猫は「噛む」本能がある動物
猫は、もともとは獲物を捕まえて生きて行きた狩猟動物です。
飼われている猫は餌をもらうため、狩りをする必要はなくなっていますが、鳥やネズミを追いかけて捕まえたり、または遊びながら狩猟本能を発揮したりして、満足します。動くものを見たり、匂いを感じたり、音を聞いたりすると、それに飛びついて噛んだりひっかいたりするのです。
これはお腹がすいていなくても、狩猟本能をくすぐられるようなものがあれば起こりうる事なので、人の手などにじゃれて噛んだりするのは当然の事だと言えます。猫が噛むということは、本能であっておかしくないのです。
猫の本能を理解しないと、噛まれた時、また噛み癖がついてしまった時に、飼い主さんはショックを受けたり、完全にやめさせようとしたりします。猫が噛んでくることに反応しすぎると、猫はよけいに噛むことで、飼い主さんを思い通りにしようとしてくるかも知れません。
飼い主さんは、猫が噛んだ状況や理由、程度などを見極めて、落ち着いて判断し、対処して直していくことが大切です。
猫の噛み癖の原因は?
何故猫は噛み付いてくるのでしょうか?噛み癖を直す前に、その理由を猫目線で考えてみましょう。
◆猫の本能
猫は狩猟動物で、噛む行為は猫の本能的行動です。猫を触っていると急に噛んでくるのは、猫が「狩猟モード」に入ってしまったせいかも。
噛まれた時は慌てて手を引きがちですが、猫は獲物が逃げ出すように感じて、ますます狩猟本能を刺激することになります。
猫が触られて気持ちがいいと感じる首や耳の後ろなどは、同時に猫の急所でもあります。長く触られていると本能的に危険を感じて噛んでしまうのかもしれません。
◆愛情表現
甘噛みは猫同士の愛情表現で、猫の本能的な行動です。相手を傷つけようと考えてはいません。
例えば、飼い主さんが優しく撫でている時に猫が急に噛んでくるのは、猫があまりにも気持ちよく感じ、愛情表現として噛んでしまったのかもしれません。
この時は、決して怒ったり叩いたりしないでください。甘えているのに飼い主さんに叱られたら、猫は悲しい気持ちになってしまうでしょう。
猫は生まれてからずっと親子や兄弟の間で甘噛みを繰り返し、成長していく内に力の加減を身につけていきます。子猫の間に母猫や兄弟と話された場合、飼い主さんがその対象となり、噛んでしまうのでしょう。
◆触られたくない
猫の方から甘えてきてゴロゴロ喉を鳴らし、気持ち良さげに撫でられていたのに態度を急変させてカプリ。そのままプイッと離れていくといったこと、何度か経験していませんか?
猫は気まぐれです。急に触られるのが嫌になったのでしょう。全身がセンサーになっている猫は長い時間ベタベタ触られることを好みません。触ってほしくない部分も沢山あります。
猫の嫌がる部分を触ってしまえば、猫は「やめろ!」という気持ちを込めて噛んでしまうのでしょう。
◆ストレス発散、不満の訴え
環境がいきなり変わった、暑い、寒い、構ってほしい、お腹が空いた、トイレが汚い…猫が不満に思っていること、ストレスに感じていることを飼い主さんが気付かない時、猫は噛んでしまうのかもしれません。
子猫が噛む主な理由と対処法は?
◆猫同士のじゃれあい
猫は本来、子猫の時には兄弟たちや親に囲まれ、じゃれあいながら噛む力加減を覚えていくものです。
子猫同士で遊ぶのは、狩りの仕方を学んだり、社会性を学んだりするのにとても大切です。猫が猫らしく、正常に成長するためには、必要不可欠であるとも言えます。じゃれついて遊んで噛み付いても、どの程度で噛めばよいかを自分やきょうだいと遊ぶことで、覚えるのです。
ただ、小さいときに兄弟や親から引き離された子猫はこうした経験をしていないので、猫が加減を知らずに噛んできて、強すぎたり、やめなかったりするようなら、飼い主さんが親猫やきょうだい猫になりかわって、しつけをしてあげる必要があります。
猫は犬と違って野生味をいまだに多く残した動物と言われています。猫は本来、優秀なハンターですから、人に飼われていても狩りの本能は忘れてはいません。動くものに反応してとびかかっていくのは当たり前といえるでしょう。
ですから、子猫の時は特におもちゃを使って十分に遊んであげましょう。遊ぶ時は、じらすだけではなくちゃんと獲物を仕留めさせ、噛ませてあげましょう。
◆遊びからの興奮
遊びに興奮すると、つい飼い主さんに攻撃してくることもあります。
こうした場合は、即座に遊びをやめ、違う部屋に行くとか、完全に無視するなどして、ルール違反だよ、噛んだら遊ばないよ、と覚えさせましょう。猫は20秒程度たつと忘れてしまうと言われていてるので、それを過ぎたら普通に接しましょう。
◆歯の生え変わり
子猫は、生後2週間ぐらいから乳歯が生え始め、生後1ヶ月ぐらいには生え揃います。乳歯は生後3ヶ月~6ヶ月ぐらいまでに永久歯に生え変わります。
子猫の場合は歯が生え変わる時期でもあるため、歯がかゆくて噛んでしまうということもあります。噛んでも安全なおもちゃを与え、まぎらわしてあげましょう。
大人の猫が噛む理由と対処法は?
◆遊び足りない
飼い主さんの遊び方が下手だったり、十分に遊んでもらえない場合には、ストレスが溜まってしまい、大人になっても動く人間を攻撃することがあります。
特に手で遊ばせていると、手をおもちゃと思って噛んでもいいんだと刷り込まれてしまう場合もあるでしょう。
また、本来動物は人間の顔を怖れるものなのですが、キスやほおずりを頻繁にしていると顔を怖がらなくなり噛んでくることもあります。
◆愛撫誘発性攻撃行動
飼い主さんならよく経験する「愛撫誘発性攻撃行動」というものがあります。気持ちよさそうに撫でられていたのに突然噛んでくるというものです。
これは、撫でるのが下手な場合や撫でている時間が長すぎることが原因です。撫でられている時の様子をよく見ると、もうやめて、というサインを出しているものなのですが、これに気付かず撫で続けていると噛まれてしまうのです。
しっぽを振り始めたり、顔が険しくなったりしたら、もういいよのサインです。
◆転嫁性攻撃行動
もう一つが「転嫁性攻撃行動」です。いわゆる八つ当たりですね。びっくりするような音がしたり、理不尽な目に遭うと、その原因を他の人間やモノのせいにして、八つ当たり攻撃をします。
猫はゆっくり行動するお年寄りを好むのは良く知られていることですが、出来るだけ予期せぬ行動を取らないように落ち着いて動くことも大事かもしれません。そうすることで猫はびくびくせずに落ち着けるので攻撃性も抑えられるでしょう。
猫の噛み癖の直し方・噛んできた時の対応
猫に噛み癖があるならば、やはりしっかり直さなければなりません。噛み癖がついたまま成長してしまうと、噛む力が強くなり飼い主さんは大変な思いをします。人を噛むことはいけないことだと教えましょう。
猫が噛んできた時、次のような方法を試してみては如何でしょう。
◆猫が噛んだ瞬間に猫の目を見つめながら大きな声で「痛い」と言う
猫に噛まれた場合は、大きな声できっぱりと「痛い」「ダメ」などと言いましょう。噛まれるたびに、根気よく「痛い!」ということを声で伝えます。
びっくりして自分で離したり、噛むのをやめて舐めたりと、行動が変わってくるまで根気よく続けましょう。猫が噛む度に繰り返していると、次第に「痛い」と聞くと噛むことをやめるようになります。
この時、名前を使って叱ってはいけません。名前が叱られた状況と結びつき、普通の時名前を呼ばれてもネガティブなものになってしまいます。
先ほども触れましたが、噛まれたら完全に無視し他の部屋に行くなども有効です。
◆指を噛んできたら、手前に引かずそっと猫の口の奥に指を入れる
猫がまだ噛み付いている時には、急いで手を引き抜くことは、やめましょう。よけいに傷がつくことになりかねません。
離れず噛み付いている時には、噛まれている手をそのまま猫の喉の方へ押し込む、猫の顔を手で覆うなどしてみてください。猫を傷つけないよう加減して、落ち着いてやってください。
人を噛んだら苦しくなると猫に覚えてもらいます。指が奥に入りすぎて猫の喉を傷つけてしまわないように注意。
◆猫が噛んできたら猫用のおもちゃを噛ませる
どうしても噛み癖が直らない時には、猫が噛むことは本能ですので、「人間の手に対する噛み癖を直す」ことに切り替えましょう。
手に噛み付いてしつこいときには、手の代わりのものを与えてあげます。タオルやぬいぐるみなど、普段猫がよくあそぶおもちゃをいくつか用意しておいて、噛んできたらすかさず掏り替えます。
噛み癖のある猫にしないためには、「人間の手や足に対して、噛み癖をつけないように」というふうに考えましょう。手は、猫のおもちゃではないということです。噛むのは人ではなくおもちゃだと教えることが大切です。
◆柑橘系のローションを使用する
ペット用品として販売されている柑橘系などの嫌いな匂いの液体を手足に塗るのも効果的です。
また、水の入れたスプレーを吹き付けるなども第3者によるものと思わせられれば有効です。
◆猫の居る環境を見直してみる
猫がストレスを感じている要因がないか、周囲をチェックしてみましょう。
遊び足りていない様子なら、毎日少しの時間でも猫と触れ合い、遊ぶ時間を作ってみることも大切です。遊ぶことは猫の狩猟本能を満足させることにもなります。
◆スキンシップの重要性
スキンシップを取ることは健康状態を把握するためにも重要なことです。
ペットを撫でることによって幸せ物質「オキシトシン」というホルモンが分泌されることが分かっています。撫でる人間もですが、撫でられる方も分泌します。オキシトシンによって免疫力の上昇も期待できます。
適切なスキンシップをとって、幸せを共有したいものですね。
まとめ
噛み癖がついてしまうと、なかなかすぐには直りにくいものです。
最適な直し方は、猫それぞれによって違うので、以上のことを試しながら、根気よく猫と向き合って、冷静に対処していってあげましょう。
噛み癖治らない時、決してしてはいけないのが「体罰」です。体罰は信頼関係を壊し、噛み癖は収まったように見えても良い関係は築けません。
特に、飼い主の手でたたくという行為はしないほうが良いでしょう。飼い主の手は、猫を優しく撫でたり抱いたりして、猫にとって気持ちのよいものだと思ってもらいたいですよね。
猫の気持ちや習性をよく知ることによって噛み癖をしつけましょう。
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