1.「脱水症状」とは?
1-1.動物は体の半分以上が“水”
1-2.体の水分の役割
1-3.排泄や呼吸などで体内の水分は減る
1-4.水分が数%減るだけで体に異変が起こる
2.猫が脱水症状!?見分け方のポイントについて
2-1.水を飲まなくなる
2-2.食欲が落ちる
2-3.元気がなくなる
2-4.皮膚をつまんでチェックする
2-5.口のなかの乾燥具合も見てみる
2-6.尿の色が濃くなる
2-7.症状が進むとぐったりしてくる
3.脱水症状を予防するにはどうしたらいい?
3-1.水飲み容器を別のものにしてみる
3-2.水を置く場所を変える
3-3.多頭飼いなら猫ちゃんごとの水飲み容器を準備する
3-4.いつも新鮮な水をあげる
3-5.自動給水器を使った工夫も
3-6.キャットフードから水分を補給
3-7.カルキ臭を消す工夫をしてみる
3-8.猫用のミルク、スープなどで水分補給
4.水分不足以外にも脱水症状になる可能性がある
5.まとめ
「脱水症状」とは?
脱水症状とは、体のなかにある水分が減り、さまざまな異変が起こることを言います。
◆動物は体の半分以上が“水”
人間をはじめ、動物たちの体は、「体液」という成分で構成されています。
体液は、食べ物や飲み物など口から摂取した水分が体のなかで「血液」「組織液」「リンパ液」になります。
体液とは、体のなかにある水分状のものを指します。
体の水分割合は、人間の場合、成人男性なら約60%、成人女性なら約55%。
子供はそれ以上で、新生児は約80%も水分が蓄えられているのです。
動物にとっても水分はとても大切で、猫の体の水分量は約60%と言われています。
◆体の水分の役割
飲み水として口から取り込んだ水分は、体のなかでさまざまな働きをしています。
体の水分として血液が知られていますが、酸素や栄養を全身に運び、そして体にとって不要な“老廃物”の運搬もしてくれます。
とても重要な役割があるのです。
また、水体のなかの水分には、体温調節の機能もあります。
暑いときには、“汗”として水分を出せば、体温を下げることができます。
◆排泄や呼吸などで体内の水分は減る
猫の体の水分は、普通に生活していくだけでも減っていきます。
おしっこやうんちなどの排泄はもちろんのこと、呼吸によっても水分は体から出ていくのです。
足りなくなった水分は、毎日水を飲むことで補わなければいけません。
◆水分が数%減るだけで体に異変が起こる
体内の水分には、酸素や栄養の運搬など生きるために重要な役割があります。
そのため、体重のたった数%程度だとしても、水分が失われると運動機能が悪くなると言われています。
5%を超えるほどの水分減少は、体にとって重大な異変が起こるケースもあります。
猫が脱水症状!?見分け方のポイントについて
私たち人間は、脱水症状が起こり始めると「喉が渇いた」と自分で水を飲んでコントロールができますよね。
でも、猫ちゃんたちは脱水症状の危険について知っているわけではないですし、体に不調があっても飼い主さんに教えてくれるわけではありません。
そこで、飼い主さんが猫の脱水症状について見分け方のポイントを知っておくことが大事です。
◆水を飲まなくなる
そもそも猫は水をあまり飲まない動物です。
いつもよりもさらに「水を飲んでいないかも…」と飼い主さんが感じたときには、脱水症状を起こしているかもしれません。
◆食欲が落ちる
脱水症状になると、水を飲まないことに加えて、食欲も落ちます。
エサをあげても無関心なときは、脱水症状はもちろん、なにか体調が悪いのかもしれません。
◆元気がなくなる
脱水症状の初期には、なんとなく元気がなくなってきます。
動きも鈍くなり、活動時間よりも寝ている時間が増えてくるでしょう。
◆皮膚をつまんでチェックする
猫の背中や首の後ろ周辺の皮膚を軽くつまんでみましょう。
皮膚を上に引っ張り三角形になったら手を離します。
健康な場合は、つまんだ皮膚は手を離せばすぐに元通りです。
でも、脱水症状が起きていると、手を離しても元通りになるまでの時間が長めになるでしょう。
もし、3秒を過ぎてもなかなか皮膚が元に戻らないときは、脱水症状が進んでいるかもしれません。
◆口のなかの乾燥具合も見てみる
体の水分量が保たれていれば、猫の口のなかは適度に潤いがあります。
しかし、脱水になると、口のなかが乾燥し、よだれに粘りが出てきます。
口臭も気になるでしょう。
◆尿の色が濃くなる
猫は、健康なときは透明、もしくは少し黄色がかった色の尿をします。
しかし、脱水症状になると尿の色はいつもとは違った濃さになります。
また、体のなかに水分が少なく、尿の回数も減るのも脱水症状のサインのひとつです。
◆症状が進むとぐったりしてくる
猫の脱水症状は、いつもと違った様子が見られるようになりますが、脱水症状が起こり始めたときには、「この症状なら脱水症状だ!」というような決め手となる見分け方がありません。
ただ、脱水症状が進むと、明らかにいつもと違う様子が見られるでしょう。
「なんとなく元気がない」というレベルではなく、「ぐったりしている」というほどに飼い主さんも感じるかと思います。
荒い呼吸や嘔吐、下痢など、重い症状も目立ってきます。
「いつもと違うかも」という様子に気づくことができるのは飼い主さんだけですが、それが脱水症状なのかという判断は獣医師の診断がもっとも的確です。
気になったときには、早めに動物病院で診断してもらいましょう。
脱水症状を予防するにはどうしたらいい?
脱水症状の予防方法で効果があるのは、水分補給です。
ただ、猫はもともと水に対しての欲求が少ないため、脱水症状を起こしやすいとも言えます。
そこで、脱水症状を予防するためには、水を飲むための工夫が必要になります。
飲水量を増やして水分不足を解消するための方法をいくつかピックアップしてみます。
◆水飲み容器を別のものにしてみる
水の容器が気に入らなくて飲まないケースもあるでしょう。
「飲みづらい」「色がイヤ」「容器の素材が苦手…」なども考えられます。
特に、大きさには配慮しましょう。
器が小さ過ぎて飲みづらいと、猫にとって敏感な“ヒゲ”が当たることも。
それが原因で飲まなくなることもあります。
容器を変えるとすんなり飲んでくれるケースもあるので、素材や大きさなどを変えて試してみましょう。
また、水の容器の汚れを嫌がっている可能性もあります。
お手入れはこまめに行ってくださいね。
◆水を置く場所を変える
水の置き場所が悪くて水を飲まない可能性もあります。
猫があまり通らない場所に置くと、わざわざ飲みに行かないかもしれません。
猫の通り道になるような場所だと、通りかかった際に「水を飲もうかな」となることも。猫が気軽に水を飲めるように、水の置き場所を見直してみましょう。
また、水飲み容器は1個に限定せず、いくつか設置するのもおすすめです。
特にヤンチャな子の場合、遊んでいるときに水飲み容器をひっくり返すこともあります。
いくつか用意しておけば、好きなタイミングで好きなだけ飲めるようになるでしょう。
◆多頭飼いなら猫ちゃんごとの水飲み容器を準備する
猫の性格はさまざまなので、「ほかの猫のニオイがあっても気にならない」というマイペースな子もいます。
でも、神経質な子の場合、ほかの猫と共同の容器に嫌がるケースも。
多頭飼いをしているときは、「その子専用」のものを準備してあげましょう。
◆いつも新鮮な水をあげる
猫に飲ませる水は、いつも“鮮度”にこだわりましょう。
出しっぱなしにしている水の場合、ホコリや食べ物のカスが浮いて劣化しているケースも多いです。
汚れた水は飲んでくれない場合もあります。
特に、夏には室温も高く、水の劣化スピードも早いでしょう。
気づいたときに、こまめに取り替えてくださいね。
◆自動給水器を使った工夫も
外出が多い飼い主さんに人気なのが自動給水器です。
容器に入れた飲み水の場合、「帰宅したら猫が水をこぼして空っぽだった!」というリスクがあるからです。
自動給水器なら、汚れを自動的に取り除いて新鮮な水を飲めますし、空っぽになることもありません。
◆キャットフードから水分を補給
食事から水分を補給するのも脱水予防になります。
例えば、普段食べさせているのがカリカリしたドライフードの場合、水でふやかしてから与えるのもよいでしょう。
また、水分量が多いウェットフードにするのもおすすめです。
ドライフードに比べて香りが強いため、ニオイに興味を持って食べてくれる場合も多いようです。
ただし、ウェットフードは開封してからの消費期限が短い点や、歯垢が付きやすくなる点など気を付けなければならないこともありますので、上手に活用しましょう。
◆カルキ臭を消す工夫をしてみる
人間にとって体に良さそうなイメージのミネラルウォーターですが、カルシウムやマグネシウムを多く含んだ硬水のミネラルウォーターの場合、猫の尿路疾患のリスクがあるので気をつけましょう。
基本的に猫に与えるのは水道水で問題ありませんが、中にはカルキのニオイが気になってしまう子もいるようです。
飼い猫がカルキ臭を気にしているようでしたら、一度沸騰させてカルキ抜きをしたり、販売されているペット用のお水を購入したりするのも良いかもしれません。
◆猫用のミルク、スープなどで水分補給
猫用のミルクやスープを与えるのも水分補給になります。
ただし、人間用のミルクやスープはNGです。必ず猫用と書かれたものをあげましょう。
また、与え過ぎるとお腹がゆるくなるケースがあるので、パッケージに記載された適正量を守ってくださいね。
水分不足以外にも脱水症状になる可能性がある
水分不足による脱水症状は、普段から飲み水の量を意識していればある程度の予防ができるでしょう。
もともと、猫は砂漠でも暮らしていけるような体質のため、少ない水分量でも生きていくことはできます。
ただ、水は体内で重要な役割があるので、水分不足には要注意です。
3キロ程度の体重の一般的な猫の場合、1日に200mlほどの水分量が必要と言われています。
これは、飲み水だけでなく、食べ物に含まれている水分も合わせた分量の目安です。
「いつもよりも飲む水が少ない」など、気になるときはさきほどお伝えしたような予防方法を試してみるといいでしょう。
また、飲み水不足以外で起こる脱水症状もあります。
腎臓や消化器系の疾患、感染症などになると、「嘔吐」「下痢」などがひどくなり、脱水症状を起こす可能性も。
病気で脱水症状が起きているときは、予防で飲み水に工夫をしても状態がよくならず、急激に症状が悪化するケースも考えられます。
シニア期の猫ちゃんは喉の渇きに鈍感なこともある
シニア期になると、若いときと比べると落ち着き、動きが鈍くなってきます。
エネルギーもあまり消費しないため、自然と食べる量が減ったり、水を飲まないことも珍しくありません。
「年をとったから仕方がない」と言って放っておくと、脱水症状を見逃すかもしれないので注意しましょう。
また、猫はシニア期に突入すると、腎臓病になってしまう可能性も上がります。
脱水症状が起きないような予防策も大事ですが、ふだんから猫の飲み水の量を気にかけたり、尿の回数や色なども確認してくださいね。
猫の脱水症状のまとめ
生きている動物にとって、水はとても大切なものです。
体のなかに一定の水分がなければ、健康状態が悪くなったり、ひどければ寿命を縮めることも考えられます。
もともと積極的に水を飲まない性質の猫ちゃんは、水分不足から脱水症状を起こしやすいでしょう。
「もしかして脱水?」と気になるときは、おしっこの色を見る、皮膚をつまむなどで脱水症状を見分けることもできます。
また、愛猫が水をあまり飲まないのなら、「置き方や容器を変える」「食べ物に水分を混ぜる」などで工夫をしてみましょう。
ふだんの生活のなかで「水を飲む」ことを大切にしてあげてくださいね。
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