野良猫を保護するきっかけ
日本人にとって猫はとても身近な動物。自宅の近所を歩いていると、ひとりでトボトボ歩いている野良猫を見かけることはよくあることですよね。
その姿を見ていると、「ごはんは食べているのかな?」「寝る時は寒くないのかな?」など、猫好きの人なら、その行方が気になってしまうことでしょう。それに、ときには捨てられている赤ちゃん野良猫を発見することもあるかもしれません。野生で暮らしていると、栄養も取れずにこれからどんどん弱っていくかもしれませんよね。
そう考えると、野良猫を見かけたらすぐにでも保護したいと願う方もいるのではないでしょうか。
そもそも野良猫はどうして外で暮らしているか
近所を歩くと野良猫がひとりぼっちで散歩している姿を見かけることは少なくありませんよね。
でも、よく観察していると首輪をつけている猫も多いです。外を歩いていたとしても、首輪をつけている猫は飼い猫として人間と一緒に暮らしている確率が高い猫です。おそらく、外出が好きで近所の散策が日課となっているのかもしれませんね。
しかし、首輪もせず歩いている猫。おそらく、野良猫である確率が高いです。野良猫は飼われていないので、完全に外で生活しています。こちらのタイプの猫は人間に警戒心を持っていて、近づくと逃げていったりすることも多いでしょう。
野良猫とひとくちにいっても、その背景はさまざま。そのケース別に、彼らの特徴を考えてみましょう。
●ケース1:生まれたときから「野良猫」
野良猫である母猫が赤ちゃんを産み、その猫たちが「野良猫」となるように、生まれながらにして野生で暮らしている野良猫も結構多いことでしょう。
このように、生まれた時から人間と関わらずに野生で育った野良猫は、人間に対してかなりの警戒心を持っています。見た目はとても可愛らしい猫であっても、人間が近づくと「警戒しなければ」という意識が本能的に働きます。おそらく、高確率で威嚇のポーズをとってくるでしょう。
食べものは自分で捕獲する、暑さを回避する、寒さをしのいで眠る…など、厳しい自然界で孤独に生きている野良猫の気持ちに近づくのは難しいのかもしれません。
●ケース2:人間に捨てられた猫、迷子になった猫
人間が近づいていっても、それほど警戒しない様子を見せる猫もいます。
きっとそれは、以前人間と触れ合ったことがある猫でしょう。人間の温かさを知っているため、あまり警戒しないのかもしれません。悲しいことではありますが、人間たちが捨ててしまって仕方なく外で暮らしている野良猫もいます。
また、何らかの事情で迷子になって、そのまま元の飼い主さんのところに戻れないまま「野良猫」になっているケースもあります。
このような野良猫を保護する可能性もあるので、保護した後には「迷い猫」かどうかをチェックしてみる必要があります。特に、人懐こさを見せる野良猫は迷い猫の可能性が大きいです。保健所や動物保護団体に情報確認をしましょう。
野良猫の保護って…?捕獲するにはどんな準備が必要?
野良猫を保護して飼い猫として一緒に暮らしたい…という、心優しい方もいらっしゃると思います。猫好きな人なら、野良猫を見つけた時にそんな思いが心をよぎることがありますよね。
「保護」と言いますが、まずは「捕獲」をしなければなりません。ただ、野生で暮らしている野良猫は、どうしても「警戒心」が強いです。簡単に捕獲できるものではないのです。
●保護する前に知っておきたいこと
いきなり捕獲しようとしないのは大前提です。野良猫が警戒心をあらわにしているときに、無理やり近づいてもさらに警戒するだけ。特に、急に走って手を出したりするとびっくりするだけです。
野良猫は人間に慣れていない猫たちです。急に近づくことで、「人間=危険な生き物」と考えてしまいます。
そして、「猫の目を見つめすぎない」ということもポイントです。猫の世界では「見つめて目を離さない=ケンカの合図」とも言われています。じっと見たまま視線をそらさないでいると、野良猫にとっての「敵」と見なされてしまうので気をつけましょう。
また、人間に対して嫌悪感を持つ理由のひとつに「ニオイ」があります。特に、柑橘系のニオイ、香りのきつい香水、タバコの煙のニオイなどは、猫がかなり嫌がるニオイと言います。近づいてさえくれないでしょう。
●野良猫に懐いてもらう方法
野良猫を捕獲する前に、まずは懐いてもらうのが一番いいですよね。生まれた時からの野良猫のケースでは、人間に慣れていないので簡単に懐きません。無理やり近づかず、食べものなどを見せるなどし、野良猫の方から近づいてくれるのを待つといいですね。
まずは、野良猫が通りそうな場所に食べものを置いておきます。一般的なキャットフードがいいでしょう。キャットフードなら気軽に準備しやすいですね。数日間、同じ場所に食べものを置いておくことにより、野良猫が「餌のある場所」と分かってくれます。
時には、猫の近くに食べものをそっと投げ与えてもいいですね。「食べものをくれる人」と認識してくれるので、次第に少しずつ警戒心を解いてくれるものです。
野良猫の心を掴むコツは、少しずつ近づいていくことです。
●捕獲するための準備品
– 野良猫捕獲器、キャリーケース –
捕獲とはいえ、いきなり抱っこして捕まえようとする訳にはいきません。せっかく懐きかけた猫がビックリして凶暴化する恐れもあります。
野良猫の保護のためには、捕獲器があるといいですね。猫が中に入ると後の扉が閉まる仕組みになっていて、入った猫を捕獲しやすい構造になっています。捕獲する時には、なるべく捕獲器を使った方が猫にとっても人間にとっても安全です。
捕獲器は、個人で購入するのにはなかなか難しいものです。臨時的に捕獲器が必要な場合には、貸し出してくれる動物病院や動物愛護センターもあります。捕獲しようと考えているなら、問い合わせをしてみるといいですね。
また、捕獲した後には動物病院に行く必要があるので、その際に利用するキャリーケースは必需品です。
– 手袋、長靴、長そでの洋服 –
野生で暮らしている野良猫は、実はかなりの確率で寄生虫に感染しているといいます。
そのため、人間の皮膚についてしまうと感染症のリスクが高まります。捕獲時に猫が興奮して人間の皮膚を引っ掻いてくることもあります。
それを防ぐには、皮膚を見せないようなスタイルでの捕獲が大事です。
猫の捕獲の方法について
野良猫捕獲のための代表的な方法についての紹介です。
●その1:捕獲器で捕まえる方法
先ほどもお話しましたが、捕獲器は猫を捕まえやすくする仕掛けがあるので捕まえやすい方法と言えます。食べものを数日間同じ場所で与えていると、野良猫が食べものを目当てに来るようになります。捕獲器の周辺にもキャットフードなどの食べものを置いておくと、捕獲器の中にも入りやすくなります。
捕獲器の奥の方に、キャットフードを入れておくと、それを目当てに中に入ってきます。捕獲器には中に入ると後側にある扉が閉まる仕組みとなっているものが多いです。
●その2:キャリーケースで捕獲する方法
捕獲器がない場合は、同じ状況をキャリーケースで作りだしてあげます。キャリーケースの入り口を開けておき、奥側にキャットフードを入れておきます。野良猫が食べもの目当てに中に入ったら、扉を閉めてしまいましょう。
捕獲方法を見ていくと、一見簡単にできそうな気もしますが、相手は野性の猫。警戒心が強ければ強いほど暴れる可能性が大きいです。
捕獲する前には、何日も前から捕獲する猫の様子を見たり、警戒心を解くようにする工夫が必要です。
保護したあとに飼いたい、という場合には、特に無理やりの捕獲はNG。今後の関係を修復するのが難しくなってしまいます。
また、野良猫の捕獲に一度失敗してしまうと、同じ仕掛けを準備しても警戒心が強まりその場所にさえ寄ってこなくなります。
野良猫を捕獲したあとはどうする?
なんとか捕獲できた野良猫。さあ、一緒に自宅に帰って暮らそう…!と簡単にはいきません。
ここでは、捕獲した後の人間がとるべき行動について、お話します。
●まずは野良猫を動物病院に連れていく
野良猫として暮らしてきた猫は、野生の中で生きていたため健康状態は悪い可能性が大きいです。体調的なことは、外見では分からないことも多いので、動物病院での検査が大切です。便検査、血液検査など健康状態の検査をしてくれます。
また、野良猫は、他の猫や人間にうつってしまう感染症をもっていることがあります。
ケガをして血液が出ていたり、目ヤニが出ているなどの場合、知らずに触ってしまうことのないようにしましょう。ワクチン接種をしてもらうことによって対策が可能です。
そして、次に気になるのは、外で暮らしてきた猫は体じゅうに「ノミ」「ダニ」が住みついているということです。ノミ駆除をしてもらわないで自宅に連れてかえることのないようにしましょう。野良猫の体に付着しているノミやダニを駆除する薬を処方してもらうようにすることも重要です。
●野良猫と一緒に暮らす時の注意点を知る
野良猫は、生まれた時から人間と関わっている猫とは違います。自宅で一緒に暮らす時には覚えておきたい点もあります。
– 慣れるには時間が相当かかる –
子猫の状態の野良猫の場合、それほど慣れるまでの時間はかからないかもしれません。
しかし、大人の猫の場合、家の中という環境に慣れるのには時間がかかると思います。
家族が多い家庭で保護された野良猫は「多くの人間との暮らし」に慣れるのにも相当な時間を要することでしょう。警戒心が解けずに、じっと身を潜めていることもあります。キャットフードも食べてくれないかもしれません。根気よく、接してあげましょう。
– ストレス発散できる環境づくりをしてあげる –
広い世界で自由に行きていた野良猫にとっては、家の中の狭さが窮屈と感じられるかもしれません。家という環境に慣れてきたとしても、何とかして外に出たがるということも…。脱走を何度か試みるケースもあります。
また、家の中の狭い範囲で運動量が少なくなり、環境の変化からストレスが溜まって体調を崩すことも…。
猫が興味を抱くようなおもちゃ、遊びながら運動になるキャットタワーなどを準備してあげましょう。高い場所にいると落ち着くこともあります。
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– 懐かないといって焦らない –
警戒心の強い野良猫には、人間の方から距離をつめようとするのはあまりよくありません。保護した野良猫を飼い猫として暮らしたからには、早く抱っこしたい、触りたい、撫でたいと人間の欲求が多く焦ってしまいがち。しかし、その猫と一緒に暮らそうと思ったら、焦りすぎるのは禁物なのです。
適度な距離感で、猫の方から距離を縮めてくれるのを待ちましょう。もし、猫の方から近寄ってくるのを待ち、少しずつ撫でたり、構ったりするようにしていくのが大事です。
責任を持った覚悟が必要
野良猫を保護するということは、動物に対しての愛情が深い人でしょう。「救ってあげたい」という気持ちから、保護を決意したのではないでしょうか。しかし、実際に保護してみると「思ったより大変だ」と思うこともあるはず。
そこで大事なのは、野良猫を保護すると考えた時には、「必ず最後まで責任を持てるかどうか」を大切にしてください。
野良猫時代に何回か見かけて可愛らしい様子を見ると、保護して一緒に暮らしたくなります。保護するということもとてもいいことだと思います。
ただ、今までの違った環境に保護するということなので、なかなか上手くいかないことも多いです。途中で手放すなんてことがあったら、その猫はまた「捨て猫」となってしまいます。
自宅で飼い猫として迎え入れるということは、最後まで責任を持つという確かな覚悟が必要なのです。
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