【獣医師監修】猫の療法食について知りたい!どんなことに注意して与えるべきなの?

2021.10.20

【獣医師監修】猫の療法食について知りたい!どんなことに注意して与えるべきなの?

もしも愛猫が病気を患ったとき、動物病院で治療することはもちろんですが、毎日の生活でも気を付けなくてはいけないことがたくさんあります。 そのひとつに食事が挙げられますが、キャットフードは飼い主さんが管理する必要があるので、症状の軽減や回復の手助けをするためにも、とくに気を遣うべき部分と言えるでしょう。 そこで覚えておきたいのが「療法食」という選択肢です。 普段あまり聞き慣れない名前のフードですが、どのような食べ物を指しているのでしょうか。

猫の療法食とは

いろいろな種類のキャットフード

猫の平均寿命が年々向上していることからも、キャットフードの質はどんどん上がり、飼い主さんが愛猫のために味や形状を厳選しながら選べるなど、世の中のニーズがどんどん進化していますよね。

猫と一緒に暮らしている方にとって、選択肢の多さは喜ばしいことではありますが、愛猫の健康維持や病気を患ってしまった際には、一般的なフードの中からその症状に合ったフードを探すのは難しいとも言われています。

基本的に猫の総合栄養食フードには、1日に必要な栄養素とカロリーが計算されて含まれているので、健康体な猫ちゃんであれば毎日必要摂取量を与えれば問題ありません。

しかし、病気などで健康を損ねている猫ちゃんに対して、総合栄養食のフードを与えてしまうと栄養過多となることや、不必要な栄養素の過剰摂取に繋がることも多く、かえって体調に悪影響をもたらすことがあるそうです。

そのようなときに是非活用していただきたいのが、猫の「療法食(りょうほうしょく)」です。

何かしらの疾患を患い、その疾患に対して栄養学的サポートが必要になった場合に、治療の内容に合わせてフード内の栄養成分を調整しつつ、治療を補助する役割を担うフードを療法食と呼びます。


猫の療法食の与え方

猫の療法食は市販でも販売されていますが、飼い主さん自ら商品を購入して猫に与えても問題がないものなのでしょうか?

◆必ず獣医師さんの診察を受けてから

療法食は栄養成分の量や比率を特別な方法で調整したフードとなっているので、獣医師の診断のもと、開始しなくてはいけません。

猫ちゃんの病気によって適した療法食を与える必要がある上に、そのフードをどれぐらい与えるかなどを飼い主さんの自己判断で行ってしまえば、猫ちゃんの症状が悪化‪してしまう可能性も否めませんよね。‬

毎日の食事をただの食事にするのではなく、治療の一環となる食事療法食は、症状の回復や軽減を目的としていますし、薬といった扱いではないので、薬事法に制限されることなく、ホームセンターやインターネットなどでも購入は可能です。

初回の給餌は必ず獣医師さんの指示のもと与えるようにし、その後継続していく場合は、飼い主さん自らホームセンターやインターネットなどで購入しても良いのかを、事前に確認しておくようにしましょう。

◆給餌量を守って

療法食は栄養成分の量や比率がしっかりと計算されて製造されていますので、猫ちゃんの病気の進行具合や症状によって、改善や緩和させるために獣医師さんが猫に与えるべき給餌量を提示してくれます。

その提示された給餌量を守らず、飼い主さんの自己判断で量を少なくしたり、多めに与えたりすることは、症状を悪化させてしまうだけでなく、ほかの器官にも悪影響を及ぼしてしまうことがあるので注意が必要です。

早く愛猫の病気を治してあげたい気持ちは分かりますが、療法食をたくさん与えたからといってすぐに回復するわけではありません。

そして、なかなか療法食を食べてくれない場合に、獣医師さんが提示した分量よりも療法食を少なめにし、別のフードを多めに与えることも同じです。

療法食は治療のサポート的な役割を担ったペットフードですので、猫ちゃん一匹一匹に対して処方方法が異なることを理解した上、獣医師さんの指示のもと適切に与えることを心掛けておきましょう。


猫の療法食の注意点

注意点

飼い主さんの自己判断で与えるべきではない療法食ですが、動物病院で獣医師さんから給餌の指示が出たとしても、飼い主さん自身もフードに慣れるまでは不安なことでいっぱいだと思います。

実際に猫へ療法食を与える際には、上記のような与え方以外にも何か注意すべき点はあるのでしょうか?

◆勝手な判断で給餌内容を変えない

猫は警戒心の強い動物なので、普段食べている食事内容を急に切り替えられてしまうと、食べてくれなくなってしまうことがよくあります。

本来治療を目的として与えるはずの療法食を食べてもらえないとなると、そのときに必要な栄養素を食事から得ることができませんので、食事療法が難しくなってしまうことでしょう。

現在食べているフードから、徐々に療法食に切り替えていくことが理想的ですので、切り替えが不安なときはしっかりと獣医師さんに相談し、切り替え方法を伝授していただいてみてはいかがでしょうか。

また、急激な切り替えは猫ちゃんの胃腸にも負担をかけてしまいますので、フードを与えた後には体調の変化がないかの観察も重要となります。

そして療法食が獣医師さんの指示のもとスタートしたのであれば、終了のタイミングも必ず獣医師さんの指示に従うようにしてください。

「愛猫の体調が回復したから療法食を与える必要がなくなった」「獣医師さんに療法食を中断するように言われたが、健康の一環として継続的に与えている」などの自己判断は、猫ちゃんに負担をかけてしまうだけなので絶対にやめるようにしましょう。

◆他の猫が食べないように対策をする

多頭飼育をしているご家庭で、特定の猫ちゃんが療法食を食べることが決まったのであれば、ほかの猫ちゃんが療法食を食べてしまわないような工夫が必要となってきます。

療法食は特定の疾患に対してサポートをしてくれるフードとなるので、総合栄養食の基準に沿っていない商品も多く販売されています。

そのような療法食を健康な猫が食べてしまうと、1日に必要な栄養素や摂取カロリーが不足してしまいますので、獣医師の指示が出ていない猫ちゃんは食べるべきではないフードと言えるでしょう。

多頭飼いのご家庭では、猫同士の優劣が強く出る場合もあるので、1匹だけ療法食を食べる子が居れば、ほかの猫たちが自分も食べたいと横取りをすることがあるようです。

本来療法食を食べるべき子が食べられず、食べる必要のない子が食べてしまうような状況は望ましくないので、飼い主さんは食事の管理をしっかりと行う必要がありますよね。

療法食を食べる必要がある猫ちゃんだけ別の部屋で食べさせる、ケージに入れて食事を与えるなどの工夫をし、しっかりと食べられる環境を整えてあげましょう。

◆療法食を切らさないように注意する

獣医師さんの指示のもと療法食を与えているのであれば、中段の指示が出ない限りは療法食を与え続けなければいけません。

飼い主さん自身が「食事も治療」という意識を強く持ち、愛猫に食べてもらうことで改善に向かわせるような心掛けが必要となってきます。

日によって別のフードを与えるようなことはせず、獣医師さんから中断の指示が出るまでは毎日療法食を与えるようにしてください。

そのためには療法食のストックを、切らさないように注意することも大切です。

市販でも療法食の購入は可能ですが、動物病院によっては病院でしか購入できない療法食を取り扱っている場合があります。

そのような場合に、似たような(特定疾患に対応した)療法食を市販で購入しても問題ないと考える方がいらっしゃるかもしれませんが、獣医師さんが把握できていないフードに対してのトラブルや責任は飼い主さんの自己責任となってしまうようです。

療法食は通常のフードよりも値段が上がってしまいますが、少しでも費用を抑えようとして猫ちゃんの体調が悪化してしまえば、さらなる費用が嵩むようになるので本末転倒と言えるでしょう。

市販でも流通しているブランド(ロイヤルカナンなど)であれば、ホームセンターやインターネットでの購入も可能なので、獣医師さんに食事療法の目安を事前に確認しておき、急に切らすことのないような管理を心掛けてください。


まとめ

私たち人間が病気を患ったときなどに、食材や味付け、硬さや消化の良さに拘った食事療法をするように、猫も何かしらの疾患を患ったときには、体に負担がかからないような食事が必要となってきます。

猫の場合、その疾患に特化した療法食が販売されているので、獣医師さんから給餌の指示が出た際には、治療の一環として療法食を与え続けることが大切です。

フードの切り替え時は飼い主さんも神経を使うかもしれませんが、問題なく食べてくれるようであれば、中断の指示が出るまでは与え続けて問題ありません。

療法食を与える場合には原則フードと水だけを与えるように維持し、おやつやトッピングなどは与えないようにしてください。

すべては猫ちゃんの回復が目的となりますので、獣医師さんの指示にしっかりと従い、回復に向けての手助けをしてあげてくださいね。

※こちらの記事は、獣医師監修のもと掲載しております※
●記事監修
drogura__large  コジマ動物病院 獣医師

ペットの専門店コジマに併設する動物病院。全国に15医院を展開。内科、外科、整形外科、外科手術、アニマルドッグ(健康診断)など、幅広くペットの診療を行っている。

動物病院事業本部長である小椋功獣医師は、麻布大学獣医学部獣医学科卒で、現在は株式会社コジマ常務取締役も務める。小児内科、外科に関しては30年以上の経歴を持ち、幼齢動物の予防医療や店舗内での管理も自らの経験で手掛けている。
https://pets-kojima.com/hospital/

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たぬ吉

たぬ吉

小学3年生のときから、常に猫と共に暮らす生活をしてきました。現在はメスのキジトラと暮らしています。3度の飯と同じぐらい、猫が大好きです。

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