猫が犬化してきている…?
ペットと暮らす人は年々増えてきていますが、「猫を飼うか」「犬を飼うか」で飼育する環境や育て方には、異なる点が多々あるもの。そのため、「ちょっと気まぐれだけどそれが魅力的な猫」「社交的で愛情表現が豊かな犬」というように、一般的な猫や犬の性格を考えつつペットと一緒に暮らしている人も多いかと思います。
特に、猫好きな人にとっては「ツンデレ」なところをと感じているのではないでしょうか。
そんな猫に代表的な「ツンデレ」な性格ですが、ここ最近その性格に当てはまらない「犬化した猫」という話が話題となっています。
そもそも「猫」と「犬」ってどんな違いがあるの?
猫と犬には、頭にすぐに思い浮かべられるようなメジャーなものから、「聞いたことがない…」というものまでたくさんの種類があります。
猫種、あるいは犬種によって特徴や性格が異なりますが、一般的な「猫」「犬」についてその違いを比べてみましょう。
◆犬の方が人間との歴史が長い
猫と犬、どちらもそもそもは野生動物。それが人間の家畜として一緒に暮らすようになり、その後「ペット」、そして近年では「家族」と言えるほど深い関係になっています。
猫も犬も古い時代から人間と深く関わってきましたが、歴史の古さで見ると犬の方が長めです。
人間と犬の歴史
犬と人間の共生は1万5000万年前ほどまでさかのぼります。
犬の祖先といわれるオオカミは、集団で獲物を狩って生きていましたが、「人間の近くで生活すると食べものが手に入りやすい」と気付き始め、距離が縮まりました。
やがて、人間は狩猟のときに犬が活躍してくれることを知り、犬を家畜として飼い始めます。犬の賢い知能が人間の日々の暮らしにかなり役立っていたのですね。
犬は敵を撃退することもできるので、番犬の仕事もしてくれるなど、人間のよきパートナーとしての歴史があります。
人間と猫の歴史
一方の猫は、穀物保管のネズミ撃退のために、古代エジプトの頃に家畜として人間の近くで暮らしはじめます。
ちなみに、日本では縄文時代に狩猟目的で人間と犬との暮らしがスタートしましたが、猫は奈良時代頃に人間の生活に関わってきたと言われています。
◆得意なことが違う
歴史の部分でもお話ししましたが、猫は人間の農作物を荒らすネズミなどの小動物を捕獲することを仕事にしていました。優れた身体能力と持ち前のハンター気質で、小さな動物を捕まえるのは大得意だったのです。
ペットとなった今でも、それは健在で小さく動くものに反応して追いかけることも多々あるでしょう。
一方の犬ですが、狩猟犬、牧羊犬、盲導犬、介助犬、警察犬など、さまざまな場で活躍しています。「人間の指示に従うこと」が得意なので、人間の暮らしのなかで大活躍です。
◆人間に対する意識が違う
人間に対する犬の意識
飼い方にもよりますが、ほとんどの犬が人間のことをリーダーと認識しながら一緒に生活していきます。「飼い主=リーダー=絶大な信頼のおける人」なので、指示されると一生懸命動こうとします。
そして、飼い主さんには「愛すべき存在」という感情も沸きます。
飼い主が出かけたときに「留守番は寂しいな」と思うことが多く、帰ってくると大喜びするのも、飼い主への依存度と愛情が大きいからなのですね。飼い主さんから褒められるとしっぽをブンブンと振るので「喜んでいる」ことは一目瞭然ですよね。犬は、素直に喜びを表現するタイプです。
人間に対する猫の意識
一方、猫はというと、人間のことを仲間的な感覚で見るのが普通のようです。
そもそも猫界では単独行動をするのが普通なので「リーダー」という存在自体がいません。人間と一緒に暮らしても「リーダー、偉い人」と自分より格上として考えずに、対等な立場として考える傾向にあります。
だからと言って飼い主さんのことを軽んじているわけではなく、一緒に過ごしてくれる「大事な存在」ということはきちんと分かってくれているようです。
猫と犬…性格は真逆!?
そもそも単独が好きな猫と仲間意識が強い犬では、性格もずいぶん違います。その違いは真逆とも言えるくらいかもしれませんね。
猫種や犬種、生活環境によっても性格は違うものですが、一般的な性格について比べてみましょう。
◆猫ってどんな性格?
猫というと「マイペース」というイメージが強いですよね。
自由気ままな性格
猫は基本的には、自分の思うままに日常を過ごします。さきほども触れましたが、猫にはリーダーが存在しないため、「上のものに媚びて機嫌をうかがう」ということもありません。「飼い主さんが喜ぶから甘えちゃおう」ということはないでしょう。
「甘えたいな~」という気分になればすり寄ってきますが、触られたくないときには近寄っても「断固拒否」といった態度を見せることも…!
警戒心が強め
猫には野生時代の名残もあり、周囲に対しての警戒心が強め。自分のテリトリー守る意識がかなり強いので、見知らぬ人間や動物に対しては「敵なのか?」と神経質に身構えるところがあります。
でも、いったん心を開いてしまえば一緒に遊んだり、甘えたりと可愛らしい表情を見せてくれます。
◆犬ってどんな性格?
一方、犬はどんな性格をしているでしょうか。
人間に忠実
犬は多くの人が持つ犬のイメージ通り、主従関係がしっかり築ければ、飼い主をリーダーとして認め、忠実に接してくれるかと思います。
愛情深く友好的な性格
愛情も強いので「リーダーが喜んでくれるなら」としつけも喜んで覚えてくれます。
大好きな飼い主さんのもとへと走るときには、大きく尻尾を振って「嬉しいよ」と分かりやすいのが可愛らしいです。
また、集団で生活していた野生時代の習性から、人間の子供やほかの犬、猫たちとも仲間のように友好的に過ごすことができます。
猫が「犬化」!?いったいどういうこと?
比べてみると猫と犬には歴史・得意なこと・性格などすべてがいろいろと違うことが分かりましたよね。長い歴史のなかで本能的に身についているものが原因で行動パターンも違うのでしょう。
しかし、最近「犬化している猫が増えている」と言われています。
◆飼い主さんに甘えん坊な猫が増えている
猫はあまり感情を表に出さないツンデレな動物として知られていますが、最近は飼い主さんに甘えをアピールする犬のような猫も多くなってきています。
外出先から帰宅した飼い主さんを大喜びで迎える猫、家のなかでも飼い主さんのそばから離れないほどベッタリな猫、抱っこをせがむ猫、芸を覚えて飼い主さんを喜ばせる猫…など。
本来の「ツンデレ」ではなく「デレデレ」になっている犬化した猫はかなり可愛らしいですよね。
マイペースな性格の猫を好んでいたはずの飼い主さんも、自分に甘える姿を見ると「犬化している愛猫も悪くはない」と新たな魅力に惹きつけられるかもしれません。
ただ、犬化といっても完全に「犬」になるわけではなく、やはり気まぐれな部分もあるかと思います。
犬化する猫たちの増加の背景にあるのは何?
基本的には「猫は自由きまま」と言われていますが、犬のようにフレンドリーな「犬化した猫」が増加しているのはどうしてなのでしょうか。
◆多頭飼いでの集団生活もこなせるようになった飼い猫
野生で生活している猫たちは、基本的におひとりさま行動。「ひとりが好き」というよりも、猫界の決まりごとみたいな感じなのでしょう。
生まれてから一定の期間は、同じ母から生まれた兄弟たちや母猫と家族みずいらずで生活しますが、このときに学ぶのは「ひとりで生きていく術」です。
母猫から教わったことを頭に入れ、やがてひとり立ちしていく時期がやってくると、厳しい自然界をひとりで生き抜きます。
そんな単独行動があたり前の野生猫と違い、人間と暮らす猫は集団生活も可能。
猫は心の奥底に「縄張り争いするなら闘ってやるぞ」という気持ちは眠っていますが、飼われている猫はその意識を前面に出したまま長く生活することはありません。多頭飼いで仲間と暮らすうちに集団でも生活できるようになっていくのです。
◆室内飼いも犬化の要因?
かつては、家の裏口から自分で自由に出入りしている猫の姿を見かることも多かったものですが、近頃は「家から出さない」と完全室内飼いをしている飼い主さんも増えているかもしれません。
室内で暮らす現代風の猫にとっては「家のなかこそすべて」。
自分で外の世界を知らないから、本能的に持っているハンター部分を発揮することもできません。それに、繁殖シーズンには恋愛相手を求めて外に行くという機会もないでしょう。
「外に出る・家に帰る」と半分くらいは外でも過ごしていた昔の猫と比べると、人間への依存度が高くなっているかと思います。
食事に関しても「自分で獲物を捕獲して食べる」のではなく、「飼い主が与えてくれるのを待つ」というパターン。
家のなかで飼われるのが普通になった猫にとっては、「飼い主に甘えるといいことがある」と学習することもあり、まるで犬のようにフレンドリーに振る舞うことも多くなっているのかもしれませんね。
◆飼い方によっては「犬化」が進む?
人間との関わりを好む犬に対して、ゴロンと寝転んで過ごすのが大好きな猫。犬のように散歩も必要ないので、基本的には猫を飼うときには猫の思うようにのんびりと過ごさせることが多いかと思います。
しかし、飼い主さんによっては猫とのコミュニケーションを強く望むこともあるでしょう。まるで犬を飼うかのように密着して接していると、猫側でも「飼い主さんとたくさん触れ合いたい」という気持ちが湧き上がってくるのかも。
コミュニケーション時間を長くしていると、犬化した猫ちゃんになってくるのかもしれませんね。
◆賢さを生かしたしつけも可能に
「猫は芸を覚えない」「しつけがしにくい」ともよく言われます。そんな先入観から、猫に芸をさせようと思わない人の方が多いかもしれません。これについても先ほどと同じことが言えます。
犬に育てるように「褒める作戦」「おやつ作戦」で教え込めば、そもそも賢い頭脳を持つ猫はしつけや芸も覚えてくれることが多いのだとか。
犬よりも時間はかかるかもしれませんが、飼い主さんの根気と熱意が犬化した猫ちゃんのしつけを可能にするのかもしれませんね。
◆「猫と犬」との同居が「犬化」なのかも?
猫が犬化する要因のひとつとして「犬との同居」も関係しているのかもしれません。
特に、社会化する頃の子猫くらいに犬と同居を始めるパターンなら、犬との集団生活が当たり前として育ちます。
本能的な「単独行動が好き」という気持ちは眠ったままで、いつしか「犬との集団行動が生活の一部」と仲間意識が芽生えるのでしょう。
一緒に寝て、一緒に遊んで過ごすなか「自分は犬なのでは?」と感じている犬化した猫もいるかもしれませんね。そんな犬のような猫もきっと魅力的だと思います。
数ある猫種のなかでも、そもそもの性格が「穏やか」「社交的」という猫なら、スムーズに犬たちのなかに溶け込んでいくことでしょう。
まとめ
「猫の犬化」のことが分かりましたね。
なんとなくイメージで「猫は気まぐれ」と考えている人が多いですが、私たち人間が持つ猫に対する感情や取り巻く環境によって性格はかなり変化しているのかもしれません。飼い猫として長く一緒に生活していくなかで、環境に順応していく猫も多いので犬化した「犬っぽい猫」が増えてきているのでしょう。
猫の多頭飼い、犬との同居によっても集団生活も難なくこなしてくれる猫ちゃん。そして、飼い主さんの繰り返しによるしつけなどで犬みたいに芸を覚えてくれる猫ちゃんなど。
犬化により猫本来の気まぐれな面を残しつつも愛情表現がより豊かになる猫に、さらなる魅力を感じそうですね。
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