【獣医師監修】猫の肝リピドーシスってどんな病気?症状や原因、治療法について

2020.02.09

【獣医師監修】猫の肝リピドーシスってどんな病気?症状や原因、治療法について

猫がかからないように気を付けたい病気として「肝リピドーシス」という病気が挙げられます。食欲不振に陥り、分解されるはずの脂肪が過剰に肝臓へ蓄積され、機能が損なわれてしまった状態のことを言います。肝リピドーシスとは一体どんな疾患なのでしょうか?症状や原因、治療法についてご紹介します。

【目次】

猫の肝リピドーシスとは?

弱った肝臓

猫の肝リピドーシスは「脂肪肝症候群」とも呼ばれ、何らかの原因により、2~3日食欲不振に陥り、分解されるはずの脂肪が過剰に肝臓へ蓄積され、肝機能障害を起こした状態のことを言います。

◆猫の肝臓の働きと脂肪について

正常な猫の肝臓では、解毒やビタミン・ホルモンの生成、炭水化物・脂質・タンパク質の合成や分解、消化酵素の生成など、数多くの役割を担っています。

体内の脂肪組織や食事から摂取した脂肪、脂肪酸の循環のバランスこそが重要とされていますが、このバランスが崩れてしまうと肝臓に過剰な脂肪が溜まっていきます。

摂取と消費のバランスが崩れてしまうことによって、脂肪肝となり、肝臓は脂肪空砲を含み、フォアグラのような形状となってしまうのです。

◆悪化すると死に至るケースも…

肝リピドーシスが何よりも恐ろしいのは、末期にならないと目に見える症状があまり出てこないということです。

症状が悪化してしまえば、「肝硬変」まで進行して死亡してしまうケースもあるそうなので、猫にとって厄介な疾患であることは否めませんよね。

他にも中年の猫がかかりやすい肝臓病として、「胆管肝炎」が挙げられますが、この疾患はステロイド剤が第一選択薬となりますので、治療法が肝リピドーシスと全く異なることも知っておきたいところです。

体の小さい猫にとって肝臓は大きな臓器となり、この肝臓が何かしらの病気を患ってしまえば、他の病気を併発してしまう可能性もあるので、注意しておきたい疾患であるとも言えるでしょう。


猫の肝リピドーシスの症状

元気のなさそうな猫

なかなか諸症状が見られないと言われている猫の肝リピドーシスですが、目に見える症状としてどのようなものが挙げられるのでしょうか?

◆猫の肝リピドーシスの症状①食欲不振

一般的に猫の肝リピドーシスで一番多い症状として挙げられるのが、食欲不振です。

本来分解されるはずの脂肪が過剰に蓄積されていってしまえば、体に異常をきたしてしまうのは不思議なことではありませんよね。

猫が大好きな食事の時間に、口をつけないようなことがあれば注意が必要です。

◆猫の肝リピドーシスの症状②嘔吐や下痢

肝リピドーシスを患ってしまうと、脂肪や脂肪酸のバランスが損なわれ、食事からうまく栄養を摂取することも出来なくなってしまうため、胃や腸などにも影響が出やすいです。

そのため嘔吐や下痢を繰り返す猫も多く、食欲もなく嘔吐を繰り返すなどの症状が出始めたのなら、すぐに動物病院に連れて行くようにしましょう。

◆猫の肝リピドーシスの症状③体重減少(元気喪失)

食事もあまり食べない日が続き、嘔吐や下痢を繰り返すようであれば、自然と体重は減少していってしまいますよね。

数日で極端に痩せたことが分かれば、猫の体内で何か異変が起きていることは確実です。

そして元気がない上にほとんど動かず、眠っている時間が急に増えたと感じた場合も、自己判断は難しいので動物病院に受診することをおすすめいたします。

◆猫の肝リピドーシスの症状④黄疸

肝リピドーシスで肝臓が脂肪組織に邪魔をされて、機能がどんどん低下していくと、白目(結膜)や耳から額にかけて、歯茎や口蓋などに黄疸が出ることがあります。

この黄疸が出ている場合、肝硬変や肝不全まで症状が進んでいる可能性もあるので、末期の場合そのまま放置してしまうと数日以内に死亡してしまうこともあるので大変危険です。


猫の肝リピドーシスの原因

猫の肝リピドーシスは、肝臓から脂肪組織へ移動していくはずの脂肪が、そのまま肝臓内に留まってしまうことが原因とされていますが、脂肪の運搬を妨げる全ての機能が、肝リピドーシスの直接的、間接的な原因になりえるとも言えます。

その明確なメカニズムは未だにすべて分かっていないとされてはいますが、主に以下のような原因が引き金になっているのではと考えられています。

◆猫の肝リピドーシスの原因①肥満

脂肪と深い関わりのある肝リピドーシスは、やはり肥満が原因になってしまうことが多いです。

特に中年齢の肥満体の猫は発症しやすいと言われているので、一日の食事量を大幅に上回っていたり、おやつを頻繁に与えたりしている飼い主さんは気を付けなくてはいけません。

知らず知らずのうちに飼い主さん自身が、肝リピドーシスの原因を作ってしまっていることもありますので、愛猫の健康のためにも、肥満体にならないように日頃から注意するようにしましょう。

◆猫の肝リピドーシスの原因‎②基礎疾患

食欲不振や栄養バランスが悪い状態が続いてしまう場合も、肝リピドーシスの原因に繋がってしまうことがよくあります。

特に膵臓が分泌するインスリンの働きが関係する、糖尿病や膵炎はインスリンが不足すると、肝リピドーシスを患いやすくなってしまうので注意が必要と言えますよね。

他にも甲状腺機能亢進症や慢性腸炎、心筋症などの基礎疾患を抱えている猫は、脂肪肝になりやすいとも言われているので、何かしらの基礎疾患を持ち合わせている場合は、速やかに治療を行うことが重要となってきます。

◆猫の肝リピドーシスの原因‎③ストレス

猫は環境の変化にとても敏感なので、引っ越しや赤ちゃんが産まれるなどの変化でストレスを溜めてしまうことがよくあります。このストレスも猫にとって、大敵となります。

ストレスを溜めてしまえば餌を食べなくなってしまうこともあるので、その分肝リピドーシスを発症してしまうリスクも上がってしまうと言えるでしょう。

その他にも栄養のバランスが取れていない食事や、急激なダイエットなどもストレス同様、猫の体に負担をかけてしまうことになりますので、注意が必要となってきます。


猫の肝リピドーシスの治療法

診察を受ける猫

猫の肝リピドーシスの治療は、原因が特定出来る場合には原因に応じた治療を行うのが一般的です。

肝リピドーシスの主な治療法は、以下の通りです。

◆猫の肝リピドーシスの治療法①流動食

肝リピドーシスによって猫が餌を食べなくなり、食欲不振に陥っている際には、一刻も早く栄養のバランスがとれた食事をさせなくてはいけません。

病気によって食欲が低下している場合は、猫が自ら餌を口にしてくれることはほとんどありませんので、流動食の与え方にも工夫が必要となってきます。

胃や食道にチューブ(カテーテル)を挿入し、そこから流動食を強制的に摂取するといった治療が長期的に行われます。

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◆猫の肝リピドーシスの治療法②対症療法

肝リピドーシスの主な原因が明確でない場合などには、対症療法が施されます。

症状の軽減を目的とした治療を行うので、脱水症状を起こしている場合には点滴や輸液、二次感染を防ぐ目的による抗生物質の投与(肝臓で代謝される薬物は避ける)などが行われます。

肝リピドーシスによる死亡例は、ほとんどの場合が発症してから7日間程度に集中すると言われています。この危険度の高い7日間を過ぎれば、猫の食欲が回復するまでは経過観測が行われていきます。

飼い主さんがいかに早く愛猫の不調を見つけ、動物病院での初期治療を施すことこそが、猫の生存率を上げるとも言えるでしょう。

◆猫の肝リピドーシスの治療法③基礎疾患への治療

肝リピドーシスの原因として別の疾患が挙げられる場合は、その疾患への治療が施されていきます。

基礎疾患を治療していくことによって、食欲が出てくれれば自ら栄養のバランスのとれた食事をとってもらうことも可能となるので、猫への負担も徐々に軽減していくことが出来ますよね。

また、肝リピドーシスは肥満が大敵となりますので、もし愛猫が太り気味だと感じるようであれば、ダイエットも視野に入れなければいけません。

急激なダイエットをさせるのではなく、獣医師の指示のもと、安全なダイエット治療を心掛けるようにしましょう。


猫の肝リピドーシスの予防法

猫の肝リピドーシスを予防するためには、一日に必要な摂取カロリーをきちんと飼い主さんが計算し、必要以上に餌やおやつを与えないことです。

肝リピドーシスは完治するまでに多大な時間を要しますので、少しでもこの病気にかからないように日頃から気を付けておく必要性が高いと言えますよね。

肝硬変まで症状が進んでしまえば回復は難しく、余命はわずかとなってしまいますので、愛猫が可愛くて本当に大切なら、感情のままに甘やかさない厳しさも必要と言えるのではないでしょうか。

もし愛猫が今現在肥満傾向にあるのなら、すぐにでもダイエットを開始して、健康診断による検査を定期的に行ってあげるようにしてください。

飼い主さんの心掛けによって、大切なペットを長生きさせてあげることが出来ますよ。

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まとめ

猫の肝リピドーシスは聞き慣れない病気ではありますが、肝臓病の一種と聞けば危機感を覚える飼い主さんも多いことだと思います。

中年の猫がかかりやすい肝臓の二大疾患の一つである肝リピドーシスは、肝硬変まで症状が進行してしまえば、生存率が下がり死亡してしまうケースがほとんどです。

そのため、いかにこの病気にかからないように、愛猫の生活習慣を飼い主さんが管理してあげるかが、カギとなってくるのです。

肝リピドーシスは患ってしまえば、大好きな食事も食べられなくなってしまう上に、長期の治療期間が必要となってきます。猫にとって辛いことばかりですよね。

猫は症状が重症化するまで我慢することが多く、治療を行った際には手遅れになってしまうこともありますので、出来ることなら病気にならないような生活習慣を心掛けていきたいものですよね。

何よりも大切なのは、このような病気にならないために定期的な健康診断を受け、肥満にならないように心掛けてあげること。

愛猫が幸せな毎日を過ごしていけるように、ほんのちょっとの異変を感じた場合は、すぐに動物病院に連れていってあげるようにしましょう。

※こちらの記事は、獣医師監修のもと掲載しております※
●記事監修
drogura__large  コジマ動物病院 獣医師

ペットの専門店コジマに併設する動物病院。全国に14医院を展開。内科、外科、整形外科、外科手術、アニマルドッグ(健康診断)など、幅広くペットの診療を行っている。

動物病院事業本部長である小椋功獣医師は、麻布大学獣医学部獣医学科卒で、現在は株式会社コジマ常務取締役も務める。小児内科、外科に関しては30年以上の経歴を持ち、幼齢動物の予防医療や店舗内での管理も自らの経験で手掛けている。
https://pets-kojima.com/hospital/

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たぬ吉

たぬ吉

小学3年生のときから、常に猫と共に暮らす生活をしてきました。現在はメスのキジトラと暮らしています。3度の飯と同じぐらい、猫が大好きです。

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