【獣医師監修】猫に狂犬病ワクチンは必要?予防接種の値段や狂犬病の症状について

2018.02.06

【獣医師監修】猫に狂犬病ワクチンは必要?予防接種の値段や狂犬病の症状について

「狂犬病」といわれると、犬がかかる病気という印象があります。しかし、狂犬病は人間を含む全ての哺乳類に感染し、発症するとほぼ100%死に至るという恐ろしい病気です。今の日本では、狂犬病の発生報告はありませんが、海外では未だに多くの地域で発生しています。猫もかかる恐れのある狂犬病、飼い主さんはどのような対策をしなければならないのでしょうか。狂犬病の症状や狂犬病ワクチンの接種方法、値段などをご紹介します。

すべての哺乳類が感染する「狂犬病」

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狂犬病とは、狂犬病ウイルスを病原体とする人獣共通感染症です。
犬はもちろん、私たち人間を含むすべての哺乳類に感染し、発症すると100%が死に至るおそろしい病気です。

◆日本で制定された「狂犬病予防法」

今から50年以上前、日本国内では多くの犬が狂犬病と診断され、人も狂犬病に感染して死亡していました。このような状況から、1950年8月26日に「狂犬病予防法」が制定されました。

狂犬病予防法は、狂犬病の予防および狂犬病の発生時の処置について定めた法律です。犬の登録、予防注射、野良犬などを一時的に保護することが徹底されるようになりました。

狂犬病予防法が制定されてからは、わずか7年という短期間のうちに狂犬病を撲滅することができました。この事例をみても、犬の登録、予防注射が狂犬病予防にいかに重要な役割を果たすかが理解できます。

◆狂犬病は今でも全世界で発生している

1957年以降、日本では狂犬病の発生報告はありません。
しかし、狂犬病は、日本の周辺国を含む世界のほとんどの地域で未だに発生していて、日本、英国、スカンジナビア半島の国々などの1部の地域を除き、全世界に分布しています。

日本は常に侵入の脅威に晒されていることから、万が一の侵入に備えた対策が重要となっています。


猫は狂犬病の感染源になる!

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狂犬病は「ラブドウイルス」という狂犬病ウイルスによって感染し、犬だけでなく猫などの哺乳類にも感染します。

◆狂犬病の感染経路は?

狂犬病には、狂犬病にかかった動物に咬まれた部分から、唾液に含まれているラブドウイルスが侵入することで感染します。
ラブドウイルスは呼吸器の粘膜を経由して感染するといわれていて、蚊に刺されることによる感染、くしゃみや咳などの飛沫が原因で感染することはないといわれています。

ちなみに人から人への感染は確認されておらず、感染した患者から感染が拡大することはありません。

◆世界で狂犬病の感染が発見された動物

世界中で確認されている狂犬病の感染源は、以下のような動物が報告されています。

アジア:犬、猫
アメリカ:犬、猫、アライグマ、スカンク、コウモリ
ヨーロッパ:犬、猫、キツネ
中南米:犬、猫、マングース、コウモリ、ジャッカル

このように、狂犬病は全ての哺乳類に感染し、いろいろな国で感染の報告があります。そして、決して犬だけの病気ではないことがわかります。

◆世界の猫による感染例

日本では、1957年の猫の感染を最後に狂犬病の発生は確認されていませんが、他の国は事情が違います。
 
アメリカなどの先進国では、猫を放し飼いにしている飼い主さんが多く、狂犬病にかかる確率は犬より猫のほうが高いといわれています。
アメリカでは、犬は年間20件~30件、猫は年間200件~300件の狂犬病に感染した動物が発見されています。犬に比べて猫のほうが約10倍も狂犬病に感染しているため、アメリカでは野良猫や放し飼いの猫は「リスクファクター(危険因子)」といわれています。

2012年には、アメリカで飼い猫に噛まれた飼い主が狂犬病を発症したという例も報告されています。

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猫の狂犬病の症状は?

日本では1957年を最後に狂犬病の発症例はありませんが、その最後の1例は猫だったという記録が残っています。

猫が狂犬病に感染してしまった場合、猫はどのような症状を発症するのでしょうか。

◆猫の狂犬病の症状

・発熱する
・顔つき、性格の変化がある
・瞳孔が開く
・神経が過敏になる
・痙攣する
・全身麻痺
・呼吸不全

猫の狂犬病は、感染から発症までに2週間~3週間ほど潜伏期間があり、これまでの報告では最長51日の潜伏期間があったといわれています。

通常、発症の3日~4日前から狂犬病ウイルスを排出し始め、日が経つにつれて、猫の狂犬病の症状は変化していきます。


猫の狂犬病にはタイプがある

猫の狂犬病の場合、狂躁型(きょうそうがた)と沈鬱型(ちんうつがた)の2つのタイプに分かれます。
猫は90%が狂躁型といわれていて、その中でも前駆期、狂騒期、麻痺期の3タイプに分かれます。

◆前駆期(1日)

発症して1日ぐらいの状態を指し、狂犬病の症状の初期段階といわれています。

普段飼い主さんに甘えてこない猫がやたらと甘えてくるようになったりする、すり寄ってくるなどの行動があります。逆に、飼い主さんに懐いていた猫が急に噛みついたりするなど性格の変化があらわれる場合もあります。
また、鬱のような症状がみられることもあり、暗い場所に隠れたりする、ずっと歩き回ったりするなどの異常行動がみられるようになります。

その他には、食欲不振などの症状がみられます。

◆狂騒期(2日~4日)

発症して2日~4日目に狂騒期に入ります。

狂騒期には、異常なほどに攻撃的になり、見えるもの全てに噛みつくなどの行動がみられます。さらに、絶え間なく動き回る、泣き続ける、全く眠らないなどの異常行動が目立つようになります。口から大量のヨダレを流すのも特徴の1つです。

その他には、発熱、瞳孔が開く、軽度の下半身麻痺などの症状がみられるようになります。

◆麻痺期(3日~4日目)

狂犬病を発症して3日~4日以降経過すると、嚥下機能が麻痺するため、ヨダレを垂れ流した状態になり、ご飯を食べることができなくなります。その後は、麻痺が全身に進行して呼吸不全や全身の衰弱により、死に至ります。

多くの場合、狂犬病の発症から約4日~5日の余命といわれています。

いずれの型であっても、前駆期、狂騒期、麻痺期を経過して、ほとんどが10日と経たないうちに100%死に至ります。


猫の狂犬病の治療法は?

狂犬病に関しては、人も含め、犬や猫の治療方法についての特効薬は未だになく、有効な治療法は確立されていないというのが現状です。
そのため、狂犬病の治療としては全身の痛みや痙攣を抑えるための治療法が中心となります。また、さらなる感染を防ぐために安楽死させるケースもあります。

狂犬病に感染している動物に噛まれてから、症状が出るまでの潜伏期間中に狂犬病ワクチンを数回接種することで、発症を免れるケースもあるようですが、はっきりしたことは未だにわかっていません。

狂犬病を予防するためには、狂犬病ワクチンを接種する以外に方法はありません。


猫の狂犬病ワクチンは必要?値段は?

犬の場合、狂犬病ワクチンの接種が飼い主さんの義務になっていて、各自治体でも集団接種を行っています。しかし、猫には狂犬病ワクチンの接種の義務はありません。

◆猫の狂犬病ワクチンの接種は飼い主さん次第

日本においては、1957年を最後に狂犬病の発症例はなく、完全室内飼いの猫の場合、狂犬病ワクチンの接種は必要ないといわれています。

ただし、外出する機会がある猫、他の動物と触れ合う機会がある猫が狂犬病ワクチンの接種を受けるかどうかは、飼い主さん次第です。どうすればいいのかわからない場合は、動物病院の獣医師さんに狂犬病ワクチンの接種を相談してみましょう。

◆猫の狂犬病ワクチンの値段は?

猫の狂犬病ワクチンを接種することになった場合、気になるのはその値段です。

犬に狂犬病ワクチンを接種する場合は、値段は3000円前後になることが多いようです。また、その他に鑑札交付手数料などの費用がかかります。
一方、猫については、狂犬病ワクチンを接種する猫が少なく、動物病院によっては猫の狂犬病ワクチン接種を行っていない場合もあります。ただ、値段に関しては大体犬と同じと考えて良いでしょう。

猫に狂犬病ワクチンを接種する場合は、値段と合わせて一度動物病院に確認してみましょう。


猫と一緒に海外へ行く時は狂犬病ワクチンが必須!

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飼い主さんが猫と一緒に海外へ行く場合は、狂犬病ワクチンの接種をしなければいけません。

◆動物検疫所などで手続きが必要

猫は検疫対象動物となっているので、動物検疫所で検疫を行う必要があります。
事前に狂犬病ワクチンを接種しておくことはもちろん、ペットの輸送のための様々な手続きを行います。

動物検疫所または日本にある渡航先の国の大使館に問い合わせて対応してもらいましょう。

◆海外では野生動物にむやみに近づかない

海外では、飼い主さんも愛猫も、野良猫や野生動物に近づかないようにしてください。狂犬病の恐れのある動物に噛まれないようにすることが、狂犬病予防の一つとなります。

◆狂犬病の恐れがある場合は必ず病院へ

もし、狂犬病の感染が疑われる動物に噛まれた場合は、すぐに噛まれた傷口を絞り出すように徹底的に洗いましょう。アルコールで消毒するのがいいのですが、アルコール消毒がない場合は石鹸などで洗浄するようにします。

その後、現地の動物病院を受診し、傷の手当と狂犬病ワクチンの接種を行ってください。

帰国後は、検疫所に申し出る必要があります。


最後に…

今回は、猫の狂犬病の危険性、症状、狂犬病ワクチンの値段などについてご紹介しました。

日本では、狂犬病予防法が制定され、狂犬病ワクチンによる予防および狂犬病発生時の処置が行われました。そのため、現在日本国内での狂犬病の発生報告はありません。
しかし、海外では狂犬病ウイルスのラブドウイルスを持った動物がたくさんいます。

猫が狂犬病にかかると90%が狂躁型といわれて、狂躁型の場合は威嚇することなく急に飛びかかってきます。引っかいたり、噛みついたりするので大変危険です。

猫と一緒に海外へ行く時は、飼い主さん1人1人が狂犬病に関しての正しい知識を持つことも予防の1つです。むやみに現地の動物に近づかないようにし、海外へ行く時は必ず狂犬病ワクチンの接種をしましょう。

※こちらの記事は、獣医師監修のもと掲載しております※
●記事監修
drogura__large  コジマ動物病院 獣医師

ペットの専門店コジマに併設する動物病院。全国に15医院を展開。内科、外科、整形外科、外科手術、アニマルドッグ(健康診断)など、幅広くペットの診療を行っている。

動物病院事業本部長である小椋功獣医師は、麻布大学獣医学部獣医学科卒で、現在は株式会社コジマ常務取締役も務める。小児内科、外科に関しては30年以上の経歴を持ち、幼齢動物の予防医療や店舗内での管理も自らの経験で手掛けている。
https://pets-kojima.com/hospital/

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猫を飼いはじめて20年。完全な猫派です。 今まで4匹の猫と過ごしてきました。現在は2匹の猫と楽しく過ごす毎日です。 ツンデレされて20年。猫の行動1つ1つが大好きで、ずっとツンデレにやられてしまっている人間です。

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