【獣医師監修】猫の脱臼について知っていますか?原因・症状から治療・予防法まで

2020.11.23

【獣医師監修】猫の脱臼について知っていますか?原因・症状から治療・予防法まで

猫も脱臼することがあるのをご存知ですか?身軽で柔軟な体を持ち、高いところも自由自在。落下しても、上手く着地できる。そんなイメージがある猫は、脱臼などのケガをすることはなさそうに思えます。しかし、高いところから飛び降りた時や交通事故に遭って脱臼することは、意外に多いのです。外からは気づきにくい脱臼について、症状や原因、治療法や脱臼しないための部屋作りをご紹介します。

猫の脱臼とは?

脱臼した猫のイラスト

◆脱臼とは?

脱臼とは、骨が何らかの理由により、関節から外れてしまった状態のことです。
関節は、2個以上の骨が、筋肉や靭帯に繋がれる形で結合している部分を指します。
脱臼は、関節の周囲の筋肉や靭帯に無理な力がかかることで、一方の骨が正常な位置からずれることで発生します。
骨が完全にずれ、関節面が接触していない状態を「脱臼」(完全脱臼)、ずれてはいても部分的に関節面が接触している状態を「亜脱臼」と言います。

◆猫の脱臼の種類

猫の脱臼は、原因により2つに分類することができます。

外傷性脱臼

交通事故や高いところからの落下などで、外から大きな力がかかった場合に生じる脱臼を、「外傷性脱臼」と言います。
事故、落下、衝突、転倒、急な方向転換、ドアに挟まれた、人に踏まれたなど、原因は様々です。
外に行くことのある子の場合、猫同士のケンカから、脱臼を起こすことも少なくありません。
外傷性脱臼の場合、同時に骨折が生じていることもよくあるので、脱臼なのか骨折なのか、あるいは両方なのかをよく確認する必要があります。

病的脱臼

病気により、関節が不安定になって生じる脱臼を「病的脱臼」と言います。
原因となる病気は、クッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)のような筋肉の張力が低下する病気、筋炎、脳疾患などの神経の異常が挙げられます。
また、関節疾患(関節の緩みや関節形成不全)、変形性関節症なども原因となります。

◆脱臼しやすい猫

猫の脱臼の多くは、外傷性脱臼です。
屋外で生活している猫は、交通事故や落下事故、猫同士のケンカなどに遭いやすいため、室内の猫より脱臼しやすいと言えるでしょう。
一部の猫種は、先天的に脱臼しやすいことが分かっています。
サイアミーズ(シャム)メインクーンのような股関節形成不全がよく見られる猫種では、関節の形成不全から股関節が脱臼しやすいです。
また、膝の“お皿”がずれてしまう膝蓋骨脱臼は、遺伝的にペルシャアビシニアンスコティッシュフォールドなどの猫種がなりやすいです。


猫の脱臼の症状

どの関節でも脱臼が生じることがありますが、猫では特に股関節しっぽで生じやすいです。
猫は具合の悪さを隠すので、軽度であれば痛がったりはしませんが、進行すると不自然な動きを見せるようになります。
スキップのような歩き方をしたり、足を浮かせて歩いたり、腰を左右に動かして歩いたりしている場合は、脱臼している可能性があります。
事故などによる脱臼の場合、患部が腫れてひどく痛がることもあります。
また、外傷性の場合、脱臼した部位によって特徴的な症状もあります。
不自然な方向に手首や足首が曲がっている場合、手首(手根関節)、足首(足根関節)が脱臼しています。
股関節脱臼の場合、脱臼している側の足が短く見えたり、ふらつきが見られたりします。
しっぽ(尾椎)の脱臼では、しっぽにある神経が傷つき、様々な神経に影響を及ぼして排泄のコントロールができなくなり、トイレ以外での粗相が見られます。


猫の脱臼を疑ったら

◆まずは猫の様子を見る

高いところから落下したなど、脱臼をしたかもしれないと疑われる場合には、猫の様子をよく観察して、下記のようなサインを見逃さないようにしましょう。

・手足を引きずる
・関節に触れると嫌がる
・片方の脚が短く見える
・トイレ以外での粗相

◆動物病院に連れていく

軽度の脱臼も、放置すれば悪化して重症化したり、関節が変形したままくっついてしまったりすることがあります。
自然治癒を期待したり、飼い主さんが自分で元に戻そうとしたりせず、必ず動物病院に連れていきましょう。
患部の神経や血管を傷つけないために、できるだけ動かさないようタオルなどでそっと包んで、病院に運んでください。


脱臼の診断

動物病院では、まず詳細な触診が行われます。
関節を動かすときに、猫が明らかに嫌がる様子を見せたり、骨同士がこすれる音が検出されたりします。
また、関節の部位によっては、周囲の腱や靭帯の断裂、関節包(関節を覆う袋)の剥離が起きます。
このため、関節の動かせる範囲が通常よりも広くなるので、脱臼を検出することができます。
触診の結果に基づいて、異常がある部位のレントゲン写真を撮影して、脱臼や骨折の有無を確認、確定診断をします。


脱臼の治療

◆整復

「整復」とは、脱臼した関節を元の状態に戻すことです。
軽度の場合、外科的手術を行わず、手で整復することができることも多いです。
猫の脱臼は、正常な位置に戻しても、また脱臼することが多いため、整復した後はギプスや副木(固定するための板のようなもの)で関節を固定します。
整復・固定は、痛みが強く猫が暴れてしまうため、通常、全身麻酔をかけて行います。

◆外科手術

靭帯の断裂や骨折を伴う場合、外科手術を行います。
手術の後は、ギプスをしたり手足を吊るしたりして関節を固定し、安静に過ごさせます。
安静期間は、数日~数週間です。
入院して安静にさせることが一般的ですが、猫にストレスがかかりすぎる場合には、自宅で療養させることもあります。
自宅で療養する場合には、ケージに入れるなどして、強制的に安静にさせます。

◆排泄のサポート

しっぽを脱臼した場合、しっぽにある神経(尾骨神経)を経由して、骨盤神経や陰部神経、下腹神経など他の神経に障害が出ることがあります。
これを「しっぽ引っ張り外傷」と言います。
排尿や排便に困難が生じることがあり、その場合、排泄のサポートが必要です。
排尿が困難な場合は尿道にカテーテルを挿入し、排便が困難な場合は薬で便を柔らかくします。

◆レーザー治療

膝蓋骨脱臼は、症状の程度が4段階に分かれていて、症状により治療内容が異なります。
レーザー治療などで、一時的に痛みや炎症を抑えることもあります。

◆治療にかかる費用

治療費は、症状や動物病院によって異なります。
股関節脱臼の場合、手術を伴わない整復の場合5,000円~25,000円、外科手術を行う場合30,000円~75,000円です。
膝蓋骨脱臼では、30,000円~75,000円です。
その他、レントゲン検査に1,000円~5,000円、全身麻酔に5,000円~12,500円かかります。

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脱臼を予防するには

◆外へ出さない

上で述べたとおり、猫の脱臼のほとんどは外傷性脱臼であり、原因は交通事故や高いところからの落下が多いです。
したがって、最大の予防法は、猫を外に出さないことです。
完全室内飼育をしたうえで、脱臼しないような室内環境を整えましょう。
避妊・去勢をしていないと、外に出たがったり、外で他の猫と喧嘩になったりするので、避妊・去勢手術をすることも予防法の一つです。

◆肥満対策

体重が重い子は、日常的に関節に負担がかかり、脱臼するリスクが高まります。
肥満にならないように、体重管理をしっかり行いましょう。
一方で、栄養状態が悪い場合もリスクが高くなるので、バランスの良い食事で健康な骨と筋肉を作ることも大切です。


猫が脱臼しないような部屋作りを!

キャットタワーの上の猫

◆スムーズに上下運動できる工夫

完全室内飼育をしていても、背の高い家具などから飛び降りた時に脱臼をする危険性はあります。
高さの違う家具やキャットタワーを配置して、大きな段差がないようにしましょう。
スムーズに上下運動できるようにしてあげれば、着地時の脱臼のリスクを下げることができます。

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◆床がフローリングの場合

高い場所から飛び降りた時に、フローリングなど滑りやすい床の場合、着地の際に足を滑らせて脱臼する可能性があります。
また、走り回っていて急な方向転換をしたときに滑ることで、負荷がかかったり転倒したりすることもあります。
高いところからよく飛び降りる猫や、活発な子がいる場合は、カーペットを敷くなど滑りにくい工夫をしてあげましょう。

◆ベランダ対策

ベランダから転落して脱臼する事例もあります。
特に、マンションの高層階に住んでいる場合には、注意が必要です。
ベランダに出られないように窓に柵を設置したり、落下防止用の柵やネットをベランダに設置したりしておきましょう。

◆シニア・体の大きい子は特に注意

上述のとおり、体重が重い子は脱臼のリスクが高まります。
体の大きな大型猫も、体重が重い分、関節への負担が大きいので注意が必要です。
シニア猫は、身体能力の衰えから、落下や着地の失敗のリスクが高まります。
また、関節の周りの筋肉が衰えている点でも、脱臼しやすいので気をつけてあげてください。


まとめ

猫は具合の悪さを隠しがちなので、軽度の脱臼の場合飼い主さんが気づきにくいです。
しかし、脱臼の自然治癒は期待できず、重症化したり関節が変形したままくっついてしまったりすることもあります。
また、猫の脱臼は癖になり繰り返すことがあるので、飼い主さんが自分で元に戻すのはおすすめできません。
足を浮かして歩くなど、普段とは違う様子に気づいたら、すぐに動物病院に連れていきましょう。
猫の脱臼の多くは、外から無理な力がかかることで起きる外傷性脱臼で、原因は交通事故や高所からの落下が多いです。
屋外で過ごす子は脱臼のリスクが高くなるので、完全室内飼育が一番の予防法と言えるでしょう。
室内でも、高所からの落下や着地時に滑ることなどで脱臼することがあるので、室内環境をもう一度見直してみましょう。
治療費は高額になるので、ペット保険への加入を検討してみてもいいでしょう。

※こちらの記事は、獣医師監修のもと掲載しております※
●記事監修
drogura__large  コジマ動物病院 獣医師

ペットの専門店コジマに併設する動物病院。全国に15医院を展開。内科、外科、整形外科、外科手術、アニマルドッグ(健康診断)など、幅広くペットの診療を行っている。

動物病院事業本部長である小椋功獣医師は、麻布大学獣医学部獣医学科卒で、現在は株式会社コジマ常務取締役も務める。小児内科、外科に関しては30年以上の経歴を持ち、幼齢動物の予防医療や店舗内での管理も自らの経験で手掛けている。
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SHINO

SHINO

保護犬1頭と保護猫3匹が「同居人」。一番の関心事は、犬猫のことという「わんにゃんバカ」。健康に長生きしてもらって、一緒に楽しく暮らしたいと思っています。

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