猫の去勢手術・避妊手術とは?
猫の去勢手術・避妊手術とは、精巣または卵巣(子宮)を取り除く手術の事です。不妊手術とも言い、オス猫の場合は去勢手術、メス猫の場合は避妊手術と区分されます。
繁殖の予定がない場合は、去勢手術・避妊手術をすることで、猫自身の生殖器に関する病気のリスクを減らすことができます。また、発情期のマーキング行為や鳴き声などの行動を抑えることもでき、飼い主さんのストレスをなくすことにもつながります。
猫と暮らす上で、軽い気持ちでの繁殖は貰い手のない子猫を生み出すことにもなりかねません。猫にとって決して良いことばかりとは言えませんが、不幸な子猫を減らすには、まず去勢手術・避妊手術を施すことが飼い主のつとめだという考えもあります。
猫の去勢手術・避妊手術にかかる費用は?
猫の去勢手術と避妊手術は動物病院で行います。一般的にどれくらいの費用がかかるのでしょうか。
日本獣医師会による、家庭飼育動物(犬・猫)の診療料金実態調査(平成27年度)によると、猫の去勢手術と避妊手術の費用は以下のようになっています。
猫の避妊手術(卵巣切除)19,833円
猫の避妊手術(卵巣子宮切除)20,986円
(中央値)
参考:家庭飼育動物(犬・猫)の診療料金実態調査(平成27年度)┃ 日本獣医師会
去勢手術の費用は、10,000円~20,000円が一般的な相場です。動物病院や地域によっての違いはもちろんあります。
避妊手術の費用は、15,000円~30,000円が相場です。こちらも動物病院や地域により違いがありますので、かかりつけの動物病院の料金を確認しておきましょう。
また、去勢手術・避妊手術を受ける猫の年齢、体の状態などによっては、麻酔をかけられるか調べるための血液検査やX線検査の費用がかかることもあります。
猫の去勢手術・避妊手術の費用を安くするには?
動物病院によって異なる猫の去勢手術・避妊手術の費用ですが、なるべく安く手術を受ける方法はあるのでしょうか。
◆猫の去勢手術・避妊手術はペット保険適用外
猫が病気の際に通院・手術等で利用できるペット保険ですが、猫の去勢手術と避妊手術の費用は「保険適用外」となる場合が多いようです。
ペット保険は、基本的に保険加入後に起きた病気やケガの費用を補償する仕組みのため、去勢手術・避妊手術、ワクチン接種などの健康体に施す処置は補償対象外になります。
そのため、ペット保険に加入していても、去勢手術・避妊手術に関しては費用の負担を少なくすることは難しいでしょう。
◆市区町村や獣医師会の助成金を利用しよう
猫の去勢手術・避妊手術を受ける際、その費用を一部負担してくれる「助成金」という制度があります。助成金は基本的に2種類あり、「市区町村の助成金」「獣医師会の助成金」を利用することができます。
例えば、新宿区の場合、飼い猫のオス猫は2,500円、メス猫は4,000円の助成額が定められています(2019年5月確認)。
こちらは指定の動物病院を利用する必要があり、手術を受ける前の事前申請が必要となります。また、予算がなくなり次第締め切りとなりますので、必ず問い合わせてから申請をするようにしましょう。
市区町村の去勢手術・避妊手術の助成金は、飼い猫を対象としたものもありますが、地域猫などの飼い主のいない猫のみを対象とする市区町村もあります。年度によって助成制度の有無や助成額が変更になる場合もありますので、お住いの地域のHPを確認してみることをおすすめします。
猫の去勢手術・避妊手術の流れは?
◆オス猫の去勢手術の流れ
オス猫の場合は去勢手術と言い、精巣の摘出を行います。一般的なオス猫の去勢手術の流れは次のようなものです。
①予約
去勢手術をすると決断したら、手術希望日の予約を取ります。一週間前から取るのが目安です。
②手術前日
手術前日の夕方にフードを与えて、それ以降は絶食にします。獣医師から指示がある場合はそれに従います。
③手術当日
手術直前に排便・排尿を済ませて手術です。手術は短時間で終わり、日帰りや1日入院程度で退院することができます。こちらも動物病院により違いがありますので説明をしっかり聞いてください。
④手術後
手術後は、手術から7日~10日前後に動物病院に連れて行き、抜糸してもらいます。なお、最近は抜糸のいらない手術法もあります。どちらにしても、経過を診てもらいに動物病院に行くのが良いでしょう。
◆メス猫の避妊手術の流れ
メス猫の場合は避妊手術と言い、卵巣と子宮の摘出を行います。一般的なメス猫の避妊手術の流れは次のようなものです。
①予約
避妊手術をすると決断したら、手術希望日の予約を取ります。一週間前から取るのが目安です。メス猫の場合は入院が必要な場合がほとんどなので、予約時にしっかり確認しましょう。
②手術前日
手術前日の夕方にフードを与えて、それ以降は絶食にします。獣医師から指示がある場合はそれに従います。
③手術当日
手術直前に排便・排尿を済ませて手術です。オス猫と違い、開腹手術となりますので、1〜2日の入院が必要となる場合がほとんどです。こちらも病院により違いがありますので、病院の説明をしっかり聞いてください。
④手術後
手術後は、手術から7日~10日前後に動物病院に連れて行き、抜糸してもらいます。経過を診てもらいに動物病院に行くことになります。
近年は腹腔鏡を用いて傷口を最小限にとどめる、という避妊手術を行う動物病院も増えてきました。猫の体の負担や手術後の傷の痛みが減らせますし、精神的ストレスも少なくて済む可能性があります。
手術後に飼い主が気を付けてあげたいこと
無事に去勢手術・避妊手術が成功すれば、ホッと一安心。でも、愛猫が帰ってきてからも飼い主さんの心配が続くかもしれません。
去勢手術・避妊手術後に注意すべき点をお伝えします。
◆興奮させ過ぎない・リラックスさせる
手術前から手術直後は、猫の生活は急激に変わります。
・手術前日からの絶食する
・当日には病院に預けられる
・麻酔で目が覚めても1~2日の入院をする
と、数日程度いつもと違う状況で過ごさなければなりません。
それに、去勢手術、避妊手術ともに、麻酔をしているとはいえ、体にメスが入ります。手術後には、違和感や疲労感で興奮することもあるでしょう。
帰宅したらいつもと変わらぬように接し、興奮させ過ぎないようにしましょう。キャットタワーにジャンプしたり、走り回ったりすると傷口が開くこともあるので、リラックスさせ落ち着かせるような配慮が大切です。
◆痛んでいないか?傷口をチェックする
猫ちゃんの性格によっては、傷口を舐めないように取り付けた「エリザベスカラー」を嫌がることがあるかもしれません。
だからと言って外してしまうと、傷口を自分で舐めたり、縫合してある糸を取ろうとしたりすることもあるので注意が必要です。
また、傷口が化膿して極端に痛がるかもしれません。手術後は、傷口に変化がないか毎日確認するようにしましょう。
◆獣医師の指示に従おう
一般的には、手術の疲れから「元気がなくなる」「ナーバスになる」という猫ちゃんが多いようです。
手術後に食べさせる食事や服用させる薬、抜糸の期日など、獣医師の指示に従うようにしましょう。手術前の絶食や数日の入院などで、ストレスから排尿や排便パターンが変わるケースもあります。
気になる点があれば、病院に相談することがおすすめです。
◆性格が変化しても優しく接しよう
ホルモンバランスの変化から、今までの性格とは違った様子が見られるようになるケースも多いです。「運動好きだったのに動かない」「体調が戻らず失敗ごとが増えた」など、猫ちゃん自身も体質の変化に戸惑っていることでしょう。
それで、飼い主さんがピリピリと神経質になると、それが愛猫に伝染してストレスになることも。
飼い主さんは大きな心で優しく接してあげましょう。そのなかで、特に気になる点があれば、動物病院で相談するのもいいかもしれませんね。
◆食べ物に注意しよう
「子孫を残したい」という猫の本能がカットされるのが、去勢および避妊手術。手術をすれば恋愛脳が失われ、異性の猫ちゃんを求めようとするホルモンがなくなるでしょう。
そうなると、猫ちゃんが生きていくなかで「食べること」への欲求が強まるので、手術前よりも食欲が強くなる傾向になります。
基本的に、太りやすくなるので以前と同じカロリーのフードだと肥満のリスクが高まります。食事量を減らすと猫のストレスになるので、低カロリーのフードに切り替えるのが理想です。
避妊・去勢した猫ちゃん用のキャットフードを与えるようにしてくださいね。
また、定期的に体重をはかり、太り過ぎていないかを確認しながら健康管理してあげましょう。
猫の去勢手術・避妊手術の費用まとめ
猫の不妊手術をするということは、猫の生殖能力を飼い主である人間の勝手な判断で奪うということです。そのことについて、道義的な問題はあります。
ただ、無計画に繁殖させた子猫が捨てられたり殺処分されたりするという事実があり、そのような猫を増やさないためという理由も考えてみてください。
去勢手術・避妊手術は、単に費用だけのものではなく、猫の体そのものにも負担がかかるものです。自分が飼い猫とどのように暮らしていきたいのか、どのように世話していってあげられるのかをよく見極め、できれば猫を飼う前に去勢や避妊についてしっかりと考えを決めておきましょう。
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