猫をサポートする肉球の役割は?
◆肉球の役割①緩衝材や滑り止めの役目
狩りの習性がある猫にとって、ジャンプや忍び足をする補助の役割を担っているのが肉球です。猫の肉球には、高い所からの着地の際の衝撃をやわらげるクッションとしての役目や、獲物に気づかれないよう近づくための足音を消す働きなどがあります。
また、高い所へ飛び乗ったり木に登ったりするとき、肉球から出た汗が滑り止めとしての機能も果たしています。
長毛猫の場合、体毛が肉球の間から伸びてしまい、滑り止めの機能が果たせなくなってしまうので、伸びすぎた場合はカットしてあげましょう。
◆肉球の役割②センサーの役目
猫の肉球は、「掌球(しょうきゅう)」と呼ばれる大きな部分と、「指球」「手根球」と呼ばれる小さな部分でできていますが、全てに感覚神経があります。温度を感じたり障害物を避けて歩くことができるのは、肉球にあるそれぞれのセンサーが感知しているからなのです。
猫の俊敏さやしなやかな身のこなしは、肉球あってこそなのですね。
猫の肉球は健康のバロメーター
様々な役割を持つ猫の肉球ですが、猫の健康状態を表すバロメーターとしても役立ちます。肉球の温度や見た目の色で、愛猫の健康チェックをしてみましょう。
◆猫の肉球の温度に気をつける
猫の肉球に触れたとき、いつもとは違う熱さや冷たさを感じたら要観察です。
眠いときや運動後に熱くなるのは正常ですが、運動した後でもないのに肉球が熱い場合は、熱がある可能性も。食欲がなく、ぐったりしているようなら、病院で診てもらいましょう。
◆猫の肉球の色の変化も観察
もともとピンク色の肉球が白っぽくなっていたら、貧血が考えられることも。歯茎や舌まで白くなっているようなら貧血の可能性があり、その貧血を引き起こす原因には、病気が潜んでいることもあるので要注意です。
◆肉球が紫や青紫になっている場合は危険
肉球が紫や青色になっていたら、心臓病の疑いもあります。肉球にも血管が通っていますので、心臓や血管に故障があると、身体の末端にある肉球まで血流が行き渡りません。
このような病気は一刻を争うこともあるため、早めに動物病院を受診しましょう。
日頃、なにげなく触れている肉球からのサイン。見逃さないことがポイントですね。
治りにくい肉球の怪我、気をつけたい症状、対処法は?
毛で覆われていない肉球は、もっとも怪我をしやすい部位です。大事な役目を果たしている肉球に怪我をしてしまったら、どうするべきでしょうか。
◆肉球のすり傷、切り傷
室内飼いの猫では少ないですが、高いところから飛び降りたときに肉球を擦りむいたり、ガラスの破片や植物の棘を踏んでしまい怪我をすることがあります。
すり傷程度なら患部を水洗いし、ワセリンを塗ってあげましょう。ワセリンには保護の役目があります。切り傷でも出血量が少なく、すぐに血が止まり、腫れもなければ、自然治癒に任せても問題ないでしょう。
だたし、猫が気にしているようなら様子観察が必要です。歩きにくそうな素振りをみせたり、執拗に舐めているようなら、まだ傷が治っていないなど違和感があるからです。
怪我からの感染症のおそれもありますので、数日経っても腫れが引かないようなら、傷が小さくても動物病院で診てもらいましょう。
◆肉球のやけど
猫の肉球の怪我で多いのはやけどです。熱せられたフェンスに飛び乗ったり、うっかりストーブに飛び乗ったりすることで、いくら感覚神経がある猫でも、とっさの行動では避けきれず怪我をすることも。
肉球が赤くなっていたり、皮がめくれていても軽度なら自然治癒しますが、ジュクジュクしていたり、肉球の原型がわからなくるほどのやけどの場合は冷水で冷やし、直ちに病院へ行きましょう。
◆やけどよりも多い怪我はあかぎれ
肉球のあかぎれがひどくなると、傷口になってしまったり、乾燥が進むことによって傷が広がり悪化してしまい、出血をともなうことがあります。
肉球の乾燥やあかぎれには、専用の肉球クリームを塗って悪化を防ぎましょう。
◆伸びた爪が食い込み思わぬ怪我に
長い間爪切りをしないでいると、伸び切った爪が肉球に刺さり、怪我をしてしまうこともあります。とくにシニア猫は爪とぎの回数も減るので、注意が必要です。
猫の伸びすぎた爪や巻き爪は、爪切りをこまめにすることで怪我を防げます。
肉球は直接地面に触れる部分であるため怪我をしやすい場所です。このくらいの怪我なら…と素人判断はしないようにしましょう。
肉球の病気「肉球皮膚炎(形質細胞性足皮膚炎)」について
肉球にまつわる病気のひとつとして、「肉球皮膚炎(形質細胞性足皮膚炎)」という病気があります。
◆肉球皮膚炎(形質細胞性足皮膚炎)の症状
・肉球が腫れる
・腫れていた肉球が空気の抜けた風船のようにしぼむ(この段階では自然に治ってしまうこともあり)
・潰瘍ができでしまうと、出血したり、歩くのを嫌がったりする
◆肉球皮膚炎(形質細胞性足皮膚炎)の原因
肉球皮膚炎(形質細胞性足皮膚炎)は、これと言った原因は判明しておらず、アレルギーなど免疫系の異常もしくは「猫白血病ウイルス」「猫免疫不全ウイルス」の感染と関連しているのは?と言われています。
◆肉球皮膚炎(形質細胞性足皮膚炎)の治療法
副腎皮質ホルモン薬(ステロイドや抗ヒスタミン剤)を投与して炎症を抑えます。
潰瘍ができてしまった場合は、外科手術を行うことも。ほかには金療法などがあります。
◆肉球皮膚炎(形質細胞性足皮膚炎)の予防策
原因がわかっていないので予防法もないというのが残念ですが、肉球を触り異変を感じたら放置しておかずに受診するのが一番でしょう。
形質細胞性足皮膚炎については命に関わるという病気ではありませんが、肉球が病気になってしまうと猫の日常生活はとても不便になってしまいます。
日頃から観察やケアを心がけてあげましょう。
乾燥によるカサカサやひび割れには専用クリームでケアを!
猫も冬場になると乾燥のダメージで肉球がカサカサざらざらすることがあります。放っておくとダメージが進行し、ひび割れてしまいます。ひび割れが悪化すると、歩くときに痛みを感じたり出血してしまうことも。
一度そうなってしまうと完治しにくいので、乾燥する季節には予防として、ひび割れしてしまった肉球にはケアとして、専用の肉球クリームを常備しておくと良いでしょう。
肉球クリームはネットでも手に入れることができますし、かかりつけの病院でも購入できます。乾燥対策だけではなく、肉球のやけどにも併用できるクリームなど、様々なタイプのクリームが販売されています。
ただし、人が使うものは肉球を舐める猫にとっては適切ではありませんし、香料がキツイ物も猫は好みません。必ず猫専用の肉球クリームを使いましょう。
また、食用のエクストラバージンオイルやオリーブオイルが代用として使えます。
植物性のオイルは舐めてしまっても害はありませんが、あまり頻繁に使用しているとお腹が緩くなってしまう可能性もあるので、応急処置程度にし、猫の体質(お腹の強弱)と相談しながらにしましょう。
乾燥対策は人と同じです。加湿器の使用やクリームでの保湿しか対策がありません。スキンシップとひび割れ予防策のために、心地よいお部屋でマッサージタイムを設けてみてはいかがでしょうか。
まとめ
猫好きにとって肉球は癒しのアイテムです。けれど、猫にとっては癒すだけのアイテムではなく、大事な体の一部です。どちらにとっても大切な肉球。深く知ることで愛おしさも増すことでしょう。
私も記事をまとめている段階で、愛猫3匹への愛情が増したような気がします。執筆中に肉球の温度や色のチェックや爪切をしました。そして、この冬は乾燥対策用のクリームを購入しようと決めたりとこれまで以上にケアをする心づもりでいます。
猫は痛みや身体の不調を隠す性質があります。ふだんからコミュニケーションを取り、異変を感じたらすぐに病院で診てもらいましょう。早期発見が、病院嫌いな猫へのストレスの軽減にもなります。
愛らしい肉球を保ってもらうために、そして、いつまでも健康で飛び回ってくれる愛猫でいてもらうために。
ライター/Uera
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