猫の舌がザラザラしているのは、どんなしくみなのでしょう?
猫の舌をしっかり観察してみると、突起がびっしりと生えているのがわかります。これは糸状乳頭(しじょうにゅうとう)というもので、舌の中央部分に大きいものがあり、舌の周りに行くに従って小さくなっていきます。一つ一つは、口の中側、喉の方に向かって反っていますので、食べたものが外に出にくく、舐められると引っ掛かるようになっており、あのザラザラとした感触になるのです。
猫の舌の秘密とは?
–餌を食べる–
猫の舌がザラザラしているのは、猫が野生の時に獲物を捕って食べていた時代からの体の特徴です。捕まえた獲物を食べる時に、骨を噛み砕くことは出来なくても、骨についた肉を少しでも多く舐め取れるように、舌に突起が出来てきたのです。
–水を飲む–
この舌で、猫は水をうまく飲めるようになっています。
今までに多くの科学者が、猫の舌全体にある突起が水飲みに役立っていると推測してきました。しかし実は、猫が水を飲む際、舌先だけしか水につけていないということが、2010年にマサチューセッツ工科大学の工学者の研究により判明しています。
猫の舌が水に触れて口に戻る際に、表面張力で舌先についた水が引き上げられて、水柱が出来ます。その水柱が最大になっている時に、口を閉じて、水を飲んでいるのです。
猫は水を飲む時に、この動作を高速で繰り返し行っているということになります。秒速76.2センチメートルのスピードで舌を動かし、1秒間に3から4回も、舐める動作をしているそうです。
–毛づくろい–
猫は、舐めて毛づくろいをしますね。この時に猫の舌のザラザラの突起が、ブラシのような役割を果たします。櫛でとかすように、舌でとかすことで、毛並みをととのえ、抜け毛を取ることが出来ます。また、ほこりなどの汚れを取ることも出来ますし、皮膚を舐めることで、マッサージする効果もあります。
毛づくろいをするときは、体はもちろん、顔や目の周りなど、デリケートなところも舐めています。このことから、猫が体や顔を舐める時には、舌の突起の状態や力加減をうまく調節することが出来ていると考えられています。
–味を感じる–
成猫の舌の表面には約250個のキノコのような形をした「茸状乳頭」(じじょうにゅうとう)があり、それぞれの乳頭には40~40,000個の味蕾(みらい)細胞があります。中央は突起(糸状乳頭)がついているだけで、味を感じることは出来ませんが、周囲に味を感じる味蕾細胞があります。
この部分で感じられるのは、酸っぱい、苦い、塩辛い、この程度だと言われています。猫は特に酸っぱさを敏感に感じとり、塩辛さは余り感じないといわれています。
猫が酸っぱさを感じるというのは、人間の感じる酸っぱさとは違います。肉に含まれる「酸」のことで、うま味として感じているのです。
また、苦味を感じるのは、腐った肉を食べないようにするためです。肉が腐った時に増えるアミノ酸を苦味として感じ取っていると言われています。腐った肉を食べるということは、自然界では命にかかわることになってとても危険なため、苦味に対しては敏感なのです。
塩辛さについては、猫は実際あまり感じていないようです。それを感じる器官はありますが、味としてあまり認識はしていないようだということです。
猫にとっての味覚は、主に、食べ物が腐るなどしていないか、を見極めるもので、あとは、食べたいか食べたくないか、おいしいかおいしくないか、を感じるものだと言えるでしょう。
また、味に関する大きな秘密としては、猫は甘味を感じない、ということです。これは、雑食になっていった犬とは違い、猫が極端に肉食であったために、生きていく上で甘味を感じる必要性がなかったからだと言えるでしょう。
猫は猫舌?
猫の舌の秘密と言うと、「猫舌(ねこじた)」で熱いものが苦手だという事を連想します。猫は本当に熱いものが苦手なのでしょうか?
人間以外の動物で、多くの獲物の体温である40℃を超える食べ物を平気で口に入れられる動物は、ほとんどいないと言えるでしょう。人間以外の動物はほとんどが、熱いものを口の中に入れることは苦手なのです。猫だけが特別に熱いものが苦手なわけではありません。
子猫の時
猫の舌のザラザラは、生まれた時にはありません。生後1ヶ月頃から離乳しますが、その頃から舌の突起が現れてきます。そして自分で水を飲んだり、餌を食べたりできるようになっていくのですね。
時々、たくさん秘密をもった猫の舌を観察してみるのも、面白いかもしれません。
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