猫の避妊手術・去勢手術とは?
猫に子供が生まれないようにする手術で、オスの場合を去勢手術、メスの場合を避妊手術と言います。
◆オス猫の去勢手術について
1. 内容
去勢手術では、オス猫の睾丸を手術で摘出します。
手術は事前に予約をしておきます。手術後は日帰りや1日入院で済むことが多いですが、動物病院の方針に従ってください。
手術では縫合の必要がないことが多く、その場合、抜糸のために病院に行く必要がありません。ただ、手術の経過観察のために一度診てもらうと安心できることでしょう。
2. 時期
手術を行う時期は、オスも生後5ヶ月以降から1歳までの間で、猫の体調をみて獣医師と相談して行うことをおすすめします。
体力や、成長具合など個体差もありますので、かかりつけの獣医さんと相談して決めることが大切です。
3. 費用
費用は10,000円〜20,000円前後と、動物病院により異なります。
日本獣医師会による家庭飼育動物の診療料金実態調査(平成27年度)では去勢手術 12,652円(中央値)となっています。
◆メス猫の避妊手術について
1. 内容
メス猫の子宮と卵巣を手術で摘出します。また、卵巣だけを切除する場合もあります。
手術は事前に予約をして、当日に臨みます。1週間ほど前から予約が必要な場合が多いでしょう。手術後もすぐに自宅に連れて帰れるわけではなく、少なくとも1泊入院が必要なことが多いようです。動物病院でよく説明を聞き、計画をたてておく必要があります。
手術後10日~2週間ほどして、抜糸のために動物病院に行くことになります。
メスの場合、開腹手術になれば回復までに時間がかかります。猫の体の負担を減らせるように、腹腔鏡手術を行う動物病院も増えてきています。
手術後は薬を処方され、傷口を舐めないように、しばらくエリザベスカラーを装着して過ごすことになります。
2. 時期
手術を行う時期は、生後5ヶ月以降から、猫の体調をみて獣医師と相談して行うのがおすすめです。
メス猫は早い子で3~4ヶ月頃から発情期が始まりますが、発情期が始まる前に手術を行うと、問題行動を起こす確率が減るといわれています。
ただし、早期手術は体力面での問題等もあるため、いつ避妊手術をするかは、飼い主と獣医師の判断により決めることになります。
3. 費用
避妊手術の費用は15,000〜20,000円前後と、動物病院により異なります。
他にも血液検査や薬などの料金がかかることもあります。
ちなみに、日本獣医師会による家庭飼育動物の診療料金実態調査(平成27年度)では、避妊手術(卵巣切除)19,833円 避妊手術(卵巣子宮切除)20,986円 (中央値)となっています。
猫の避妊・去勢後の性格・行動・体型の変化は?
避妊や去勢手術をした後には、猫の性格や行動に変化があると感じる飼い主さんが多いようです。どのような変化でしょうか。
◆性格の変化について
・ずっと子供のまま?
人に懐きやすく、甘えるようになると言われます。ずっと子供のままのような性格に変わると感じる飼い主さんが多いようです。
オス、メス猫ともに攻撃性が強くて気性が激しかった場合、穏やかになるということもあります。また、扱いにくく言うことを聞かなかった猫が、とても従順になる傾向があります。
例えば、以前はあまり寄ってこなかったのに、手術後はスリスリしてくるようになったり、甘えて来たりします。
成猫になるとじゃれたり甘えてきたりすることが減っていくことが多いものですが、避妊や去勢をした猫は、ずっと子供のようにじゃれてくるようになります。
・中性的になる
性欲によるストレスが減るために、全体的に落ち着いて、人や他のペットにも寛大になります。オス猫はメスらしく、メス猫はオスらしくなるとも言われます。
具体的には、オス猫であれば、オス同士の喧嘩が減り一緒に過ごせるようになります。メス猫はメス同士で集まっていたのが、単独行動を取ることが増えるということもあります。
理由として、手術によって男性ホルモンと女性ホルモンの割合が近くなるので、中性的な性格になるためだと考えられます。
個体差がありますので、全ての猫に同じ行動の変化があるわけではありませんが、性格が手術の前と後で変わることが多い、ということは覚えておくと良いでしょう。
◆問題行動の変化について
・オス猫の場合
オス猫の場合、おしっこを壁などに吹きかけるスプレー行為がなくなります。多くの飼い主さんが、発情期のスプレーで困るので、これが一番大きく変わることだと言えるでしょう。
またメスを求めて、独特の声で鳴いて、外に出たがったりうろうろしたりすることがなくなります。
・メス猫の場合
メスの場合も、大きな声で昼夜を問わず鳴いていたものがおさまります。発情期にあまりフードを食べなかったのが、以前よりも食べるようになります。
また、メスもスプレー行為をしますが、こちらもなくなります。体を地面にこすりつけて、ころんころんところがったり、メス特有のお尻を高く上げたりする行為も減ります。
◆体型の変化について
発情期によりパートナーを求めて動き回っていた行動が、手術することでなくなります。また、夜中でも大声で鳴いて、体力を使っていた行動もなくなりますので、睡眠時間も増えます。
その結果、手術前と同じ量のフードを食べていれば、太りやすくなることになります。
ホルモンバランスが変わることでも太りやすくなると言われていて、特にオスの方が太りやすい傾向があるようです。
猫の避妊・去勢手術のメリットは?
◆性格が変わる
攻撃性があったりなつかなかったりと、飼いにくいと感じていた猫の性格が変わって穏やかになることが多くあります。
個体差はありますが、飼い主さんが猫の手術後に何らかの変化を感じることがほとんどです。
◆殺処分を減らせる
避妊や去勢手術をすることにより「望まない子猫を増やさない」ということがあげられます。
飼えないのに猫が増えると、捨て猫が増えたり殺処分になる猫が増えたりするという、悲しいことにつながります。不妊手術により、産まれたのに殺されてしまう猫を減らすことができます。
◆生殖器の病気を減らせる
オスの場合は精巣を取り除くので、精巣腫瘍になることがなくなります。
メスの場合は、卵巣ガンや子宮内膜炎、乳ガンなどの病気を予防できます。さらに妊娠、出産に伴う病気や命の危険がなくなります。特に、メス猫の乳腺腫瘍の予防には早めに避妊手術することが効果的だと言われています。
◆猫のストレスがなくなる
発情期による性的な衝動がなくなることで、ストレスが減ると考えられます。具体的には性的な欲求不満や喉の渇きや空腹などを感じなくなると言われます。
飼い主さんも、大きな鳴き声がやんだり、動き回ることが減ったりして実際に行動が変わるので、お互いにストレスが減るのではないでしょうか。
結果として、ストレスが減り、病気にかかる可能性も減ることで、健康を保つことが出来て寿命も伸びると言われています。
猫の避妊・去勢後の注意点は?
◆手術後の注意
手術を終えた猫は、少なからずストレスを感じていることがほとんどです。エリザベスカラーをつけて過ごすことになれば、それも不快に感じるでしょう。
また、傷口を舐めるなどして開いてしまったりしないように注意し、服薬指導があればそれを必ず守るようにします。手術後に体調が元に戻るまで、飼い主さんは普段以上に気をつけてケアしてあげることが大切です。
動物病院から指示された術後の検診にも必ず行きましょう。元気になったからと勝手に判断しないことです。
◆体調が落ち着いてからの注意
飼い主が注意する点として、運動量を増やしてあげること、フードを見直すこと、普段の体調管理に気をつけることがあげられます。
避妊や去勢手術のせいとははっきり言えませんが、オス・メス共に避妊や去勢後は下部尿路症候群や肥満になりやすい傾向があります。フードを与えすぎないように注意してください。
猫とおもちゃなどで遊ぶ時間を増やしたり、フードを以前よりカロリーの低いものや去勢、避妊後用として販売されているフードに変えたりするなどして対応しましょう。
ただし、栄養不足になるといけないので、フードについては獣医さんに相談しても良いでしょう。
まとめ
避妊や去勢手術は、猫と暮らす人にとっては切り離せない問題です。人の都合で手術を施すことに、抵抗を感じる飼い主も少なくないでしょう。
確かに猫の自然を壊すことは気持ちの良いものではありません。それでも増えた子猫を飼えない場合には、選択するしかない場合もあります。殺処分されたり捨てられたりする猫が増えないためには、やむを得ないことかもしれません。
ただ、避妊や去勢手術をすることで問題行動が減り、性格も変わることで、猫も飼い主も過ごしやすくなるというメリットがあります。以前より甘えてくることが増えたり、飼い主に寄ってくることが増えたりすると、一緒に暮らしている楽しさがより強く感じられるのではないでしょうか。
逆に、性格が変わることで飼いにくくなると言うことは少ないと言えます。
もし手術後に攻撃になったとしたら、それは手術によるストレスや恐怖心などから来ているものがほとんどです。数日は様子を見て、いたわってあげることが大切です。
もちろん猫にはそれぞれの生まれ持った性格があり、個体差があります。もともとの性格を大切にしながら、猫との暮らしを続けていけると良いですね。
<参考サイト>
家庭飼育動物の診療料金実態調査(平成27年度)
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