ハリガネムシは猫にも寄生する?宿主である昆虫を食べても平気なの?

2021.11.14

ハリガネムシは猫にも寄生する?宿主である昆虫を食べても平気なの?

「ハリガネムシ」と呼ばれる虫をご存知ですか? ハリガネムシは主にカマキリやバッタなどの昆虫に寄生する虫となり、見た目はウネウネとしていて、猫に寄生することのある回虫(寄生虫)によく似ています。 猫は昆虫を捕食することがよくあるので、もしカマキリやバッタを愛猫が食べてしまった場合、ハリガネムシが体内に寄生したらどうしよう…と、不安になってしまう飼い主さんもいらっしゃることでしょう。 ハリガネムシは猫にも寄生することがあるのでしょうか?

ハリガネムシとは

ハリガネムシに寄生されたカマキリ

ハリガネムシという名前は知っているけれど、どんな形状でどんな生態か知らないという方は多いはずです。

「ハリガネ」という名前を持っているぐらいだから、針金のように長くて硬い虫なのかなど、色々と気になってしまいますよね。

ハリガネムシとは一体、どのような虫なのか解明していきましょう。

◆カマキリなどに寄生する寄生虫

ハリガネムシはミミズのような伸縮性は無く、のたうち回るような特徴のある動きをする寄生虫となります。

類線形動物門ハリガネムシ綱ハリガネムシ目に属している生物の総称を「ハリガネムシ」と呼んでいますが、体長が種類によって数cm~1mにも達することもあり、特徴的な動きや見た目からも「針金」と呼ばれているのにも納得です。

また、この名前がつけられた理由は別のものもあります。ハリガネムシの表面は「クチクラ」と呼ばれる丈夫な膜で覆われており、地上で乾燥して固まった際に針金のように硬くなることから、この名前がついたとも言われているのです。

このような珍しい姿をしたハリガネムシは、カマキリやバッタの体内に寄生しているとして認識されている方も多いと思いますが、昆虫の体内で産まれて成長しているわけではありません。

ミミズのように土の中で生存しているのかと思いきや、ハリガネムシは水生生物となり、普段は水中で生活しています。

ハリガネムシのオスとメスが水中でどのように相手を探しているかは不明なものの、交尾をしてメスが卵を産み、その卵は水中の中で細胞分裂をして、カゲロウやユスリカといった水生昆虫の幼虫に、捕食されるのを本能的にじっと待っているようです。

なぜ産まれてすぐ捕食を待つのかというと、ハリガネムシは生活史の一部を昆虫に寄生して過ごすことが、本能に刷り込まれているからと言われています。

水生生物でありながら自分の宿主を求めて、産まれたときから罠を仕掛けて生活しているとは、関わり合いたくない恐ろしい生物とも言えますよね。

宿主が水生昆虫の間は、消化されないように腸管に潜り込み、自分の体を殻で囲んで「シスト」と呼ばれる仮眠状態となって、目覚めのときを待つのです。

水生昆虫は成虫になると水中から外の世界に旅立ちますので、自分より大きな昆虫に捕食されやすく、それらをエサとするのがカマキリやバッタのような陸上昆虫となります。

宿主が代わったハリガネムシは昆虫の体内で殻を破って成長し、自分の子孫を残すためにも、再度水中に戻って繁殖しなくてはいけないので、宿主をコントロールして水辺に近づくように仕向けるそうです。

宿主の脳にある種のたんぱく質を注入することによって、宿主は水中に飛び込んで命を絶つのですから、寄生された昆虫は災難ではありますが、見事なまでに理に適った生命のサイクルが完成されていることに驚愕です。


猫はハリガネムシに寄生される?

猫は昆虫を遊びの対象や捕食の対象として見ることが多く、昆虫を見るだけで興奮して喜ぶ猫ちゃんは多いですよね。

不規則な動きをする昆虫は猫の好奇心を掻き立てますので、ときには勢い余って食べてしまう子も居ることでしょう。

しかし、カマキリやバッタのお腹の中には、ある程度の確率でハリガネムシが成熟しているかと思うと、大切な愛猫が捕食した際に、寄生されてしまうのではないかと心配になってしまいますよね。

実際にハリガネムシは、猫を宿主にすることがあるのでしょうか?

◆ハリガネムシは哺乳類に寄生しない

ハリガネムシは人間をはじめとした、哺乳類を寄生の対象にすることは無いことが分かっていますので、猫にも基本的に寄生することは無いと言えるでしょう。

ハリガネムシのライフサイクルを考えてみても、昆虫の体内で成熟していくことこそが、自分たちの生命を繋ぎやすいことを本能的に理解しているはずですので、昆虫よりも数十倍大きな哺乳類をマインドコントロールできないことも知っているはずです。

もし、猫がハリガネムシに寄生されている昆虫を食べてしまったとしても、胃の中で消化された後に便として排出されるか、嘔吐をすることによって体外へ排出されることがほとんどです。

人間にハリガネムシが寄生した実例もあるようですが、偶発的事象とみられているようなので、絶対ではないけれど哺乳類には寄生しないと思っていても問題はないでしょう。

寄生虫だからといってすべての生物に寄生できるわけではなく、自分の生きやすい環境を持ち合わせた生物にしか感染できないのが、寄生虫の最大の特徴と言えるのかもしれません。


猫に寄生する主な寄生虫

ハリガネムシは猫に寄生する可能性が基本的に無いことが分かりましたが、猫に寄生する寄生虫は少なくとも日本で数十種類以上は存在していると言われています。

ハリガネムシが猫に寄生しないからといって安心するのではなく、猫に寄生する寄生虫のことも猫と暮らしている方であれば、知っておくべきと言えるのではないでしょうか。

以下が猫に寄生する主な寄生虫となりますので、普段の生活の中で関わり合いを持たないように気を付けましょう。

◆ノミ・ダニ

猫に寄生する虫といえば、ノミやダニといった外部寄生虫を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。

皮膚や被毛に寄生するので、痒みを伴うことや炎症を起こすことが多く、その部分を執拗に猫が掻いたり舐めたりしてしまえば、炎症は悪化して別の感染症を併発することもあるようです。

とくにダニには「マダニ」「耳ダニ」「ヒゼンダニ」といった、猫にとって厄介な症状を発症させる種類のダニが多いので注意が必要と言えるでしょう。

◆鉤虫

猫の体内に寄生する内部寄生虫は多く存在していますが、猫の小腸に寄生して粘膜に噛みつき、血を吸うと言われているのが「鉤虫(こうちゅう)」です。

吸血されることによって貧血や消化器に障害が起きるなどの症状が出ますが、軽度の場合はそこまで症状が出ることはありませんが、重度の場合は貧血によって命に危険が及ぶこともあるそうです。

感染経路は経口感染や経皮感染が知られていますが、ネズミを宿主として鉤虫が成熟することもあるので、ネズミを食べることによって感染することも否めません。

◆回虫

鉤虫と同じようにネズミを宿主にしている場合や、経口感染や母子感染で寄生してくるのが「回虫(かいちゅう)」となります。

線虫と呼ばれる寄生虫の仲間となりますが、ほとんどの場合は回虫の卵を何かしらのきっかけで体内へと取り込み、最終的に小腸で寄生しますが、こちらも鉤虫と同じく軽症であれば症状が出ないことがほとんどです。

症状が出たとしても下痢や軟便などが一般的ですが、子猫が寄生されてしまうと重篤化しやすいので注意が必要と言えるでしょう。

また、回虫は人間にも感染することがあるので、感染しないための対策も大切となってきます。

◆条虫

同じく猫の小腸に寄生する寄生虫の中には、「サナダムシ」とも呼ばれる「条虫(じょうちゅう)」も確認されています。

日本で猫に寄生する条虫は10種類以上も存在すると言われており、その中でも猫で感染が多いとされているのが、「瓜実条虫(うりざねじょうちゅう)」です。

寄生された際の症状としては、ほかの内部寄生虫と同じように下痢や食欲不振などが見られますが、この寄生虫が懸念される理由として、たくさんの片節で形成された形状にあると言われています。

条虫はノミが媒介する寄生虫でもあるので、ノミに寄生されていた場合は、条虫への感染も疑わなくてはいけません。

この条虫の恐ろしいところは片節の中に虫卵を忍ばせ、体外に排出させたのち、繁殖を繰り返すという点です。

猫のおしりに白いゴマのようなものがいくつか付着していたら、条虫の片節の可能性が高いので、動物病院で検査してもらうことをおすすめします。


猫は虫を食べても大丈夫?

今回の記事では猫にハリガネムシは寄生するのかに、スポットを当ててご紹介してきましたが、そもそも猫は昆虫を食べても問題がないのでしょうか?

◆基本的には問題なし

昆虫に寄生している寄生虫は、哺乳類には寄生しないことがほとんどなので、基本的には問題はありません。

もともと野生で生活していたときには、昆虫をエサとして捕食していたこともあり、猫にとっては貴重なたんぱく質として認識しているのかもしれませんよね。

◆衛生的に極力食べさせない

猫が昆虫を食べることは基本的に問題がないにしろ、感染症の原因となる病原体を持ち合わせていることや、ホウ酸団子を食べていたり殺虫剤がかかっていたりすることもあるので、衛生的に良いとは言えないでしょう。

愛猫が室内で虫を見つけたとしても自由に接触させるようなことはせず、外に逃がすなどをして接触させないようにしてあげてください。

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まとめ

カマキリなどの昆虫を意のままに操るハリガネムシは、ブレないライフスタイルが確立しているからこそ、川などの生態系が守られているとも言われています。

一見残酷に見えるようなことでも、生物が生きていく上では、大切なことと言えるのではないでしょうか。

しかし、その宿主である昆虫を愛猫が食べてしまった場合、飼い主さんは不安な気持ちでいっぱいになってしまうはずですが、猫をはじめとした哺乳類にはハリガネムシが寄生することはないので、そこまで気にすることはありません。

かといって昆虫を好きなだけ食べても良いというわけでもないので、室内に虫が入り込んだ場合でも、猫が食べないような予防を心掛けておくようにしましょう。



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たぬ吉

たぬ吉

小学3年生のときから、常に猫と共に暮らす生活をしてきました。現在はメスのキジトラと暮らしています。3度の飯と同じぐらい、猫が大好きです。


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