1.白目や半目になる猫…これって大丈夫?
1-1.猫が白目や半目のように見える正体は「瞬膜」
1-2.猫の白目は見えない構造になっている
1-3.瞬膜が出ている状態でも基本的には問題ない
2.人間にはない目の構造「瞬膜」
2-1.猫の瞬膜の役割①目の乾燥を防ぐ働き
2-2.猫の瞬膜の役割②目に異物が入るのを防ぐ働き
2-3.猫の瞬膜の役割③感染症を防ぐ働き
3.猫の瞬膜が戻らない時に考えられる病気は?
3-1.結膜炎
3-2.角膜炎
3-3.チェリーアイ
3-4.ホルネル症候群
【掲載:2019.04.08 更新:2023.08.22】
白目や半目になる猫…これって大丈夫?
猫と一緒に暮らしていると、彼らの生態や性質に驚かされてしまうことが多々あります。中でも半目や白目をむいて眠っていたり、ガタガタと痙攣を起こしたりしながら爆睡している姿を見て、驚愕してしまう飼い主さんも少なからずいらっしゃるのではないでしょうか。
猫が白目や半目になっているように見えるときは、実は目の表面を白い膜が覆っている状態となります。そして、この白い膜こそが、今回の題材である「瞬膜(しゅんまく)」です。
白目として思われがちな瞬膜とは、一体どんなものなのでしょうか?
◆猫が白目や半目のように見える正体は「瞬膜」
私たち人間には上下1つずつ、計2つのまぶたしかありませんが、猫には第3のまぶたが存在します。
この第3のまぶたは目とまぶたの間から出る白い膜であり、「瞬膜」と呼ばれます。
正式名称を「第三眼瞼(だいさんがんけん)」と呼び、眼球を保護する働きをします。
目を閉じると瞬膜も閉じますが、寝ている時にまぶたが開くと、白い瞬膜が露出した状態になり、まるで白目や半目になっているように見えることがあります。
猫が白目や半目になりやすいと言われる所以は、このようなところから来ているのかもしれません。
白目=瞬膜と思っている方もいらっしゃるかもしれませんが、まったくの別物と解釈するようにしましょう。
◆猫の白目は見えない構造になっている
猫の目は、ゴールドやグリーン、そして美しいブルーなど、様々な色をしていますね。この色の付いている部分を「虹彩(こうさい)」と呼びます。
猫の目の見える部分は大半がこの虹彩で占められており、瞳孔の大きさを調整し、光の入る量を調節してくれる機能を持ちます。
猫も人間同様にこの虹彩の周りに白目がありますが、正面からはうまく見えない構造になっています。これは、目の位置や動きを天敵に悟られないようにするためや、虹彩を大きくすることで暗いところでもより光を入れやすいようにする役割があるといわれています。
◆瞬膜が出ている状態でも基本的には問題ない
まぶたは上下に動くものですが、瞬膜は目頭から中央に向かうようにして動きます。普段は目頭部分部分に少し見えている程度ですが、眼球を動かすことによって一緒に瞬膜も動く、といった仕組みになっているのです。
前述した通り、猫が眠っているときはまぶたを閉じているだけでなく、瞬膜も同時に眼球を覆い、閉じている状態となります。筋肉の緩みや何かの反動で外側のまぶたは開いてしまっても、瞬膜が閉じたままの状態であることは、意外とよくある話です。
猫の瞬膜が出たままで白目や半目になっているように見えたとしても、それは猫の体が出すシグナルにより行われていることなので、心配は要りません。
しかし、瞬膜がなかなか戻らない場合や、常に出たままになっている場合には、病気なども疑ってみましょう。猫にとっても目はとても大事な器官ですので、普段から観察しておくのも良いですね。
まずは猫にとって瞬膜がどんな役割を担っているのか、知っておきましょう。
人間にはない目の構造「瞬膜」
猫の持つ瞬膜ですが、この瞬膜を持つのは猫だけではありません。両生類や一部の魚類、そして鳥類や爬虫類が挙げられます。
このように限られた種にしか確認出来ていない瞬膜ですが、猫に存在しているのが不思議ですよね。
実は、猫に限らず霊長類の一部にも瞬膜があると確認されています。人間には上下のまぶたしかないと前述していますが、人間の場合、目頭に在る「半月襞(はんげつひだ)」とそこに繋がる筋肉が、おそらく瞬膜に対応する器官ではないかと考えられています。
地球上の生物は進化していく中で、状況に順応出来るように姿形を変えてきました。もしかしたら人間にも瞬膜は存在していて、不要になった後に退化していったのかもしれません。
猫に未だに残っている瞬膜には、どんな役割があるのでしょうか。
◆猫の瞬膜の役割①目の乾燥を防ぐ働き
猫は元々あまりまばたきをしない動物でもあるので、乾燥しやすいのでは?と不思議に思っている方もいらっしゃることでしょう。
しかし猫の大きな目は、常に潤っていますよね。
眼球を乾燥させないために、瞬膜が涙の成分を約40%産生しているのです。
まばたきをすることによって、涙液をまんべんなくいきわたらせ、目の乾燥を防ぎます。
常に目を潤わせ栄養を与えることによって、あの美しい猫の目を守っているとは感慨深いものがありますよね。
◆猫の瞬膜の役割②目に異物が入るのを防ぐ働き
まつ毛が上まぶただけにしかない猫は、目に異物が入りやすいです。
そして元々野生で生きてきた故に、雑草が生い茂る場所を歩いたり敵から攻撃されたりすることも多かったことでしょう。
その際に角膜を傷つけないように、瞬膜は瞬間的に出て目を守る働きをしてきました。
外部からの衝撃を最低限に抑えてくれる役割があるので、いざというときに安心です。
たとえ目に異物が目に入ってしまったとしても、異物を外に出す働きまでしてくれるので、全身が毛に覆われている猫にとっては必要不可欠と言えるのではないでしょうか。
◆猫の瞬膜の役割③感染症を防ぐ働き
感染症も猫にとっては避けて通ることの出来ない、問題でもありますよね。
目の表面には、沢山の細菌や真菌(カビ)が存在しています。健康な猫であれば問題がありませんが、免疫が落ちていると感染症にかかりやすくなってしまいます。
瞬膜の表面を覆うリンパ小胞は、抗体などの免疫媒体物質を涙と一緒に分泌して目を潤す役割を担っています。
これにより感染症を防いでくれるので、天然の目薬のような効果が得られることが素晴らしいですよね。
猫の瞬膜が戻らない時に考えられる病気は?
このように瞬膜には様々な役割があり、白目や半目になってるように見えても、そこまで心配は不要だということが分かりましたが、なかなか瞬膜が戻らなかったり明らかに普段と様子が違ったりするのなら、病気を疑う必要性も出てきます。
体調不良が原因のこともあり、必ずしも病気だと判断することはできないので、様子がおかしければすぐに動物病院に受診することが良いでしょう。
ここでは、瞬膜が戻らない際に考えられる、病気の一例をご紹介していきます。
◆結膜炎
結膜炎は、目に異物が入り込んだ際や、細菌やウイルスの感染などが原因で起こる病気です。白目とまぶたの裏を覆う膜におきる炎症なので、重症化してしまうと瞬膜が押し出されてきます。
猫は人間のように白目が見えないので、初期症状の場合表面からは気付き難いので厄介です。
目が充血していたり、腫れや目ヤニが多く出でいたりしている場合は、この病気を疑った方が良いかもしれません。
痒みや痛みを伴いますので、動物病院に連れて行くまでの間も症状が悪化しないように、エリザベスカラーを着けてあげると良いでしょう。
◆角膜炎
猫同士のケンカや、自身の爪で目を傷つけるなどの外傷性による病気です。傷がついた場所によっては、瞬膜が出たままになってしまうことも。
犬に比べてこの病気になることは少ないそうですが、痛みを伴いますので目を開けにくそうにしていたり涙を流したりしている場合は、症状が悪化する前に動物病院へ受診しましょう。
重症化してしまうと、手術が必要になることもありますので、注意が必要です。
◆チェリーアイ
瞬膜の裏に存在する第三眼瞼腺(瞬膜腺)が赤く腫れあがり、瞬膜が逸脱する病気です。大きく腫れあがった状態がさくらんぼに見えることから、チェリーアイと呼ばれるようになりました。
先天性による場合や、外傷・炎症・腫瘍などの後天性による場合が挙げられます。
軽度であれば点眼薬や獣医師の処置(押し戻す方法)で元に戻りますが、重度になってしまうと外科手術が必要となってくるようです。
◆ホルネル症候群
視床下部と眼球までを走行する、頸部交感神経路の周辺に異常が発生する病気のことを言い、別名ホーナー症候群とも呼ばれています。
先天性の異常や外傷、腫瘍や中耳炎などによって起こりますが、原因不明の突発的に起こることの方が多いようです。突発性の場合、治療が出来ずに様子を見るだけになることもあるので、出来ればかかってほしくない病気と言えるでしょう。
瞳孔が小さくなり眼球が落ち窪み、まぶたが下がって瞬膜が飛び出してくることによって、半目のように見えるようです。
交感神経は瞳孔を開く役割を担っているので、ここに障害が生じてしまうと瞳孔が縮んだままになってしまうのでご注意を。
まとめ
猫の顔の大半を占める目は、コロコロと姿形を変えて見つめているだけで吸い込まれてしまいそうなほど、魅力的ですよね。そんな猫が眠っている際に、白目になったり半目になったりしているように見える姿は、例えようもないぐらい可愛らしいものです。
しかし、白目や半目のようにみえる姿に見慣れていないと、病気を疑ってしまう飼い主さんも多いことでしょう。そのため、異常か異常でないかの確認のためにも、普段から猫の瞬膜の観察はよくしておくようにしましょう。
生き物にとって目はとても大切な器官ですので、少しでも普段と違うと感じたら、早急に動物病院を受診するようにしてくださいね。
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