猫の舌のザラザラの正体とは?
猫の舌にあるザラザしたものは、糸状乳頭(しじょうにゅうとう)と呼ばれる突起のことです。
このある程度の硬さのあるトゲ状の突起である糸状乳頭は、猫の喉の奥に向かってびっしりと生えています。
このザラザラの糸状乳頭は、単なる円錐形ではなく、円錐を半分に割ったような形をしていて、さらに尖った部分の内部は湾曲して管のような形になっており、喉の方向に反り返っています。
そして適度にしなやかさがあって、猫が舐めて舌を動かすに伴い、縦横に動き、回転するような動きをします。
猫の舌がザラザラしている理由は?
猫の舌に糸状乳頭がありザラザラしているのは、次のような理由があります。
◆理由①獲物の肉を剥ぎ取って食べるため
猫は獲物を捉えて食べる時、一口噛みちぎったあとに丸呑みします。そして骨に残った肉片は、舌で舐めとります。
これは、小さな獲物でもできるだけ多くの肉を食べようとするための行動です。
この時に舌の突起があることにより、ヤスリやおろし金のように、骨についた肉をこそぎとることができます。
野生の世界で生きている猫は、少しの獲物からもできるだけ多くの栄養分を取るため、舌のザラザラが発達してきたものと考えられます。
また、生まれたばかりの子猫は、舌がザラザラしておらず、離乳食が食べられる頃から突起が現れてくるということです。ちゃんと母猫のおっぱいを傷つけないようになっているということですね。
◆理由②毛づくろいをするため
猫のザラザラ=糸状乳頭はスコップのようになっていて、その湾曲したところに自分の唾液をためることができます。ザラザラしていることと、唾液をうまく運べることにより、猫の舌はとても性能の高いブラシとなります。
猫がこのザラザラした舌で体を舐めることにより、抜け毛や毛の間のゴミをすくいとり、毛玉になったもつれをうまくほぐすことができます。
また、唾液を毛皮の下の方にまで送り届けることができるので、体を清潔に保つことができます。
猫にとって体を清潔に保つことは、獲物を捉える時に臭いで気づかれることのないようにしたり、寄生虫やゴミを取り除いて病気になりにくくしたりするため、とても重要なことです。
そのため、舌はブラシのように発達して、被毛の奥や皮膚に唾液を届けて、ホコリや汚れを取りやすくしていると考えられます。
さらに、舌で唾液を被毛や皮膚につけることにより、猫は気化熱を利用して体温を下げていることも明らかになっています。
猫の舌の役割は?
ザラザラとした特徴的な猫の舌には、どのような役割があるのでしょうか。
◆味を感じる
猫の舌には、表面に茸状乳頭という、キノコのような形をした突起が250個ほどあり、そこには味を感じる「味蕾細胞(みらいさいぼう)」があります。
味蕾細胞は、食べたものの味を脳に伝える役割をしています。ザラザラした糸状細胞は、舌の中央あたりにありますが、味は感じません。
人間の舌にも味蕾細胞がありますが、猫の舌は人間ほど味に敏感ではなく、苦い、酸っぱい、しょっぱいといった味はわかりますが、甘い、辛い、うまい(うまみ)といったものはあまりわかりません。
さらに、塩味を感じるしょっぱいという部分は、あまり敏感ではないようです。
肉食である猫が塩をあまり感じられないというのは不思議ですが、肉を食べている限りは塩分が不足することはないため、塩を感じなくても済むような舌になったのかも知れません。
また、猫は甘みをほとんど感じません。本来肉食である猫には、甘みを感じる必要はないため、甘みを感じる感覚が発達していないと考えられます。
◆食べたり飲んだりする
猫は餌を食べる時に、舌もうまく使い、餌を口の中に入れています。小動物を捉えて食べる時には、骨についた肉を舐めとるのにザラザラの舌が役立ちます。
キャットフードを食べる時にも、皿の底についた餌をザラザラの舌でうまく取ります。
また、水を飲む時にも舌を使います。猫が水を飲む時には舌先だけを水につけるので、この時にはザラザラの部分はほぼ働きません。
猫が舌を水につけて素早く引き上げると、水面から猫の口まで水の柱ができますので、それを口の中に入れるという行為で猫は水を飲んでいます。
◆毛をブラッシングする
舌には、毛をブラッシングするという大切な役割があります。単に毛を梳かすだけではなく、舌のザラザラによって毛についたゴミや抜け毛を取り、唾液を皮膚に通し、猫の体を綺麗にしています。
ザラザラについたゴミや抜け毛のほとんどは猫が飲み込んでしまいますが、便と一緒に体外に排出されたり、口から吐き出したりしています。
舌のザラザラは、あまり力を入れず軽いブラッシング(舐める行為)でも、毛の間のゴミをうまくすくい取れることがわかっています。
また、ザラザラは円錐形を半分に切って湾曲させたようなくぼみがあるため、唾液を運ぶのにも適しています。
猫は自分の唾液を、皮膚に行き渡らせることにより、皮膚も綺麗にしていると考えられます。
◆精神を落ち着かせる
猫は舌で自分を舐めたり、相手を舐めたりすることで、精神を落ち着かせていると考えられます。
猫は何かに驚いたり、不安な気持ちになったりすると、体を舐めるという行動をとることで、精神を落ち着かせようとします。
親猫が子猫を舐めるのは、もちろんブラッシングの意味が大きいですが、愛情表現としても舐める行為をしています。
猫同士が舐めて毛づくろいしあうのも、お互いに愛情表現をしたり、リラックスしたりしていると言えるでしょう。
猫の舌から分かる病気は?
猫の舌や口内の様子から分かる病気についてご紹介します。
◆口内炎
口内炎は、猫の口の中に炎症が起きて、ただれや潰瘍ができて腫れたり、出血したりするある病気です。
口の中を見ると、歯茎や舌など、粘膜が赤く腫れ、ただれたりしていて、口臭がしたりよだれが出たりします。また、痛みで食事がうまく取れず、グルーミングもしなくなります。
何かを食べたり噛んだりして口や舌に傷ができるといったことのほか、細菌感染などの病気や、歯石や歯肉炎になっていたり、体調が弱っていたりすることが原因の場合もあります。
治療には、口腔内の洗浄や消毒をし、抗生物質や抗炎症剤を与えます。
◆猫風邪
猫風邪は、猫がくしゃみをしたり、鼻水を出したり咳をしたりする人間の風邪に似た症状が出る病気です。
猫風邪になることで口内炎になり、舌にも異常が現れることがあり、口臭が強くなったりよだれが増えたりします。
原因がヘルペスウイルスの場合には抗ウイルス剤を投与し、カリシウイルスの場合にはインターフェロンで治療を行い、クラミジアが原因の時には抗生物質を与えて治療します。
◆中毒
猫が中毒を起こすと、舌にも症状が現れることがあり、口の中や舌がただれたり、舌の色が蒼白になったりするといった消化器系の症状が出ます。
猫が食べてはいけない人間用の食べ物がたくさんありますし、外に出ている猫は特に毒物を食べてしまって中毒になる可能性があります。
また、猫の体に害のある薬品などが足や被毛に付着した場合、猫がそれを舐めることで中毒になる場合もあります。
ノミ取りの成分で中毒を起こすこともありますし、外に出て農薬を舐めてしまったり、殺鼠剤で弱ったネズミを食べて中毒になったりする場合もあります。
猫が中毒を起こしたものによって現れる症状は異なるので、原因になったものに対しての治療が行われます。
◆猫白血病ウイルス感染症
猫白血病ウイルスに感染することで引き起こされる病気です。
白血病になり免疫力が低下すると日和見感染症を起こしやすくなり、口内炎で舌に潰瘍ができるといった異常が見られることがあります。
白血病の治療薬はないため、現れた様々な症状に対する対処療法が行われます。
◆熱中症
急激に猫の体温が上がることによって、正常な体温を保てなくなったことで様々な体の症状が出る病気です。
真夏に閉め切った熱い部屋に閉じ込められたり、車に閉じ込められたりすることが原因で起こります。
口を開けて舌を出し、ハァハァと呼吸したり、よだれを垂らしたりし、ひどくなると痙攣や呼吸困難を起こして命にもかかわります。
酸素をうまく取り込めないために、舌や歯茎が蒼白になったりすることもあります。
熱中症になった場合には、体を冷やしながらできるだけ早く動物病院で診てもらう必要があります。
猫の舌がザラザラしている理由のまとめ
猫の舌にあるザラザラは糸状乳頭と言い、猫が毛づくろいする時にブラシの役割をし、骨から肉をこそげとったりするのに適しています。
特に毛づくろいでは、唾液を被毛や皮膚につけることで、汚れをとったり、気化熱を利用して体温を下げたりしていて、ザラザラした糸状乳頭が唾液を運ぶ大切な役割をしていると考えられます。
猫の舌のザラザラは、猫が生きていく上でとても重要な部分だと言えるということですね。
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