自慢の嗅覚で大活躍!麻薬探知犬ってどんな犬?

2021.06.15

自慢の嗅覚で大活躍!麻薬探知犬ってどんな犬?

人間のパートナーとして、古くから活躍している犬。現代においても、その関係性は進化しながらも続いています。愛玩犬として家族の心を支える子がいれば、訓練を受けて人間のために仕事をこなす使役犬など。私たちの生活にとって、欠かせない存在であることに変わりはありません。今回はそんな使役犬の中から、麻薬探知犬に注目してみましょう。その歴史や訓練・仕事内容などを、紹介していきます。

麻薬探知犬とは?

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人間と比べて嗅覚が発達している犬は、様々な場面において世界中で活躍しています。
今回紹介する麻薬探知犬とは文字通り、優れた嗅覚を利用して、麻薬を探知する訓練が行われた犬のことです。海外から持ち込まれる麻薬・違法薬物などを、水際で食い止める活動をしてくれています。
スーツケースや荷物のにおいを嗅ぎまわる麻薬探知犬の姿を、国内外の空港で見掛けることも増えてきています。実際に見たことはなくても、メディアで目にしたことのある方が多いかもしれませんね。
ちなみに英語では、「Drug Detector Dog」「Drug Sniffing Dog」と呼ばれています。

◆麻薬探知犬には2種類ある

麻薬探知犬を用いているのは国内では税関であり、1979年より導入されました。この麻薬探知犬には主に2種類あり、アクティブドッグとパッシブドッグに分かれています。
アクティブドッグは、手荷物・国際郵便などから麻薬のにおいを探し出して、吠える・引っ掻くなどの行動で知らせます。
パッシブドッグは、旅客・手荷物などから麻薬のにおいがすると、その場でお座りをして知らせてくれます。
ちなみに日本では、アクティブドッグのことを「アグレッシブドッグ」と呼んでいます。
ピストルなどの銃器は、金属探知で防止できますが、麻薬の摘発には犬の嗅覚が頼りとなります。いずれのタイプの麻薬探知犬も、私たちの生活のために重要な役割をこなしてくれているのです。


歴史

前述したように1979年に、麻薬探知犬が日本に導入されました。
この年、麻薬類の密輸入を防ぐためにアメリカの税関の協力を得て、2頭のゴールデンレトリバーが登場します。アメリカで訓練を受けた、麻薬探知犬です。
この導入が始まりとなり、1981年には国内で麻薬探知犬認定第1号シェリー号(ジャーマン・シェパード)が登場し、1987年に国内での育成・訓練の拠点として、東京税関に麻薬探知犬訓練センター(千葉県成田市)が開設されます。
2006年10月には、全国の空港や港などの税関、国際郵便局などにおいて、約100頭以上もの麻薬探知犬が活躍することとなりました。
現在では、全国の税関に約130頭の麻薬探知犬が配備されているようです。導入以降、大量の覚せい剤・大麻など、不正薬物の摘発に大きく貢献しています。


訓練

世界中で活躍している麻薬探知犬。その訓練方法はどのようなものなのでしょうか?
訓練には、臭いを覚えさせるために本物の麻薬が使われます。

そのため育成・訓練施設は、「東京税関監視部麻薬探知犬訓練センター」の一か所に限られているのです。その広さは東京ドーム約4個分にも及びます。犬が遭遇する可能性のある、様々な状況を再現できるようになっているそうですよ。
麻薬探知犬の訓練・育成を行うのは、財務省管轄の東京税務署職員(国家公務員)の麻薬探知犬訓練士です。ハンドラーと呼ばれています。麻薬探知犬はこのハンドラーとペアになり、様々な場所で活躍しているのです。

それでは、国内の麻薬探知犬がどんな訓練を受けているのかみていきましょう。

◆麻薬探知犬の訓練はどんなもの?

日本全国から集められて訓練所へ来た犬たちは、まず環境に慣れるための訓練を4週間程行います。
様々な人・物・乗り物などが行き交う空港・港、足場の悪い現場や高い場所などで探知する状況を想定し、何事にも動じずに活動に集中できるようにするためです。

まず、ダミーを使った訓練が始まります。
ダミーとは筒状に巻いたタオルで、犬がこれを見つけたらハンドラーが沢山褒めて、犬と一緒に遊んであげるのです。これを繰り返し、「ダミーを見つけると遊べる」と認識させます。
次に、ダミーに麻薬入りの袋を結び付けて地面に埋め、それを見つけさせる訓練が繰り返されます。
これにより、麻薬の臭いがする場所にダミーがあることを覚えさせるのです。「この臭い(麻薬)をみつけると遊べる」という意識付けが行われるわけですね。
そして最終ステップです。
バッグ・靴など、実際に現場で想定される場所に麻薬を隠して探させます。見つけたら一緒に思いっきり遊ぶ、これが繰り返されます。
こうしていくつかのステップを経ることで、大麻・覚醒剤・ヘロインの臭いを嗅ぎ分けられるようになり、テストに合格すれば2週間の現場トライアルに挑戦することとなります。そこで大きな問題がなければ、麻薬探知犬としての仕事がスタートされるのです。

ダミーを見つけて持ってくる基本訓練である持来、そして応用訓練である壁面捜査、更に熟達訓練の貨物捜査など、沢山の訓練を重ねてステップアップすることで訓練期間の4ヶ月を過ごします。
しかし実際に訓練を受けても、麻薬探知犬としてデビューできるのは約3分の1。現実的には、中々厳しい道のりだということですね。
ちなみに麻薬探知犬として活動できるのは、1歳~8歳頃までといわれています。引退後は、里親に引き取られる、ハンドラーと暮らす、センターで過ごす、などのいずれかの方法で余生を過ごすことが多いようです。

◆探知犬は麻薬中毒にならないの??

訓練で実際に麻薬を使用していると紹介しましたが、そうすると犬が麻薬中毒にならないのか?という疑問や心配が浮かんできますよね。
しかし大丈夫です。訓練には臭いだけが使用されているので、犬が麻薬中毒に陥ることはないようです。
さらに、探知犬が誤って麻薬を噛んだり、口に入らないように、常に注意が払われています。

◆ハンドラーに必要なもの

訓練の流れからも分かる通り、犬にとって麻薬探知は「遊びの一環」なのです。
何より大事なのがこの感覚であるといわれ、遊びに夢中になるほど麻薬探しにも集中できるようになるそうですよ。
ハンドラーは探知犬が現場で麻薬を見つけると、素早くダミーをポケットから取り出します。そして探知犬をほめてダミーで遊ぶのです。ハンドラーには犬を飽きさせないよう、犬の興味を引き付ける遊びのアイデアを、次々に考え付く能力が求められるでしょう。
さらに、犬と一緒に思いっきりくたくたになるまで遊び、毛づくろいをするなどして犬への愛情をたっぷり注ぎ込む毎日なので、体力的にもとてもハードな職業です。

資格としては、国家公務員試験の合格が必須となります。まずは国家公務員試験に合格し、税関の採用試験に合格して税関職員になることが第一歩で、希望通り配属されるとは限りません。
ハンドラーに選ばれるのは、体力がいることから、主にⅡ種かⅢ種試験に合格して採用された若手の職員さんが多いようです。

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どこで活動している?

訓練施設は一か所ですが、配備される場所、働く現場は複数あります。
東京税関に限らず全国9つの税関に麻薬探知犬は配備されており、活動する現場となるのは、空港・港・国際郵便局などです。入国検査場やソーティング場、税関検査場や保税地域などで、旅行者・手荷物・貨物などから、麻薬の密輸入を防ぐために捜査をしています。
これらの場所で、ハンドラーと一緒にペアとなり活躍をしているのです。


どんな犬種が活躍してるのか?

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麻薬探知犬としての品種は問われていませんが、探知犬となれるのは狭き門。訓練途中で多くの犬が失格すると言われています。麻薬探知犬に適している犬は以下のようなタイプだといわれています。

◎動くものに対して興味を示す。
◎物を投げると咥えて持ってくる。
◎持ち帰った物に対する独占欲が強い。
◎人見知りをしない。
◎行動が活発で生き生きしている。
◎どのような場所でも恐れない。
◎人に対して攻撃的ではない。

実際に現在麻薬探知犬として活躍している主な犬種としては、ビーグルジャーマンシェパード・ドッグラブラドールレトリバーゴールデンレトリバーなどが挙げられます。

国内では主に、ジャーマンシェパード・ドッグやラブラドールレトリバーが活動しています。
しかし海外ではビーグル主に選ばれており、その理由は、「犬の中でも優れた嗅覚を有している犬種だから」だそうです。

◆パッシブドッグとアクティブドッグ、犬種の違いはある?

麻薬探知犬には2種類あると紹介しましたが、このパッシブドッグかアクティブドッグかによっても、向いている犬種の違いがあるとも言われています。
パッシブドッグは、空港の税関検査場(手荷物を受け取るターンテーブルのある所)内で、旅行者の手荷物に対する探知犬として配備されることが多いです。
このため、犬種としてはビーグルが多く用いられる場合があります。臭いを嗅ぎまわることが好き、人懐こい性格である、身体が小さいため人混みでも邪魔にならない、外見から旅行者に恐怖心を与えない、などがこの理由として挙げられます。
対してアクティブドッグの場合は、運動能力に優れた大型犬が用いられることが多いそうです。
空港での手荷物探知においても活躍している犬種たちですが、郵便局などの手荷物が山積みされていて高い位置にある中をかき分ける必要があるので、運動能力を要するこちらの探知活動に向いている、と考えられているようですね。


まとめ

訓練を受け、厳しい試験に合格した一握りの犬達が、現在麻薬探知犬としてハンドラーと共に世界中で活躍しています。
私たちの生活を脅かす麻薬類の密輸入を防ぐという、とても重大な仕事をこなしてくれているのです。
麻薬探知犬に限ったことではありませんが、人間は様々な方法で犬に支えられて生きている、ということを改めて実感しますね。
古くからある人間と犬との絆やその役割は、現代または未来においても進化し、深まり続けていくでしょう。



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壱子

壱子

子供の頃から犬が大好きです。現在はキャバリア4匹と賑やかな生活をしています。愛犬家の皆さんに役立つ情報を紹介しつつ、私自身も更に知識を深めていけたら思っています。よろしくお願いいたします!

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