1.猫は「短期記憶」について優れている
1-1.猫が特に優れているのは「短期記憶」
1-2.そもそも短期記憶ってなに?
1-3.16時間も記憶をキープできた驚きの実験結果も!
1-4.興味のないことは忘れやすい
2.長期記憶についても優れている
2-1.長期記憶ってなに?
2-2.苦手なことは長い時間経っても忘れない
2-3.嫌な記憶に状況がプラスされている
2-4.「嬉しい」「楽しい」に結びつく出来事も忘れにくい
4.飼い主のことは忘れる?忘れない?
4-1.愛情を注いでくれた飼い主のことは長く忘れない
4-2.時々会っていれば忘れることがない
4-3.猫の素っ気ない対応が勘違いさせてしまうこともある
4-4.忘れられても大丈夫?!
4-5.記憶力には個体差がある
猫は「短期記憶」について優れている
3日で恩を忘れる…ということわざの影響があって、猫は記憶力が悪いと決めつける人もいるかもしれませんが、実は劣っているわけではありません。
◆猫が特に優れているのは「短期記憶」
ひとまとめに「記憶」といいますが、その持続時間の長さから「長期記憶」「短期記憶」と分けられます。
猫は短期記憶に関しては優れた力を発揮すると言われています。
猫の記憶能力の実験はさまざまな機関で行われていますが、そのデータの多くから分かることは、短期記憶については人間の20倍も優れているということです。かなり長い時間記憶できるのですね。
◆そもそも短期記憶ってなに?
短期記憶とは、一時的に覚える必要がある記憶に関するものです。
分かりやすい例でいうと、「誰かに電話をかけるときに一時的に番号を覚えなければならない」というシーン。こんなときの記憶は、短期記憶能力を使います。
電話をかけてしまえば覚える必要がないので、すぐに忘れてしまうかと思います。
また、買い物に行ったときに、レジで表示された支払い金額を頭に入れつつ財布からお金を出すのも短期記憶の分類です。
お金を支払ってしまえば、記憶した金額は不要なものなので、すぐに忘れてしまうでしょう。
◆16時間も記憶をキープできた驚きの実験結果も!
かつて、猫の記憶力についてアメリカである実験が行われました。
エサを入れた箱だけにランプを点灯し「このなかにエサが入っている」ということを初めに分からせます。そして、「いつまで覚えていられるか?」を犬と猫に実験したところ、猫は16時間後にも覚えていられたのだそうです。
実は、犬は5分を過ぎると忘れてしまった結果に終わったので、猫の記憶力が驚くほど優れていたことが分かります。
◆興味のないことは忘れやすい
猫が短期記憶に優れていることを確かめるための実験では、食べ物を使いました。猫は食べ物に関しては記憶力が優れています。
ちなみに、同様な実験を「食べもの」の代わりに「おもちゃ」を使って行ったところ、なんと結果は10秒未満だったのだとか…。
つまり、このそれぞれの結果から分かることは、猫が本能的に興味が深い「食べもの」で実験すれば結果は良好だけれど、興味がないもので試せば記憶は持続しないということです。
人間も必要なものは積極的に記憶をキープしますが、興味がないものはなかなか思い出せないので似ているところがあるのかもしれませんね。
長期記憶についても優れている
猫の記憶力を語るときに、短期記憶に優れていることがクローズアップされがちです。人間よりも優れている記憶力なので、当然なのかもしれません。
しかし、実際には長期記憶もそれほど劣っているわけではありません。記憶に残るほど印象的な出来事は、長く覚えていることができると言われています。
◆長期記憶ってなに?
長期記憶とは、短期的な記憶を反復することで頭に定着していく記憶です。
長期的に記憶できるものは、簡単には忘れないように何かに連想づけて「記憶」になります。
◆苦手なことは長い時間経っても忘れない
猫にとって「怖い!」「嫌だ!」と瞬間的に感じることは、長期的に記憶しています。
これは、危険な出来事に遭遇したときに「二度とこのような目に遭いたくない」という気持ちが本能的に植え込まれるからです。
つまり、猫が生きていくうえでリスクを回避するために、当然の機能として備わっている記憶なのです。
◆嫌な記憶に状況がプラスされている
この長期記憶は、「苦手・不安・恐怖」といった気持ちに、そのときの状況を思い出させる何かがプラスされています。例えば、以下のような状況です。
・爪切りで痛い思いをした経験がある猫なら、爪きりを見ただけで逃げ出す
・動物病院が苦手な猫は、病院に入ったときのニオイで拒否反応を示す
「嫌な思いをした」と思い出させる視覚的あるいは聴覚的な何かが結びつくのです。
犬と違って猫は集団行動をしない動物です。野生時代には、「自分の身は自分で守る」のが当然だったので、危険を避けるために、このような記憶力が培われていったのではないでしょうか。
◆「嬉しい」「楽しい」に結びつく出来事も忘れにくい
嬉しくハッピーなことも長期的に頭に残っているようです。
特に、食べものに関する記憶は、忘れにくいと言われています。前述の短期記憶の実験で、エサの位置を16時間も記憶できた猫がいることからも、それが実証されていると言ってもいいでしょう。
単独行動の猫にとって、「エサを食べる」ことは生きていくうえで欠かせないことなので、素晴らしい記憶力が発揮できるのです。
飼い主さんが猫にエサを与えようとキャットフードの袋を開けたときのニオイに反応したり、大好物の缶詰を開ける音を聞くとキッチンにやってきたりなど、「ニオイ」「音」と関連づけて嬉しいことを記憶しているのですね。
学習能力がすごい猫
猫は興味のないものは覚えないとお話ししましたが、興味のあることは学習して覚える賢さがあります。自分にプラスになることなら、進んで学んでいくのです。
家のドアを開閉して室内を出入りすることができる猫も多いですが、これも学習により学んだことです。
猫は身体能力が高いため、「ドアノブにつかまってドアを開ける」「引き戸を横にスライドさせて開ける」のも見よう見まねで可能にします。
もちろん、すぐにできるわけではなく失敗もするかもしれません。しかし、人間が開けているのをよく観察しているので、「開けたら外に出られる。外に出られたら何があるんだろう」と好奇心から行動的にチャレンジします。何度か失敗するかもしれませんが、成功すれば、短期記憶として頭にインプットされます。
いろいろ学習できるなんて、やっぱり猫の記憶力は優れているんですね。
飼い主のことは忘れる?忘れない?
毎日一緒の時間を過ごしている愛猫が自分のことを忘れたら悲しいものですよね。「3日で恩を忘れる」というのは本当なのでしょうか。
◆愛情を注いでくれた飼い主のことは長く忘れない
野生の猫と違って、一般的なペットの猫は飼い主さんから「衣食住」のすべてを与えられます。さらに「愛」も注がれます。決まった時間にエサを与えられ、一緒に遊んでもらったりと幸せな時間を過ごします。
つれない態度を示すような気ままな猫ちゃんも、実は飼い主さんとの時間はかなり充実していてハッピーなもの。
このように、長年一緒に時を過ごした飼い主さんのことは忘れにくく、短期記憶を繰り返しながら、長期的な記憶へと変わっていくのです。
ただ、そんな風に忘れにくい飼い主さんでも長い間ずっと離れていると「あれ?誰だっけ?」となっていきます。
飼い主さんとの関係の深さや猫の年齢など個体差によって違いますが、通常2年から3年くらいと長期間会わなければ忘れかけていくようです。
◆時々会っていれば忘れることがない
人間でもそうですが、毎日会っていなくても、時々会う人のことはなかなか忘れることがありませんよね。
猫ちゃんも同じで、忘れないように時々会っていれば、忘れられることはないでしょう。
数日程度の旅行や出張ならば、忘れられることはないので安心してくださいね。
◆猫の素っ気ない対応が勘違いさせてしまうこともある
集団行動で生きる犬はリーダーとして認識する飼い主のために何かをしようとします。
しかし、単独で生きる猫たちは「誰かのために何かをする」ということは無いでしょう。
そのため、猫の素っ気ない態度から「忘れているのでは?」と人間たちが勝手に勘違いすることも多いです。
飼い主さんのことは忘れていないのに、それをアピールせずにつれない態度を見せることもあります。
◆忘れられても大丈夫?!
長く会わなければ、会ったときに忘れられている感じを受けるかもしれません。
しかし、そんなときには短期記憶として残っているものを呼び戻してあげることで、きっと思い出してくれるでしょう。
よく一緒に遊んだオモチャを使ってコミュニケーションを取ったり、大好きだった食べ物を食べさせてみたりなど、思い出させる工夫をしてみましょう。
特に、関係性が強かった飼い主さんの場合には、思い出してくれる確率が高いです。
逆に、長年一緒に過ごしていてもあまり関わりがなかった飼い主さんなら思い出してくれにくいでしょう。
◆記憶力には個体差がある
猫は、生まれてから育った環境によって経験値も違うため、記憶力には個体差があります。
飼い主さんとの絆が深ければ深いほど、少しくらい会わなくても忘れることはないでしょう。
気まぐれな性格の猫なら「覚えているのに忘れているような態度を見せる」なんていうこともあるかと思います。
また、猫の老化現象として記憶力が悪くなることもあります。
人間の認知症と同じで、今まで覚えていた記憶を忘れてしまうケースもありますが、加齢による病気によるものなので仕方がないのかもしれませんね。
子猫時代の記憶は強く残っている?
猫は子猫時代に「社会化期」を通過します。実は、この頃の出来事は記憶の奥底にあると言われています。
◆子猫にとって重要な社会化期
社会化期は、生まれて2週間後~7週間後のことを指しますが、人間や他の動物たちと過ごすなかで、これから生きていくために必要な周囲との関わりを学びます。
子猫の頃は、分からないことばかりなので、いろいろなことを吸収させやすい時期です。社会化期に飼い主さん以外の人間ともたくさん関わることができれば、この先もずっと人間好きな猫となるでしょう。
飼い主さんから深い愛情を注がれ、周囲の人からも友好的に接してもらうことができれば、フレンドリーな性格となるでしょう。
また、本能的に獲物にしやすい小動物(小鳥、ハムスターなど)も、子猫時代に「一緒に過ごすものだ」と分からせることができれば、将来的にも仲良く暮らすことが可能です。
◆人間嫌いになってしまうことも…
ただ、その触れ合いが猫にとって苦痛でないことが条件でもあります。
この時期の記憶は、小さな記憶の積み重ねで定着していきます。
できるだけたくさんの人や動物に触れあわせ、さまざまな経験をすれば人懐っこい猫になりますが、飼い主さん以外の人と触れあわずに過ごせば、人間嫌いとなってしまうかもしれません。社会化期はかなり大事な時期なんですね。
まとめ
世間で考えられているほど、猫の記憶は悪くありません。むしろ、短期記憶は人間や犬よりも優れていて頭が良いのです。
「嫌なこと」「嬉しいこと」のどちらに関しても、視覚や臭覚、聴覚などから関連付けて覚えています。
たくさんの愛情を受けていれば、飼い主さんのことを忘れることもないでしょう。
事情があって離れて暮らすことになっても、なるべく定期的に会ってあげるとずっと覚えていてくれると思います。
猫ちゃんの記憶にずっと残るように、深い愛情をたっぷりと注ぎ、楽しい時間を過ごすようにしたいものですね。
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