【獣医師執筆】おなかからはじめる健康習慣。ペットの腸内環境を整えよう

2021.05.04

【獣医師執筆】おなかからはじめる健康習慣。ペットの腸内環境を整えよう

犬・猫の病気や健康についてコジマの獣医師が教えてくれる「教えて獣医さん!」今回は近年注目が高まっている「腸内環境の改善」についてです。犬猫にとっても腸内環境を整えることは健康につながる重要なケアです。便秘や下痢などが慢性的になってしまっている犬猫は要注意。腸内環境が悪化するとさまざまなリスクも…毎日の手軽なケアで腸内環境を整えて愛犬・愛猫の体の健康維持をしてあげましょう!

犬猫の腸のはたらきとは?

1

人もワンちゃん・ネコちゃんも「腸」という臓器を持っています。ワンちゃんの腸の長さはカラダの長さの5倍程度、ネコちゃんは4倍程度といわれていてその長い筒状の臓器でさまざまな役割を担っています。腸は食べた物を消化吸収するだけではなく、免疫力の最大の産生場所でもあり、腸内細菌叢(腸内フローラ)と呼ばれる微生物たちがカラダに必要な栄養素を産生する役割も担っています。必要な栄養は食事からはもちろん、腸内フローラからもかなりの量を得ており、ワンちゃん・ネコちゃんが生きていく上で大切なものなのです。

犬猫の腸の健康と腸内環境

「腸が整い健康である」とはどういう状態なのでしょう。一般的には、「下痢や便秘がなく消化吸収が滞りなく行われ、腸内フローラのバランスが整っている状態」をいいます。しかし、ある報告によると1年間に動物病院で診察した犬・猫のうち約2割が消化器疾患(下痢や便秘、嘔吐など)が来院理由であったことから、多くのペットが腸内環境の悪化に悩んでいることがわかります。
犬猫の腸内環境が整っていれば必要な栄養素を十分吸収し、免疫力を最大限活かすことができ、病気になりにくい体内環境を維持することができます。逆に長期にわたって腸内環境が悪い状態だと、栄養の吸収が上手くできないどころか腸内フローラが有毒物質を生産し、免疫力を下げてしまいます。その結果、感染症やアレルギー、ガンなどさまざまな病気を引き起こす可能性が高まってしまいます。

2

犬猫にとって便秘や下痢は深刻な問題?

犬・猫における健康的なウンチとはどのようなものでしょうか。健康的な場合、1日1~3回(年齢や個体差もありますので1日5回以内なら問題なし)程排便します。硬さは掴んだ時に容易に変形せず、持ち上げた時も床にあまりくっつかない硬さが健康的です。しかし、便秘や下痢などになるとウンチにも変化が出てきます。

◆便秘の状態

・きちんと食べているのに丸2日以上ウンチが出ない
・小さいウンチがポロポロと少量出る

◆軟便または下痢の場合

・通常よりも水分が多くなる
・1日にする回数が増える
・血便が伴うこともある

特に猫は飲水量が少ないことや、グルーミングによって毛を飲み込んでしまうことが原因で便秘になりやすいといわれています。さらに高齢の猫は病気によって便秘になることも多い傾向にあります。
愛犬・愛猫が下痢や便秘が数日続いている、または繰り返している場合はその原因を探ってみましょう。

3

◆腸内環境を悪くしてしまう可能性がある行動や環境をチェック!

・現在食べているフードの量・質は適切か
・急にフードの種類を変えていないか
・おやつなどを必要以上に与えてはいないか
・拾い食いはしていないか
・ストレスがかかる状況ではないか

便秘を放置しすぎると巨大結腸症という病気を引き起こし、さらにウンチが出なくなってしまいます。たまに緩くなる、たまに出にくくなる程度ならばあまり心配はいらないですが場合によっては食欲がなくなり嘔吐などの症状が出てしまうこともあります。こうなると脱水症状を引き起こし、状態はさらに悪化してしまいます。たかが下痢や便秘と軽視せず、2~3日続く場合や他の症状が出るなど、明らかに様子がおかしい場合は病気が潜んでいる可能性もありますので動物病院に相談してください。

犬猫の腸を健康的にするためにできること

腸内環境を正常に保つためにはまず腸内フローラのバランス、つまり善玉菌・悪玉菌と呼ばれる細菌叢(さいきんそう)のバランスを整えることが重要です。タンパク質や繊維質、脂質などがバランスよく配合されているフードを与えたり、水分を十分摂れる工夫や乳酸菌や納豆菌などの善玉菌をサプリメントとして与えたりすることも効果があるかもしれません。最近は、オリゴ糖など体内の善玉菌を増やす成分が配合されているフードやおやつなどもあります。

4

腸内環境を整えることは肥満防止や皮膚の健康維持にも!

整った腸内フローラは短鎖脂肪酸を豊富に産生します。この短鎖脂肪酸は全身の代謝を活性化し、脂肪の蓄積を緩やかにすることで肥満の防止に繋がることが報告されています。善玉菌の中には、神経や内臓機能に必要不可欠であり、皮膚や被毛の健康維持にも重要な「ビタミンB群」を産生してくれる物もあります。
また、糖尿病の発症やアレルギー性皮膚炎などの皮膚病にも腸内細菌の乱れや腸内フローラが関与しているといわれており、免疫力アップの面から抗ガン作用にも期待されています。

5

この他にも腸内環境を整えることでのさまざまなメリットについて近年続々と研究報告がされており、犬猫にとっても注目されている分野の1つです。愛犬・愛猫の日々の健康維持や将来の病気の予防のためにも今日から腸活をはじめてみましょう。

– おすすめ記事 –

・腸活がオススメなのは人間だけじゃない!犬の腸内環境を整えてる?
・犬に納豆をあげたい!メリットや与えるときのポイント、適量を紹介
・愛犬が食べていい野菜はあるの?与える際に注意すること
・犬にヨーグルトは与えてもOKなの?


focebookシャア
ツイート

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
コジマ動物病院 Dr.小椋

コジマ動物病院 Dr.小椋

動物病院事業本部長である小椋功獣医師は、麻布大学獣医学部獣医学科卒で、現在は株式会社コジマ常務取締役も務める。小児内科、外科に関しては30年以上の経歴を持ち、幼齢動物の予防医療や店舗内での管理も自らの経験で手掛けている。 https://pets-kojima.com/hospital/

関連するキーワード


記事に関するお問い合わせはこちら