生まれつき寄り目の猫がいる!?
猫の中に、寄り目の猫がいるというのをご存知でしょうか。ほとんどが生まれつきによるもので、常に寄り目の状態になっています。
◆寄り目とは?
斜視は、黒目が正常にある位置からずれて、そのまま固定されてしまっている状態です。
そのうち、黒目の部分が内側に寄っている、正確には眼球が内側に傾いているという状態を「内斜視」といいます。これが、寄り目の医学的な名前になります。
多くの場合、その原因は遺伝子によるもののため、生まれつき寄り目の症状が現れます。
ただし、生まれつきといっても、寄り目の症状が現れてくるのは生まれてすぐではなく、生後6週から8週ごろに始まります。
この生まれつきの寄り目は自然に治ることはありません。
◆寄り目の猫はシャム系に多い
猫種でいうと、うすい毛色に手足や顔の黒いポイントが特徴的なシャムに寄り目の猫が多いと言われています。
シャムの他にも、チンチラ、ラグドール、ヒマラヤン、バーマン、トンキニーズなどの色素が欠乏した猫種にも、寄り目の猫がいるようです。
ただし、上記の猫種が寄り目になりやすいとは言われていますが、全ての猫に起こることではありません。
また、シャムなどの種類に多いとされますが、雑種の猫にも寄り目になっているものが見られることがあります。これは、シャム系の猫が他の猫と交配して、遺伝子を受けついだためにこのような猫が生まれたと考えられます。
猫はなぜ寄り目になるの?
猫が寄り目になる原因は、やはり遺伝的なものの場合が多いようです。
◆正常な猫の視覚の仕組みについて
猫の網膜は、内側と外側に分かれた仕組みになっています。
正常な猫の視覚経路の場合、右目の外側の情報を右脳へ、左目の外側の情報を左脳へ伝えます。
一方、右目の内側の情報と左目の内側の情報は、途中で「視交叉」という所を通り、文字通り交差します。つまり、右目の内側の情報は左脳へ、左目の内側の情報は右脳へと伝えられます。
◆寄り目の猫の視覚の仕組みについて
猫が寄り目になる原因は、網膜に異常を起こす遺伝子があるためです。
内斜視を起こす猫の場合には、部分的ではありますが、通常なら視交叉を通らない網膜の外側の情報が視交叉を通るということが起こります。そして、情報の混乱が起きて、うまく見たものを判断できなくなってしまいます。
◆視覚を安定させるために寄り目になる
目を内側に寄せると、左右それぞれの網膜の外側に入る情報が少なくなります。網膜の内側からの情報が多くを占めるようになるので、混乱することなく、視野が落ち着く、ということになります。
つまり、この網膜の異常を改善させるために、寄り目=内斜視になると考えられます。
◆シャム系の猫に寄り目が多い原因は?
なぜシャム系の猫に寄り目が多いのかというと、寄り目の猫の網膜の異常を起こすとされる遺伝子が、シャムなどに多いとされる「サイアミーズ遺伝子」であるからです。
まず、シャムの特徴的な毛の柄は、「サイアミーズ遺伝子」というものにより起こっています。
サイアミーズ遺伝子は、メラニン色素を抑える働きがあります。この遺伝子には、「温度が低いと働かない」という性質があるため、耳や手足の先など温度の低い所は、メラニン色素を抑えられず、黒くなります。これが、シャム特有のポインテッドと呼ばれる柄の理由です。
メラニン色素は、網膜の細胞から視神経の経路を決定していくのに影響すると考えられています。
そのため、猫の発育の過程でメラニン色素を抑えるサイアミーズ遺伝子が網膜に働くと、通常は起こらないような網膜の外側からの情報の伝達が起こり、正常とは異なる視神経の経路が出来てしまうことがあります。この視神経の経路が原因で、寄り目になってしまうのです。
猫の寄り目の影響は?病気の場合も?
◆寄り目で影響はある?
寄り目の場合、視野が通常の猫よりもせまく、立体的に物の位置を捉えることが難しいと言われています。
ただ、毎日の生活には大きな支障がないとされていますので、室内で過ごしている猫ならば大きな危険はないでしょう。
また、野良猫でも、寄り目の猫はいますが、直接命にかかわるということはないでしょう。
◆生まれつき以外の寄り目は病気の場合も
成長した猫が突然寄り目になったら、怪我や病気が原因の場合があります。
怪我の場合には、頭部に外傷を負うことで、視神経にも異常が起きた可能性が考えられます。
病気の場合は、目の周りの神経の異常や筋肉の異常が考えられます。
他には、くも膜下出血や脳梗塞、脳動脈瘤などの脳血管障害や腫瘍が原因で脳に異常が起きると、寄り目の症状が現れることもあります。
成猫になってから目の異常が見られた場合には、できるだけ早く動物病院で診てもらうことをおすすめします。
視力は良い?悪い?猫の目のアレコレ
◆猫の視力は人間の10分の1
猫の目は、生後7日から10日で開き始め、数日かけて完全に開きます。徐々に瞳孔反射が発達したり、奥行きを認識出来たりしていき、生後4ヶ月ほどでほぼ成猫と同じように見えるとされています。
それでも、成長した猫の視力は人間の10分の1くらいで、0.1~0.2度ほどといわれています。
物がはっきりと識別できるのは10m先ぐらいまでとされ、ぼんやりとしか見えず、止まっているものもはっきり見えているわけではないようです。
◆猫の視力が低い理由は?
猫の目には「タペタム層」という細胞層が網膜の裏にあります。光の少ない時に活動する夜行性の生き物や、深海に住む生き物が持っている構造です。
タペタム層は、一度網膜を通過したわずかな光でも反射して、その光を約4割も増幅させて、再び網膜に感じさせるという働きをします。
猫は、このタペタム層のおかげで、人間の6分の1のわずかな光量でも物を見ることができると言われています。
この猫が持つタペタム層によって暗闇でも対象が見えますが、光が多く反射するので、視力そのものは低めで解像度も低く、ぼやけた状態で見えてしまうと言えるでしょう。
猫は夜行性なので、レンズ部分である水晶体や角膜が発達していて、少ない光を眼球内に多く取り込むことができます。大きいために、屈曲率も大きくなりますので、猫は近視ぎみだと言えるのです。
◆動体視力が優れている
猫の一番鮮明に物が見える距離は、目から75cmほどの距離と言われています。すごい近視のように感じますが、猫が獲物を追うのにとても適した距離であるとも考えられます。
猫の目は、動いているものを認識するのにとても優れています。対象物が、1秒間に25~60度の移動をしている時にもっとも捉えやすいと言われています。これは、ネズミやトカゲなどが動く速度と同じです。
逆に、動きがゆっくりのものを認識することは苦手とされています。少ししか動かないもの、1秒間に数度ほどしか動いていないものは、止まっていると認識してしまいます。
◆猫の網膜と色の見え方
人間は様々な色を判別することが出来ますが、猫には人間ほどの色を識別出来ないと言われています。
人間であれば虹の色が全て識別できますが、猫は特に赤を識別出来ていないといったものです。青から緑の間の色彩を、比較的はっきりと識別していると言われています。
つまり、キャットフードの美味しそうな色合いは、猫には全く意味がないということになりますね。
逆に、白と黒を識別する桿状体の細胞は人間よりも多いので、人間が真っ暗に見えるところでも、猫には白黒を識別することで、獲物など対象物を見分けることが出来ます。
◆猫の視野について
片目で見ることの出来る視野を「単眼視野」、両目で見られる視野を「両眼視野」と言います。単眼視野と両眼視野の範囲を合わせた、全ての視野を「全体視野」と言います。
両眼視野に入った対象物は、脳が右目と左目に写る対象像の微妙なずれを計算することで、対象物までの距離を正確に測ることが出来ます。
角度で言うと、猫の両眼視野は120度で、全体視野は250度あります。人間の両眼視野は120度で、全体視野は200度といわれていますので、人間よりもやや視野は広いことになります。
猫が斜視の場合、全体視野はもちろんありますが、両眼視野がはっきり見えているかというと難しいと考えられ、視野が欠けている部分もあると想像されます。
そのため、シャムなどの種類で斜視の猫は、対象物までの距離がうまく把握出来ず、奥行きを把握することが難しいのです。
猫の寄り目のまとめ
生まれつき寄り目になっている猫は、室内飼いであれば日常生活には特に問題はないでしょう。
また、野良猫でも寄り目のものがいるように、寄り目であることそのものには生きていくのに大きな問題がありません。
寄り目の猫と暮らすことになったら、家具などの位置を頻繁に動かさないようにして、遊んでいる時などは少しだけ気をつけて見てあげてください。
成長してから猫が寄り目になっているように見える場合には、病気や怪我の影響が考えられますから、早めに動物病院に連れて行きましょう。
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