「ウンチを隠す?」いったいどんな行動なの?
人間をはじめ、生きている動物にとって「排泄すること」はとても大事です。食べものを体に摂り入れることで栄養分が吸収され、不要なものがウンチやオシッコになって排泄されて、健康な体がつくられます。
そんな大事な排泄行動である「ウンチ」や「オシッコ」は、猫ちゃん達も日常的に行います。
多くの猫は、ウンチやオシッコをした後に、なにやら自分の排泄物を隠そうとする必死な様子が見られるでしょう。特に、オシッコよりもウンチを隠すときに丁寧度が増す猫が多いようです。
すべての猫に見られる行動ではありませんが、排泄後に砂を蹴ってウンチを隠している愛猫を見る飼い主さんも多いかと思います。
飼い主さんが「砂をかけるんだよ」と教え込んだわけではなく、本能として身についている行動なので不思議な感じがしますよね。
猫がウンチを隠す行動の理由とは?
「どうしてウンチを隠すのか?」については諸説ありますが、その代表的なものをいくつか紹介します。
◆理由その1.敵に居場所を悟られたくない!…自分の身を守るため
猫がウンチを隠す理由のなかでも有力なのがこちら。「敵に存在を知られたくないから」という理由です。
<ウンチ放置で敵に気づかれたくない>
自然のなかを歩いていると動物のウンチを見かけることがありますが、それによって「この道を通ったな」「この周辺で生きているのでは?」と動物が近くに居ることが予想できるものですよね。
つまり、ウンチを放置すると、現物とニオイによって敵に見つかりやすくなるのです。
わざわざ「自分はこのあたりに住んでいますよ」と敵に教えていると言えるでしょう。自分の身の危険を大きくするだけなので、ウンチを隠しているのです。
<獲物を逃したくない>
ウンチを放置することは、敵だけでなく猫にとっての獲物までにも自分の存在を教えてしまうことに繋がります。「あっ!猫のウンチ発見。ここに猫がいるから逃げなきゃ」と猫のウンチで慌てて逃げる小動物もいるでしょう。
つまり、ウンチを隠すことは「敵から身を守る」「獲物を逃さない」というふたつのメリットがあるのですね。そんな野生の習性から、猫はウンチ後に砂をかけて隠すのではないかと考えられています。
◆理由その2.ボスに睨まれたくない!…自分は弱いアピールがしたい
ボスよりも弱いというアピールがしたいのも理由のひとつ。でも、そもそも猫は単独行動の動物なので、ボスの顔色をうかがう…というのもちょっと不思議な気もしますよね。
実は、この理由については、現代版の猫界の事情が絡んでいそうです。
<都会に住む猫達にはボスがいる?!>
下っ端の猫はウンチを隠す行動が見られ、逆にボス的地位にいる猫は敢えてウンチで自分の存在感をアピールするということが、近年の野良猫の生活の調査で分かったそうです。
広い野生で他の猫に出くわす機会は少なかった昔の自然界で生きていた猫は、他の猫のことをボスと認めることはあまりありませんでした。
しかし、現代の野良猫社会では猫の数も多く、同じエリアに住む猫もたくさんいるでしょう。特に、都市部では猫版の人口密度も高くなっているかと思います。少し歩けば他の猫と遭遇、ケンカや睨み合いで優劣の付け合いは多々あります。基本的に仲間行動ではないので「リーダー」とは違いますが、ケンカが強い猫は「ボス」的存在として一目置かれることになるでしょう。
排泄物をそのまま放置すると「テリトリーを主張している」と強い猫に勘違いされることもあるので、「強い猫には睨まれたくない…」という気持ちが働くのかもしれません。
ウンチを隠すことでニオイを消し、「テリトリーは主張していませんよ」「自分は弱いですから」というアピール行動ではないかと考えられています。
多頭飼いしている飼い猫の場合には、ボスのような強さを見せる猫はウンチを隠さないことおもあるそうです。
<飼い猫のボスは飼い主?!>
一般家庭で飼われている猫にとって、食事をいつも与えてくれる飼い主さんは強い存在に見えます。
つまり、飼い猫にとってのボスは飼い主さんと言えるでしょう。「自分は地位が下なので…」と遠慮がちにウンチを必死で隠しているのかもしれませんよ。
◆理由その3.菌をばらまきたくない!…病気が周囲に広がるのを本能的に防いでいる
野生猫のウンチやオシッコのなかには、他の猫に伝染すると拡大する病原菌がたくさん含まれています。一般家庭で飼われている猫ちゃんが、散歩で外出した後に感染症にかかるリスクがあるのはこのため。
ウンチに含まれている寄生虫が体内に入ると、重症な病気にかかることもあるので注意が必要と言われています。
人間の研究でこうしたリスクがあることが分かっていますが、自然界で生き抜いてきた猫たちは本能的に「ウンチに触れると病気になるかも」と察知しているのでは…と考えられています。
特に、猫のウンチは臭いので、自分の強烈な排泄物のニオイで「これは放置してはダメなもの」「体に良くないもの」と本能的に隠し、身を守っているのかもしれません。
◆理由その4.ニオイがくさくてイヤ!…綺麗好きな本能によるもの
前述の病原菌に似ている理由ですが、自分が排泄したウンチのニオイが「臭い」と感じて隠しているかもしれません。
猫は、綺麗好きな動物として知られていますよね。そのため、強烈なニオイを発するウンチが自分のテリトリー内にあることが許せないのかも。
ウンチを隠すとニオイが緩和されるので、本能的に隠している可能性があります。
ウンチを隠さない猫もいる
多くの猫ちゃんが「ウンチを隠す」という行動を見せるものの、なかにはウンチしっぱなしの猫ちゃんもいるかと思います。一生懸命ウンチを隠す猫がいる一方で、猫の習性行動をしない猫がいるのも不思議ですよね。
いったいどんな理由からウンチを隠さないのでしょう。
◆自分のことをボス的存在だと考えているから
先ほど「ウンチを隠す」という理由の2番目の説「ボスに睨まれたくない」にも関連しています。
ひとつの家庭で何匹も猫ちゃんを飼っている多頭飼いの場合、猫種、年齢、体のサイズなどさまざまでしょう。当然ですが、力の強さや性格が違うので、自然にそのなかで優劣が位置づけられているかと思います。
猫達のなかでは「強い・弱い」という意識が分かっているので、ボス的な存在の猫は「自分は強い」ということをさまざまな行動でアピールします。
おそらく、「ボスは俺だ!」と考えている猫はウンチを隠すことなく、そのままにしているのかもしれません。「お前たちのことは怖くないぞ」と、他の猫に思い知らせているのです。
もし、「うちには猫は1匹しかいないよ」というのであれば、飼い主さん家族のなかで「自分が一番上の地位だよ」と感じているのかもしれません。
この家のなかでのボスは自分と、ちょっとワガママっぷりをアピールしていることも考えられます。
◆ウンチが臭く感じられないから
ウンチを隠すときに「敵に悟られたくない」「ボスに自分の低地位をアピールしている」「ニオイが臭いのがイヤ」と、ウンチの臭いニオイが理由のもとになっています。
そんな猫のウンチですが、最近では一般家庭で使われる猫用の砂の商品開発がかなり進んでいて、ニオイがしにくくなっています。「消臭」「臭わない」「香り広がる」「抗菌」など、清潔さが感じられるキャッチフレーズの商品のラインナップが豊富ですよね。
消臭技術が優れている商品を猫砂として利用していれば、敢えて砂をかけて中に隠さなくても「ニオイがしないな」と猫は思っているのかもしれません。
猫にしてみると「隠しても隠さなくても臭わないから大丈夫だろう」と感じているのかと思います。
◆精神的なストレスでウンチを隠すところではない
動物にとって環境の変化は、ストレスに繋がります。家のなかがリラックスできる環境でなくなったとき、食欲が落ちたり、精神面で不安定になったりします。それが原因で、いつもできている行動ができなくなることも…。
引越しやストレスなどで精神的なダメージがある場合、ウンチを隠すという行動をまったくしなくなることもあるようです。
また、トイレの場所が変わっても不慣れな環境でウンチを隠さなくなる可能性もあるので、思い当たるところがないか確認してみてくださいね。
他の動物よりも臭いってホント?猫の排泄物が臭い理由
◆猫のウンチの臭さは動物界でも有名!
どうやら、猫がウンチを隠す行動には「ウンチが臭いから」という事実が直結しているようですね。そもそも、動物の体から排泄されるウンチやオシッコは、臭いのが当たり前。人間の排泄物だって臭いですよね。
でも、たくさんの種類の動物のなかでも猫の排泄物の臭さはランキング上位に入るほどなのだとか…。愛猫家の方は、「確かに臭いかも」と思い当たるところがあるかもしれません。
いったいどうしてなのでしょう?
◆タンパク質が臭さの原因
猫のウンチが臭い理由には、猫が肉食動物ということに関係しています。
人間に置き換えてみると分かりやすいかもしれませんが、「肉ばかり食べている人」と「野菜中心の食事の人」とを比較すると、肉食中心の人の排泄物はニオイが強くなる傾向にありますね。
肉食動物はタンパク質が不可欠と言われていて、猫が必要な量は人間の5倍近く。飼い猫がメインに食べるキャットフードには、肉食動物に欠かせないタンパク質がたっぷり含まれているのです。このタンパク質の量がウンチを臭くしているのですね。
◆体の臭いを抑えているため、排泄物のニオイが強くなる
猫のウンチが臭いのは、猫が自分の体から発するニオイをグルーミングによって自力で抑えるという行動も関係しています。
猫は綺麗好きなので、自分で毛づくろいして体を洗ったり、体臭を抑えたりしていますよね。体臭として「臭い」を発しない分、体のなかから直接出ていくウンチが臭くなっていると言われています。
◆腸内環境が悪いのかも…
猫だけでなく、人間にも言えることですが、腸のなかの環境が悪いとウンチのニオイが強烈になりやすいです。腸内環境が悪くなると「便秘・下痢」といったウンチの異常が見られたり、免疫が下がったりと病気にかかりやすくなります。
腸に良いとされている乳酸菌の入った食べものやオヤツ、猫用の乳酸菌サプリメントなどを食事に摂りいれてみると、ニオイが軽減できるかもしれませんよ。
まとめ
猫がウンチを隠す行動は、実はとても奥が深いものだったのですね。猫の本能的なものから意思表示として何かをアピールしていることもあるなんて、ビックリですね。
そんな事情を抱えながら一生懸命ウンチを隠しているなんて、とても可愛らしく見えてくるかもしれませんね。
猫がウンチを隠す理由には諸説あるので、「我が家の愛猫はどの説が当てはまるのかな?」といつもの行動パターンと比べながら推理してみてはいかがでしょうか。多頭飼いなら「ウンチを隠さない」ことでボスが分かるかもしれませんよ。
また、「ウンチがちょっと臭すぎるな」と思ったら腸内環境にも目を向けてみたり、「いつもはウンチを隠すのに隠さなくなった」ということならストレスがないかにも配慮してあげましょう。
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