猫の保定とは?
猫の保定とは、スムーズに治療を行うために、人と猫の安全を保ちつつ、猫の体を押さえることを指す専門用語です。
◆主に動物病院で使用される
動物病院では、診察や治療の際に、主として看護師さんが保定をしてくれます。正しい保定は、看護師さんの重要な役割のひとつといっても良いでしょう。
保定は、治療や検査をするために、嫌がる猫の動きを制限する行為になりますので、猫にとっては嬉しいものではありません。
ただ、無理矢理押さえつけないようにして、猫の体にも精神的にもできる限り負担を与えないように考えて行われます。
◆安全に治療するために保定は必要
猫の体はしなやかで、前足でひっかいたり後ろ足で蹴ったりする力が強いので、しっかりと保定する必要があります。
病院での処置がしやすいように行われるのが保定なので、虐待とは違います。猫の怪我や病気を治すためにも、猫を動かないようにすることは仕方のないことです。
安全に治療やケアをするために、保定は猫にとって必要なことなのですね。
猫の保定はどんな時に必要?
猫の保定が必要となるのは、次のような場合です。
・診察
動物病院で診察されるときに、保定が必要になります。猫が動き回っていると、体温を測る、患部を見る、といったことをすることもできませんね。
・注射などの処置中
採血をしたり、採尿したりする時にも、保定することが必要です。特に、針を使うなど、動いてしまうと猫の体に危険が及ぶ時には、保定はとても大切です。
・投薬中
猫の処置として、目薬をさしたり、錠剤を飲ませたり、スポイトなどで液体の薬を飲ませる時にも、保定が必要となります。
・爪切りなどの手入れ中
猫の爪切りをする時にも、暴れて嫌がる猫には、保定が必要となります。
病院だけでなく、一般の家庭でもしっかり保定することができれば、爪切りがしやすくなりますね。
・猫をキャリーから出す時
病院の診察時、猫が嫌がるとキャリーケースから出てきませんが、うまく保定した上で猫を出すと、すんなり出せることがあります。
猫は足をキャリーケースの中にひっかけるなどして、出てくるのを嫌がることがあるので、そんな時にもうまく保定すると、出しやすくなります。
猫の保定の方法は?
猫の保定のやり方は、いくつか方法があり、病院によって違うこともありますし、診察や処置の内容によっても違ってきます。
基本的な猫の保定の例をご紹介します。
◆保定の方法①猫の肩を抑える
座った状態の猫の肩部分、左右の肩甲骨を、猫の背後から両手で抑えるようにします。
猫が前や上に体を伸ばして逃げようとするのを防げますし、逆に安心させることができることもあります。また、猫が後ろ足を伸ばして立ち上がっても、そのまま肩甲骨を抑えることで、猫の動きを制限できます。
この保定で猫を動かないようにできれば、診察や投薬、採血も行えます。
できるだけ手のひらの広い面積で猫を保定するようにすると、猫も安心しやすくなります。
猫が不快に思わなければ、保定していても猫は暴れませんので、うまく保定することが大切です。
◆保定の方法②両前足の付け根を抑える
前脚の付け根を、猫の脇から抑えて、前足が伸びるようにします。コツは、猫のヒジ関節を伸ばすような感じです。
片手の場合は、中指と人差し指と親指で、人差し指を両前脚の間に入れて前足を伸ばします。
さらに、もう片方の手で猫の後ろ足の腿部分、またはお尻を持ち上げるようにすると、抱き上げて保定するやり方となります。
保定して抱き上げることができると、キャリーケースからも出しやすくなります。猫の体勢を安定させれば、猫は暴れなくなります。
猫の足先を掴むと、猫が嫌がるのはもちろん、怖がったり、暴れたりしやすくなりますし、さらに引っ張ることで足を痛める可能性もありますので、足先だけを持って引っ張ることのないようにしましょう。
◆保定の方法③横に寝かせて保定する
処置の内容や診察する場所によっては、猫を横にさせる必要がある時もあります。
その時には、前足の付け根を持ち、猫を診察台に横にして、そのまま処置などが終わるまで前足と後ろ足の付け根を抑え続けるようにします。
猫は病院など、慣れない場所で寝転がるのは大変嫌がることが多いため、横にして保定する時には、噛まれないようにエリザベスカラーをつけることもあります。
◆保定する時の注意点
診察を嫌がることがなければ、無理に猫を抑える必要はありませんが、注射などの処置をする時には、急に暴れるのを防ぐためにも保定しておく方が安全です。
また、猫の場合、保定は飼い主さんが行うことも多くあります。これは、普段から触り慣れている人の方が良かったり、猫を安心させたりするためです。
病院で必要な時には、獣医さんや看護師さんからお願いされるので、それまでは勝手に猫を押さえつけたりしないようにしましょう。猫が余計に怖がって逃げようとしたり怒ったりして、その後の診察や処置がやりにくくなってしまいます。
猫が保定を嫌がる時の対策は?
猫が保定を嫌がる時には、いくつかの方法があります。どの対策が良いのか、猫によって個体差がありますので、自分の猫がどのような傾向があるのかを知っておく方が良いでしょう。
何度か病院に通って、自分の猫に合った保定のしかたを見つけるしかないと言えます。
◆向きを変える
猫が獣医さんの方を向いていて保定すると嫌がる時には、飼い主さんの方に頭を向けて保定してみてください。
逆に、飼い主さんの方を向いていて嫌がる時には、飼い主さんが猫の背中側にいって保定すると、落ち着くこともあります。
保定している人を変えることでも、猫が落ち着くことがあります。
◆顔部分にタオルをかける
保定している時に猫がまだ暴れるようであれば、猫が周りを見えないようにハンドタオルなどを頭にかけて軽く包むという方法もあります。まわりが見えなくなると、おとなしくなるタイプの猫もいます。
頭なので、あまり強く抑えたり巻いたりすることのないように気をつけましょう。
◆声をかけない
飼い主さんが、嫌がっている猫に声をかけると、かえって猫が嫌がったり怖がったりして暴れる場合があります。
診察や処置をこわがる猫を見ると、飼い主さんはつい名前を呼んだり、大丈夫だよ、などと声をかけたりしてしまいがちですが、逆効果のことがあります。
病院の診察ではできるだけ声をかけずに静かに見守っているほうが良いでしょう。
◆バスタオルで抑える
いつも使っている家のバスタオルで上半身を包むと、猫が落ち着くことがあります。
バスタオルで落ち着かせてから、バスタオルを取って保定したり、バスタオルで包んだまま診察や処置をしたりします。
頭からバスタオルをかぶせることでおとなしくなることもありますし、頭を出すようにして体を包んで保定する方法もあります。
◆洗濯ネットに入れる
全身を洗濯ネットに入れると、固まって動かなくなる場合が多いとされます。猫を手で強く保定する必要があまりなく、軽く猫を抑えるだけで、そのまま採血や注射もできます。
動物病院によっては、猫はネットに入れてくるように推奨されているところもあります。
猫は洗濯ネットに入れるだけでなく、ちゃんとキャリーケースにも入れていってくださいね。
◆猫の保定バッグを使う
バッグや袋状になっていて、猫を入れて使う、保定バッグまたは保定袋を使う方法があります。
袋状のものに入っていると、猫は安心しやすくなると言われています。猫の頭と尻尾、手足は、空いている部分から出すことができるので、採血や診察などがやりやすくなります。
保定バッグの上部には、まさにバッグのように持ち手がついているので、そのまま猫を持ち上げることもできます。
動物病院での猫の治療時に、専用の保定袋が使われることもあります。
どうしても猫にとっては嫌がることなので、購入した場合には、普段から時々保定バッグや保定袋に入れてみて、慣らしておくことをおすすめします。
猫の保定についてのまとめ
猫が動物病院で診察を受ける時に、必要となる猫の保定。保定は嫌がる猫を単に抑えつけるわけではなく、猫の診察や治療を安全に行うためのものなので、とても大切なことです。
猫を怖がらせないように、さらに安全に動きを抑えて、保定されている間も猫があまり恐怖を感じず、痛みや苦しさが無いことが、良い保定だと言えるでしょう。
ただし、病院での猫の処置における保定は、看護師さんが行ってくれる場合がほとんどです。獣医師さんからお願いされない限りは、飼い主さんは静かに見守るようにしてください。
普段から飼い猫と触れ合うようにしておくと、病院の診察時や家でのお手入れ時に、軽い保定で猫をうまく抑えることができるようになります。
保定のことを知って、出来るようになっておくと、猫に自宅で投薬したり、爪切りしたりする時にも楽になると言えるでしょう。
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