【獣医師監修】犬の咳、もしかして肺炎?犬の肺炎の症状、原因、治療法、予防法について

2021.12.06

【獣医師監修】犬の咳、もしかして肺炎?犬の肺炎の症状、原因、治療法、予防法について

肺炎は、人間にとっても見逃せない肺の病気の一つですが、犬にとってもそれは同じです。 愛犬が肺炎を発症した場合、正確にその原因を突き止める必要があります。 犬の肺炎は、様々な原因から引き起こされる可能性があるのです。 今回は、肺炎の症状や原因を紹介します。愛犬に疑わしい症状がある場合は、すぐに病院を受診しましょう。 治療法や予防法も併せて紹介しますので、参考にしてくださいね。

【掲載:2020.05.04  更新:2021.12.06】

犬の肺炎とは?

犬 咳

肺炎は、人間の病気として知名度も高く、犬の肺の病気としても代表的なものです。
肺は肋骨で囲まれた空間に位置し、酸素と二酸化炭素の交換を行っている重要な呼吸器官です。
空気中から得た酸素を体内に取り込み、老廃物である二酸化炭素を空気中に吐き出す役割を持っています。
この肺に炎症が発生する状態を肺炎といい、呼吸困難などの呼吸障害を起こします。
慢性と急性のものに分けられますが、単独で発症する病気ではありません。他の病気に併発して起きることがほとんどです。

この病気になりやすい犬種は定められていませんが、老犬や子犬であったり、免疫力の低下した個体が発症しやすいといわれています。
咽頭炎や気管支炎より、重症化するケースが多いとされ、重症・急性の場合は命の危険を招く恐ろしい病気なのです。
実際にどのような症状が起きるのか、覚えておきましょう。


犬の肺炎の症状

  • 咳が出る
  • 吐き気
  • 呼吸困難
  • 発熱
  • 食欲不振
  • 元気がない
  • 運動を嫌がる
  • 息が荒い
  • 疲れやすい

このような症状が愛犬にみられた場合は、早めに獣医さんに相談してください。
呼吸障害を起こしている場合、呼吸は浅く速くなります。低い音の咳が出て、ゼーゼーと苦しそうな呼吸をするようになるので、日頃から愛犬を観察していれば、すぐに異変に気付くことができます。
また上記以外の症状としては、炎症の痛みによる睡眠困難、悪化することで体を横にすることができなくなる、皮下気腫が現れる、チアノーゼが出るなどの場合があげられます。

チアノーゼとは、皮膚・粘膜が青紫色に変化する現象のことです。肺炎の悪化によって酸素の取り込みに障害が出ると、現れる可能性があります。
人間でも高齢者の肺炎は死亡率が高いといわれています。
愛犬が老犬や子犬の場合や、免疫力が低下している場合は、急激に悪化する可能性もありますので、疑わしい症状がみられた場合は特に注意して、早めに病院へいきましょう。

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犬の肺炎の原因

犬の肺炎の原因

犬の肺炎は様々な原因によって発症します。原因を知ることで予防できる場合もあるので、肺炎の原因を頭に入れておきましょう。

◆ウイルス

ウイルス感染によって、肺炎を発症する場合があります。このように、ウイルスが原因となる肺炎を「ウイルス性肺炎」とも呼びます。主に原因となるウイルスに、ジステンパーやケンネルコフがあります。

・ジステンパー
世界中に存在するという犬ジステンパーウイルスのことです。ニホンオオカミの絶滅原因となった疾患としても有名で、現在でも注意が必要な感染症の一つとされています。ジステンパーウイルスに感染した個体との直接的・間接的な接触や、飛沫感染により、ウイルスが鼻や口から体内に侵入します。

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・ケンネルコフ
「犬伝染性気管気管支炎」の通称で、様々なウイルス・細菌などの複合感染を原因とする伝染性の強い呼吸器疾患です。
主な病原体は、イヌアデノウイルス2型・イヌパラインフルエンザウイルス・イヌヘルペスウイルス・気管支敗血症菌・マイコプラズマなどです。これらの病原体が単独、もしくは混合した状態で感染することで発症します。
この病気もウイルスとの接触が感染原因で、感染した個体のくしゃみなどによる飛沫感染が主とされています。

◆細菌

細菌が肺炎を引き起こす場合もあり、これを細菌性肺炎と呼びます。原因となる細菌は、気管支敗血症菌やストレプトコッカスズーエピデミカス(溶血性連鎖球菌の一種)などです。
屋外で活動する犬(スポーツ犬・狩猟犬・使役犬など)に多いとされ、ほとんどが免疫力の低い1歳以下の個体に発症するといわれています。
しかし、年齢に関わりなく発症する場合もあります。それは、クッシング症候群・糖尿病・尿毒症などの基礎疾患を抱えている場合です。

・クッシング症候群
副腎皮質ホルモンの過剰分泌が引き起こす症状で、副腎皮質機能亢進症とも呼びます。このホルモンの過剰状態は高血糖を引き起こし、甲状腺機能低下症や糖尿病を併発することもあります。8~12歳の老犬が頻繁に発症するといわれている病気です。

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・糖尿病
インスリン(ホルモンの一種)の働きが悪くなり、血液中の糖が多くなる病気です。人間社会でも知名度の高い病気なので、知っている方も多いと思います。発症した場合、インスリン投与・食事療法などの治療が必要となります。

・尿毒症
腎臓の機能低下により、尿素を含む老廃物をうまく排出できずに、血中の老廃物濃度が高まる症状です。症状によって、輸液・輸血を必要としたり、人工透析が必要となる場合もあります。

◆真菌

真菌によって、肺炎を発症する場合があります。発症の危険因子となるのは、土壌や鳥の排泄物などとの接触です。
ブラストミセス・ヒストプラスマ・コクシジオイデス・クリプトコッカス・アスペルギルスなどが原因となる真菌です。

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◆寄生虫

寄生虫によって、肺炎が引き起こされる場合があります。フィラリア・肺虫・肺吸虫などの寄生虫や、寄生虫の幼虫が主な原因となります。

・フィラリア
蚊などの吸血昆虫が媒介する、犬糸状虫と呼ばれる寄生虫によって発症します。この寄生虫は、心臓(右心房)や肺を最終的な住みかとする為、肺炎の原因となります。放置すれば死に直結する恐ろしい症状です。予防薬で防ぐことができるので、しっかりと定期的な予防薬の投与を行いましょう。

・肺虫
豚肺虫属の線虫の一種です。成虫が肺に渦巻き状に寄生して、卵や幼虫を気道に放出します。その後、糞便に紛れた幼虫を、経口感染などで他の動物が体内に取り入れることで感染が広がります。ほとんどの場合、無症状だといわれますが、クッシング症候群や免疫力の低下した個体の場合に肺炎の原因となります。

・肺吸虫
雌雄同体の寄生虫の一種で、成虫が細気管支に通じる胸膜下で嚢胞を形成し卵を放出します。卵は巻貝を第一宿主として、次にザリガニに取り込まれます。そのザリガニを食べた場合に、体内で成虫となり発症します。しかし、ほとんどの場合は無症状といわれており、時に咳や喀血を引き起こすことがあります。

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◆有毒ガスの吸引

有毒であるガスを吸引することによって、肺炎に陥る場合があります。刺激性のある化学薬品、ガスなどの毒物の吸引によって、肺が炎症を起こす可能性があるのです。
犬にとって毒物となり得るものは様々です。薬品や煙、食品にも毒物となる危険性が高いものがあります。中毒症状によっては命の危険も考えられるので、十分注意しましょう。

◆誤嚥

食道を通過するべきものが、気管を通ってしまった場合に、肺が炎症を起こすことがあります。これを、誤嚥性肺炎(または吸引性肺炎)と呼びます。飲み込む筋力が低下した老犬や、麻酔を使用した場合、強制的なチューブでの給餌をした場合などに発症する可能性が高まります。

◆薬剤

抗がん剤など、様々な薬剤によって、肺炎を引き起こしてしまう場合もあります。使用の際は、獣医師と十分に相談をしましょう。


犬の肺炎の治療法・予防法

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肺炎の治療としてまず大切なのは、肺炎の原因を正確に突き止めることです。前述の通り、犬の肺炎は様々な原因によって発症する可能性のある病気です。治療を成功させるためには、愛犬の状態を普段から知っておくこと、日常的に観察しておくこと、獣医師によく相談することが大事なのです。
愛犬の肺炎発症に慌てずに対応するためにも、治療法や予防法を覚えておきましょう。

◆犬の肺炎の主な治療法

肺炎が他の病気によって引き起こされている場合、まずはその原因となる疾患への治療を施します。
原因が、ウイルスであれば抗生物質、細菌であれば抗菌薬、真菌であれば抗真菌薬、寄生虫であれば駆虫薬といったように、その原因に併せた薬の使用で治療を行います。

対症療法としては、症状軽減を目的とした治療が施され、呼吸困難の場合は酸素吸入や、ネブライザーによる薬剤の吸引を行います。症状によっては、栄養補給、消炎剤、解熱薬の投与や、気管支拡張薬を用いる治療を行う場合もあります。
咳を抑えるためには、鎮咳薬の使用、気道の水分補給のために常に水を飲めるような環境作り、点滴、ネブライジングを治療法として用います。ネブライジングとは、吸入器を使って気管・気管支に蒸気を送る方法です。これは、潤いを与えて咳を楽にする効果に併せて、免疫系の働きを補う効果を持っています。

また安静療法として、肺への負担軽減のために、運動を避けて安静を心掛けることも治療の一つといえます。例えば、「ケージレスト」といって、「ケージ内での(絶対)安静」が必要になる場合もあります。
この場合、可能な限り汚れた空気環境から遠ざけることが大切です。換気をよくし、空気のきれいな場所での安静が必要となるのです。

◆犬の肺炎予防法

肺炎を引き起こす原因の中には、予防できるものもあります。
例えばウイルス性肺炎は、定期的なワクチン接種により予防が可能です。フィラリアも予防薬の投与をしっかりと行うことで防ぐことができます。
更に動物病院での健康診断を受けて、ウイルス・細菌への感染がないか定期的に検査をしておきましょう。
また、日頃から運動量や食事・栄養に注意して、愛犬の健康維持に努めることも効果的な予防法となります。
体力・免疫力の低下は、様々なウイルスや病原菌に感染しやすい状態を作ります。普段から抵抗力をつけておくことが、重要なのです。特に乾燥する冬の季節や、梅雨の時期は肺炎にかかりやすい期間といえるので注意しましょう。

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犬の肺炎に関するまとめ

日頃から愛犬の様子を観察し、気になる症状がみられる場合は早めに病院を受診しましょう。
定期的な健康診断は、肺炎に限らず、様々な病気の早期発見や早期治療につながることもあります。検査の結果異常がなくとも、愛犬の健康を確認できたとなれば、それだけでも意味のあることです。
普段から愛犬の健康管理に努めて、肺炎を予防しましょう!

※こちらの記事は、獣医師監修のもと掲載しております※
●記事監修
drogura__large  コジマ動物病院 獣医師

ペットの専門店コジマに併設する動物病院。全国に15医院を展開。内科、外科、整形外科、外科手術、アニマルドッグ(健康診断)など、幅広くペットの診療を行っている。

動物病院事業本部長である小椋功獣医師は、麻布大学獣医学部獣医学科卒で、現在は株式会社コジマ常務取締役も務める。小児内科、外科に関しては30年以上の経歴を持ち、幼齢動物の予防医療や店舗内での管理も自らの経験で手掛けている。
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壱子

壱子

子供の頃から犬が大好きです。現在はキャバリア4匹と賑やかな生活をしています。愛犬家の皆さんに役立つ情報を紹介しつつ、私自身も更に知識を深めていけたら思っています。よろしくお願いいたします!

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