1.猫じゃらしってどんな植物?
1-1.イネ科の一年草
1-2.エノコログサの名前の由来
1-3.「猫じゃらし」は関東地方の呼び名?
1-4.英語では「狐の尻尾」
1-5.猫じゃらしを食べる?
2.猫が猫じゃらしを食べても大丈夫?
3.ただし注意も必要
3-1.丸のみに注意
3-2.芒(ノギ)の危険性
3-3.猫じゃらしの葉は鋭い形をしている
3-4.食べ過ぎに注意
3-5.農薬などに注意
4.まとめ
猫じゃらしってどんな植物?
道端や空き地などでよく見かける猫じゃらしは、正式な和名を「エノコログサ」と言います。
日頃慣れ親しんでいる植物ですが、意外と詳しくは知らないという方も多いでしょう。
ここでは、猫じゃらしとはどんな植物なのか、詳しく見ていきます。
◆イネ科の一年草
エノコログサは、イネ科エノコログサ属の一年草で、生える季節は春~秋です。
ユーラシア大陸原産とされ、農耕の伝来とともに日本へ渡来したと考えられており、現在では北海道から九州まで広く分布しています。
特徴的な穂を作るため他の雑草と区別しやすいエノコログサですが、実は、変種や近似種が多く存在します。
日本でよく見られ、一般に“エノコログサ”と呼ばれているのは、エノコログサ(Setaria viridis)とアキノエノコログサ(Setaria faberi)の2種です。他に、エノコログサの変種で海辺に生えるハマノエノコロや、赤や黄色に近い色の毛が生えているキンエノコロ(Setaria pumila)などもあります。
エノコログサの穂は、5~6cmほどと比較的短めで直立しています。アキノエノコログは草丈が高く、穂も10cmほどとエノコログサより長いです。穂が出る夏には区別のつきにくい2種ですが、秋になるとアキノエノコログサの穂先が下向きに垂れ下がり、見分けがつきやすくなります。
◆エノコログサの名前の由来
エノコログサの名前の由来には諸説ありますが、根強いのは次の説です。
エノコログサは、漢字では「狗尾草」と書きます。「狗」とは、「えのこ」と言い、子犬を意味する漢字です。子犬を「犬の子」と呼ぶうちに変化して、「えのころ」になったと考えられています。
何故、猫じゃらしと呼ばれるエノコログサに、狗という字が用いられるのでしょうか?
これは、エノコログサの特徴的なふさふさの穂に由来しています。子犬のふさふさとした尾と、エノコログサの穂が似ていることから名づけられたもので、室町時代には既に狗尾草と呼ばれていたそうです。
◆「猫じゃらし」は関東地方の呼び名?
エノコログサは、地方によって呼び名があります。今では、エノコログサより、むしろ「ネコジャラシ」(猫じゃらし)の方が馴染みのある呼び名ですが、猫じゃらしは主に関東地方の呼び名のようです。
猫じゃらしという呼び名は、猫の前で振ると猫が喜んでじゃれることに由来しています。
市販されているオモチャの猫じゃらしは、エノコログサのような形のものが多いですよね。今はいろいろなタイプのものがあるとはいえ、植物の猫じゃらしを模したシンプルなものが好きな子は多いようです。
◆英語では「狐の尻尾」
イギリスでは、「Foxtail grass」「green foxtail」と呼ばれています。「狐の尻尾草」という意味で、ふさふさの穂がキツネのしっぽに似ていることが由来です。
アメリカでは、「green bristle」と呼ばれます。「bristle」はエノコログサ属を指す言葉で、green bristleは北米に帰化しているヨーロッパのエノコログサを指しています。
◆猫じゃらしを食べる?
猫じゃらしは雑草とされますが、実は、食べることができます。
食用になるのは、ふさふさした穂の部分です。穂は、穀物のような鈴なりに実った小穂(しょうすい)からなり、これを脱穀して食用にします。食べるものが少なかった時代には、猫じゃらしのような雑草も貴重な食糧だったようです。
何故エノコログサを食べることができるかというと、そもそもエノコログサ(Setaria viridis)が「五穀」の一つである粟(アワ)の原種だからです。アワは、コメと比べてタンパク質や脂質が多く、ミネラルも豊富で、日本では稲よりも早い段階で栽培が始められました。
アワを栽培している畑の近くにエノコログサがあると、交雑種が生まれることからも、両者が非常に近い関係であることがうかがえます。
猫が猫じゃらしを食べても大丈夫?
人間は食べることができる猫じゃらしですが、猫が食べても大丈夫なのか気になりますね。猫じゃらしを見ると興奮して遊び、穂を食べてしまう子も少なくないので、心配です。
結論から言えば、猫じゃらしには猫に有害な物質は含まれておらず、食べても問題はありません。
いわゆる「猫草」を食べる猫ちゃんは多いですが、猫草は特定の植物のことではなく、猫が好んで食べる植物の総称です。猫が好むのは、主にイネ科の植物で、代表的なのはビールやウイスキー、オートミールの原材料となる「燕麦(エンバク)」と、猫じゃらしです。
ただし注意も必要
猫じゃらしを猫が食べても問題はないとお伝えしましたが、注意しなければならない点もあります。
◆丸のみに注意
猫じゃらしで遊んでいるとき、猫のターゲットはふさふさした穂の部分です。そのため、“仕留めた”穂を食べてしまうことも少なくありません。
バラバラにして飲み込んでしまえば、ほぼ問題なくウンチと一緒に排せつされますが、丸のみしてしまうと大変なことになる場合があります。
猫が何らかのものを誤飲した場合、物によっては腸に詰まり、腸閉塞を引き起こすことがあります。猫じゃらしの穂は、腸閉塞を起こす心配はあまりないようですが、丸呑みした場合、便秘になることがあります。肉食動物である猫は、植物を消化する力が弱いためです。
ある例では、猫じゃらしの穂を丸呑みした後、元気がなくなって嘔吐を繰り返し、動物病院で診察を受けたら、便秘と診断されたということです。栄養剤入りの水分を注射してもらい、丸呑みしてから6日目にうんちが出たそうですが、猫じゃらしの穂が丸々そのまま入っていたとか。
愛猫に苦しい思いをさせないためにも、穂の丸呑みには十分注意して遊んであげてくださいね。
◆芒(ノギ)の危険性
芒とは、イネ科の植物の小穂を構成する鱗片(頴;えい)の先端にあるトゲ状の突起のことです。イネ科の植物である猫じゃらしにもノギがあり、枯れてくると硬くなります。
これを胃腸の弱い子が食べると胃腸に負担をかけてしまうので、食べさせないように注意が必要です。子猫やシニア猫は、特に気をつけてあげてください。
また、食べる場合だけではなく、ノギが体についてしまった場合にも注意が必要です。
ノギが皮膚に刺さると、炎症を起こして化膿してしまいます。目や鼻に刺さる場合もあり、この場合、獣医師さんに取り除いてもらうしかありません。
さらに怖いのは、ノギが肺や脳などの器官に入り込むことがあり、死を招くこともあることです。肺や脳に入り込んでしまうと、膿胸や髄膜炎を引き起こすことがあると言われています。
口に入れた場合に肺や脳に達する恐れがあるのですが、肺に入り込むのは、口に入れた場合だけではありません。皮膚に刺さったものが脂肪や筋肉を通過して、体内に入り込むことがあるようです。これらは、症例としては稀ですが、実際にあることなので注意したいですね。
猫じゃらしの穂を食べさせないように注意し、遊んだ後は部屋を掃除しましょう。また、猫ちゃんもしっかりブラッシングして、体にノギが残らないようにしてあげてくださいね。
◆猫じゃらしの葉は鋭い形をしている
猫じゃらしに限らず、イネ科の葉は鋭い形をしています。葉は鋭い形を保ったまま、喉や胃腸を通過していきます。この時、喉の粘膜や胃、食道が傷つく恐れがあります。
◆食べ過ぎに注意
猫は植物を消化できないため、食べ過ぎると腸に詰まってしまうことがあります。ほとんどの場合、うんちと一緒に排出されますが、まれに開腹手術が必要になる例があります。
また、胃腸の弱い子や、子猫、シニア猫の場合、葉を食べた刺激で吐きすぎてしまい、体調を悪化させる場合もあるので注意が必要です。
猫ちゃんが食べ過ぎてしまわないよう、猫じゃらしで遊んだ後は、すぐに捨てるなどして放置しないようにしましょう。また、猫じゃらしの葉を猫草として与える場合も、飼い主さんが量をコントロールしてあげてください。
◆農薬などに注意
猫じゃらしは、道端や空き地に自生しているので、摘んでくるだけで簡単に手に入ります。しかも多くの猫がおもちゃの猫じゃらしより食いつきがよいのですから、安上がりで言うこと無しのように思えます。
しかし、道端や空き地に生えている猫じゃらしには、農薬やワンちゃんのおしっこなどで汚染されている恐れがあります。
摘んでくる場合には、除草剤などが撒かれていないような場所、ワンちゃんが入り込んで排せつしないような場所から取ってきた方が無難でしょう。
まとめ
猫ちゃんが大好きなネコジャラシは、イネ科のエノコログサという一年草で、春~秋にかけて道端や空き地に生えます。
市販されているオモチャの猫じゃらしより、食いつきの良い猫ちゃんも多いネコジャラシですが、穂を丸呑みさせないように気をつけましょう。便秘の原因となり、猫ちゃんが元気を失くして嘔吐を繰り返してしまいます。
穂についているトゲ状のノギは、食べると胃腸に負担をかけます。また、皮膚に刺さって炎症を起こし、化膿することもあります。まれに、皮膚から体内に入ったり、口から入ったりしたノギが、肺や脳に達することがあり、命に関わることもあるので気をつけてあげてください。
遊んだ後はすぐに捨てるなどして放置せず、必ず部屋の掃除をしましょう。猫ちゃんもブラッシングをして、体にノギが残らないようにしてあげてください。
道端にも生えていて簡単に手に入る猫じゃらし。摘んで帰ってあげると、猫ちゃんは大興奮して遊びたがるでしょう。猫ちゃんに危険のないよう注意をしながら、ぜひ一緒に楽しんでみてくださいね。
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