【獣医師監修】猫カビ(皮膚真菌症)は人にうつる!症状や治療法は?

2020.12.14

【獣医師監修】猫カビ(皮膚真菌症)は人にうつる!症状や治療法は?

「猫カビ」というものをご存知でしょうか?猫にカビが生える、と聞くと怖い感じがしますよね。猫にカビが生えるのは、「皮膚真菌症」または「白癬」という病気の1つです。皮膚病は命にかかわることは少ないのですが、実は猫にとってなかなかやっかいな病気のひとつとも言えます。 今回は、なぜ猫カビが生え、どのような症状が現れるのか、人にうつることはあるのか、また、猫カビの治療法についてもご紹介します。

【目次】

猫にカビが生えるって本当!?

◆猫カビとは?

猫カビとは、皮膚真菌症(ひふしんきんしょう)という病気です。皮膚糸状菌症(ひふしじょうきんしょう)とも呼ばれています。
猫にカビが生えると聞くとちょっと驚きますが、人間でいうと水虫のようなものと考えられます。

見た目にカビがわかるというわけではありませんが、菌によって皮膚に色々な症状が現れます。
猫カビになると、顔や耳部分、手足に円形の脱毛が見られて、その周りにフケが増えたり、ブツブツやかさぶたが出来たりします。

猫によっては、皮膚糸状菌に感染していても大きく体調に変化がないことも多いようですが、状態によっては、強く痒みを感じる場合もあるようです。

◆梅雨時期は注意が必要

猫カビの原因は、皮膚糸状菌というカビ(真菌)に感染することです。

湿気と気温が高まっていく梅雨時期は、このカビにとって絶好の繁殖条件がそろっています。
また、発汗による体温調節が苦手な猫は、湿度と温度の上昇によって熱中症などにもかかりやすくなるため、梅雨時期の体調管理には注意が必要です。


猫カビの感染方法は?

港に集まる野良猫たち

猫カビ(皮膚真菌症)を発症する原因は、菌を持ったものとの接触感染と、かかったものの免疫力の低下があげられます。

◆接触感染

猫カビになる基本的な原因は、真菌との接触によって起こります。

すでに感染している犬や猫などの動物や人などと接触したり、感染した動物の抜け毛やフケなどが付着したタオル・カーペットなどによって菌に侵された環境に行って、皮膚糸状菌を体にくっつけてきたりすることで、皮膚真菌症になってしまうことがあります。
ペットショップなどで子猫のうちに感染することもあるほか、人(飼い主さん)が真菌に感染していることで猫にも感染することがあるということです。

また、野良猫を保護した場合にも、他の猫や生き物などと接触をしているため、猫カビに感染している可能性があります。

◆免疫力の低下

免疫力が落ちている生後1年以内の子猫や、10歳以上の老猫は、猫カビにかかりやすいと言えるでしょう。母猫が感染していれば、子猫にも感染している可能性は高いということになります。

他にも、精神的や身体的なストレスを多く感じていれば、免疫力が落ちているため、成猫であっても感染しやすい傾向があります。

ほかには、猫白血病ウイルスや猫免疫不全ウイルスに感染している猫や栄養状態の悪い猫も、皮膚真菌症の発症が多く見られます。


猫カビは人にうつる?

猫カビ(皮膚真菌症)は、なんと人にもうつる皮膚病です。

◆接触が頻繁になると感染しやすくなる

普通は真菌に接触したとしても、すぐに感染や発症するわけではなく、人の皮膚の持っている免疫の力で守られています。
しかし、接触が頻繁であったり、抜け毛やフケが付着したままでずっと洗い流されたりせずに皮膚に留まっていると、菌が皮膚の内部に侵入してしまって炎症を起こし、皮膚糸状菌症になります。

つまり、感染した猫と触れあう機会が多いほど、人も発症しやすいと言えるでしょう。

◆人間に現れる猫カビの症状

猫には何も症状が見られなくても、感染した人のほうには症状が見られることもあります。
人にうつると、顔の頰部分や腕などに赤く丸い発疹ができ、かゆみを感じます。時には水泡が出来てしまうこともあります。

猫カビが見られても、放置していると症状がおさまる場合があります。しかしこれは自然に治ったわけではなく、猫カビの菌は潜伏したままです。
体力が落ちた時に再び症状が出たり、他のペットや人に移ってそちらに症状が現れたりもしますので、必ず病院に連れていってくださいね。

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猫カビの症状は?

猫カビに感染した猫に現れる症状としては、以下のものが見られます。

・円形脱毛症
・脱毛部分周辺のフケ
・脱毛部分のかさぶた
・赤いブツブツの発疹
・かゆみがある

顔まわりや耳、手足に円形脱毛がいくつか見られることで、飼い主さんが猫カビに気づくことが多いでしょう。

◆皮膚に関する様々な症状が見られる

脱毛の大きさは1cmくらいから、コインくらいの大きさまで\になることもあると言われています。よく観察すると、その周辺にはフケが見られ、かさぶたになっているところもあります。

皮膚に赤いブツブツが出来ることもあり、さらにそれがかさぶたになってしまっている時もあります。

かゆみは、猫によって感じない場合と、傷が出来るほどかいてしまう程の強いかゆみを感じる場合もあるようです。

◆症状が現れない場合もある

猫カビに感染していても、何も病状が出ない猫もいます。普段は問題なく生活していますが、病気になったり、体調が悪くなったりした時に症状が出るといったこともあるようです。


猫カビの治療法は?

診察台の上の猫

猫カビは、ひどくなる前に早めに気づくことが出来れば、猫にも大きな負担がなく治療してあげることが出来ます。

◆内服薬や塗り薬での治療

猫カビの治療法としては、「抗真菌薬の内服をする」または「抗真菌薬の入った軟膏やローション(外用薬)などを患部に塗る」ということがあげられます。
その他には、抗真菌薬の入ったシャンプーで体を洗う方法もあります。

同時に、猫白血病ウイルスや猫免疫不全ウイルスなどといったほかの病気にかかっている場合には、猫が皮膚糸状菌症を誘発する可能性があるため、その病気の治療も行います。

◆症状が現れた部分周辺の毛を刈る

治療を行う時には、薬剤が塗りやすいようにし、感染が拡大しないようにする必要があるため、皮膚糸状菌に感染している病変部とその周囲の毛を刈ってから行います。
猫カビの状態によっては、猫の全身の毛を刈らなければならないこともあります。

猫が病変部をなめることが考えられる場合には、エリザベスカラーをつけてしばらく過ごさせることもあります。

◆他の猫などへの再感染防止

環境からの再感染が起きないようにするため、猫が使用していたものは洗濯したり消毒したりして、菌を除去する必要があります。
猫カビの再感染防止のために、猫が過ごしている屋内の床や壁なども、綺麗に掃除をする必要があるでしょう。

さらに、多頭飼いの場合には、猫カビにかかってしまった猫を隔離する必要があります。
もちろん、他の猫に感染していないかどうか、獣医さんで検査してもらわなくてはなりません。

◆根気強い治療が必要

猫カビが完治するには、数ヶ月から半年ほどはかかると考えられます。
猫の治療をしながら、周りの環境の対策をしっかりする必要があるため、集中して行わなければなりません。
外用薬も飼い主さんが塗ってあげる必要があるので、塗り忘れなどないよう心掛けてください。

獣医さんの指導のもと、根気よく治療していく覚悟を持ちましょう。


猫カビの予防法・注意する点は?

猫カビの予防法としては、以下のことが考えられます。

・完全室内飼いをする
・人間からの感染にも注意
・部屋を清潔に保つ
・ベッドやマットをこまめに洗う
・猫が免疫力を保てるようにする

◆完全室内飼いにする

猫カビの接触感染を避けるためには、室内で飼うことがいちばんです。野良猫や他の飼い猫、または他のペットと触れ合うことがあれば、感染する可能性があるからです。

猫カビのある環境に出入りすることも考えられますので、完全室内飼いにしましょう。

◆人間からの感染にも注意

猫カビは人にも移りますし、人から猫にも移ります。猫カビ(皮膚真菌症)は人獣共通感染症のひとつです。つまり、真菌をもった人間の使用したバスマットなどに猫が触れれば、感染する可能性があるということです。

もちろん人の患部に触れることがあっても感染しますので、水虫があったり、真菌症になったりしている人は、猫を触らないように気をつける必要があります。

◆部屋を清潔に保つ

カビは元々目に見えない胞子の状態で、空気中に浮遊しています。特にカーテンには猫カビの元となる常在菌がつきやすいので、定期的に洗うと良いでしょう。

ただ、完全な無菌状態の環境にすることは、一般家庭で暮らしていれば不可能なので、出来る限りのことをしていくという方法になります。

猫カビは、高温多湿の環境で増殖しますので、部屋の湿気をとり、適度に風の入れかえをすることなども大切です。

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◆ベッドやマットをこまめに洗う

猫が普段使っている毛布やベッドなども洗うことをお勧めします。60度以上の熱湯に10分ほど浸けて菌を死滅させ、ペット用の洗剤や衣料用の漂白剤を使用して洗濯します。

クッションやマットは数時間天日干しをするだけでも効果が期待出来ます。

人の寝具も、なかなか布団を洗うわけにはいかなくても、シーツを洗ってこまめに変えるようにすると良いでしょう。

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◆猫が免疫力を保てるようにする

猫カビは免疫力の落ちた猫に発症しやすいので、猫が健康に生活できるように、普段からの栄養状態に気を配りましょう。

定期的に猫の健康診断を受けさせて、防げる病気はワクチンで予防するなどして、健康でいられるようにしてあげてください。
また、すでに猫に病気がある場合は、しっかりと動物病院で診てもらって治しましょう。

普段から猫の体をよく観察して、脱毛やフケなどに気づいた場合には、早めに動物病院に連れていくことも大切です。

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猫カビのまとめ

猫カビ(皮膚糸状菌症)は、どんな猫でも感染する可能性があり、さらに人にも移ることがあります。
また逆に、人が猫カビの原因である真菌に感染している場合には、猫に移ることもありますから、両方に気をつけなければなりませんね。

完全に猫カビを予防することはとても難しいと言えますので、普段からの掃除や、猫の体調を気遣うことが大切になってきます。

飼い主さんが気づく場合には、顔まわりの脱毛やかさぶたを見つけることが多いと考えられます。
普段からよく猫をよく見て、変化がないかを気をつけて観察していてあげてくださいね。

●記事監修
drogura__large  コジマ動物病院 獣医師

ペットの専門店コジマに併設する動物病院。全国に15医院を展開。内科、外科、整形外科、外科手術、アニマルドッグ(健康診断)など、幅広くペットの診療を行っている。

動物病院事業本部長である小椋功獣医師は、麻布大学獣医学部獣医学科卒で、現在は株式会社コジマ常務取締役も務める。小児内科、外科に関しては30年以上の経歴を持ち、幼齢動物の予防医療や店舗内での管理も自らの経験で手掛けている。
https://pets-kojima.com/hospital/

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ネコ、犬、インコ、金魚などと暮らした経験を生かし、飼い主さんに役立つよ うな記事を作成しています。 ペット情報を日々チェックしながら、ペットについて勉強中です。かわいいペ ットをメインとしたイラスト作成もしています。

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