犬の老化について

2015.11.06

犬の老化について

14歳と半年を迎えたゴールデンレトリバーと向かい合う日々。ガンも患い、既に聴力を失い、後躯麻痺の為後ろ脚は動かない・・・。沢山すぎる持病と戦いながら暮らす毎日だけれど、いつもとびっきりの笑顔で私を見つめる目の輝きはパピーの頃からちっとも変わらない。今となってはすっかり当たり前になった身体の不自由の数々。私はこの子の老化を感じ始めたのは何時の頃からだっただろう。

愛犬の老化はいつから始まるのか

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「7歳以上」と書かれたシニアフードのラベル、ネットや雑誌のチェックシート。
病院の壁に張られた「6歳を過ぎたら年に2回の健康診断がオススメ」等の案内ポスター。
一般的な情報では老化が現れ始め症状を見逃さないように注意を呼び掛けられているのは7歳前後が適当とされている様に思う。顔が白くなってきた、オモチャであまり遊ばなくなった、足元がふらつく様になってきた、睡眠時間が多くなった。など様々な老化を意識させるマニュアルの数々。
私の愛犬は5歳を過ぎた頃には既に顔に白いものが混じり始めた。
7歳を過ぎた頃には階段の上り下りを嫌がる様になり、いつも一緒に寝ていた二階の寝室には来なくなった。
10歳の頃、お散歩は近所を少し歩くだけで充分満足していた。
そして13歳を迎えてすぐの頃、老化による後躯麻痺の診断を受け、今では介助なしでは自由に立ったり動いたりする事は出来ない。食欲は今も旺盛。
そんな様々な変化をマニュアルと比較してみては、「うちの子は平均より早く顔が白くなったから長生きできないのではないか」「オモチャは今も大好きで遊ぶし、食欲も落ちていないのだからまだまだ若いんだ」「いよいよ立てなくなって、もう駄目かもしれない」なんて一喜一憂したものだ。
でも歩けなくなった今も毎日カートに乗って散歩に行き、足の不自由を忘れているかの様にとても楽しそうな顔を見せてくれている。結局のところ、行動に関する老化についての感じ方は飼主の受取方や個体差があり、漠然としたものでしかないと思う。
そしてこの様に、目に見える愛犬の行動に関する老化は、私にはとても自然に受け入れる事が出来た。
親の髪が白くなり、気が小さくなったと感じたり、膝が痛いと言ったりするのを聞いた時の様に「ああ、自分も良い年の大人になったのだなー」と決してネガティブな事だけを受け取っていない様に、愛犬の行動に関する老化は、当たり前の事の様に受け入れ、愛犬が歳をとったと言う事実を少し寂しく感じながらも、同時に「かけがえのない時間を共に過ごしてきた証」と、今ある絆の太さを誇らしく思えたりもした。

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そんな風に愛犬の老化に対し、わりと前向きに受け止めてきた私でも、今は私の愛犬は老化の時期を通り過ぎ、もうこれ以上の老化しようもなく、犬生のゴールに到着しようとしているのを痛感している。老化ではなく「老い」。
私が愛犬の老いを感じたのは「自分の力だけでは雑菌と共生出来なくなってしまった」と言う事である。
例えば、今までだって何度も繰り返し経験してきたただの皮膚炎。炎症の原因はどこにでもあるただの雑菌。
なのに、みるみる広がり化膿し、薬を飲んでも治らない。
若い犬だと薬を飲めば数日で完治するものでも、老犬には飲んだ薬より雑菌が更に強くなり、又より強い薬が必要になって負の連鎖になる。
手術をした子も感染症をおこしやすい。
肝炎、腎炎、膵炎、膀胱炎など炎症を引き起こす他の病気も原因は同じ。
雑菌と戦う力が身体の中にわずかしかないので、みんな些細な事で感染症をおこしてしまう。
薬の力がないと生きて行けない様になる。
若い時は病気のうちに入らなかった症状を立派な病気に成立させてしまう身体。
日常生活の中に、そこらじゅうに当たり前の様に存在している雑菌に対して、薬の力をかりなくては生きて行けない身体。これが老化の最終段階なのだと思う。
「老い」それは老化と同じ意味合いを持つ言葉なのに、いつか来る別れへの意識がぐっと近くなる様に思えてならない。
そして私は、当然の事ながら「愛犬の老い」を日々、痛感している。
老いに対して、ただ「明日も現状維持が出来ますように」と願いながら目の前の症状に対処療法で抗うしかない。
行動に関する老化を意識し始めた頃は、その症状を治す為に必死にあがいた。
老化の最終段階に立つ今は、来年もなどと長生きを望むのは二の次で、切に願うのはただ一つ。旅立ちの時が例え今日であろうとも穏やかに安らかに逝って欲しい。老犬と共に暮らす多くのご家族が、絶対に治らない老化の症状に懸命に向かい合う理由は、みんなそこを目指しているからだと思う。
私は年老いた愛犬の穏やかな寝顔を眺めてはしみじみと思う。
犬は老い行く姿を見せながら、人に慈悲の心を教えてくれているのだと。

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笹本 雅

笹本 雅

犬が好きです。小型犬でも大型犬でもとにかく犬が大好きです。これから犬種についてや豆知識や健康についてなど、幅広いワンちゃんについての情報をご提供していきます。犬好きの方にぜひとも見ていただいてご意見いただければと思います!

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