【獣医師監修】猫が餌をそのまま吐くのは大丈夫?吐かないための対策法はあるの?

2023.12.30

【獣医師監修】猫が餌をそのまま吐くのは大丈夫?吐かないための対策法はあるの?

猫は病気の有無に関係なく、よく吐く動物として知られていますが、ご飯をあげたあとに餌の形状をそのまま吐いてしまうようなことがあれば、愛猫の体調面が心配になってしまいますよね。 餌をそのまま吐いてしまえば、必要な栄養も摂取できませんし、お腹を空かせていたとしても、再度食事を与えても良いのか、悩まれる飼い主さんは多いことかと思います。 なぜ猫は餌の形状がそのままの状態で吐くことがあるのか、どのような原因で嘔吐してしまうのかなど、理由を知った上で適切な対策をできるようにしておきましょう。

猫が餌をそのままの形で吐いた!

寝ている猫

猫にとってご飯の時間は、1日の中でもっとも楽しみな時間といっても過言ではありません。

そんな楽しみにしていた食事を、そのままの形で吐くようなことがあれば、びっくりするのは飼い主さんだけでなく、猫ちゃん自身も残念な気持ちになってしまうはずです。

そもそも猫がよく吐く動物だったとしても、根本的に餌の吐き戻しは猫の身体に影響を及ぼさないものなのでしょうか。

◆これって大丈夫?

猫が餌をそのままの形(ほぼ未消化の状態)で吐くことを、一般的に「吐き戻し」と呼びます。

せっかく食べたフードを吐かれてしまうと、「フードが傷んでいたかも」「体調は大丈夫?」などと心配になってしまう飼い主さんは多いことでしょう。

猫がときどき吐くことは一般的となるため、基本的には問題ありません。

なぜ猫がよく吐くのかというと、特徴的な身体の構造が関係してきます。

食道筋層のほぼ全域を意図的に動かせるといった、「横紋筋(おうもんきん)」で構造されている犬に対し、猫は上部の三分の二が横紋筋、下部の三分の一が意図的に動かせない「平滑筋(へいかつきん)」でできています。

そのため、消化に時間がかかる上にフードが食道に溜まりやすく、餌をそのまま吐くことが多いと考えられているようです。

また、舌にトゲトゲとした突起(糸状乳頭:しじょうにゅうとう)がある猫は、日課となるグルーミングの際に、被毛が突起に絡まって飲み込んでしまいます。

ほとんどの場合は便と一緒に排出されますが、胃などに残った被毛が毛玉になってしまうと、不快感を覚えて吐き出そうとするため、このような特殊な身体の構造をしている猫だからこそ、よく吐くといったイメージが定着していると言えるでしょう。

◆吐いたときの対応

健康な猫ちゃんで吐いたあとも元気な様子であれば、とくに問題のないことが多いため、そこまで心配をする必要はありませんが、飼い主さんは必ず、猫が吐いたあとには嘔吐物の中身を確認するようにしましょう。

消化不良での吐き戻しや毛玉の吐き戻しであれば、餌がそのままの形で残っている、毛の塊のようなものを吐いているといった、見た目での判断が可能となります。

「血が混じっている」「ビニールや紐のようなものがある」「おもちゃの欠片が入っている」などの、異物混入が認められる場合には、愛猫の様子をしっかりと確認し、食欲低下および元気消失といった症状が出ているようであれば、すぐにでも動物病院を受診するようにしてください。

動物病院を受診する際には、嘔吐物をビニール袋などに包んでそのまま持参するか、持参が難しい場合には写真を撮って保存しておくことにより、獣医師さんに状況を伝えやすくなるためおすすめです。


猫が吐く理由

茶トラの子猫

猫は吐きやすい身体の構造をしていることが分かりましたが、明確にはどのような原因により吐くのかは、以下のような理由が多いと考えられています。

◆早食いによる吐き戻し

猫が餌をそのままの形で吐く原因としてもっとも多いのが、早食いによる吐き戻しです。

猫は体内時計がしっかりしているため、食事の時間が近づくとお腹がすいてソワソワとし出しますが、猫ちゃんの中にはすぐにご飯を欲しがる子や、急なお留守番などで空腹時間が長くなった場合などもあるため、勢いよくフードを食べてしまう子は少なくありません。

急に大量のキャットフードが食道を通って胃に到達すれば、胃の中の水分をフードが吸収して膨張し、胃が圧迫されることによって吐き戻しが生じます。

また、もともと過酷な環境で生活していた猫ちゃん(野良猫など)や、多頭飼育下の猫ちゃんの中には、餌の横取りを恐れるために早食いしてしまう子も多いようです。

◆フードの粒が大きい

猫は歯の構造も肉食動物特有の形状をしており、食べ物をよく噛まずに丸のみをするような食べ方をします。

キャットフードの粒や形はメーカーによって異なりますが、猫の食道は地面と平行なため粒が大きいと食道に詰まりやすくなり、胃にフードが到達するまでに時間を要するため、苦しくなって吐いてしまうこともあるようです。

猫は俊敏に動けるように胃もそこまで大きくないため、早食いや丸飲みが癖になっている猫ちゃんの場合は、それなりの対策が必要になってくると言えるでしょう。

◆胃に抜け毛が溜まっている

前述してある通り胃に被毛(抜け毛)が溜まってしまった場合も、猫が吐く原因として頻度は高くなっています。

猫は綺麗好きな動物となりグルーミングに費やす時間も多いですが、クシのような役割を担う特徴的な舌を持っているため、必然的に被毛が溜まりやすいと言えますよね。

通常であれば溜まった抜け毛は便と一緒に排出されるため、そこまで心配は要りませんが、換毛期のシーズンや長毛種の猫ちゃんの場合は、体内に取り込まれる抜け毛の量が増えますので、毛玉が大きくなれば吐く回数も増加するため注意が必要です。

◆異物の誤飲・誤食

猫は獲物を丸飲みするといった性質を持ち合わせており、おもちゃなどを獲物に見立てて口に加えることがあります。

好奇心旺盛な猫ちゃんの場合はとくに、遊びに夢中になっておもちゃをはじめとした、ビニールや紐などを誤飲・誤食をしてしまうことが多いようです。

このような異物の誤飲・誤食は人の不注意によって起きるため、日常生活の中でも飼い主さんが意識しておくべき部分とも言えるでしょう。

また、食べ物のニオイの付いたティッシュやキッチンペーパーなども、お腹を空かせている猫ちゃんが食べてしまう危険性が高いため、すぐに捨てるなどの工夫が必要となってきます。

まれに「異嗜(いし)」といった、食べ物以外のものを好んで食べてしまう異常行動を起こす子も居るため、異物の誤飲・誤食には細心の注意を払わなくてはいけません。

◆病気やストレス

基本的には心配をする必要の少ない猫の吐き戻しですが、病気やストレスが原因となっている場合には、辛い症状を長引かせないためにも、できるだけ早く動物病院を受診するようにしてください。

ストレスの原因は猫ちゃんの生活環境によってさまざまではありますが、猫はストレスに敏感な動物となるため、環境の変化(引っ越しや家族が増えるなど)には弱い傾向にあります。

病気が原因となる場合には、「毛球症」「胃腸炎」「寄生虫感染症」「腎不全」「甲状腺機能亢進症」「すい炎」「便秘」「腫瘍」などさまざまです。


猫が餌をそのままの形で吐かないために

寝転がる猫

猫が餌をそのままの形で吐くことは問題が少ないケースが多いとはいえ、吐く動作は苦しいですし体力を消耗するため、可能な範囲で吐かないような対策をしてあげたいものですよね。

愛猫のために飼い主さんが日頃から行うべき配慮には、どのようなものが挙げられるのでしょうか。

◆早食い対策をする

猫ちゃんが食後に餌をそのまま吐くことが多い場合には、早食い対策が効果的となります。

早食い防止の食器を取り入れても良いですし、食器を床に直接置くのではなく、首や胃に負担がかからないように高めのセッティングにしてあげることもおすすめです。

早食い防止の食器は吐き戻しの対策としては効果的ですが、猫ちゃんの中にはその煩わしさからストレスを抱えてしまうこともあるため、愛猫の性格を考慮した上で使用を考えていきましょう。

◆食事の回数を増やす

早食いだけでなく食事の丸飲みや、フードの形状によって吐き戻しが多いように感じた際には、食事の回数を分散させて胃への負担を減らす工夫をしてみてください。

猫はちょこちょこ食いする子も多いですし、一度の食事量を減らすことによって消化しやすくなるだけでなく、空腹の間隔も短くなるため、ストレスフリーなご飯タイムが期待できます。

◆フードの種類を変える

与えているフードが吐く原因の可能性が高い場合には、別のフードに切り替えてしばらく試してみてはいかがでしょうか。

急にすべてのフードを切り替えてしまうと、余計に吐く機会が増えてしまうこともあるため、1~2週間を目安に分量を変えながら切り替えていきましょう。

また、さまざまなキャットフードの中には「吐き戻し軽減フード」もありますので、そのようなフードも候補に入れて、愛猫のお気に入りになってくれるような商品を選んでみてはいかがでしょうか。


まとめ

猫が餌をそのままの形で吐くことはよくありますが、身体の構造だけでなく、猫特有の習性も大きく関係しています。

吐いた後にも元気で食欲もあるようであれば、とくに問題視をする必要はありませんが、何度も嘔吐を繰り返している場合や、異物などが混入している場合には、やはり様子を見るようなことはせずに、早急に動物病院を受診すべきと言えますよね。

嘔吐の原因が病気の場合は一刻を争うこともあるため、愛猫に辛い思いをさせ続けないためにも、日頃から吐き戻しをしないような工夫を徹底しつつ、病気が疑われる場合には適切な治療を受けて回復へ努めるようにしましょう。

※こちらの記事は、獣医師監修のもと掲載しております※
●記事監修
drogura  コジマ動物病院 獣医師

ペットの専門店コジマに併設する動物病院。全国に14医院を展開。内科、外科、整形外科、外科手術、アニマルドッグ(健康診断)など、幅広くペットの診療を行っている。
動物病院事業本部長である小椋功獣医師は、麻布大学獣医学部獣医学科卒で、現在は株式会社コジマ常務取締役も務める。小児内科、外科に関しては30年以上の経歴を持ち、幼齢動物の予防医療や店舗内での管理も自らの経験で手掛けている。
https://pets-kojima.com/hospital/

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たぬ吉

たぬ吉

小学3年生のときから、常に猫と共に暮らす生活をしてきました。現在はメスのキジトラと暮らしています。3度の飯と同じぐらい、猫が大好きです。

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