【獣医師に聞きました】知っておきたい猫ちゃんの病気とは?

2019.01.03

【獣医師に聞きました】知っておきたい猫ちゃんの病気とは?

ネットが発達して「猫 病気」などで検索すると自分の知りたい情報が容易に知ることができる時代になりました。ですが、素人目での判断はとても危険なことです。より猫ちゃんの病気について専門的に知るために医療の現場にいる獣医師さんCaFelier(東京都目黒区)院長の小林充子先生に病気について伺いました。

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小林充子先生

小林充子先生

獣医師、CaFelier(東京都目黒区)院長。麻布大学獣医学部在学中、国立保険医療科学院(旧国立公衆衛生院)のウイルス研究室でSRSV(小型球形ウイルス)の研究を行なう。

2002年獣医師免許取得後、動物病院勤務、ASC(アニマルスペシャリストセンター:皮膚科2次診療施設)研修を経て、2010年に目黒区駒場にクリニック・トリミング・ペットホテル・ショップの複合施設であるCaFelierを開業。地域のホームドクターとして統合診療を行う。

純血種の猫ちゃんには特有の「遺伝性疾患」があります

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獣医療の現場から見ておりますと、昔ながらの「日本猫のミックスちゃん」だけではなく、いわゆる「純血種」の猫ちゃんを伴侶動物として迎えるご家庭が増えているように感じます。

しかしながら、猫種によってかかりやすい遺伝性疾患があることをご存じの飼い主様は、決して多くはないように思われます。

以下に、代表的な疾患3つをご紹介します。

(1)肥大型心筋症

メイン・クーンやアビシニアン、ラグドール、ノルウェイジャン・フォレストキャットなどの猫種は、肥大型心筋症(ひだいがたしんきんしょう:左心室の筋肉が内側に向かって肥大し硬くなる病気)が多いです。

これは、7~8歳で突然発症し、重篤な状態になることがあります。

(2)多発性嚢胞腎症

ペルシャは、多発性嚢胞腎症(たはつせいのうほうじんしょう:両方の腎臓に小さな嚢胞ができて腎機能を低下させていく疾患)の優性遺伝子を持っていることが多いです。

なお、ペルシャは長毛で性格が穏やかなため、エキゾチック・ショートヘアなどの猫種の交配に使われることもあります。

多発性嚢胞腎症になると嚢胞(のうほう)が腎臓の組織と置き換わり、腎機能を低下させていくため、5歳くらいの若い猫でも慢性腎不全になることがあります。

(3)進行性網膜萎縮症(PRA)

シャムやアビシニアン、コーニッシュレックス、ソマリなどは、進行性網膜萎縮症(しんこうせいもうまくいしゅくしょう:眼の網膜が変性して萎縮し、視力の低下、やがては失明にいたる眼の重要な遺伝性疾患)にかかりやすいです。進行すると、失明します。

(4)遺伝性疾患は遺伝子検査でリスクの大小がわかる

遺伝的な疾患は、子猫のときに遺伝子検査をすることで、代表的な遺伝性疾患を起こしやすい遺伝子変異をもつかを調べることができます。


予測できる遺伝性疾患には備えも必要です

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私のクリニックでは、初めて来院された子猫ちゃんの飼い主様に、その猫ちゃんが将来かかりうる疾患についてお話をさせていただいています。

もっとも、子猫ちゃんはかわいくて、ちょこまかと元気に動きます。将来、病気になった愛猫を想像していただけるかというと、ちょっと難しいように感じています。

例えば、肥大型心筋症の場合、飼い主様がお気づきになられたときは、かなり重篤な状態になっていることが多いです。

どの飼い主様も大切な猫ちゃんを元気にしてあげたい、という思いは一緒ですが、知っておきたいのは治療費です。もちろん、進行度や動物病院によって費用は異なりますが、入院と治療で10万円ほどかかってしまうこともあります。

さらに、退院後は投薬をしっかりしながら治療していくので、月に3万円ほどの治療費がかかる場合もあります。症状によっては、入退院を繰り返して、総治療費が40~50万円にのぼってしまうことも珍しくない疾患です。

最近では、獣医師からの紹介状が必要ですが、猫の心臓手術など伴侶動物への高度医療を行う施設もあります。ただし、国産車が買えるくらいの治療費がかかることも稀ではありません。

心臓の手術を行うかは飼い主様のお考え次第ですし、手術以外にも症状を緩和する治療法はあります。

万が一に備えて猫ちゃんのための貯金、もしくは「愛猫の治療の選択肢が増える」という点で、ペット保険を利用するのも手かと存じます。


ほとんどの猫ちゃんはシニアになると「慢性腎不全」になります

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「うちの子は雑種だから備えは必要ない」というわけではありません。

イエネコの祖先は、約13万年前に中東の砂漠などに生息していたリビアヤマネコであると言われています。元来、水の少ない地域で暮らしてきたので、猫ちゃんは水をあまり飲みません。にもかかわらず、肉食でたんぱく質が多い食生活なので、腎臓に多大な負担がかかります。

さらに、腎臓において、血液を濾過し、必要なものを再吸収し、濃縮する、という過程を経ておしっこの原型を作り出す基本的な単位であるネフロンが、ワンちゃんの1/2しかありません。

シニアになると慢性腎不全(腎臓の機能が徐々に低下し、機能不全に陥った状態)が増えるのは、猫ちゃんの宿命ともいえます。

日本猫のミックスは、若いときはとっても元気で健康ですが、12~13歳で慢性腎不全を発症する子が少なくありません。慢性腎不全にはいろいろな治療法がありますが、2日に1回、点滴のために通院されている猫ちゃんもいます。

猫ちゃんの将来に備え、なんらかの準備をしておくといざというとき、慌てなくていいかもしれません。


遺伝性ではなくても、注意すべき病気や疾患、怪我はほかにもあります

(1)糖尿病

アメリカン・ショートヘア、ロシアンブル-、ブリティッシュ・ショートヘアなどの猫ちゃんは、糖尿病になる子がとても多いです。遺伝ではなく、生活習慣で起こるものです。もともと糖尿病にかかりやすい因子をもっているうえ、肥満になりやすいことが原因であると考えられています。

インシュリンを打ち、体重を減らしながら生活習慣を整えるのが一般的な治療法ですが、ご自宅で猫ちゃんに打っていただくインシュリンの量を決めるため、1週間ほどの入院が必要になる場合があります。

インシュリンや注射針、シリンジなどの薬代や医療機器代がかかりますし、治療中の血糖値を計る検査も週1回ほど必要になります。

(2)骨軟骨異形成症

スコティッシュフォールドやアメリカンカール、マンチカンなどは、本来クッションとして関節を保護する軟骨までが骨のように硬くなってしまい、歩行が困難になるなどの症状が出る骨軟骨異形成症(こつなんこついけいせいしょう)が多いです。

(3)怪我や猫エイズ

最近は完全室内飼育で飼われる方がほとんどですが、猫ちゃんを外に出す方もいらっしゃいます。猫ちゃんが外で喧嘩して怪我をしたり、猫エイズをもらってしまったりして治療が必要な場合があります。

完全室内飼育でも、家の中で怪我してしまうことももちろんあります。


病気の早期発見が猫ちゃんを守ります

慢性腎不全など、猫ちゃんがかかりやすい病気や疾患は「早期発見」が肝心です。早期発見と治療で、猫ちゃんのQOL(quality of life、生命の質)がぐっと上がります。

しかし、ほとんどの猫ちゃんは動物病院が苦手です。また、ワンちゃんのように狂犬病予防接種が法律で義務づけられていないので、猫ちゃんの飼い主様にとって動物病院はとてもハードルが高いようなんですね。
さらに、猫ちゃんは具合が悪いことを悟られないようにする子が多いので、動物病院へ来たときには既に病気が非常に進行していて、思ったよりも状態が深刻になっていることが少なくありません。

もちろん、動物病院にかかることがないのが一番の理想ではありますが、なにか困ったことがあった際、相談できる獣医師を探しておく。診察、治療費を年間の家計予算として想定しておくと、動物病院に行きやすくなるのではないでしょうか。

私たち獣医師は、飼い主様と同じように、猫ちゃん、ワンちゃんがずっと元気で長生きしてほしいと思っています。また、飼い主様と予算などのご相談もさせていただきながら、飼い主様と猫ちゃん、ワンちゃんにとって最善の治療を選択させていただきたいと考えています。

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石原美紀子

石原美紀子

青山学院大学卒業後、出版社勤務を経て独立。犬の訓練をドッグトレーニングサロンで学びながら、愛玩動物飼養管理士1級、ペット栄養管理士の資格を取得。著書に「ドッグ・セレクションベスト200」、「室内犬の気持ちがわかる本」(ともに日本文芸社)、「犬からの素敵な贈りもの」(出版社:インフォレスト) など。愛犬はトイ・プードルとオーストラリアン・ラブラドゥードル。


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