猫の縄張りはどれくらい広い?縄張りに関わる行動についても詳しく解説

2023.04.15

猫の縄張りはどれくらい広い?縄張りに関わる行動についても詳しく解説

「猫の縄張り」というワードはよく耳にしますが、実際にどこが縄張りになっているのかを知る人はいないのではないでしょうか?実は、性別によっても資源の豊富さによっても縄張りの広さは変わるのです。おうちの問題行動にもなる「マーキング」や「鳴き声」も縄張りと深い関係があるでしょう。今回は、猫が縄張りを作る理由やその範囲について詳しく解説していきます。猫についてより深く知ることで、さらに理解を深めていきましょう。

猫の縄張りとは?

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縄張りとは、自分の匂いを残すことで他の猫が侵入することを積極的に拒む領域のことで、「テリトリー」とも呼ばれます。猫は縄張りと決めたら、そこを定期的に巡回し、マーキングして歩くようになります。マーキングには通常、「スプレー」と呼ばれる尿が用いられます。おうちで猫ちゃんがマーキングをして困っている飼い主さんも少なくないでしょう。スプレーは、普通のおしっこと違って、しっぽを高く上げて壁などに撒き散らすように排出するおしっこのこと。独特のキツイにおいを放ちます。一方、うんちに関しては、縄張りの辺縁部では隠さずにそのまま残されることがあるといいます。これが、縄張りを示す目印として機能しているかどうかは、いまだに不明ではあります。主に、猫はスプレーによって縄張りを主張しているのですね。


猫が縄張りを作る理由

猫は縄張り意識が強いイメージがありますが、猫にとって縄張りはどれほど重要なのでしょうか?猫が縄張りを作る理由を見ていきましょう。

◆安全に生活する

猫は、安全に生活するために縄張りを作ります。基本的に、猫は群れを作りません。正確には、メス猫は群れの中で生活するものもいれば、単独生活をするものもいます。オス猫は単独で放浪します。
群れでも単独生活でも、ある程度自分の中で生活圏を決めておき、その範囲を縄張りとする必要があるでしょう。縄張りを作ることで、生活スペースやエサなどの「資源」を確保できるためです。
これらは生活するうえで必要不可欠なもの。縄張りにほかの猫が多くいると、資源の奪い合いによって、安心して生活をすることができません。
また、猫同士の喧嘩により怪我をしてしまうと、食事を探すのも難しくなり、お互いにとってデメリットとなります。
マーキングによって、それぞれの猫が自分の縄張りを示し、縄張りの住み分けをすることで、無駄な争いを避け、安全に生活することができるのです。

◆子孫を残す

オス猫は、子孫を残すために縄張りを作ります。
メス猫は食事を確保するために縄張りを作ることが多いため縄張りの範囲は狭めですが、オス猫はさらに子孫を残すために縄張りを作るため、メス猫よりも広い範囲の縄張りを持ちます。
メス集団の中で生まれ育ったオスの大多数は、1~2歳の間に集団から自発的に離れ、それ以降は近づきません。これは近親交配を避けるための本能的な行動だと考えられます。
春先にメス猫たちが繁殖期を迎えるに伴って、オス猫の生活圏は急激に増加します。メス猫たちが発散するフェロモンに引き付けられるためです。行動範囲は平均するとメス猫の3倍近くに膨らみ、エネルギー消費量から見ると4倍以上とのこと。
オス猫は、自分の遺伝子を後世に伝える可能性を高めるため、複数の地域や集団で、なるべく多くのメス猫と交尾するのが普通です。できる限り可能性を高めるためにも、広い範囲を縄張りにしてほかのオス猫にメス猫を取られないようにすることが重要なのですね。


猫の縄張りの範囲は?

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猫の縄張りの範囲は実際どれくらいなのでしょうか?メス猫とオス猫の違いや室内飼いと野良猫の違いについてもご紹介していきます。

◆メス猫

メス猫の縄張りは食糧を探すためのものなので、オス猫に比べて狭めです。
野生の猫では、獲物を取るために直径1キロメートルのテリトリーが必要とされています。都会では、およそ直径500メートルを縄張りとして共有および住み分けが行われるとのこと。
縄張りの広さは食料の豊富さに依存するため、獲物を求めてさらに遠くへ広げることもあるでしょう。

◆オス猫

自由に放浪しているオス猫のテリトリーは、おおむね不明瞭。メス猫の縄張りが食料の豊富さによって決まるのに対し、オス猫の縄張りは主にメス猫の存在によって決まるためと考えられています。
メス猫を求めて歩き回ることで、メス猫の約3~3.5倍に縄張りが広がってしまうのです。特に、春先の発情期には活発に動き回って縄張りを広げるでしょう。

◆室内飼い猫

室内飼いの猫は家の中を縄張りとしています。家の中をパトロールする様子が観察されるでしょう。自由に外を歩き回っているような飼い猫にとっては家の周囲も縄張りになりますが、食料が確保されているため野良猫よりも狭いはず。猫の縄張りの広さは食料の豊かさによって大きく変動するためです。


猫に縄張りの争いはある?

縄張りを守るときの最終手段として、猫は威嚇や喧嘩をすることもあります。
猫は、ほかの猫と縄張り争いにならないように、ほかの猫が行動する時間帯を避けてパトロールします。
猫は無駄なエネルギーを使わないよう上手に住み分けており、とても賢いですね。しかし、タイミング悪くバッタリと猫同士が出会ってしまうこともあるでしょう。
偶然にもパトロール中に猫同士が出会ってしまったら、やむを得ず威嚇や喧嘩をして、縄張りを守らなければなりません。
また、発情しているメス猫の鳴き声やフェロモンに誘発されたオス猫が、限られたチャンス狙って喧嘩をすることもあります。
去勢猫には基本見られない喧嘩ですが、去勢時期が遅かったり、ストレスが溜まっていたりすると、似たような喧嘩を起こすことがあります。
多頭飼育のケースでは、常に同じ空間を共有しなければならないため、プライバシーの空間が守られにくい環境になっています。おうちでは食料が確保されるため、縄張りを守る喧嘩というよりもストレスが原因で喧嘩をしてしまうことがあるようです。


猫は縄張りを守るためにはどんなことをしてる?

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猫にとって縄張りが大切であることが分かりましたね。
では、猫たちは縄張りをどのように守っているのでしょうか?猫が縄張りを守る際の行動を「視覚」「嗅覚」「聴覚」の3つの観点から見ていきましょう。

◆パトロールをする

猫はパトロールとして、縄張りを歩き回り、侵入者が来ていないかをチェックします。
もしパトロール中に見知らぬ猫を見かけたら威嚇してけん制します。飼い猫でも、家の中をパトロールしている様子が見られるでしょう。そんな時は優しくそっと見守ってあげるのがいいですね。
我が家の猫は、メス猫でありながら、オスの野良猫を見つけると果敢に威嚇して追い払おうとします。また、窓際で定期的に外の様子を窺っている姿も見られます。飼い猫も家というテリトリーを守っているのですね。

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◆マーキング

猫はマーキングによって縄張りを主張します。柱などに「スプレー」を撒き散らすことで、「ココに参上!」という貼り紙を出しているのですね。猫は、おしっこのニオイをマーカーとして巧みに使っています。オス猫には、生まれつきこのような信号を読み取る能力があるため、相手の縄張りを尊重するのでしょう。
飼い猫では、窓際から見える野良猫に反応してスプレー行為が激しくなることがあります。自分の縄張りだということをしっかり示そうとしているのですね。ただ、飼い主さんにとっては困った行動であり、野良猫が見えないように対処する必要があるでしょう。

◆鳴く

猫は、鳴き声によって自分の存在を示して縄張りを守ります。猫にとって、あらゆる行動シグナルを用いて争う必要がないように距離を保つことが重要なのです。その中で、「鳴き声」というコミュニケーションにより、他の動物との距離を保ちながら突然出くわすのを防いでいるとされています。猫の鳴き声は、「相手との争いを避ける」「縄張りでの接触を避ける」という意味合いで、争いを避けて生活するために発達した行動でもあります。
猫は鳴くことで自分をアピールして、縄張りにほかの猫が入らないようお互いに守っているのですね。


まとめ

猫は食べ物やパートナーなど、生きるのに必要なものを確保して、安全に暮らすために縄張りを作っています。パトロールやマーキング、鳴き声によって、無駄な争いを避けながら猫同士住み分けているとは、なんとも賢いですよね。野良猫だけでなく、おうちの猫ちゃんにも縄張りがあるため、スプレーなど特有の問題行動が起こることもあるでしょう。猫の縄張りに関する理解を深めながら、対処していきましょう。どうしても対応できない場合は、動物病院で相談してみることをお勧めします。



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ゆき

ゆき

小さい頃から動物が好きで、特に猫が好きです。 実家の猫とは20年以上一緒に暮らしており、妹のような存在。 大学では獣医学を専攻し、動物行動学に興味をもって勉強しています。


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