1.人獣共通感染症とは?
1-1.様々な種類の人獣共通感染症
1-2.人獣共通感染症で死亡するリスクも
2.動物からの感染による人間の死亡が話題に…
2-1.猫に噛まれたことによる感染
2-2.60代女性 猫の餌やりから感染
3.人獣共通感染症の原因になる行為とは?
3-1.犬や猫は様々な菌を保有している
3-2.感染原因になる行為
4.猫から人間にうつる可能性がある人獣共通感染症は?
4-1.人獣共通感染症①猫ひっかき病
4-2.人獣共通感染症②パスツレラ症
4-3.人獣共通感染症③カプノサイトファーガ・カニモルサス感染症
4-4.人獣共通感染症④皮膚糸状菌症(猫カビ)
4-5.人獣共通感染症⑤猫回虫幼虫移行症
4-6.人獣共通感染症⑥トキソプラズマ症
4-7.人獣共通感染症⑦コリネバクテリウム・ウルセランス症
4-8.人獣共通感染症⑧瓜実条虫症
5.人獣共通感染症にならないために
5-1.定期的に部屋の掃除をする
5-2.猫にキスなどはしない
5-3.爪切り・ブラッシングをする
5-4.飼い主さんはこまめに手を洗う
5-5.猫が使った食器は消毒する
6.最後に…
人獣共通感染症とは?
「人獣共通感染症」とは、同じ病原体が動物と人間との間でうつる感染症のことです。
◆様々な種類の人獣共通感染症
国立感染症研究所では、主な人獣共通感染症として「トキソプラズマ症」「鳥インフルエンザ」「レプトスピラ病」など、31種類の感染症をあげています。
病気のタイプもいろいろあり、動物と人間がどちらも病気を発症することもあれば、動物か人間かどちらか一方だけが発症することもあります。
◆人獣共通感染症で死亡するリスクも
人獣共通感染症には、感染症法で死亡リスクがもっとも高い「1類感染症」に指定されている「エボラ出血熱」や「ペスト」など、致死率の高い感染症も多いです。
また、動物から直接感染するだけではなく、蚊やダニが媒介することもあります。
一緒に暮らしている猫(動物)の体調に異変が見られなくても、いつの間にか人間(飼い主さん)が病原体をもらってしまうこともあります。
猫と楽しく暮らすためにも、人獣共通感染症について知っておいたほうがいいでしょう。
動物からの感染による人間の死亡が話題に…
◆猫に噛まれたことによる感染
2016年には、野良猫を保護しようとした女性が噛まれ「重症熱血小板減少症候群(SFTS)」に感染し、死亡しました。また、愛玩用の鳥から感染する「オウム病」で妊婦が死亡した例もあります。
つまり、身近な動物から感染して死亡する例が、日本でも報告されているということです。
◆60代女性 猫の餌やりから感染
人獣共通感染症のひとつ「コリネバクテリウム・ウルセランス感染症」で、2016年に日本で初めて死亡例が発覚しました。
亡くなったのは福岡県の60代女性で、猫の餌やりからの感染が疑われました。
ペットや野良猫から人間にうつる病気は多くあり、ペットを飼っている飼い主さんからは動揺が広がりました。専門家は「動物とは適度な距離を保つように」と呼び掛けています。
国立感染研究所によると、2017年11月末までに報告されている「コリネバクテリウム・ウルセランス感染症」の感染例は、25件あるそうです。
また、感染の多くはペットとして猫や犬を飼っている、野良猫に餌をあげたりするなどの動物との接触があったことが確認されています。
<コリネバクテリウム・ウルセランス感染症の主な症例>
発症年月 | 症状 | 状況 | 2001年2月 | 呼吸困難・喉に白色偽膜 | 猫20匹を飼育 | 2005年9月 | 左耳下線部の腫れ | 飼育していた犬が皮膚炎 | 2011年4月 | 咽頭痛 | 猫14匹、犬7匹、ヤギ2匹を飼育 | 2015年9月 | 発熱・鼻汁 | 猫3匹を飼育、野良猫に餌やり | 2016年3月 | 呼吸困難で人工呼吸器処置 | 猫7匹を飼育 | 2016年5月 | 呼吸困難・救急搬送された3日後に死亡 | 野良猫3匹に餌やり |
ペットの数の増加により、ペットから人間への感染は増加傾向にあるといわれています。
人獣共通感染症の原因になる行為とは?
猫と一緒に暮らしていると、当たり前のように猫とのいろいろな接触があります。日常で何気ないことで猫に対する行為が感染症の原因になることもあります。
◆犬や猫は様々な菌を保有している
犬や猫の多くが「パスツレラ菌」を持っています。パスツレラ菌は犬や猫には無症状ですが、噛まれることや引っかかれることによって、人間が感染することがあります。感染すると、肺炎や髄膜炎を起こし死亡することもあります。
また、寄生虫のトキソプラズマは多くの動物が持っています。妊婦がトキソプラズマに初めて感染すると、胎児に障害が出る恐れがあるといわれています。
◆感染原因になる行為
以下のような猫と人間の何気ない行為が、感染原因になることもあります。また、間接的にうつる場合もあるので、予防と感染後の対処が大切です。
・猫のトイレ掃除の後に手を洗わない
・猫と同じ食器を使う
・猫にキスをする
・猫に引っかかれる
・猫を過度に触る
今の時代、ペットは家族同然として飼い主さんと一緒に暮らしています。そのため、ペットと人間の距離がすごく近くなっています。
ペットの唾液や体液は感染源になる可能性がありますので、ペットに口移しでご飯をあげることや同じベッドで寝ることなど、過剰な接触は避けるように注意をしましょう。
猫から人間にうつる可能性がある人獣共通感染症は?
猫(動物)から人間にうつる可能性がある人獣共通感染症は、たくさんあります。何気ない行動で感染してしまうことがありますので、注意しましょう。
– 猫から人間に「直接」うつりやすい人獣共通感染症 –
◆人獣共通感染症①猫ひっかき病
人間が猫にひっかかれることや噛まれることで皮膚に傷がつき発症する病気です。猫がもっている病原菌がひっかかれた傷口から侵入します。
病原菌は、猫の赤血球をすみかにしており、3歳までの猫に多く寄生しているというデータがあります。
人間が感染すると、3日~数週間で感染部位が腫れあがる、リンパ節などが腫れあがるといった症状がみられます。痛みや高熱、倦怠感が出ることもあります。さらには、負傷してから1ヵ月以上経ってからリンパ節が腫れる場合もあるので注意が必要です。
猫に攻撃されて皮膚に傷がついた場合は、傷口をすぐに流水にあてて細菌を充分に洗い流してください。さらに、市販の消毒液などで消毒をしましょう。
傷が浅くても悪化して重症化することもあるので、早めに病院を受診することをおすすめします。
◆人獣共通感染症②パスツレラ症
猫にひっかかれることや噛まれることによってできた傷などに、病原菌のパスツレラ菌が入り込んで感染します。
感染すると30分~2日以内に病気を発症します。猫にひっかかれた傷口を中心に赤く腫れあがる、激しい痛み、発熱することもあります。
ほとんどの猫の口の中にはパスツレラ菌をもっています。人間が猫にキスなどで感染するケースもあります。
◆人獣共通感染症③カプノサイトファーガ・カニモルサス感染症
猫は口内に「カプノサイトファーガ・カニモルサス菌」をもっています。カプノサイトファーガ・カニモルサス菌が病原体で、猫に舐められることや噛まれることによって稀に感染します。
主な症状は、発熱や吐き気、腹痛があります。症状がひどくなると、意識混濁になり、命にかかわることもあります。
発症した場合は、抗生剤を投与して治療を行います。
◆人獣共通感染症④皮膚糸状菌症(猫カビ)
蒸し暑い時期になると多くなるのがカビです。通称「猫カビ」といわれています。カビ(真菌)の一種である皮膚糸状症菌が毛や皮膚に寄生する病気です。
猫と人間が過剰に接すると感染する可能性が高くなります。また、子猫や野良猫、元野良猫は保菌率が高いので、特に注意が必要です。
皮膚が薄くて弱い部分に発症しやすく、発症すると赤い斑点や脱毛がみられ、その部分が痒くなります。この病気は猫と人間も同じような症状で発症します。猫が発症すると特に顔周りに脱毛の症状が出やすいです。
– 猫から人間に「間接的に」うつりやすい人獣共通感染症 –
◆人獣共通感染症⑤猫回虫幼虫移行症
回虫の卵は猫の糞と一緒に排出されます。排出された回虫の卵は、湿度などの環境が整うと成熟し、人間の体内に回虫の卵が入って孵化することによって感染します。
また、猫が毛づくろいで肛門周辺を舐めた時に、猫の口や体に回虫の卵が付くこともあります。そのため、食器や毛を介して人間に感染する場合もあります。
子猫が感染すると、下痢や嘔吐の症状があらわれます。成猫では全く症状があらわれません。
人間が感染すると、初期症状は下痢や嘔吐の症状があります。回虫が体内を移動することで肝臓や脳、目に障害を起こすことがあります。
◆人獣共通感染症⑥トキソプラズマ症
トキソプラズマという原虫に感染している猫の糞と一緒に排出されます。猫のトイレ掃除のときに感染することが多いようです。
しかし、トキソプラズマをもっている猫は全国で5%と少ないです。
子猫が感染すると、肺炎や脳炎などの症状があらわれることがあります。
人間では、健康な人の5%~40%は抗体をもっているといわれているので、発症するリスクはとても低いです。しかし、抗体をもたない妊婦が感染すると最悪の場合流産に至るケースもあり、胎児が先天症トキソプラズマ症にかかることがあります。
◆人獣共通感染症⑦コリネバクテリウム・ウルセランス症
2009年に野良猫のくしゃみをあびて、その鼻水に含まれた病原菌に感染したという報告がされています。
感染すると、喉の痛みや鼻水が出る、発熱の症状がみられます。進行すると、喉の周りに白っぽい膜ができ、首のリンパ節が腫れることもあります。
近年、発症の報告がされていますが、風邪に似た症状がみられるので、病気の判明が遅れるなど特定が難しいです。
◆人獣共通感染症⑧瓜実条虫症
ヒモのように長い通称「サナダムシ」による病気です。ノミを宿主としており、幼虫はノミの体内で成長します。ノミを飲み込んで感染した猫の糞と一緒に排出されます。そのため、猫のトイレ掃除のときに感染することが多いようです。
目に見えない小さなノミやノミの卵を体内に入ってしまうと感染します。多くは無症状ですが、稀に下痢や嘔吐といった症状がみられます。
人獣共通感染症にならないために
人獣共通感染症にならないためには、予防や対処が必要になります。日頃から予防や対処をしておけば、猫から人間にうつる可能性は低くなるといわれています。
◆定期的に部屋の掃除をする
猫の抜け毛で真菌が繁殖する可能性があります。また、じゅうたんなどにノミやノミの卵が潜んでいる可能性があります。
掃除をする時には、いつも猫がいる場所を意識しながら掃除を行うといいでしょう。
◆猫にキスなどはしない
猫の口の中には、常在菌がいます。また、猫は自分自身で舐めて毛づくろいをします。もちろん、肛門も毛づくろいをします。肛門を毛づくろいすることで排泄物中の病原体が猫の口についてしまうことも考えられます。
飼い主さんは猫にキスをしたり、口周りを舐めさせるなどはやめておいたほうがいいでしょう。
◆爪切り・ブラッシングをする
爪切りをしていないと、猫の爪はとても鋭くなります。爪切りをすることによって、猫に引っかかれても軽症ですみ、菌に感染するリスクを下げられます。
また、ブラッシングをすることで、猫の毛にノミやノミの卵を排除することもできます。ノミの寄生にも気づきやすいです。
◆飼い主さんはこまめに手を洗う
猫のトイレ掃除をした時は、飼い主さんも意識して手を洗うことが多いでしょう。その他にも、猫と遊んだあとや猫のおもちゃ、猫グッズに触れたあとも手を洗いましょう。
野良猫はどういう病気をしているかわからないことがあります。野良猫に触れたまま、手を洗わずに他の猫を触ってしまった場合に病気がうつる可能性があります。野良猫に触れたあとも必ず手を洗いましょう。
◆猫が使った食器は消毒する
多頭飼いしている飼い主さんは、食器にも気をつけてください。猫1匹ずつ、食器を用意してあげてください。また、人間の食器で猫にご飯をあげてしまった場合は、キレイに洗剤で洗いましょう。
定期的に食器をキッチン用の塩素系漂白剤で浸け置き洗いをするとなおいいでしょう。食器によって塩素系漂白剤が使えない食器もあるので確認してください。
最後に…
今の時代、室内飼いは当たり前のことで、猫と人間の距離はとても近いものになっています。人間にとっても猫にとっても楽しい時間を過ごすためには、猫の体の健康管理が大切です。
猫と人間の間でうつる感染症は多くあります。猫の健康管理をすることで、人間にうつる人獣共通感染症の予防をしっかりしましょう。
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