猫のしっぽを引っ張るのはNG!
猫のしっぽは色々な動きをしますね。つい引っ張ってしまったことがある飼い主さんもいるのではありませんか?
実は、気軽な気持ちで猫のしっぽを引っ張るのはよくありません。それは、猫をいじめてはいけないということももちろんですが、しっぽには神経が通っていて、それが下半身の部位にもつながる神経だからということなのです。
神経を痛めてしまうと、症状にもよりますが、重大な後遺症を負うことになるかも知れません。特に、しっぽは、脊髄、膀胱や肛門などの排泄を司る神経、後ろ足の神経といったとても大切な神経と繫がっています。
猫にとってしっぽはとても大切で、軽い気持ちで引っ張ることや踏んづけることは、絶対にしてはいけない部位なのです。
猫ふんじゃった症候群とは?
猫ふんじゃった症候群は、正式には「仙尾部外傷」または「しっぽ引っ張り外傷」と言います。
◆猫のしっぽには重要な神経がある
猫のしっぽの骨は付け根から先まで、たくさんの種類の筋肉で覆われていて、付け根から先のほうまで、とても滑らかに動かすことができます。
滑らかな動きができるのは、尾骨神経というものが、第一尾椎から第八尾椎までの尾骨の間から、しっぽの全体に通っているからです。
この尾骨神経は、他の骨盤神経、下腹神経、陰部神経といった大切な神経と、骨盤に近いところで部分的に繫がっています。
また、猫の腰から下の神経は、馬の尾のように細い束になって、しっぽの付け根まで伸びています。この神経の束は馬尾(ばび)と呼ばれています。馬尾の神経は尾骨神経につながっています。
◆しっぽから他の神経へ影響が!
尾骨神経に外から力が加わると、繫がっている他の神経にも影響を及ぼし、歩行障害や排尿・排便障害、下半身の障害などが起こります。これが猫ふんじゃった症候群です。
つまり、一つの部分に外傷が加わっただけでも、他の部分にも障害が発生してしまうのですね。これが猫のしっぽを引っ張ってはいけない、という理由なのです。
猫ふんじゃった症候群の症状
猫ふんじゃった症候群になった場合、猫にどんな症状が現れるのでしょうか。
・しっぽを触られるのを嫌がる
しっぽに痛みがあれば、触られるのを嫌がります。外傷を加えられた時の痛みだけでなく、神経の痛み、後から炎症を起こした痛みなどがあります。
・しっぽが折れている、曲がっている
しっぽの骨が折れたり、脱臼したりして、曲がっていることが目に見えたりします。どちらも痛みがあるので、猫の様子を注意深く見ていればわかります。
・しっぽを動かせない
骨折、脱臼などのほか、神経を痛めていてしっぽを動かせない、動かす筋肉に脳からの信号が届かないため動かないということが考えられます。
・排尿、排便のコントロールができない
しっぽを傷めることで、排泄を司る神経も痛めてしまうことがあります。自力で排尿できずに膀胱に尿がたまったり、排便がコントロールできずに垂れ流してしまったりするということが起こります。
・後ろ足が思うように動かせていない
後ろ足の神経を痛めてしまえば、後ろ足がうまく動かせなくなっています。
猫ふんじゃった症候群の原因・予防法
猫ふんじゃった症候群を発症する場合、どのようなパターンが考えられるのでしょうか。対策と合わせてご紹介します。
◆しっぽを踏まれた
飼い主がしっぽを踏んでしまうことで起こります。布団や毛布の下に隠れていて見えないので踏んでしまったり、猫が足元に急に来て踏んでしまったりする、などです。
予防法としては、踏んでしまう側が気をつけるということになります。猫と暮らしている飼い主さんは、常に意識して生活するべきだと言えますね。
また、猫の生活空間が安全になるように工夫するということも予防法になります。ベッドを作り、踏んづけそうな場所に置かない、毛布を床に置いておかないなどです。
◆しっぽを引っ張られた
飼い主さんや小さな子供など、人間が故意に猫のしっぽを引っ張ることで起こります。もし外に出ている猫であれば、悪意のある誰かが引っ張ることもあり得ます。
飼い主さんは、猫のしっぽを引っ張ることは猫踏んじゃった症候群につながる恐れがある、ということを自覚しておく必要があります。
家族にも理解してもらい、幼い子供が猫のしっぽを引っ張ることのないように気をつけましょう。子供と猫だけにしないということも予防になるでしょう。
猫を外に出さないようにする、ということも予防になるでしょう。猫を色々な危険から守ることになります。
◆しっぽを戸に挟まれた
引き戸でも、開き戸でも、不注意により猫のしっぽを挟んでしまうことがあります。猫が飼い主の後について部屋に入って来ていたり、空いたドアのところに寝ていたり、ということで挟んでしまう可能性があります。
飼い主が戸を閉める時に、常に気をつけることはもちろん予防になります。また、ドアが最後まで閉まらないように、ドアストッパーを取り付けることも出来ます。
◆高い場所からお尻を下にして落ちた
猫は高いところから飛び降りても基本的には着地出来ますが、うまくいかない時もあり得ます。
落ちたところが高すぎたり、落ちた時の体勢が悪かったりという理由からです。また、飼い主さんが猫を放り投げたりすることでも起きる可能性があります。
猫を外に出さないことで、外の高い場所での事故は防げます。家の中でも、高すぎる場所には行けないようにする、軽い気持ちで放り投げたり落としたりしないということで予防になります。
◆犬など他の動物にかまれた
外にいた猫が、野良犬や散歩中の犬に噛まれることがあるかも知れません。犬が猫のしっぽを噛んで引っ張ることも猫ふんじゃった症候群の原因になります。
外でなくても、同居している犬が猫のしっぽを噛んで引っ張ることも起こり得ますね。飼い主が一緒にいる時は、気をつけて見ておいてあげましょう。
外出して留守番させる時には、別々の部屋にいさせたり、ケージに入れておいたりするなどの方法をとる必要もあるでしょう。猫と犬の仲がよくない場合には、なおさら用心するべきです。
◆交通事故にあった
外に出ている猫には、常に危険があります。特に交通事故は、猫の命にかかわります。はねられるのはもちろん、しっぽをタイヤに巻き込まれたり踏まれたりすることで、猫ふんじゃった症候群になることもあります。
猫を室内飼いにすることで、交通事故の危険からは逃れられます。外に出している時の危険を考えれば、気安く猫を外出させないことがいちばんの予防です。
猫ふんじゃった症候群の治療法
治療法は、動物病院での処置になりますが、治癒するまでに時間がかかることも多く、飼い主さんが猫と暮らしながら治していくことになります。
◆まずは動物病院で検査を
骨折や脱臼など怪我をしていれば、まずそれらの処置をすることになります。
その後に、排泄問題や後ろ足の麻痺などの症状があれば、対処しながら治していくということです。
外傷が起こってから数日(48時間)以内にしっぽの付け根周りの感覚があれば、回復する見込みがあると言われています。症状にもよりますが、麻痺してしまっても、回復の見込みがないわけではなく、もっと時間がかかっても感覚が戻ったり、排尿機能が回復したりということもあります。
愛猫のしっぽに違和感を感じる場合は、すぐに動物病院へ行くようにしましょう。
◆排泄の補助をする
排泄に問題がある時には、飼い主さんが排泄の補助をすることになります。症状に応じたやり方をする必要がありますので、獣医さんでよく話し合い、説明をしてもらうことになります。
具体的には、排尿が出来ない場合には、尿道カテーテルなどで膀胱の尿を出します。
排便が出来なかったり、漏らしてしまったりする場合には、浣腸したりマッサージして排便させたり、お尻を拭いたり洗ったりして清潔にしてあげたりするなどです。
◆下半身の補助をする
もし後ろ足が麻痺した場合には、生活の補助をしてあげる必要があります。
猫の状態や可動の範囲などにもよりますが、床ずれが起きないように、さらに悪化することのないように、全身の状態を見ながら面倒をみてあげましょう。
しっぽが動かせないなどの症状の場合には、排泄のたびにしっぽやお尻が汚れる可能性があるので、清潔にしてあげる必要もあります。
毎日の生活の中で、飼い主さんがお世話をすることで今までよりも負担は増えるかもしれません。ただ大切な猫のことを思えば、出来ないことではないと言えるでしょう。
また、回復する見込みがないわけではなく、受傷後数日から数ヶ月でも、後ろ足の機能が戻ったということもあります。飼い主さんは根気よくお世話をしてあげて、猫の回復が進むように手助けしてあげることになります。
しっぽの切断という処置が存在しますが、こちらも長い期間があっても機能が回復することがあるので、安易に判断しないようにしましょう。
まとめ
猫ふんじゃった症候群は、いつでも起こりうることです。猫の体にかかる負担を考えれば、日頃の予防をきちんとすることがいちばんの対策です。遊び半分で、猫のしっぽを引っ張ることや、うっかりの不注意で踏んだりすることがどれだけ大変なことか、ということがわかれば、普段の生活も変わってきますね。
猫のしっぽは、体のバランスを取るために重要ですし、気持ちを伝えるのにも大切な役割をしています。猫ふんじゃった症候群にならないように気を配りながら、猫との生活を楽しんでくださいね。
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