。
食物繊維が豊富なので、整腸作用が期待でき、便秘気味の猫ちゃんにはおすすめです。
ただし、与えすぎると、糖質の摂りすぎからの肥満や、カリウムの過剰摂取による高カリウム血症など、健康を損ねる危険性があります。
焼き芋の適量は、1日にティースプーン1杯程度です。毎日与えるのは控え、たまにオヤツやご褒美としてあげるとよいでしょう。
与える場合には、味付けしていないものを、しっかりと冷まして人肌程度にしたものをあげてください。
猫ちゃんにとっても、飼い主さんと一緒に同じものを食べられるのは、きっと嬉しいことだと思われます。愛猫が焼き芋を欲しがるときには、ちょっぴりお裾分けをして、おやつタイムを一緒に楽しんでみてくださいね。



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SHINO

SHINO

保護犬1頭と保護猫3匹が「同居人」。一番の関心事は、犬猫のことという「わんにゃんバカ」。健康に長生きしてもらって、一緒に楽しく暮らしたいと思っています。


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