【獣医師監修】冬に多い病気の尿路結石に要注意!症状・原因・治療や予防法について

2017.10.22

【獣医師監修】冬に多い病気の尿路結石に要注意!症状・原因・治療や予防法について

猫の先祖は砂漠出身のため、普段からあまり水を飲みません。水を飲まないために水分不足で尿路結石ができやすい体になります。尿路結石は治療をして完治しても再発しやすい病気のひとつで、特に冬には尿路結石になりやすい傾向にあります。尿路結石の症状や原因、飼い主さんができる予防法はあるのでしょうか。

猫の尿路結石とは?

冬に多い病気の尿路結石【症状・原因・治療や予防】③

尿路結石とは、腎臓や尿管・膀胱・尿道などに小さな石のような結石ができる病気です。この結石により、とても強い痛みを伴うことで代表的な病気でもあります。

◆猫にできやすいストルバイト結石とシュウ酸カルシウム結石

猫に多い代表的な結石の種類は、オシッコがアルカリ性に傾くことでできる「ストルバイト結石」と酸性に傾くとできる「シュウ酸カルシウム結石」の2つです。

オシッコの中にマグネシウム・リン・カルシウムなどのミネラル成分が増えたり、尿のpHバランスが崩れたりすることで結石ができやすくなります。

◆発見が遅れることも…

猫は元々狩猟動物で、生きていくためには周りの動物たちに痛みや体の不調を知られないようしなければいけません。知られてしまうと、逆に猫が狩猟の的になってしまうからです。そのため、猫は痛みや体の不調があっても見せることはせずに隠します。

猫の場合、痛みを感じても隠すという傾向から尿路結石の発見されることが遅れやすいです。健康診断により、尿路結石であることが判明する場合も多くあります。


猫の尿路結石の原因は?

尿路結石の原因としては、主に猫に与えているキャットフードや水・環境的要因・ストレスといわれています。食事の内容や生活習慣も関わっています。

◆キャットフードが原因

キャットフードの原因としては、尿路結石には配慮されていない低品質のキャットフードだけをあげているなどです。

◆水が原因

水の原因として、猫はもともと砂漠出身の動物のため、基本的にあまり水を飲みません。そのため、水分不足になり、濃度の濃いオシッコをすることで尿路結石ができやすい体になります。

◆環境的要因

環境的要因の原因としては、トイレが汚れている、多頭飼いのためトイレの数が足りないなどです。猫はオシッコすることを我慢して膀胱炎を引き起こし、そこから尿路結石に繋がります。

◆ストレスが原因

ストレスの原因としては、生活環境が猫にとって快適でないことです。甘えん坊の性格の猫は、飼い主さんにかまってもらえないと、とてもストレスをためてしまいます。


秋~冬は尿路結石になりやすい!?

季節によって、尿路結石になりやすいかどうかは変わってくるといわれています。猫の泌尿器系の病気(腎不全・膀胱炎・尿路結石など)は特に秋と冬が多いです。

◆秋~冬になると水を飲まなくなることが原因

一般的に猫は、秋~冬になると水を飲む量が減ってしまいます。水を飲む量が減ってしまうと、身体がそれに適応しようとして尿量を減らし、尿中のミネラル成分が凝縮してしまいます。そうすると濃度の濃いオシッコをするようになります。その時にミネラル成分のバランスに異常が見られると、凝縮したミネラルが結晶化してしまいます。

結晶化したミネラルは、どんどんと集まって結石を作り、結石が泌尿器系などに様々な症状を引き起こしてしまうのです。

◆秋~冬の尿路結石で注意することは?

猫はあまり普段から水を飲まない動物のため、1度に水をたくさん飲むことは滅多にありません。さらに冬は置き水が冷たくなってしまうのであまり水を飲まない傾向にあります。冬場の水は少しだけぬるめにしてあげるといいでしょう。

猫のご飯は基本的にはドライフードが多いです。ドライフードは水分がないため、積極的に水を飲む猫がいますが、冬は水を飲む量が減ってしまうために尿路結石の原因となる尿中のミネラル成分の濃縮を引き起こしてしまいます。

あまり水を飲まないと思ったら、ドライフードより水分があるウェットフードをあげるのもいいでしょう。

また、猫のトイレが寒い場所に置いてあると、猫は寒がってなかなかトイレに行こうとしないことが多いようです。トイレ環境を見直してみることも大切です。


尿路結石になりやすいタイプの猫は?

猫の尿路結石は病気の中でも比較的発症しやすい病気です。尿路結石になりやすいタイプの猫はどんな猫なのでしょうか。

◆遺伝的になりやすい猫

親からの遺伝や体質で尿路結石になりやすい猫が多いようです。親猫が尿路結石を発症したことがある場合、その子猫は尿路結石を発症していない猫に比べて、通常より発症率が高まります。

◆体質的になりやすい猫

体質的に尿路結石になりやすい猫もいます。普通のご飯をあげていても尿路結石を発症し、また完治しても繰り返し尿路結石になってしまう場合があります。

◆去勢したオス猫

オス猫が尿路結石になりやすいといわれています。オス猫の場合、尿路結石が作られる尿道がメス猫に比べて狭く、細長くてカーブしている部分があり、先端も細くなっています。そのため、結石が詰まりやすくなり重度になってしまうことが多いです。

メスの場合、尿管の幅が広く、余裕があるため尿路結石になってもそれほど重症化しないことが多いです。肥満の猫も尿路結石になりやすいといわれています。

◆若い猫

尿路結石がもっとも発症しやすい年齢は3歳~5歳の若い猫が多いようです。食事量も多く、体の内臓も活発で尿路結石を生成しやすい時期といえます。あまり、ご飯やおやつをあげすぎないように注意しましょう。


尿路結石の症状は?

尿路結石の症状は、様々な症状が出ます。

・トイレに行く回数が増える
・頻繁にトイレに行くのにオシッコが少ししか出ない
・トイレでうずくまっていることがある
・オシッコをするときに痛がって鳴く
・血尿が出る
・トイレ以外の場所で粗相をする
・落ち着きがなくなる

猫のオシッコの色が正常でない色をしていると注意が必要です。オシッコの色が赤・オレンジ・茶色はよくないオシッコの色です。
猫がオシッコをした後のトイレをチェックし、猫砂やペットシートにキラキラしている物が見えたら、オシッコから砂状の結晶や結石が出ている可能性が高いです。

猫がオシッコをする回数は平均1日に2回ぐらいです。あまりにも頻繁にトイレに行き、上記のような症状が見られるようであれば注意が必要です。

オシッコが2日間以上出ていない場合は危険なサインです。尿毒症といい、体中に毒が回り、命に関わる危険な状態になります。オシッコが出ていないと下腹部がパンパンに腫れるので、飼い主さんは毎日お腹に触ってチェックしておきましょう。

尿路結石の症状に心当たりや疑いがあり、動物病院に行く場合は、飼い主さんはオシッコした後の猫砂やペットシートを持っていきましょう。キラキラした物や白い粒のような結晶が見つかることがあります。その場合は検査をしなくても、すぐに尿路結石だと判断することができます。


尿路結石の治療法・予防法は?

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尿路結石の治療方法は、進行度合いによって対応方法が変わってきます。軽度の尿路結石の場合は、結石を溶かす薬や食事療法を行います。

◆食事療法

親猫の病気が分かっている時は、普段から尿路結石の予防に強いキャットフードをあげましょう。薬と食事療法をメインに治療していくことになります。猫の症状にあった適切なキャットフードをあげることが大切です。

今では、いろんな味がある尿路結石用のキャットフードがあります。猫の好みに合わせてご飯をあげましょう。

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結石ができる原因として食事内容も関わってくるので、ミネラルバランスがよく、適切なオシッコのpHをコントロールする適切なご飯をあげるようにしましょう。

◆十分に水を飲ませる

猫に上手に水を飲ませる工夫をすることも大切です。日頃から適度な運動をさせましょう。適度な運動は、肥満防止と水を飲む量を増やす効果があります。

◆トイレ環境を整える

猫がオシッコを我慢することがないように、トイレはいつも清潔にしておくことも病気の予防になります。多頭飼いの場合は、猫の頭数分のトイレを用意してあげましょう。

◆手術をする

膀胱や腎臓に砂状ではなく大きな石がある場合は、手術などをして結石を取り出す必要があります。結石が尿道に詰まっていてオシッコが出にくくなっている場合は、尿道口からカテーテルを入れて尿道を洗浄し、詰まっているものを流し出します。手術費用は動物病院や病気の進行度合いによって違いますが、高いと10万円を超えることもあるようです。

詰まっている結石が取れない場合や、オス猫で尿路結石の再発をくり返す場合には、ペニスを整形して尿道を短くする手術を行うこともあるようです。

尿路結石はとても怖い病気です。治療後も再発しやすいという厄介な点を持っています。約30%の猫は尿路結石を再発するといわれています。手術後も再発には気をつけることが大切になります。


最後に…

尿路結石は、とても痛みを伴う病気です。猫は飼い主さんに痛いことを隠そうとするので、飼い主さんは日頃からオシッコの回数やオシッコの色などを確認しておきましょう。また、オシッコをしている時にトイレにうずくまっていないかなど、いつもと違う行動をしたら注意が必要です。尿路結石の症状が出た場合は早めに動物病院に連れていきましょう。

尿路結石は、軽度の症状だと薬などで治すことができます。重度になる前に動物病院で獣医師さんに診てもらいましょう。そのためには、日頃からの飼い主さんが猫の様子を見てあげることが大切です。

※こちらの記事は、獣医師監修のもと掲載しております※
●記事監修
drogura__large  コジマ動物病院 獣医師

ペットの専門店コジマに併設する動物病院。全国に15医院を展開。内科、外科、整形外科、外科手術、アニマルドッグ(健康診断)など、幅広くペットの診療を行っている。

動物病院事業本部長である小椋功獣医師は、麻布大学獣医学部獣医学科卒で、現在は株式会社コジマ常務取締役も務める。小児内科、外科に関しては30年以上の経歴を持ち、幼齢動物の予防医療や店舗内での管理も自らの経験で手掛けている。
https://pets-kojima.com/hospital/

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munoco

猫を飼いはじめて20年。完全な猫派です。 今まで4匹の猫と過ごしてきました。現在は2匹の猫と楽しく過ごす毎日です。 ツンデレされて20年。猫の行動1つ1つが大好きで、ずっとツンデレにやられてしまっている人間です。

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