1.猫の足が引きずっているのはなぜ?
2.猫の足が引きずっている原因
2-1.怪我
2-2.骨や関節、筋肉の異常
2-3.病気
3.猫の足が引きずっている時に考えられる病気
3-1.関節炎
3-2.脳炎
3-3.動脈血栓症
3-4.重症筋無力症
3-5.脊髄疾患
猫の足が引きずっているのはなぜ?
猫には前足と後ろ足を合わせて4本の足がついており、この4本の足で体を支え、バランスよく歩行を行います。
当たり前の動作として捉えている方がほとんどだとは思いますが、後ろ足を引きずるような仕草や、足をかばうようにしながらひょこひょこ歩いていた場合はどうでしょうか。
怪我をして痛みがあるのか、何かしらの病気が関係しているのかと、不安になってしまいますよね。
歩容に異常をきたしている猫の跛行(はこう)では、さまざまな原因が考えられていますが、そのきっかけとなった行動を目撃していない限り、飼い主さんにとっては原因の追究が困難となるはずです。
そのためにも事前に、どのような原因によって猫が足を引きずる可能性があるのかを理解しておき、そのような症状が見られた場合には早急に対処をしてあげましょう。
猫の足が引きずっている原因
猫が足を引きずる原因はさまざまではありますが、一般的には以下のような原因が多いと考えられています。
◆怪我
完全室内飼いの猫ちゃんで、急に足を引きずるような仕草を見せるようになったようであれば、怪我といった外傷性の原因を一番に疑ってみましょう。
「高い場所からの着地に失敗」「扉などに手足を挟んだ」「足の裏(肉球)にトゲのようなものが刺さった」「多頭飼いによる猫同士のケンカでの損傷」など、室内でも怪我をする可能性は高いため、庇って歩いている手足の様子を優しく観察してみてください。
特に爪切りが苦手で巻き爪になっている猫ちゃんの場合は、伸びた爪が肉球に刺さって出血することもあるため、日常的な爪のケアや観察も心掛けるようにしましょう。
他にも室内と外を行き来する猫ちゃんの場合は、野良猫とのケンカや他の動物に攻撃されての怪我、交通事故による怪我や骨折など、深い傷を負ってくることもあります。
猫ちゃんの中には粘着性の物(ガムやシールなど)が引っ付いたことにより、跛行を起こす子も居ますので、特定の足を気にしている場合には、しっかりと原因を見極めることが大切です。
◆骨や関節、筋肉の異常
成長途中の子猫や骨が弱り関節や筋力が落ちた高齢の猫の場合も、外傷性の原因により足を引きずることがありますが、健康な猫ちゃんであっても、骨や関節、筋肉に腫瘍ができるといった異常をきたすことにより、跛行を起こすことがあります。
また、捻挫や骨折は患部の腫れにより異変に気付きやすいこともありますが、脱臼をしている場合は発症箇所によっては気付き難いこともあるため、外傷性の原因が見当たらない場合には、早急に動物病院を受診して、原因の追究に努めるようにしましょう。
◆病気
怪我や関節などの異常以外にも、足を引きずる理由には病気が隠れている危険性も否めません。
急性の跛行が起きた場合には、その原因を理由とした症状が見られますが、病気の場合は足を引きずる症状が見られる前に、別の症状が見られることがあります。
「おもちゃに興味を示さなくなった」「高い場所に飛び乗らなくなった」「じっとしている時間が増えた」など、普段と違う様子が徐々に増えてきたと感じたら、足を引きずっていなかったとしても、早めに動物病院へ連れていってあげてください。
猫の足が引きずっている時に考えられる病気
愛猫の跛行に気付いたとき、緊急性があるのかどうかを見極めることは、飼い主さん的には難しいと感じるかもしれません。
特に足を引きずる以外は食欲や元気があり、普段と変わらない様子が見られるようであれば、早急に動物病院へ連れていくかも悩むところですよね。
しかし、跛行を起こす病気の中には早急に処置が必要な病気も含まれているため、不安が拭えきれないようであれば、飼い主さん自身が安心するためにも、愛猫を動物病院へ連れて行き、適切な治療を進めてもらうようにしてください。
◆関節炎
加齢や肥満の猫ちゃんや、活発な猫ちゃんによく見られるのが「関節炎」となります。
関節への負担が原因となり、関節部分が変形したり腫れたりすることによって、足に痛みや引きずるといった症状が現れやすいようです。
また、捻挫による併発も多く、軽い捻挫を何度も繰り返すことによって、関節炎を発症させることに繋がるため、関節に負担がかからないような生活環境を整えるなどの予防が必要となってきます。
◆脳炎
細菌やウイルスなどの感染によって「脳炎」を発症した際に、場合によっては脊髄にまで炎症が及んで脊髄炎を併発してしまうことがあります。
熱や発疹といった症状が出る以外にも、神経の麻痺や痙攣、性格が変わって攻撃的になってしまう場合もあるようです。
猫風邪と症状が似ているため発見が遅れることも多く、痙攣のみの症状が出た場合はてんかんが疑われることもあるため、自己判断せずに動物病院で早めに受診するようにしましょう。
◆動脈血栓症
心筋症を患っている猫ちゃんが、もっとも注意すべきなのが「動脈血栓症」となります。
動脈血栓症は血管内でできた血の塊(血栓)が、血管を塞いで起こる病気です。
激しい痛みを伴うことからも辛い症状の数々が現れることがほとんどで、最悪の場合死に至ることもあるため、動物病院での迅速な診断と救急の処置が求められます。
◆重症筋無力症
「重症筋無力症」は神経から筋肉への伝達がうまくいかなくなり、筋肉に思うように力が入らなくなる状態となります。
巨大食道症を併発することもあるため、誤嚥性肺炎が起こりやすくなる場合や、何かしらの腫瘍によって二次被害的に、重症筋無力症が起こることもあるそうです。
猫種によっては先天的に発症しやすいとの報告もありますが、歩き方がおかしくなった、声が変わったなどの異常が見られる際には、重症筋無力症を疑ってみましょう。
◆脊髄疾患
外傷による脊髄損傷、脊髄炎や椎間板ヘルニアなどの「脊髄疾患」は、脊髄に傷害が起こり神経の伝達が正常に行われないことにより、足に麻痺が残ることによって引きずるなどの症状が見られます。
放置してしまえば足の感覚を失ってしまうこともあるため、こちらも早急に動物病院への受診が必要と言えるでしょう。
足を引きずる症状が出やすい猫の特徴
足を引きずる原因はどの猫ちゃんにも及ぶ危険性があるため、体が発育途中の子猫や、加齢が進んで関節に異常が出やすい高齢の猫などは、さらに注意が必要と言えますよね。
また、猫種によっては足を引きずる症状が出る病気を好発しやすい品種も存在することもあり、該当の猫を飼育しているご家庭では生活環境や体調管理の徹底を心掛けるようにしてください。
先天性の膝蓋骨脱臼にかかりやすい猫種と言われているのは、「ペルシャ」「スコティッシュフォールド」「メインクーン」などが挙げられます。
骨軟骨異形成症にかかりやすい猫種は、「マンチカン」「スコティッシュフォールド」「アメリカンカール」「ヒマラヤン」「ペルシャ」などです。
重症筋無力症は猫では稀な病気となりますが、「アビシニアン」や「ソマリ」が好発品種として知られています。
猫が足を引きずっている時の対処法
愛猫がもし足を引きずっていた場合は、一時的な応急処置を行うのではなく、症状を改善するための対処が必要となってきます。
食欲や元気があるようなら、1日ぐらい様子を見ても良いですが、跛行が続くようであれば、動物病院への受診は急ぐに越したことはありません。
様子を見るにしても、猫は無茶をしてしまう動物でもあるため、室内の行動範囲を制限するような対策はしてあげてください。
出入が難しい狭い場所などは入れないようにし、段差のある場所や滑りやすい場所は、タオルや毛布などを敷いて、足に負担がかからないような工夫をしてあげましょう。
そして常に飼い主さんの目が行き届く場所に愛猫が居られるような工夫をし、症状が悪化していないかの確認を、常に怠らないようにしておくことも大切です。
症状が出ている足を隠すような仕草を見せている場合には、その部位には触れないようにし、無理な体勢にならないような寝床を確保してあげてください。
家での対策は動物病院へ連れて行った後にも継続し、愛猫の症状が改善するまでストレスのかからないような生活を心掛けてあげましょう。
まとめ
どんなに健康な猫であっても、何かしらの原因により怪我や病気を患うことがあります。
もし足を引きずるといった症状が見られたときは、重大な疾患のサインとなっていることもあるため、素人判断では原因の追究が難しいとも言えるでしょう。
飼い主さんにできることは、愛猫を常に観察し、異常があった際にはすぐに気付いてあげられるような目を、養っておくことではないでしょうか。
大切な猫ちゃんの健康を守るためにも、完全室内飼いを心掛け、室内で怪我をするリスクを最小限に抑えるような工夫をし、愛猫にストレスのない暮らしを提供してあげてくださいね。
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