猫はよく「何を考えているのかわからない」と言われます。ですが、決して何も考えていないわけではありません。あえてポーカーフェイスを気取っているわけでもありません。
では、なぜそのように言われているのでしょうか。
猫はほんとに無表情?
猫は人間のように喜怒哀楽を表情に出すことができません。
というよりも、表情を豊かに出せるのは人間だけのようです。その理由は「表情筋」。表情筋とは目や口、鼻などを動かす筋肉の総称で、人間の顔にはおよそ30種類の筋肉があり、互いに作用し合って骨と皮膚を動かすことによって、口角の上げ下げ、目を細めたり見張ったりするなどのさまざまな表情を作り出しているのです。
一方、動物はというと、チンパンジーなど一部の進化した霊長類は笑顔や怒り顔など人間に近い表情が作れますが、猫の顔には表情筋がほとんどないため豊かな表情は作れません。「無表情」なのではなく、作れないのです。犬は猫よりも表情筋が若干多いため、悲しそうな顔や怒った顔はできますが、はっきりとした笑顔までは作れないそうです。
猫が目を細め、笑っているようなかわいらしい写真を目にすることもありますが、残念ながらあれは「笑っている」わけではなく、フェロモンやマタタビなどの刺激のあるニオイを嗅いだ時にとる行動(フレーメン現象)によるものだそう(馬が歯をむき出しにして笑っているような写真も同様にフレーメンによるもの)。ちょっと残念ではありますね。
猫はしっかり感情表現している
猫は砂漠で単独行動をしていた頃から群れで生活をすることはありませんでした。今でこそ同じ家で飼われていれば親・きょうだいとずっと仲良く暮らせますが、単独行動の猫は幼いうちに家族と別れ、繁殖期以外には他の猫と感情のやり取りをする必要もありませんでした。犬が群れで生活し、服従することを身につけてきた結果、人間に対しても忠誠心を見せるようになったのとは全く異なる歴史を歩いてきたことになります。
そんな猫ではありますが、しっかり感情は表現しています。
猫同士でのあいさつ、威嚇などのコミュニケーションはもちろんのこと、人に対してもボディーランゲージや目・耳・ひげなどの状態変化で気持ちを伝えてくれているのです。顔の表情に豊かさはなくても、しっぽの動きや目(瞳孔)の大きさ、耳やひげの向きは猫の気持ちを雄弁に物語っています。ちなみに、猫の耳は周りの筋肉が発達しているため180度近くまで向きを自由に変えられるそうです。
よく見てみよう!猫の表情
心理学でいうと、人間には「怒り」「悲しみ」「恐怖」「驚き」「嫌悪」「喜び」という6つの基本的な表情があるそうです。そのひとつひとつを猫でも検証してみましょう。参考までにしっぽの動きも併せて載せてみます。
<怒り>
・怒りによる興奮状態や相手を威嚇する時には瞳孔が開き、黒目が大きくなる
・耳はピンと立っているが、やや後ろに倒しぎみ
・ヒゲは前に突き出ている
・威嚇する際には口を大きく開けて牙を見せ、鼻にしわを寄せる
<悲しみ>
・叱られたり、好きなものを奪われた時などには、しっぽをだらんと垂らしたり、飼い主に背を向けたりすることがある
・顔の表情としては表れにくい(「悲しそうな猫」として画像がネットに載っている猫は、もともとの顔のつくりや毛の模様などによることがほとんど)
<恐怖>
・瞳孔が大きく開く
・耳は横に倒すか、後ろに伏せている(傷つけられケガをしないように防御)
・ヒゲは後ろの方に引いている
・しっぽは体に巻き付けるか、足で挟んでいる
<驚き>
・瞳孔が開き、黒目が大きくなる
・口を開けたり、目を見開いたりすることもある
・しっぽが山のような形(への字)になる
<嫌悪>
・瞳孔が開く
・耳を横にピンと尖らせる(耳を横に広げ尖らせている様子が悪魔の角のように見えることから「デビルフェイス」と呼ばれることもある)
・しっぽを左右に素早く動かす
・緊張したり、大きなストレスを感じると目を開けたままアクビをする
<喜び>
・目を細める
・耳は前方を向いている
・ヒゲがピンと立っている(10時10分の角度)のは気分が高揚している時
・しっぽがピンと立っている
<他にも>
・耳がピンと立ち、ヒゲが前を向いているのは、興味深々の対象がある時
・ヒゲが横に広がっているのは、警戒して情報を収集しようとしている時
・ヒゲがだらんと下がっているのは、リラックスしている時
などの状況が猫の気持ちを表していると言われています。
これらを踏まえて、家の猫さんをじっと観察してみるのも楽しそうです。
言葉の通じない猫の気持ちを読み取ることは決して簡単ではありません。時には飼い主さんの「思い込み」や願望も混ざってしまうかもしれませんが、それでもいいんです!
寄り添う気持ちが一番大切なのですから。
– おすすめ記事 –
外国でも猫ちゃんって人気?諸外国における猫事情
通院が欠かせない猫が少しでも快適に過ごせる努力を