猫の回虫症はどんな猫に見られる?
猫の体内に寄生する虫の中には、鉤虫や条虫、フィラリアなども耳にしたことがあるかと思います。体外であればダニやノミなどが、とても有名ですよね。
その中で、今回は「回虫」にスポットを当ててご紹介していくのですが、この回虫は必ずしも全ての猫に寄生しているという訳ではありません。
この回虫症は、どんな猫に見られやすい病気なのでしょうか。
◆野良猫
市販の安全なご飯を毎日口にすることが出来ない野良猫は、ゴミを漁ったり鳥やネズミを捕獲したりして餌にすることがほとんどです。
自然界で生きている鳥やネズミなどは、体内に寄生虫の幼虫や卵を保有していることが多いので、そのような獲物を餌にしてしまうと、猫自身の体内に取り込んでしまうことが多いのです。
◆子猫
母猫が回虫症に感染していた場合、その母猫から産まれた子猫は、母乳を通して感染してしまうことがほとんどです。母猫が外を自由に出入り出来る環境にあるのなら、注意が必要と言えるでしょう。
◆免疫力が低下している猫
栄養を子猫にほとんど摂られてしまう母猫や病気の猫、老猫などは、回虫症を発症しやすいです。
回虫が体内にいたとしても症状が出ない猫もいますが、免疫力が低下している場合は、何かしらの症状が出やすいとも言えるのです。
猫回虫の原因は?
多くの哺乳類に寄生している回虫ですが、猫には主に小腸に寄生すると言われています。
ネコ科の動物であれば猫回虫、イヌ科は犬回虫、人間は人回虫…というように、それぞれの動物に対して、固有の回虫が存在しているのです。
では、このネコ科に寄生する猫回虫は、どんな原因が考えられるのでしょうか?
◆猫回虫の原因①経口感染
その名の通り、猫の口を通しての感染が原因として挙げられます。
猫は獲物と思えば何でも捕獲してしまいますし、人間のように寄生虫の存在すらしりませんから、そのまま餌として食べてしまうこともしばしばです。
猫が興味を持つような虫やネズミ、鳥などは様々な病原菌や回虫を体中に固有しています。
そして、その獲物が排出する便にも、病原菌や寄生虫の卵が沢山含まれています。
獲物として食べてしまう以外にも、その便が付着した手で身体を綺麗にグルーミングして舐めてしまえば、簡単に猫の体内に取り入れられてしまうのです。
また、猫が実際に病原菌や回虫を持った獲物を食べてしまった場合、その猫に寄生するだけでなく、猫の便や嘔吐物に幼虫形成卵が混ざる危険性もあります。トイレが他の猫と共有の場合(野良猫も同様)、そこが感染経路となってしまうのです。
◆猫回虫の原因②経乳感染
前述した通り、母猫が回虫症に感染していた場合、母猫から与えられるミルクの中に回虫が混じっていることがあるそうです。
犬回虫は胎盤からも感染が確認されているそうですが、猫回虫は母猫の胎盤からはほぼ感染はしないと言われています。
こればかりは母猫が感染しているかしていないかが分からなければ、回虫症にかかっているかかかっていないかの判断は、とても難しいです。
ワクチンをしていなかったり、外に出たりすることもある母猫ならば、母にも子にも回虫症に感染している可能性は、考えておいた方が良いと言えるでしょう。
猫回虫の症状は?
実際に猫が回虫症に感染していたとしても、発症していない不顕性(ふけんせい)感染がほとんどです。
人間が回虫症とはっきりと理解できるとしたら、猫の便や嘔吐物に白く細長いヒモ状の物体を見つけたときぐらいだと思われます。
この場合、体内にはもっと回虫がいると疑った方がいいですし、様々な症状を発症させる前に動物病院などに、連れていってあげた方が賢明な対処と言えるでしょう。苦しむのは、大切な愛猫ですから。
猫回虫による主な症状は、以下の通りです。
・子猫時の発育不良
・ご飯を食べても痩せている
・被毛に艶がなくなってきた
・腹部のふくらみに違和感を感じる
・お腹を痛そうにしている
・咳が出ている
・食欲不振
・貧血を起こしている
回虫の姿を見なくとも、これらの症状が出ているのなら、回虫症を疑わなくてはいけません。
小腸の中で成虫となった回虫は、活発に動きますし、何より猫の栄養源を全て自分の栄養源へと変えてしまいます。
そのため、猫がどんなにご飯を食べても、痩せていき、毛ヅヤが良くなかったり貧血気味になったりしているのなら、活発に回虫が活動している証拠です。
中にはお腹の中が気持ち悪くて、食欲不振になってしまう子もいれば、お腹の調子が悪く嘔吐や下痢をしてしまう子も。
子猫にこのような症状が見られると、発育不良を起こし、酷い場合には腸閉塞を引き起こす可能性があるのです。
このような症状があるかないかを普段から注意し、愛猫の観察を怠らないようにしましょう。
猫回虫の治療法は?
猫回虫の治療には、回虫に有効な抗線虫薬を投与し、駆虫経過の観察を続け、卵や成虫が便や嘔吐物に混じっていないかの確認が必要となります。
◆動物病院で検査を受ける
市販でも虫下しの薬は販売されていますが、猫に寄生する寄生虫は回虫だけとは限りません。
回虫やその他の寄生虫に適した薬を投与するためにも、動物病院を受診して、症状を確認してもらった後に、適した治療をしてもらうことこそが望ましいです。
検査にかかる費用は動物病院にもよりますが、1,500円~2,000円程で診てもらうことが出来ます。
受診後には室内飼いを徹底し、外に猫を出さないようにしましょう。
◆駆虫薬をしっかりと投与する
動物病院の治療方針により、駆虫薬を使用する期間は多少前後することがあるかとは思いますが、最低でも駆虫剤の投与は2週間程となります。
もし回虫が猫の体内で卵を産んでいた場合、その卵は2週間ほどで孵化し、成虫へと成長してゆきます。
ただ、この治療法は一度して完全に回虫を完全に除虫するのは難しいとされているので、2週間間隔で複数回、駆虫薬の投与を続ける必要があります。
その投与期間中にも嘔吐や下痢が続く場合には、下痢止めや吐き止めを併用し、脱水症状を起こしてしまっているようでしたら、輸液治療も必要となってきます。
猫回虫の予防法は?
◆便検査を受ける
猫が回虫に寄生されないために、事前に予防するのであれば、家族として迎え入れたときには必ず動物病院で便検査をし、回虫症にかかっているかいないかを確認するようにしてください。
◆完全室内飼いにする
出来ることなら外の出入りを禁止してしまうことによって、感染症のリスクはだいぶ減らすことが出来ます。
ただし、外に出ていた子をいきなり完全な室内飼いにすることは難しいことだと思います。もし外にも出すようでしたら、定期的に検査を行う様にしてあげましょう。
◆野生動物との接触に注意
病原菌や寄生虫を持っている野生動物には、近付けないようにしてください。猫にとって恰好の獲物であったとしても、命の危険に関わる可能性が少しでもあるのなら、愛猫との距離を置くのが得策と言えるのではないでしょうか。
◆感染猫のトイレを分ける
多頭飼育をしている場合や、新しい猫を迎え入れる際も注意が必要となりますが、一匹でも感染していると、他の猫にも感染してしまう可能性が高いです。
その場合は猫のトイレは分けるようにし、室内環境を清潔に保つよう、常に心がけてください。
その他、飼い主さんの心得として、外出したり野良猫を触ったりした際は、手洗いやうがいをしっかりし、愛猫に感染させないようにしましょう。
まとめ
猫を家族として迎え入れたときから、飼い主さんには猫の健康を守らなければいけない義務が生じます。
どんなに具合が悪くても、辛いことがあったとしても、猫はじっとしていることしか出来ないのです。私たちが健康診断をするように、猫にも定期的な健康診断が必要となってきます。
成虫であれば目で確認することも出来ますが、症状が出ないこともほとんどなので、命を預かったときに、まずは回虫症を含め感染症などの検査をしっかりしてあげてくださいね。
回虫症は一度検査をすれば、一生検査が必要なくなるという病気でもないので、日々の猫への観察が重要となってきます。
早期発見が出来れば治療費も安く済ませることが出来ますし、猫の苦痛も短いものとなるでしょう。
愛猫と飼い主さんが安心して毎日を暮していけるように、日々の健康管理を怠らないようにしてあげてくださいね!
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