猫にも利き手がある!?海外で行われた研究
利き手とは、左右の手のうち、先天的に反射・動作される手のことを指します。
例えば、お箸を持つ、字を書く、ボールを投げるといった動作を上手にこなせる手が利き手といわれています。人の場合、9割の人の利き手が右利きといわれていて、左利きは男性の方が圧倒的に多いようです。
人には右利き、左利きと利き手がありますが、実は猫にも利き手があるという研究結果が発表されています。
◆正しい猫の利き手はどっち?
猫の利き手の研究は昔からあり、古いものでは1955年に行われていたといわれています。しかし、研究での実験の仕方や調べ方が違い、ある研究では「左利きが多い」という結果が出たり、ある研究では「猫には利き手はない」という結果が出たりと、様々な研究結果がありました。
そんな中、2009年に雑誌「Animal Behaviour」で、イギリス人の心理学者デボラ・ウェルズ博士が行った「猫の利き手に関する実験」の驚くべき研究結果が発表されました。
◆猫の利き手を調べる実験方法
この実験では、オス猫が21匹、メス猫が21匹の計42匹の猫が実験対象になりました。
42匹の猫を対象に、以下の3つのテストを行いました。
利き手の調べ方①
ネズミのおもちゃを猫の頭上10cmに垂らし、どちらの手でネズミのおもちゃにパンチをするか。(猫の手の縦の動き)
利き手の調べ方②
ネズミのおもちゃを猫の目の前に置き、ゆっくりと糸で引き猫から遠ざけた時に、最初にどちらの手を使ってパンチをするか。(猫の手の横の動き)
利き手の調べ方③
5gのマグロを目の前で小さな透明なビンの中に入れ、最初にどちらの手を使ってマグロをビンから出そうとするか。(最終的にマグロに届いた手ではなく、最初に使った手を記録する)
これらの3つの調べ方を1日10回までとして日にちを変えて、猫1匹あたりトータルで100回繰り返しました。
◆3つのテストの結果は?
①と②の調べ方では、42匹の実験対象になった猫は、左右両方の手で均等にパンチを出しており、利き手はありませんでした。
しかし、③の調べ方では、オス猫は21匹中、20匹が左手を使い、メス猫は21匹中、20匹が右手を使いました。③の実験では、猫には確かに利き手があり、さらにその利き手には性別によって反対になるという結果が出たのです。
デボラ・ウェルズ博士が行ったこの猫の利き手を調べる実験では、オス猫は左利き、メス猫は右利きとはっきりと分かれた結果が出ました。ここまで極端に性別によって左利き、右利きと分かれたのは、この猫の実験が初めてだといわれています。
◆なぜ③のテストだけ差が出たのか?
デボラ・ウェルズ博士は「①と②の調べ方は簡単すぎた」と考察しています。
人も文字を書いたり、ボールを投げる複雑な動作は利き手を使います。ドアを開けたり、電気のスイッチを押すなどの簡単な動作はどちらの手でもできます。猫にとってはおもちゃのネズミにパンチすることは、そのぐらい簡単なことなのでしょう。
しかし、小さなビンからマグロを出すのは複雑な動きが求められ、利き手を使ったと思われます。
猫の利き手は性別によって違う?
◆利き手が異なる理由は?
利き手は、人以外の動物でもあるといわれています。そして、犬や馬、人でも左利きはオスに多いというデータがあります。
利き手のメカニズムは、脳機能やホルモンの影響など様々な説がありますが、その詳しい理由は未だに分かっていないようです。一説には、男性ホルモンである「テストステロン」が左利きと関係しているといわれています。
◆猫の利き手にはホルモンが影響する?
2012年にデボラ・ウェルズ博士は猫の利き手についてのさらなる論文を発表しました。
その論文では、12匹の猫を対象に、生後3ヵ月、生後6ヵ月、生後12ヵ月の時に、先ほどの調べ方③「5gのマグロを目の前で小さな透明なビンの中に入れ、最初にどちらの手を使ってマグロをビンから出そうとするか」を行いました。
その結果、生後3ヵ月、生後6ヵ月の時には特に利き手は決まっていなかった猫が多く、生後12ヵ月の時になると、オス猫は左手、メス猫は右手を使うようになったといいます。
これは、幼猫の段階では利き手は決まっておらず、成長するにつれて利き手が決まることを示しています。
この結果をみると、男性ホルモン、女性ホルモンが強く利き手に影響しているのではないかと思われます。
今後も猫の利き手の研究がすすめられると、なぜ性別によって利き手が違うのか具体的な結果がわかるかもしれません。
猫の利き手で性格もわかる?
イギリスのクイーンズ大学のチームが、「猫の利き手で性格に違いがあるのか?」という実験を行いました。実験対象の猫は北アイルランドに暮らす飼い猫です。
◆猫の利き手を分類する
猫の利き手を調べるために知育おもちゃを使い、実験を行いました。実験内容は、おもちゃの中に入れられたおやつを取り出す時に、どちらの手を使っているかを観察するというものです。
この実験を50回行った後、猫たちを右利き、左利き、両利きと3種類に分類した結果、各グループに30匹ずつの猫を集めることができました。
◆猫の性格を調べる実験方法
この猫たちを対象に、セラピーキャットを見極めるために開発された気質テスト「猫の気質プロファイル(FTP)」と、飼い主さんに対するアンケート調査から猫の気質を評価する「猫の感情気質スケール(CAT)」が行われました。
・猫の気質プロファイル(FTP)
猫が知らない人と遭遇した時にどんな反応をするかを第三者が客観的に観察をし、「積極的」と「消極的」に評価するものです。
・猫の感情気質スケール(CAT)
12の項目(遊び好き、自信がある、愛情深い、従順など)に関して、猫の飼い主さんが猫の性格を1~5までの5段階で主観的に評価をします。その評価値から「神経質」と「衝動的」という猫の性格を探るというものです。
◆利き手によって性格の違いが現れた
この全てのデータで、猫の利き手と気質調査を統計的に調べた結果、右利きと左利きの性格の差は「右利きの猫の方が、左利きの猫より遊び好き」ということがわかりました。
他に、「利き手がある猫」と「両利きの猫」を比較した際に、性格が違うこともわかりました。
・利き手のある猫の性格
・何に対しても積極的な性格
・自信がある、愛情深い、活動的、友好的という気質が強い
・両利きの猫の性格
・消極的な性格
・愛情、従順、友好的という気質が低い
・攻撃性が高い
・神経質の要素が強い
このようなデータから、「右手か左手かのどちらかを優先的に使っているのは、何らかのメカニズムを通して、猫の性格に影響を及ぼしている可能性がある」という結果が出ました。
また、利き手があるという要素のほうが、性格と強く連動しているということもわかりました。
脳との因果関係はまだはっきりと解明されているわけではないようですが、とてもおもしろい実験結果ですね。
愛猫の利き手を実際に調べてみた!
デボラ・ウェルズ博士が行った実験を参考に、家でできる猫の利き手の調べ方があります。今回はこちらの調べ方で、愛猫2匹の利き手の実験をしてみました。
◆協力してくれた愛猫
実験に協力してもらったのは、白猫のハル、白黒猫のチョコのオス猫2匹です。2匹とも生後8ヵ月ぐらいで去勢手術をしています。
ハルの性格は、とても人懐っこく、好奇心旺盛です。チョコの性格は、人見知りが激しく、物音などにとても敏感に反応します。
◆用意するもの
・おやつ
・透明のビン(猫の手が入る大きさ)
デボラ・ウェルズ博士が行った実験では、用意するものは「マグロ」とありますが、2匹ともマグロがあまり好きではないため、大好きなおやつを透明のビンに入れました。
透明のビンの中には1粒~2粒のおやつを入れ、デボラ・ウェルズ博士が行った実験の回数を減らして調べてみました。
◆調べ方
①猫におやつを見せる(猫にニオイを嗅がせて注意をひかせる)
②おやつを猫が見ている前でビンの中に入れる
③猫がおやつを取り出そうとした時に最初に使った手を記録する(最終的にマグロに届いた手ではなく最初に使った手)
◆ハルの場合
透明のビンにおやつがあるかのぞく
1回目:おやつを取る(右手)
2回目:おやつを取る(右手)
3回目:おやつを取る(右手)
4回目:おやつを取る(右手)
◆チョコの場合
透明のビンにおやつがあるかのぞく
1回目:おやつを取る(左手)
2回目:おやつを取る(右手)
3回目:おやつを取る(左手)
4回目:おやつを取る(右手)
ハルはおやつを取る時に使った手は「右手のみ」でした。一方で、チョコはおやつを取る時に使った手は「両手」でした。この結果から、ハルは右利き、チョコは両利きになると思われます。
ただし、デボラ・ウェルズ博士が行った実験のように1日10回、1日おきに行い、100回行えば、結果は違っていたかもしれません。
まとめ
今回は、猫の利き手の調べ方や利き手に関する研究をご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。
愛猫の利き手がどっちなのか気になる飼い主さんは、今回ご紹介した利き手の調べ方をぜひ一度試してみてくださいね。また、利き手と両利きで性格も違うのか、観察するのもいいでしょう。
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