うさぎのツメダニ症ってなに?原因は?どんな症状が出る?ダニが見つかったらどうすればいいの?

2022.01.17

うさぎのツメダニ症ってなに?原因は?どんな症状が出る?ダニが見つかったらどうすればいいの?

うさぎさんのふわふわの毛皮の奥、皮膚のうえにひそかに住みついてしまう虫のひとつに、ツメダニと呼ばれる種類のものがあります。犬や猫にもうつり、特に人にうつってしまうと強烈な痒みを引き起こしてしまう「ツメダニ」とはどのような生き物で、どんな症状を引き起こし、どのようにうつってきてしまうものなのでしょうか。どうやって駆除したらいいのでしょうか。その性質と、治療・対策についてご紹介いたします。


うさぎのツメダニ症とはどんな病気?

うさぎ

うさぎなどの動物の毛皮の奥、体の表面に住みついてしまうことのある虫のひとつに「ツメダニ(Cheyletidae)」というダニがいます。

この虫がうさぎの皮膚に炎症を起こしてしまったものを「うさぎのツメダニ症(ケイレテイラ皮膚炎)」と呼びます。ツメダニはうさぎだけではなく犬や猫、ときにはヒトにも感染してしまうダニですので、人獣共通感染症のひとつでもあります。

ツメダニに住み着かれてしまっていても症状が出ないこともあるのですが、症状が出てしまった場合、つまりツメダニ症となってしまったうさぎはフケが増えたり、毛並みのツヤがなくなってしまったり、痒がる、皮膚が赤くなってしまうといったような皮膚炎の症状が起こしてしまいます。


うさぎのツメダニ症の原因は?

「ツメダニ」と呼ばれるダニには大きくふたつのタイプがあり、生活環境中(カーペットや畳、動物の敷料等)に生息している、小型のダニを捕食して生活するものが多く存在しています。

しかし、ツメダニのなかには動物に寄生するものもいて、それらのツメダニは、うさぎをはじめとした動物の体表を刺して体液を吸って暮らす寄生生活を送ります。

後者のツメダニに寄生されてしまったうさぎは皮膚を刺されたり、爪を立てて這い回られたりしてしまうため、その刺激で皮膚に炎症を起こしてしまうことがあります。その炎症から痒みが生じたり、フケが出てきたりすることで、寄生されたうさぎはツメダニ症となってしまうのです。

◆ツメダニってどんな生き物?

ツメダニは淡黄白色のずんぐりとした形をしています。
顎のあたりに大きな爪を持っているためツメダニという名前がつけられました。

大きな爪がついているのは「触肢」と呼ばれる顎の一部でもある肢のような部分で、皮膚に住み着くタイプのものはこの爪で寄生した動物の皮膚に自分を固定し、口器を動物の皮膚にストローのように突き刺して体液を吸います。体の中で被毛があるところならどこにでも住めます。また、産んだ卵を被毛にセメント質で貼り付け、そのうえ糸でしっかりと念入りに固定するのも特徴的です。

体に住みつかないタイプのツメダニは環境中に多数存在していますが、動物の体液を食べるために動物を刺すようなことは基本的にしません。しかし接触した時の圧迫などの刺激や何らかの条件によっては動物を刺すことがあります。こちらは一般的な「虫刺され」の症状に近いのですが、こちらの場合もツメダニ症と呼ばれることがあります。


こんな様子が見られたらツメダニ症かも・・・

  • ・いきなり多量のフケが出てきた!
  • ・うさぎの背中の皮膚をかき分けて見てみたら体についたフケがそっと動いているように見えた!
  • ・背筋に沿ってカサブタとフケがすごくなってきた!
  • ・新しいうさぎをお迎えしてから3−6週目に他のうさぎにもフケが増え始めた。

このような症状があればツメダニを疑います。

ツメダニ症の症状の典型的なものは頭や背中、肩甲骨のあたりが赤くなったり、フケが多くなったり、毛が抜けてきたり、カサブタができたりといったものとなります。背骨に沿ってフケが増えることが多いようですが、肉眼では症状があまりわからないようなこともあります。

うさぎで特に気をつけなくてはいけないのは「普段はおとなしいうさぎなのに、最近落ち着かないので、気になって……」と来院されたうさぎの体を検査したところ、フケ等はほとんど見られなかったにもかかわらずツメダニが多数発見されたケースがありました。そのうさぎはかゆみのために神経質になっていたのです。うさぎは明確に「かゆい」という行動を取らない場合も稀に見られますので、注意が必要です。

◆ツメダニはどうやって見つけるの?

ツメダニの感染数が多いときはうさぎの毛の下、皮膚の上を森の中を散歩しているかのように動き回る虫体を肉眼で見つけられることもあります。英語圏ではwalking dandruff(歩くフケ)という愛称がついていたりもします。
しかし、ツメダニの体長は0.5mm以下と小さいため、寄生数が少なければ肉眼での確認は難しく、顕微鏡やルーペなどを用いての確認が必要となってきます。

◆検査法のいろいろ

小さいため、肉眼で確認しにくいツメダニですが、ルーペや虫眼鏡程度で見ただけでもある程度確認できますし、フケが多いところにセロハンテープを当ててぺたぺたくっつけたものを検体として、そのままスライドガラスに貼り付けたものを顕微鏡で見てみる「セロハンテープ試験」や少し皮膚をカリカリ削って出てきたフケ等を顕微鏡で見る「皮膚掻爬試験」、毛を少量引き抜かせてもらい、顕微鏡で検査しツメダニの卵を確認する「被毛検査」などでも確認できます。一番正確なのはノミトリくし検査で、蚤取りくしで全身をブラッシングして取れた毛やフケを顕微鏡で観察します。どの試験も、もぞもぞと動く虫体や卵がいることを確認する検査となります。


ツメダニ症はどんな治療をする?

ツメダニの治療は、虫体・卵の除去と皮膚に対する対症療法によって行います。

◆治療の内容

ツメダニに感染していることがわかったら、うさぎにとっても安全なことがわかっている薬剤を使用していきます。

ツメダニに対して効果があることがわかっている殺虫剤が含まれているスプレーやムース剤の塗布や、皮膚に垂らす形のダニ駆除剤、飲み薬などのなかでうさぎにとって安全性が高いものが状況に応じて使用されます。
しかし、ダニの孵化するタイミング等もありますので、一度での駆除はできず、しばらくは定期的な投与や処置が必要となってきます。シャンプーやスプレーなどでは、様子を見ながら週に一回程度、数回繰り返せばほとんどのうさぎが完治すると言われています。市販の蚤取りシャンプー等はダニ類に対しては無効なものが多いため、獣医師の処方するツメダニにも有効なものを使用しなければなりません。

うさぎの体表に症状として出てきたフケや、同じようにうさぎの体表にできたカサブタの下にツメダニが多く存在しますので、重度に症状が出ているときは角質を取り除くタイプのシャンプーも併用してそれらのカサブタやフケを洗い流して住み着く場所を根こそぎ掃除したりすることが治療の効果を高めますので、症状に応じてこちらもよく利用されます。症状がひどいときは全身の毛刈りが必要なこともあります。

ツメダニのメスは動物の体から離れてしまっても、10日間くらいは生存すると言われています。

よって、うさぎにツメダニの治療をしている間は、環境中のダニを除去していくことも考えなくてはなりません。うさぎのよくいる場所や寝床などの周囲環境に対して、殺虫剤を用いるだけでなくこまめに掃除機をかけるようにしたり、ブラシなどの清掃を丁寧にしたり、部屋の燻蒸やダニ取りシート、布団乾燥機なども駆使して室内にダニやその卵が残ることのないように対策していくことが必要となります。

◆自然治癒する?

ツメダニ症の治療は、「住み着いてしまった虫」の除去になります。
卵の最後の一個まで除去しない限り孵化してしまいますし、成虫が存在する限り卵が生まれてしてしまいますし、住み心地が良ければ住み続け、増え続けてしまう可能性があるからです。

このような外部寄生虫でも、他の感染性疾患でも同じなのですが、感染症にかかってしまっている状態というのは、そのうさぎが持っている免疫機能でダニを排除しきれずに侵入・定着を許してしまった状態です。なので、その排除機能を補助するために外部から薬剤や物理的除去などの医療的な処置という手助けをすることでようやく排除することが可能となります。

そのままにしておいても治る可能性は低く、また、周囲の動物や環境も汚染してしまうことになりますので早めの診断と処置が必要です。

また、このような寄生虫症の場合、環境の方も自然治癒するためにはかなり時間がかかりますので、薬剤等を用いた環境の治療も必ずセットで行っていかねばなりません。


人や他のペットに感染する可能性はある?

うさぎ

ウサギのツメダニは人や犬猫、もちろん同居のうさぎにも感染する可能性があり、犬や猫のツメダニもうさぎに感染します。人に感染した場合には一時的な感染にはなるのですが、それでも非常に強い痒み、紅斑などをもたらすことも多く、早め早めの対策が必要となってきます。

子うさぎや子犬、子猫など若い動物では特に伝染性が高く、うさぎには症状が強く出る傾向があるのですが、犬などでは大人になるとツメダニが寄生していたとしても、全く症状が出ないことも珍しくありません。そのような無症状動物がキャリアーとしての感染源となってしまうこともあります。そのため、感染が確認された動物がいたら、接触があった動物のすべてに検査や投薬などの処置が必要と考えられます。


ツメダニ症は予防できる病気?

寄生性のツメダニは皮膚の接触感染によって伝染することが多いため、人も動物も外に暮らす動物との接触時にはきちんと手を洗う、ダニを防ぐための処置を講じておくなどの対策が必要です。

感染ルートは皮膚の直接接触によるものが主なのですが、ブラシや毛布に付いていた毛についた卵や虫体などから感染することもありますので、それらの環境を清潔に保つことが重要です。

また、トリミングサロンやペットショップなどから感染が広まった例もありますので、うさぎ同士だけに限らず、新しい動物を迎え入れるときなどにツメダニを持ち込んでしまわないように注意しましょう。


まとめ

うさぎのツメダニ症の原因は「ツメダニ」と呼ばれるダニで、うさぎだけではなく犬や猫、人などにも感染して痒みを引き起こすことがあります。ブラシや寝床を介して伝染することもあり、寄生していても症状が出ないこともあるため、家族・同居動物の中の誰かに感染が認められた場合皆が処置を受け、周囲環境にも対策する必要があります。とくに子うさぎには感染しやすく、症状も強く出やすいため注意が必要です。

かゆみはないこともあるのですが、うさぎや他の動物の頭や背中にフケが多く出てきたり毛が抜けてきたりした時にはツメダニが原因となっている可能性もありますので、早めに動物病院を受診してみると良いでしょう。

うさぎがいきなり神経質になったようなときには今回のような痒みが原因な時だけではなく、何らかの疾患が隠れているようなことがありますので、原因を探るためにも早めの受診をお勧めします。



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