猫の歯の構造は?
猫の歯は、乳歯が26本、永久歯が30本からなります。少なく感じるかもしれませんが、猫の頭蓋骨はかなり小さいため、あまりたくさんの歯を詰め込むことができないのです。
◆犬歯
合計30本ある永久歯の中でも、上下合わせて4本ある「犬歯」は、獲物を捕らえるときに役立ちます。この歯は横幅が広く平らで、獲物の首筋にグサリと刺し込むと、うまく脊髄に当たり効率的に切断することができます。脊髄を切断された動物は背骨の中を通っている神経線維の束も切断され、即死してしまいます。
◆門歯
犬歯と犬歯の間に上下6本ずつある「門歯」は、切歯とも呼ばれ、グルーミングの際に櫛のような働きをします。
◆臼歯
一般的に奥歯と呼ばれている「臼歯」は、前臼歯と後臼歯に分かれています。猫の臼歯は先端がとがっていて、上下の歯が前後で微妙にずれている構造になっています。この構造のおかげで臼歯はちょうどハサミのような機能を持ち、猫が肉を噛みちぎることにとても役立ちます。
子猫の口臭が臭い原因・対策法は?
子猫の口臭の原因はいくつかあります。原因を確認して対策を取り、成猫になっても歯周病などにかかりにくい習慣をつけるようにしてあげましょう。
◆歯の生え変わり
乳歯から永久歯に生え変わりの時期に子猫の口臭がひどくなることがあります。これは抜けかけている乳歯と生え始めている永久歯の間に食べかすがたまり、歯垢が生成され、この歯垢に細菌が繁殖して臭いが発生するからです。
永久歯に生え変われば食べかすが溜まる場所も少なくなり、口臭は自然に収まることがほとんどです。しかし、将来成猫になってから歯周病で困らないように、子猫のうちから歯磨きなどデンタルケアになれてもらうことが大切です。
◆フード
猫の口臭はフードが原因である場合があります。子猫のフードは柔らかく、粒の細かいものなど食べやすい種類が多くなっています。食べやすく柔らかいフードは歯の汚れが溜まりやすいため、口臭の原因となります。同様にウェットフードの与えすぎも歯の汚れに繋がります。
粒の大きなカリカリフードであれば歯に溜まりにくく歯垢がつきにくいでしょう。
また、フードの原材料の質にも注意が必要です。品質の悪いフードは添加物や人工の香料が多く含まれていて、それが口臭の原因になることもあります。
子猫の乳歯の生え変わりについて
◆子猫の歯の生え変わりの時期は?
子猫の乳歯は、切歯が上下左右で3本ずつ、犬歯が上下左右で1本ずつ、臼歯が上顎6本、下顎4本の、計26本です。
生後15から20日~生後30から35日で子猫の乳歯が生え揃います。
生後3~5ヶ月で乳歯が抜け始め、永久歯へと生え変わります。
生後5~7ヶ月で永久歯が生え揃います。
永久歯になると、乳歯にはなかった後臼歯が加わり、全部で30本となります。
◆子猫の歯の生え変わりは気づきにくい!?
子猫の乳歯はとても小さく、掃除機をかけて気がつかないまま吸い込んでしまっていたり、子猫が乳歯を飲み込んでしまうこともよくあります。そのため、子猫から飼い始めている飼い主さんでも、抜け落ちた乳歯に気がつける人は少ないのではないかと思います。
また、永久歯に生え変わったことすら気がつかないこともあります。なぜなら、子猫の永久歯は乳歯が生えているうちに出てくるので、人間のように歯が抜けているような状態にはならないからです。猫の永久歯は乳歯が生えた後、顎骨の中で形成され、永久歯が成長するにつれて乳歯の歯根は溶けてなくなり、乳歯は外へ押し出されるように抜けます。
◆生え変わりの時の行動・対処法は?
気づきにくい猫の歯の生え変わりですが、実は子猫が乳歯の抜けるサインを出しているのにお気づきでしょうか。
★飼い主さんの手やおもちゃを噛む
人間の赤ちゃんも乳歯が生えてくると「歯固め」というおもちゃをかじったりしますが、子猫にも同じ事が起こります。
歯の生え変わりの時期には猫は、おもちゃや飼い主さんの手をよく噛みます。これは抜けそうな歯茎がむずがゆいため。よだれの量も増えるので、舌をペロペロと舐める仕草が増えます。
★歯茎から出血する
生え変わりの際に歯茎から出血する場合もあり、飼い主さんは驚いてしまうかもしれません。しかし通常出血は数分で収まりますので心配はありません。
◆子猫の「残留乳歯」に注意
歯が抜けたからといって、フードも柔らかいものに変える必要はありません。ただし、気をつけたいのが「残存乳歯」です。
残存乳歯とは、乳歯がうまく抜けずにそのまま残ることをいい、残存乳歯は隣り合う永久歯との隙間から歯肉炎を起こし、歯周病の原因となります。また咬合異常を起こし、食事がしにくくなる可能性もあるため、早めに抜歯する必要があります。残存乳歯の抜歯は、麻酔をかけて行います。
他にも生え変わったばかりで、しっかりとした永久歯になっていない頃に歯が折れてしまうことがあります。子猫の口腔内に異常が見つかった時は、すぐに獣医師さんに相談しましょう。
子猫の口臭が臭いのは病気の場合も…
子猫の口臭の原因には、歯の生え変わりなどの他に、口内の病気にかかっている可能性も考えられます。
– 1. 口内炎 –
猫の口内炎とは、口の中にある粘膜で生じた炎症の総称です。口内炎は大きく「系統性口内炎」と「潰瘍性口内炎」とに分かれます。前者は他の病気の周辺症状として発生した一時的な口内炎のことで、後者は潰瘍を伴う原因不明の慢性口内炎のことです。
◆口内炎の症状
口内炎の症状は下記のようなものがあります。
・食欲不振
・大量のよだれ
・口元を気にする
・口臭がする、悪化する
・毛づくろいしなくなる
・口をぺちゃぺちゃならす
◆系統性口内炎
系統性口内炎は他の病気の症状の一つとして発生した一時的な口内炎です。
系統性口内炎は全身性の疾患が原因です。具体的には猫ウイルス性鼻気管炎、猫エイズウイルス感染症や猫白血病ウイルス感染症、糖尿病やビタミンの欠乏、腎臓病、抗生物質による長期の治療などが挙げられます。その他、疲労や栄養不足、何らかの病気による免疫力の低下と、細菌感染が複合して発症することもあります。
系統性口内炎の対策は口内炎を引き起こしている病気の治療です。口内炎は他の病気の症状の一つなので、その病気をしっかりコントロールすれば、自然と口内炎も消えていきます。
◆潰瘍性口内炎
潰瘍性口内炎にかかると、口中が赤く腫れ上がり、口の奥の方から頰の内側、歯茎にわたって潰瘍を引き起こします。潰瘍は粘膜を破ってその下の層に及ぶため、口中が酷い痛みに襲われます。痛みのせいで猫は空腹でも食事をしようとしなくなります。
潰瘍性口内炎の原因は不明です。代謝異常、栄養不良、免疫の乱れ、感染症など様々な可能性が考えられていますが、はっきりとした原因は解明されていません。
歯周病から歯肉炎、潰瘍性口内炎と病状が進むことが多いようなので、猫にとって辛い治療が続く潰瘍性口内炎を防ぐには、まず歯肉炎にならないようにすることが重要です。
対策は歯周病の管理から始まります。歯石、歯垢の除去や、必要なら抜歯も行われます。そのほかに抗菌薬、抗炎症薬、免疫調整作用を持つネコインターフェロンの投与が行われます。
– 2. 歯周病 –
猫の歯周病とは、歯の表面などで細菌が毒素を産生し、歯茎や骨に炎症が起こった状態を言います。
口の中に菌膜、歯垢、歯石といった細菌のすみかを放置した状態が続くと、歯肉組織と歯周組織の両方に炎症が起こります。歯肉炎と歯周炎を合わせた病態が歯周病で、以下のような症状があります。
・歯茎が赤い
・歯茎から出血する
・歯がぐらつく
・歯茎が落ちてくる
・食事が取りにくい
症状が悪化すると副鼻腔炎を起こし、心臓、肝臓、腎臓など全身にも悪影響が拡がって行きます。
◆歯周病の発症ステップ
歯周病は次のようなステップで発症します。
- 歯垢ができる
- 歯肉炎を発症する
- 歯石ができる
歯を磨いた直後から歯の表面に形成される薄い膜を「菌膜」といい、唾液に含まれるタンパク質や糖タンパク、および歯肉から出される分泌液などでできています。
この菌膜ができてから24時間で、「歯垢」が作られます。歯垢はネバネバした塊で、歯磨きなどで除去できますが、歯肉と歯の間など、磨きにくいところに食べかすが溜まってくると、簡単には除去できなくなってきます。
口の中に溜まった歯垢の中では数百種類の細菌が繁殖し、その中の一部は毒素を放出します。この毒素による攻撃と、毒素を排除しようとする免疫細胞の攻撃の両方が歯肉組織を刺激し、徐々に炎症が進行していきます。これが「歯肉炎」です。
歯垢が長時間放置されると石灰化が進んで、2~3日という短時間で「歯石」ができてしまいます。歯石の表面はデコボコしていて歯垢が付きやすく、放置された歯石の表面にさらに歯垢が蓄積していきます。
◆歯周病の原因
歯周病の原因は、口腔内の不衛生な状態である他にも次のようなことが挙げられます。
・口の中の傷
猫が固いものや尖ったものをかんだりすると、歯茎に傷がつくことがあります。この傷から炎症が広がり、歯茎に歯肉炎が発生します。傷が治れば歯肉炎も治まることがほとんどです。
・免疫力の低下
通常であれば抑制できる細菌が、猫の免疫力の低下により次々に増殖し、多くの毒素が発生することになります。毒素の発生は歯周炎や歯肉炎の原因になります。
◆歯周病の治療
歯周病の治療は歯石の除去から始まります。毒素を出す細菌を絶やし、これ以上炎症が進まないようにします。歯石の除去は猫が暴れないように全身麻酔を用いて行われます。
口腔内を綺麗にしたら、再度歯石ができないように、飼い主さんが歯磨きなどのデンタルケアを行います。またフードの内容を見直し、できるだけ歯垢のできにくいフードを選びます。ウェットを避け、食事によって歯垢が削り落とされるような硬さの、噛んで食べなければならないフードです。デンタルケア用のフードが販売されているので、獣医師さんと相談しながら選んでみてください。
糖尿病など、別の疾患から歯周病が発症する場合は原因となる病気をコントロールします。逆に歯周病が原因で他の病気を発症する場合もあり、症状に合わせた治療が必要となってきます。
子猫におすすめ!デンタルグッズ
猫のデンタルケアは早いうちから始めることが一番です。子猫のうちから上手に利用して、猫ちゃんが歳をとっても元気に過ごせるようにしてあげたいですね。
子猫のうちから始められる便利なグッズをご紹介していきます。
– はじめてのデンタルケアにおすすめ –
●歯垢トルトル 初めての歯みがきセット 愛猫用 21g
猫ちゃんの大好きなカツオブシ風味のペーストとフィンガー歯ブラシがセットになっています。初めてのはみがきにおすすめです。
●回転歯ブラシ 2輪山切りカット 愛犬・愛猫用 1本
歯周ポケットまでしっかり汚れを取る回転歯ブラシの山切りカット。2輪タイプ。日本製。
– 歯磨きが苦手な猫ちゃんにおすすめ –
●ペットキッス 歯みがきジェル
汚れをうかす、キレイになった歯をコートする、2つのはたらきをこの1本のジェルで。食べられる成分ですので、すすぎは不要です。
「ペットキッス すき間もみがける波形フィンガー歯ブラシ」やガーゼなどと併用することで歯垢をふきとります。
●歯みがきラクヤー 愛猫用 マグロ味 顆粒タイプ 25g
フードにかけるタイプのデンタルケア用品。飼い主さんが歯みがきをしてあげられない時に便利です。
歯周環境を清潔に維持するマグロ味の粉末で、柿渋エキスなどの働きにより腸内環境を整えることで糞尿臭も軽減します。口を開けない猫や唾液の少なくなる7歳以上の猫にもオススメです。日本製。
– 遊びながらデンタルケア –
●にゃんデント コットンでハミガキスティック/ループ
コットンを使用した猫用ハミガキ玩具。またたび粉つき。
●デンタケア キングねこ/さかな
噛むことで歯垢が取れやすくなります。また、大きいおもちゃを抑えこんだり蹴ったりするうちに興奮が高まり、より一層カミカミするようになります。
●まゆ歯みがき じゃらし/スティック/ロングひも
猫ちゃんがとびつく歯みがきおもちゃ!まゆ玉のデコボコの表面を噛んで歯の汚れをかきとります。
天然の素材にこだわって作られていて、またたびの実入りなのでカラコロ音が鳴ります。
子猫のデンタルケアをしっかりと!
子猫の乳歯の生え変わりの頃は口臭もきつくなります。生え変わりの時期には乳歯と永久歯の間に食べ物のカスが挟まりやすく、歯が抜けた際の出血、歯茎や新しい永久歯がまだ不安定だったりと、口臭の原因になる要素が多くなってしまいます。
デンタルケアに慣れてもらうためには、子猫のうちから歯磨きなどに慣れさせることが重要です。成猫になってから始めてもなかなか慣れてはくれません。
口臭がきつくなった時をきっかけに、歯磨きトレーニングを始めましょう!