猫が鼻キスをする意味は?
猫が鼻キスをするのには、次の意味が考えられます。
◆挨拶をしている
猫同士で鼻キスをする時には、軽い挨拶程度の意味があるとされています。おはよう、こんにちは程度の挨拶で、一瞬だけちょん、と鼻と鼻を合わせるような状態です。
相手の匂いを嗅いで、相手の状態について確認をするほか、あなたに敵意はありませんよという意味合いもあります。
この行為は、オス猫でもメス猫でも、猫の性別に関わらず行われますし、仲の良い猫同士で頻繁に行われるという研究結果があります。
顔は、目や鼻、口などの器官が集まっており、その部分を相手に近づけているわけなので、鼻でキスするほど近づくということは、確かに敵意がないからこそできる行為だと考えられます。
また、知っている臭いであれば、猫は安心することができます。いつも知っている相手に対して、鼻キスをすることで、軽く確認をしているということですね。
猫は尖ったものの先端の臭いを嗅ぐ習性があり、飼い主さんが指を出すとその臭いを嗅ごうとします。そうすることでいつも嗅いでいる飼い主さんの匂いを嗅ぎ、挨拶の意味で鼻キスをしているのでしょう。
◆相手の情報収集をしている
猫の嗅覚は、人間が感知できる最低濃度より1万分の1から10万分の1でも嗅ぎとることができると言われています。
また、猫は臭いを出す臭腺という器官があり、頬や口周り、顎などから臭いを出しています。
鼻と鼻とを近づけ鼻キスしているように見えるのは、お互いにその臭いを確認しあう意味があると考えられます。お互いの情報を、臭いで感じ取っているということですね。
そのため、あまり親しくない、または知らない猫同士は、鼻キスしている時間が長くなるという研究結果もあります。
鼻キスしている時点で大きな敵意はありませんが、挨拶の後、どちらかがシャーっと威嚇をすると、お互いに離れていくという状況もあります。猫が初対面の人間の臭いを嗅ぐのも、相手の情報を得ようとしていると考えられます。
◆相手へ愛情表現
飼い主さんの顔に近づいて鼻キスをしてくる時には、愛情表現の意味も考えられます。
近づいて挨拶の後、匂いをかいで飼い主さんを確認しているということですね。その後、顔や頭などをこすりつけて来て、さらに愛情表現が続くこともあります。
鼻キスだけをチョンとして去っていく時も、相手の存在を確認し、一緒に過ごして安心しているという気持ちを表しているのでしょう。
敵意があったり、警戒していたりする相手に対して気軽な鼻チューはしませんので、相手を認めている態度だとも言えます。
鼻キスする時に鼻が濡れている意味は?
猫の鼻の表面には、「鼻鏡」と呼ばれる細かい溝があります。溝の中は、分泌液や眼と通じる器官から流れて来た涙によって濡れているため、匂い分子を吸着する役割があります。
また、猫の鼻中央から口にかけて、上唇溝と呼ばれる一直線の線(溝)があります。常に毛管作用によって水分を蓄えているため湿っていて、匂いの分子を吸着するのに役立ちます。
以上のような理由から、猫の鼻は湿っており、鼻キスされるとひんやりと感じるのですね。
猫の鼻がひんやり濡れているということは、猫が匂いを嗅ぎとるためにちゃんと意味があり、さらに猫が健康であることのひとつの目安にもなります。
ただし、猫が眠っていたり、寝て起きたばかりであったり、具合が悪かったりすると、鼻があまり湿っていないこともあります。
猫との鼻キスで注意したい感染症
猫と鼻キスをすると、猫と接触することになりますね。猫と接触することで、猫と人両方に移る感染症=人獣共通感染症にかかる可能性があります。
特に、鼻チューをすることで、人間の目、口、鼻といった粘膜に接触しやすくなるので、より感染症にかかりやすくなる可能性があります。
注意したい感染症は、次のようなものです。
◆パスツレラ症
パスツレラ症とは、パスツレラ菌に感染することで、呼吸器症状や皮膚症状が現れます。
高齢者や子供、または糖尿病患者など免疫力の落ちている時にだけ症状が現れる、日和見感染症でもあります。
パスツレラ菌は、猫の口中に高確率で存在するため、猫と鼻キスをすることで感染する可能性も高いと言えます。猫に噛まれたり引っかかれたりすることでも感染しますので、猫に顔を近づける時には注意が必要です。
◆トキソプラズマ症
トキソプラズマ症とは、トキソプラズマという原虫に感染することで発症する病気です。
トキソプラズマは、猫の便にオーシストという卵の状態で入っていて、人間が便を触ったことで主に口の中から体内に入る可能性があります。
また、猫がグルーミングした下で飼い主さんの顔を舐めたりすることでも、オーシストが飼い主さんの口の中に入ってしまうので、猫と鼻キスをすることでも感染する可能性があると言えます。
免疫力が衰えていなければ、筋肉痛や発熱、関節痛など体調不良が見られても、一定の期間が経てば治ります。
しかし、胎児や幼児、病気にかかっているなどの免疫力が落ちた状態であれば、目や心臓などに症状が現れ、神経系の症状が出ることもあります。
◆猫ひっかき病
猫ひっかき病は、猫にひっかかれたり噛まれたりすることで感染する病気です。
猫にとってバルトネラ菌は常在菌であるため、猫には目立った症状は出ませんが、人に感染すると、傷口の化膿や発熱やリンパ節の腫れが起こります。
原因となる菌は、猫の目ヤニ、猫に寄生したネコノミ、また猫の血液や口腔粘膜から検出されるものなので、猫と鼻キスをすることでも感染する可能性があります。
◆クリプトコッカス症
クリプトコッカス症とは、真菌に感染することで発症する病気です。
この真菌は鳩などの糞便に多く存在しているため、鳩の糞便に汚染された周囲の土中にも、空気中にも含まれており、近くで暮らしている猫が感染する可能性もあります。
猫に現れる症状としては、鼻水が多く出るようになったり、鼻水に血が混ざってきたりして、鼻のまわりや肉球などが腫れてくることもあります。
さらに悪化すると痙攣や運動失調などの神経症状が現れ、目の組織に感染すると失明のおそれもあります。
そのため猫と鼻キスをすることで、人間にも感染する可能性が高くなります。
人間に出る症状としては、呼吸器に症状が現れ、鼻水が増えて鼻の中に肉芽腫ができることもあります。さらに頭痛や発熱が見られ、悪化すれば髄膜炎や脳炎の可能性もあります。
◆皮膚糸状菌症
皮膚糸状菌という、一種の真菌が感染することで発症する病気です。
猫が皮膚糸状菌に感染すると、顔や耳、手足の一部分などに丸い脱毛が見られ、かさぶたやフケなども発生します。
人が感染すると、白癬という感染症になります。感染した場所が赤くなって、かゆみを伴うこともあり、皮膚が白くかさかさとした状態になることもあります。また、自覚症状がないこともあります。
白癬は、たむし、いんきん、爪水虫、しらくもといった風に、感染した場所によって呼び名が変わります。病原菌を持った猫と接触することで感染するほか、感染した猫を触った人から飼い猫などに感染することもあります。
短毛よりも長毛の猫が感染しやすいと言われていて、理由として長毛のために菌が付着しやすいと考えられます。
皮膚糸状菌は接触感染しますので、猫との鼻キスでうつる可能性もあると言えます。
猫と鼻キスをする時気をつけること
猫と鼻キスして接触することでうつる感染症を防ぐには、次のことに気をつけるようにしましょう。
・猫と過剰な接触をしない
・猫に引っかかれないよう気をつける
・猫の健康診断を受ける
外で感染する病気には、猫を室内飼いすることで、かかる可能性を予防することができます。
猫との接触時間が長いほど、人獣共通感染症にかかる可能性も高まります。一瞬くらいの猫との鼻キスであれば問題ないと思われますが、過剰な接触や、口と口が接触するようなキスにならないように気をつけましょう。
また、猫との鼻キスを無理矢理させたりすると、引っかかれたり噛まれたりする可能性もあるので、猫に無理強いして機嫌を損ねないようにしましょう。
人獣共通感染症にかかっていても、症状が現れない猫もいますので、定期的に健康診断をしておくことをお勧めします。
猫が鼻キスをする意味のまとめ
猫が寄って来た時、鼻キスをしてくれるのには、挨拶の意味のほか、相手の確認や愛情表現といった意味もあるということですね。
猫と鼻と鼻を合わせることはなかなか難しい場合もありますが、猫に指を差し出すことで臭いを嗅ぎにきてくれて、結果的に鼻チューをしてくれることもあります。
猫好きにとっては、猫の鼻キスはとても嬉しいものですが、人間の顔を近づける時には、人獣共通感染症に気をつける必要もあります。
普段の猫の体調にも気を配り、猫との鼻キスを程よい距離感で楽しめると良いですね。
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