人間が猫を飼い始めたのは、
今から約5千年前の古代エジプトの時代と言われています。野生のリビアヤマネコが、穀物倉庫で繁殖するネズミを食べるために住みついたのが家畜化の始まり、猫の歴史の始まりだと考えられています。リビアヤマネコは、体長約50-70センチメートル、イエネコの先祖と考えられてリます。アフリカヤマネコと言われることもあります。現在も、アフリカ大陸やアラビア半島に住んでいます。
穀物倉庫に定住し始めたリビアヤマネコは、穀物を食い散らすネズミを退治してくれるということで、古代エジプトの人々はとても喜んでいました。大きさも、現在の猫と同じぐらいの大きさなので、可愛らしいという感覚だったのでしょう。だから、近くにいてもかまわない。ネズミを退治してくれたら嬉しいということで、共存生活を続けていました。そのような共存生活の中で、女性や子供たちも、親と死に別れた子猫や傷ついた子猫の世話をするようになり、今でいうペットという存在になっていきました。
上記のようなながれで徐々にリビアヤマネコは家畜化され、家畜化されていったリビアヤマネコ同士が交尾をして繁殖を続けた結果、リビアヤマネコの姿かたちはだんだんと変化していき、今日の猫の原型となりました。リビアヤマネコは、現在のアビシニアンに似た毛色をしていますが、家畜化された猫たちの毛色はシマ模様であったりブチであったりとさまざまです。野生動物は家畜化されると、さまざまな色に変化するのです。
では次に、どのように世界に猫が広がっていったのかを見ていきましょう。
古代エジプトでは猫は、
太陽神ラーの化身として、また受胎と豊穣の女神バテストとして崇められていました。当時の人々は、とてもとても大切に猫を育てていたわけです。古代エジプト次代は、国外への持ち出しも禁止されていました。それが紀元前後から、積み荷をネズミの被害から守るために、貿易商人たちが猫を船に乗せ始めるようになります。それが、きっかけで猫は世界中へ運ばれるようになったのです。
運ばれた猫たちは、その運ばれ先で近縁種であるヨーロッパヤマネコやジャングルキャットと交配を重ね、さらに形態を変えていったと考えられます。加えて、運ばれた先の気候によっても猫の形態は変化していきました。例えば、寒い国に運ばれた猫は、寒さに強いものしか生き残れず、生き残った猫同士で繁殖を続けた結果、だんだんと体が大きく、毛は長く密になっていきました。寒い地域では、体が大きい猫の方が環境に適しているからです。反対に、蒸し暑い国に運ばれた猫はけが短く足は長くスリムな体型に変わっていきました。スリムで足の長い体型ほど、体の表面積が体重の割に広くなるので熱を発散しやすくなり、暑さに対応できるのです。猫は運ばれた先の気候に適応するため、どんどん進化していったとうわけです。
日本には、
大陸からの仏教伝来に次代に、仏教と一緒に船に乗せられてやってきました。船に乗せられた理由は、仏典をネズミから守るためでした。江戸時代の魏作者である田宮仲宜(たみやちゅうせん)が著した「随筆愚雑俎」(ずいひつぐざっそ)によると、「大船には鼠多くあるものなり。往古仏経の舶来せし時、船中の鼠を防がんために猫を乗せ来る事あり」と記されています。ネズミ駆除係りとして猫を乗船させることが珍しくなかったことが読み取れます。また日本の文献上にはじめて「猫」が記載されるのは「日本現報善悪霊異記」(にほんげんほうぜんあくりょういき)だと言われています。仏教伝来とともに猫が運ばれてきたことが書物にも明記されています。
このように、猫はネズミ退治を期待されて世界中に広がっていきました。そして運ばれた土地で特有の形態に変わっていったのです。それらが現在の猫の品種のもとになっています。品種改良により、さらにさまざまな形態が生まれ、現在では猫の品種は40種ほどになっています。