春は猫の恋の季節。鳴く、鳴く、鳴く!

2016.04.08

春は猫の恋の季節。鳴く、鳴く、鳴く!

こんな句があります。 猫の恋初手から鳴きて哀れなり 志太野坡 恋に身をやつし、鳴き声をあげながら相手を求める猫の姿は、時には悲しく哀れにも見えたのでしょうか。 こんな句もあります。 声たてぬ時が別れぞ猫の恋 加賀千代女 猫が鳴かなくなったら、もう相手を必要としていない…。シビアですね。 今回は春に猫が鳴くことを題材にした俳句と、詠まれた状況を思いつくままつらつらと書いていきたいと思います。

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毎年我が家も周囲では、早い時はまだ寒い2月の中頃から、外で猫が独特の声で鳴きながら徘徊しています。それを聞く度「ああ、女の子が彼氏を探しているね」と家族と話しています。「アオーン、アオーン」と長い時は3分以上鳴き続けて、やっと収まったと思ったらまた鳴き出す…。
雌猫が雄猫を引き付けるために鳴き、雄猫がその鳴き声に応える。その声に雌猫が応え、また雄猫が…エンドレスです。
「猫の恋」は江戸時代から現代にかけて、俳人に好まれて使われる初春の季語です。
よく、春に猫が鳴くことを「猫がさかっている」とか「猫が交尾しようとしている」などと、ズバズバ言いますが「猫の恋」と表現したほうがずっと綺麗で詩的です。


菜の花にまぶれて来たり猫の恋   小林一茶
身体中菜の花の花びらをつけてこちらに歩いてくる猫を想像してしまいます。菜の花畑でデート?


春の猫鳴く鳴く橋を渡るなり   吉川五明
春の猫磯の月夜を鳴きわたる   村上鬼城
恋猫の声のまじれる夜風かな   長谷川櫂
春の夜に鳴く猫の、いろんな場面を思い浮かべられます。海で、山で、街で、猫は恋しています。


戸を開けて放ちやりけり猫の恋   加舎白雄
門番が明けてやりけり猫の恋   小林一茶
恋の相手を探して鳴く猫に、市井の人々の寛容で暖かな眼差しが感じられますね。


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寝て起て大欠伸して猫の恋   小林一茶
一茶は猫を題材とした句が多いのですが、この作品もほのぼのとした猫への愛情が感じられます。一晩中恋のお相手を探して寝不足?


猫の恋やむとき閨(うるう)のおぼろ月  松尾芭蕉
「先ほどまで猫の恋する騒々しい鳴き声が聞こえていたが、いまは静寂が戻ってきた。ふとみれば春の短夜の朧月が部屋に差し込んでいる。猫に刺激されたのでもないのでしょうが、何となく私も人恋しくなる春の夜です。」
こんな解釈がされている句ですが、春の夜、猫が鳴く声を聞くとなんとなくそわそわするのは私だけでしょうか…。


鏡見ていざ思ひきれ猫の恋   大島蓼太
恋の季節の猫はやつれるもの。「そんな顔じゃ相手にされないよ」という忠告の句ですが、猫を通して私たち人間に対する助言でしょうか(汗)


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まとふどな犬ふみつけて猫の恋 松尾芭蕉
おそろしや石垣崩す猫の恋   正岡子規
猫の恋天下無敵の声あげて   岩井善子
恋猫の恋する猫で押し通す   永田耕衣
いやはや、恋する猫のパワーはすごいですね。普段は避けて通る犬を踏みつけ、石垣も壊す勢いで、うるさいと言われても「だって恋してるんだもん」と押し通す。こんな風に迫られればお相手の猫も断れませんね〜。


一方でこんな切ない句も。
あまり鳴て石になるなよ猫の恋   小林一茶
石になる=愛人との別れを悲しむ余り、石と化したという松浦作用姫の故事から、猫の恋の悲哀さを表現しているのでしょうか?一茶は猫を題材とした句が多いですね。

たまきはるいのちの声や猫の恋   宮部寸七翁
たまきはるは「魂きはる」。「いのち」などにかかる枕ことば。新たな命を生み出すために鳴く声は、ただの恋の声ではなく魂から絞り出される荒々しくも切ない真の心の叫びなのでしょう。


恋猫の乾ける舌や水を飲む   篠原温亭
…喉も渇くことでしょう、あんなに大声で鳴くのだから。


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そして恋の季節は終わりを告げようとします。ここらあたりは何事も気まぐれでドライな猫のこと。あっさりしていますよ〜!
こがるるも十日ばかりや猫の恋   横井也有
転び落ちし音してやみぬ猫の恋   高井几董
物音にかひなき猫の別れ哉    夏目吟江
干し竿の落ちてわかれぬ猫の恋   室伏波静
うらやまし思ひ切(る)時猫の恋  越智越人
「猫の恋はすぐに終る。煩悩断ちがたい人間の一人として、うらやましく思う。」
私たち人間も猫のように後腐れなく生きられればいいのでしょうが、無理な話なのでしょうね。せめて買っている猫に見捨てられないよう、しっかりお世話しないと。


いかがでしたか?
猫を題材にした俳句はまだまだあります。作者の猫への深い愛情が感じられるものも多く、ふふっと笑ってしまうことも。機会があれば調べてみてください!
最後まで読んでくださり、ありがとうございました!

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そらにゃん

そらにゃん

猫が大好きなおばさんです。猫、いいですね! 我が家には「そら♂」「すず♀」「りん♀」のニャンズがいます。 ずっと犬を飼っていて猫暦はまだ二年そこそこと短いのですが、長年の願いだった猫との暮らしに今もウハウハ状態です。ニャンズのおかげで仕事や家事や寄る年波の疲れも吹っ飛びます。 病気がちな「そら」のおかげで獣医さんと懇意になり、通院の度に先生から様々な猫情報を教えていただいてます。 いかにニャンズを満足させられるか、猫じゃらしの振り方を日々研究中。 得意技は猫に錠剤を飲ませること。←ただし「そら」限定!?


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