多頭飼いを始める前に知っておきたいこと
猫がたくさんいる環境に憧れて、何も準備せず思いつきで次々と何匹も飼うことは絶対にやめましょう。猫の多頭飼いにはメリットもありますがデメリットもあります。まずは飼い主さんと今飼っている猫の状況をよく確認し、新たに猫を迎えることが可能なのか、あらゆる方向から熟考する必要があります。
憧れの多頭飼いを始める前に、一度ゆっくりと考えてみましょう。
◆多頭飼いのメリット
・留守番中に退屈しない
・運動不足になりにくい
・猫同士の付き合いの中から社会性を学ぶ(甘噛みや手加減を覚える)
・飼い主さんが癒される
他にも単頭飼いの猫に比べて、より猫らしい仕草や行動が見られるなど、猫同士にふれあいが増えることによって得られるメリットは多くあるようです。猫は基本単独行動なので、留守番中も寂しいという感情を抱くことがないのかもしれませんが、飼い主側としてはみんなで遊びながら待っていてくれていると思うと気持ちが楽になりますね。
◆多頭飼いのデメリット
・費用がかかる
・飼育スペースが増える
・置きエサができない場合がある
・緊急時の避難方法の確保が難しい
・猫のストレスが大きい
・猫同士の相性が悪い場合がある
◆多頭飼いに必要なスペース
飼育頭数の上限は住居の環境によって異なります。「猫の飼育頭数の上限=自由に出入りできる部屋の数-1」を目安にするとよいでしょう。またトイレの数も猫の頭数分必要です。
猫は「パーソナルスペース」を大事にします。パーソナルスペースとは、他人に近付かれると不快に感じる空間のこと。猫にも近づいてほしくない距離があり、その中にズケズケと入ってきた者に対し、恐怖や怒りを感じます。多頭飼いするためにはそれぞれの猫のパーソナルスペースが確保されていないと猫にストレスを与えることになります。
◆多頭飼いにかかる費用
当然ですが、猫の頭数分飼育費用が増えます。一般的な猫の一頭当たりの飼育費用の目安をまとめてみました。
【生活費】
ドライフイフード | 12000円(1000円/月として) |
ウェッットフード | 85000円(7000円/月として) |
おやつ | 6000円(500円/月として) |
猫砂 | 18000円(1500円/月として) |
爪とぎ | 6000円(500円/月として) |
その他消耗品 | 10000円 |
【医療費】
混合ワクチン接種費 | 5000円(三種混合を年1回) |
ノミ・ダニ予防薬 | 10000円(体重により変動) |
避妊・去勢手術費用 | 10000〜30000円(性別、病院によって変動) |
健康診断費用 | 5000円(1回/年) |
トリミング | 5000〜10000円(1回/年) |
その他事故や喧嘩等で怪我を負ったり、病気等で治療、入院すれば別途費用が必要になります。いざという時のためのペット保険に加入すると掛け金が必要となってきます。
◆災害時の避難方法
単頭飼いの場合、キャリーケースに入れてすぐに避難できますが、多頭飼いの場合はそうもいきません。一人暮らしの場合、家族が出かけてしまっている時の場合など、避難方法は各家庭、各場面によって異なります。
いざという時猫たちをどうやって避難させるか、また猫用の避難用具の備蓄など、しっかりと考えておく必要があります。
多頭飼いの前に!相性の良い、悪い組み合わせは?
留守の多い家では、多頭飼いは猫達が勝手に遊んでいて退屈することもないかな、と考えがちですが、肝心の猫同士の相性が悪いと毎日がストレスの連続となってしまいます。多頭飼いをする際には、できるだけ猫の相性が良さそうな組み合わせを考えましょう。
– 相性の良い組み合わせ –
1. 兄弟姉妹
生後2~7週の猫は「社会化期」という時期を迎えます。社会化期とは外界の刺激に対して順応するための学習期間のことで、この社会化期は逃してしまうとその後二度と訪れることがありません。
社会化期を共に過ごした猫同志を同居させると、そうでない猫同士よりも体を舐め合ったり、ご飯を分け合ったり、寄り添って眠る機会が格段に多いといいます。兄弟姉妹猫はまさに社会化期を共に過ごした猫達。初めて多頭飼いを始めるのであれば、兄弟姉妹猫を一緒に引き取るとうまくいく可能性が高いと言えます。
2. 成猫オスと成猫メス
オス猫とメス猫は縄張り争いやパートナーの奪い合いといった争いが起こらないため、多頭飼いに向いていると言えます。ただし繁殖期になるとスプレー行為や大きな鳴き声を出すようになり、妊娠、出産もありえるので、子猫を望まないのであれば同居前に必ず避妊、去勢手術を済ませておきましょう。子猫の場合は時期が来たら速やかに手術を行いましょう。
3. 成猫メスと成猫メス
ライオンのメスは7~8匹が群れを成して共同生活を送ります。同じネコ科のイエネコもそれは同じで、メス猫を飼っている状況に新たに成猫メスを迎えても、大きな喧嘩などのトラブルは起こらないでしょう。二匹に同等の関心と愛情をかけていれば、問題なく生活していけることが多いようです。
4. 親猫と子猫
当然のことですが、相性は最高です。自分の産んだ子猫に対して攻撃的になることは考えにくく、野良猫のように親離れの時期がないイエネコの場合、親子関係は永続的に続くため、良好な関係が続きます。
5. 成猫と子猫
すでに猫を飼っている状況で新たに猫を迎えるのなら子猫がおすすめ。子猫に対して「縄張りを荒らす敵対者」とみなし攻撃的になる猫は少なく、それどころか甲斐甲斐しく子猫の世話をする方が多いようです。眠っていた母性(父性)本能が騒ぐのか、一生懸命お世話をしてくれる世話焼き猫になってしまう場合も。
しかし飼い主さんが子猫ばかりに気を取られていると、先住猫がやきもちを焼いて関係は反転してしまうこともありますのでご注意を。
その他、運動レベルや性格は似ている、先住猫が過去に猫と触れ合った経験がある、というような場合は相性が良いことが多いようです。
– 相性の悪い組み合わせ –
1. 成猫オスと成猫オス
オス猫は、メス猫を他のオス猫と競い合って生きています。ですから去勢手術をしていないオス猫同士が同じ空間で暮らしていると、喧嘩で流血騒ぎに発展することもあります。お互いに縄張り意識が強いので、テリトリーを奪い合って喧嘩が絶えず、どちらか一方が家出してしまうという状況も。ストレスで病気を発症する可能性もあります。
オス猫同士を飼う場合は、あらかじめ去勢手術を施すことが必須です。
2. 高齢猫と子猫
相性が悪いというよりも注意が必要な組み合わせです。高齢猫は成猫のように縄張り意識が少なく、他の猫に対する敵対心も少なくなってきています。新たに迎え入れた子猫に対しても攻撃的になることはありません。けれど子猫の活発な遊び方に付き合っているうちに体調を崩したりストレスが溜まってくることも多いので、飼い主さんは高齢の先住猫に対して十分注意を払う必要があります。
高齢猫がうんざりしてきた様子が見られたなら、飼い主さんが子猫と遊ぶようにして、高齢猫が疲れてしまわないようにしましょう。
多頭飼いを始める時の準備は?
よく考えて、その上で多頭飼いを始めようという時、まずは何を準備すれば良いでしょうか?
◆高さの異なる台を設置する
猫は安心できる場所を確保したい動物です。キャットタワーや本棚などでいろいろな高さのスペースを準備して、猫がのんびりできる場所を作りましょう。猫同士の喧嘩の後、気持ちを鎮めるためにも1匹だけで過ごせるスペースは必要です。
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◆食事の食器を準備
新たに迎える猫のための食事や水の食器を準備しましょう。最初は先住猫と別の場所で食事をする可能性が高いので、食事スペースとともに水飲みスペースも新たに準備します。
年齢が違っていたり、持病を持っている猫は食事内容も異なるため、どの猫がどのフードを食べたか、把握できるようにする必要があります。
◆トイレの増設
快適な暮らしが送れるように、猫を迎える前にトイレの数を増やしてあげましょう。トイレが気に入らないとストレスで別の場所で粗相をすることがあります。トイレは常に清潔にし、猫砂の種類も考慮しましょう。トイレは離れた場所に増設します。
◆トイレや食事場所、水飲み場所への導線を考える
最初から仲良くなってくれれば問題ありませんが、なかなか先住猫と新入り猫が馴染めない場合は、トイレや食事場所への導線が一つになってしまわないように注意します。複数の経路を確保しておくと猫同士が遠慮することなく排泄や食事をすることができます。
◆ケージを活用する
新しく迎えた猫と先住猫を対面させる時、新入り猫をケージに入れておくと先住猫のプライドが傷つかずにすみます。
また、多頭飼いを始めてばかりの時期に猫だけで留守番させる場合、それぞれの猫を隔離できる部屋がない時は新入り猫をケージに入れて出かけた方が安心です。そのままで出かけてしまうと、相性が悪い猫同士の場合は喧嘩をしていることがあるからです。ケージの中の方が新入り猫のストレスも少なく済むでしょう。
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いざ憧れの多頭飼い!猫同士の対面の方法は?
多頭飼いを始めるにあたって、最も慎重に行いたいのが初めての対面。上手くいくかいかないかで今後の猫の生活が変わってきます。ほぼ100%威嚇の嵐になってしまいますが、そこは気にせず徐々に距離を縮めて行きましょう。
◆対面の手順
1. 新しく猫を迎える前に、あらかじめ先住猫に新入り猫の匂いのついた布などの匂いを嗅がせておく。できれば新入り猫にも先住猫の匂いを嗅がせておく。
2. 新入り猫が家にやってきたら、まずは別の部屋に隔離する。部屋が用意できない場合はケージの中に新入り猫を入れ、ケージには大きな布を被せて外から見えないようにして、新入り猫がストレ
スの少ない状態で過ごせる空間にする。
3. それぞれの使っているおもちゃや毛布などを交換して、匂いを嗅がせる。
4. 別々の部屋で隔離している場合は、新入り猫の部屋に先住猫を入れて点検させ、同時に新入り猫には家全体を点検させる。その後、直接対面させる。時間は短く、30分以内で行う。
5. ケージの場合は先住猫がケージの中の新入り猫のことがあまり気にならない様子を見せ始めた頃に、新入り猫をケージから出して直接対面させる。時間は短く、30分以内で行う。
6. 4または5の同時期に同じ部屋内の離れた場所で食事をさせる。
7. 徐々に食事する場所の距離を縮めていく
8. 並んで食事ができるようになればOK
猫によって、馴染む時間や方法は異なると思います。相性の問題もあります。各ステップを焦らずに行い、先住猫を優先に根気よく対面させていきましょう。
相性が悪い時、喧嘩をしてしまう時の対処法
相性が悪くて、どうしても喧嘩してしまうことはよくあること。特に仲が悪くなくても喧嘩は必ず起こります。そんな時、飼い主さんはどうすれば良いのでしょうか?
◆そのまま見守る
猫同士の間で決着がつかないままに飼い主さんが止めに入ってしまうと、猫にはストレスが残ったままになり、また喧嘩が始まってしまいます。優劣の決着がつくまで見守っていましょう。
◆相手から逃げられる場所を作っておく
猫が本気で攻撃する時は相手の攻撃から逃げられないと悟った時です。喧嘩をして状況が不利になった時、さっと逃げ出せるだけのスペースがあれば酷い怪我をするような喧嘩にまで発展しません。新入り猫がケージで過ごしているなら、ケージの扉は常に開け放しておきましょう。ケージの中も逃げ場所になります。
◆先住猫を優先する
猫はクールなようでやきもち焼きです。新入り猫ばかりをかわいがってしまうと先住猫はやきもちを焼いて新入り猫と喧嘩をしてしまいます。しかし新入り猫を放っておくことも好ましくありません。先住猫を優先しつつ、基本は両者を平等に扱ってくださいね。
◆どうしてもうまくいかない時は
いつまでも仲良くならない、流血するような喧嘩ばかりする時は、部屋を分けて飼育しましょう。1階と2階など、それぞれが顔を合わなくても良いようなストレスの少ない空間で飼育します。
まとめ
いかがでしたか?
猫の多頭飼いは、うまくいけば飼い主さんにとって本当に心が癒される環境です。しかし猫への負担もそれなりにありますので、無理をせず慎重に行ってください。ストレスで病気になってしまうこともあります。
我が家はオス成猫の元に、3ヶ月のメスの姉妹猫2匹を迎えました。対面は子猫を迎えた翌々日で、威嚇はお互い1回きり。あとは子猫達の方からオス猫を母猫の様に慕い、オス猫は「なんちゃって授乳」するまでになってしまいました。
猫の相性は千差万別です。今は喧嘩ばかりしていても、1ヶ月後には仲良くなっているかもしれませんよ!根気よく、焦らず待っていましょう。
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