チェリーアイとは
犬や猫の目の病気のひとつに「チェリーアイ」があります。
これは、第三眼瞼(だいさんがんけん)の裏側にある「第三眼瞼腺」(涙を分泌する器官)が炎症を起こして目の外に飛び出し、赤く腫れ上がった状態をさします。正式な病名は「第三眼瞼脱出(または突出)」ですが、赤く盛り上がった外見がさくらんぼに似ていることから、一般的に「チェリーアイ」と呼ばれています。
瞬膜のお話
「第三眼瞼」と聞いてもピンと来ない方には、「瞬膜」の方が馴染みのある言葉かもしれません。チェリーアイについて詳しくお話しする前に、瞬膜とは何か、どのような役割をしているのかを確認しておきましょう。
眼瞼(瞼・まぶた)はそもそも眼球の上下から開閉することによって眼球を守る働きをするものですが、鳥や犬、猫など多くの動物にはさらに、目頭の内側に「瞬膜」と呼ばれる膜があります。上まぶた、下まぶたに次ぐ3つ目のまぶたということで「第三眼瞼」とも呼ばれているわけです。
瞬膜は眼球と連動して動き、自ら意識して動かせるものではありません。眼球が後ろに引っ込むと瞬膜が前面に出てくるという仕組みです。
ちなみに人間の場合は、脳が発達して眼窩(骨の眼球が納まっているくぼみの部分)が小さくなったために眼球の前後運動が減り、瞬膜が退化したと考えられています。
海や水辺に住む動物の瞬膜は水から目を守り、ラクダなどの陸上動物の瞬膜は砂漠の砂から目を守っています。
猫の祖先のリビアヤマネコも砂漠暮らしで瞬膜が発達したと考えられていますが、現代の猫の瞬膜はゴミやホコリ、木の枝などの障害物から目を守っています。
また、何らかの理由で眼球が傷ついてしまった場合には、眼球が奥に引っ込むと同時に瞬膜が前面に出てきて目を守ります。
しかし、風邪や慢性的な下痢などで栄養状態が悪くなったり脱水症状になると、眼球の後ろの脂肪が痩せて眼球が落ちくぼんでしまうため、両目の瞬膜が前面に出たままになります。これは、眼を守るという本来の役割とは異なり、体調の悪さを表すシグナルです。
この他にも、ストレスや極度の疲労を感じている時にも瞬膜が常に出た状態になります。
なお、猫が眠っている時に瞬膜が出ていることがありますが、まどろんでいる時、リラックスしている時に出る瞬膜には問題はありません。
以上を踏まえて、チェリーアイの原因や症状、治療法についてお話します。
チェリーアイの原因
チェリーアイの原因は大きく2つに分けられます。先天性のものと炎症によるものです。
–先天性–
瞬膜(第三眼瞼)の裏にある第三眼瞼腺とその周りの骨を結合する組織が生まれつき欠けていたり、結合する力が弱かったりすると、第三眼瞼腺が飛び出してしまうことがあります。バーミーズ、ペルシャといった猫種の若い猫に発症することが多いようです。
–炎症–
外傷を受けることによる炎症や、結膜炎やブドウ膜炎などによる炎症もチェリーアイの原因となります。第三眼瞼腺にも炎症が起こり、目頭から外に向かってひっくり返るような形で飛び出してしまうのです。
他にも、神経系の病気が原因となることもあります。
チェリーアイの症状
第三眼瞼腺が飛び出てさくらんぼのように赤く腫れる症状は、両目に出る場合と片目のみの場合があります。片目だけに症状が見られる場合は、内部に異物が入っている可能性もあります。
痛みはないそうですが、目頭の部分が腫れあがって視界が狭くなれば、猫も気になるのでしょう。患部を引っかいたり床にこすりつけたりした結果、新たな傷ができて第三眼瞼腺そのものの炎症も悪化し、他の病気を併発することがあります。
結膜炎、角膜炎を併発した場合には、
・目が充血する
・かゆみや痛みのため目をこする
・目やにが出る
・涙目になる
といった症状が出ます。
特に角膜炎で、傷から菌が入って感染した場合には、角膜の白濁、ただれ、さらには角膜に穴があくまでに悪化する可能性があり、失明につながる恐れもあります。
チェリーアイの治療
症状の程度により、治療も異なります。
軽度の場合は、飛び出した部分を獣医さんの手技で元の位置に押し込んでもらい、抗生物質や抗炎症剤などの点眼薬を使用することで元に戻ります。
ただし、長期間放置しておくと整復治療が難しくなりますので早期の対応が必要です。
チェリーアイは再発しやすく、度重なる場合や重度の場合には外科手術が必要となります。
第三眼瞼腺には3割~5割近くの涙を産生し、猫の目を潤すという働きもあり、切除してしまうとドライアイになる危険があります。そのため、第三眼瞼腺の周囲を切開し、腫れた部分を縫い込んで元の位置に戻す方法が一般的に行われているようです。
チェリーアイの予防
チェリーアイには予防策はありません。
・目頭のさくらんぼ状の腫れ、普段とは違う仕草などを早期発見すること
・異常が見つかったらすぐに病院に行き早期治療を行うこと
このふたつがチェリーアイから愛猫を救います。
目は健康のバロメーター。
チェリーアイに限らず、瞬膜、目やに、涙目などの異常には常に気をつけてあげましょう。
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