猫の色覚は人間と一緒?どんな色を認識しどんな世界を見ているの?

2021.12.04

猫の色覚は人間と一緒?どんな色を認識しどんな世界を見ているの?

猫の目を見ていると、ビー玉のように丸くて美しく、見る物すべてを吸い込んでしまいそうなほどの透明感がありますよね。 この猫特有の大きな目で見る世界には、どんな景色が広がっているのか気になったことのある方も多いことでしょう。 これだけ大きな目を持っているのなら、私たち人間よりも色鮮やかな世界を見ているような気がしますが、猫にはどんな色覚が備わっているのかも気になるところです。 猫も私たちと同じように、色をしっかりと識別しているのでしょうか?

猫の色覚

猫の横顔

私たちは毎日の生活の中で目を使い、物や色を認識していますが、見えることが当たり前といった日常感覚を持っています。

そして人間以外の動物も同じような感覚を持ち、同じように色を認識できているのかも気になりますよね。

とくに私たちの身近な存在のペットである猫は、顔の比率に対して目の割合が大きく、どのような色覚を持ち、どのような世界を見ているのか気になったことのある方は多いことでしょう。

もともと色覚とは、複雑な光や情報(信号)などを成分ごとに分解し、成分ごとの大小(強度)に従って見やすく配列したものとなります。

これを「スペクトル」と呼びますが、光のスペクトルによる違いによって視覚的感覚が生じますので、目の大きな猫はたくさんの光を取り込むことにより、私たちよりも鮮やかな世界を見ているのではないでしょうか。

しかし、人間と猫とでは体の構造が異なる上に、人間をはじめとする霊長類には色覚を司る視細胞の1種となる、「錐状体(すいじょうたい)」が3種類存在しているのに対し、夜行性の動物となる猫は2種類の錐状体しか持ち合わせていません。

霊長類は太陽の出ている時間帯(昼間)に活動する昼行性となりますので、色彩の豊かな果物や野菜などを主食としてきたこともあり、食べられる物を見分けるためにも色覚能力は重要であったと考えられています。

その反面、夜行性の猫は暗闇で狩りをすることも少なくないので、色覚はそれほど生きる上では重要でなかったとも言えますよね。

それぞれの動物の生活環境によって、生態は進化を遂げていきますので、大きな目を持っているからといって、猫は私たちより色覚が優れているわけではないのです。

◆猫には何色が見えている?

私たちはさまざまな色を認識できますが、錐状体をはじめとする視細胞が人間よりも劣る猫が、何色を認識できているのかも気になるところです。

色覚を司る錐状体の数は人間よりも少ない猫ですが、色の明暗(光の強弱)を感じる「杆状体(かんじょうたい)」の数は人間よりも多いので、白と黒の認識が長けていることが考えられます。

暗闇でも猫の目がよく見えるのは、杆状体と網膜裏にある「タペタム」と呼ばれる細胞層が深く関係しています。

タペタムは夜行性の肉食動物や、深海に住む生物などにしか備わっておらず、瞳孔に入ったわずかな光を反射させ、光の量を増幅させるといった働きをするので、猫の色覚は必要最低限で問題ありませんし、生態上そこまで重要視されていないと言えるでしょう。

たとえば人間は赤・緑・青といった、3つの色を認識できる錐状体を持ち合わせていることにより、この原色を掛け合わせたさまざまな色を認識できます。

そのため虹の7色すべての色を把握ができますが、猫は錐状体を2種類しか持ち合わせていないこともあり「青から紫色」「緑から黄色」程度の色しか認識できていないと考えられているようです。

◆猫に赤色が判別できない理由

猫に見える色を考えてみると「赤」といった色が認識できないことが考えられますが、肉食動物なのに肉を連想させる赤色が判別できないとなると、狩りにも支障が出そうな気もしますがどうなのでしょうか。

猫は錐状体が2種類しか存在していないと前述した通り、赤色の光を検知する視細胞は持ち合わせていません。

獲物を見ても肉の赤色を判断して美味しそうと思っているわけではなく、ニオイなどを頼りに本能に従って捕食していると言えるでしょう。

雑食動物にとって赤や緑は重要な色となりますが、植物をエサとしない猫にとってそれらの色は生活に必要のない色として、いつしか赤色に対する色覚が衰退していったと考えるのが自然なのではないでしょうか。

ただ赤色がまるっきり認識できないのではなく、猫の目には緑がかった黄色や、グレーのように見えているのではと予測されているようです。

猫が赤や緑色の認識が長けていないのに対し、猫が食べるキャットフードのキブル(粒)には、赤や緑色をしたものが混じっているのをご存知でしょうか?

これは猫に認識してもらうための色付けではなく、あくまで飼い主さんに向けて主成分(赤=肉、緑=野菜など)を表現したり、美味しそうと錯覚させたりする目的で色付けされているようです。


目の色で色覚に違いはある?

猫が人間とは異なる色覚を持っていることが分かりましたが、猫を見ていると目の色が個体によって、異なっていることに気付かれる方も多いことでしょう。

色が付いている部分を「虹彩(こうさい)」と呼び、その中心には黒目(瞳孔)があり、白目は正面から見えない部分に存在しています。

猫はこの虹彩から取り込んだ光の量によって、黒目を大きくしたり小さくしたりしますが、光の取り込んだ量によって虹彩の色が変化するわけではなく、猫が生まれ持った遺伝子によって虹彩の色は決定します。

一般的には黒色の色素であるメラニン量が少ない猫ほど、虹彩の色はグリーンに近く、メラニン量が多い猫ほどゴールドやカッパー(茶色)に近い、目の色をしていると言われているようです。

個体によって異なる目の色ではありますが、目の色の違いによって色覚も変わってくるのでしょうか?

◆特に色覚に違いはない

猫の色覚は目の色に違いがあったとしても、目で見ている世界はどの猫も一緒です。

目の色がグリーンだからといって緑色が濃く見えることや、目の色がゴールドの場合にはほかの色が緩和されて淡く見えるといったことはありません。

基本的にはどの猫も認識できる色覚スペクトルに大きな違いはなく、目の色が異なっていたとしても色覚に違いがでないことを覚えておきましょう。


猫の視力はどれくらい?

猫は動くものに対して瞬時に反応することからも、視力がとても高いと思っている方も多いとは思いますが、人間の10分の1程度の視力しか持ち合わせていないそうです。

数値でいうと0.3ぐらいの視力となるので、眼鏡やコンタクトレンズが必要なレベルの視力と言えるでしょう。

目先75cm以上の距離はぼやけて見えているようなので、視力が低い分猫には鼻やヒゲといったさまざまな機能が長けており、低い視力をカバーして難なく生活ができるような、進化を遂げてきたと考えるのが自然なのではないでしょうか。

目がはっきりと見えないことに私たちは不便さを感じますが、猫を見ていると何も不自由してない様子がうかがえるので、猫にとっては視力が悪いことは生活する上で何も問題がないのかもしれません。

◆動体視力が優れている

しかし、猫の視力が低いことは理解できても、瞬時に獲物に反応する姿を見ていると「本当に視力が悪いのかな?」という疑問は拭えないはずです。

私たち人間にはなく、視力の低い猫にある特徴として挙げられるのが「動体視力」と言えるでしょう。

動くものに反応する機能が優れていることにより、多くの情報を瞬時に脳が処理しますので、俊敏に反応できるのはこの特徴のおかげと言えますよね。

また、杆状体細胞が多いことも重なって、暗闇でもものが見える暗視能力も長けていますので、視力が低くても猫が普段の生活に困らないのは、これらの能力を有効に活用していることがうかがえます。

◆猫の目の病気に注意

猫はもともと視力が低いこともあり、動くものにしか反応を示さないことも多いので、飼い主さんは愛猫の目の病気に気付き難いとも言われています。

たとえ視力を失ったとしても、猫は別の機能を駆使して普段の生活をある程度維持できますので、猫にとって視力はそれほど重要視されていないことが分かりますよね。

もちろん視力を失わないことに越したことはないので、何かしらの症状が現れはじめてから目の異変に気付くことのないように、普段からおもちゃなどを使って目が見えているかの確認などは怠らないようにしておきましょう。


まとめ

私たち人間の生活の中では、色覚といった感覚はとても重要なものとなりますが、猫の生活の中ではとくに重要視されていないことが分かりました。

色を感じたほうが生活は豊かになると考える方は多いと思われますが、猫にとってはそれ以上に動くものに瞬時に気付ける感覚や、暗い場所でも狩りができる能力が長けていた方が、よっぽど生活の質が上がるということでしょう。

私たちももしかしたら進化の過程で、赤色を必要としない生活を送っていたのであれば、猫たちのように青や黄色といった色合いの世界しか見えていなかった可能性も否めませんよね。

猫は猫の生活を全うすべく必要最低限の色覚を持ち合わせていますので、可哀相と思う必要はありませんので、視力が低くても快適に過ごせるような生活環境を整えてあげることに専念するようにしましょう。



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たぬ吉

たぬ吉

小学3年生のときから、常に猫と共に暮らす生活をしてきました。現在はメスのキジトラと暮らしています。3度の飯と同じぐらい、猫が大好きです。


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