猫に玉ねぎは絶対にNG!その理由とは?
◆玉ねぎに含まれる2つの危険な成分
玉ねぎには、ネギ類に特有の匂いや辛味など刺激を感じさせる元となる「硫化アリル」や「アリルプロピルジスルファイド」という成分が含まれています。
この成分が、猫にとって有毒であるため、猫に玉ねぎを与えてはいけないのです。
ちなみに、硫化アリルとアリルプロピルジスルファイドは、化学構造上では違いがありますが、猫の玉ねぎ中毒の原因としては同じ働きをすると考えられます。
◆赤血球が破壊され「溶血性貧血」を引き起こす
アリルプロピルジスルファイドは、体内のヘモグロビンをメトヘモグロビンに変化させます。
ヘモグロビンとは、全身に酸素を運ぶ赤血球中のタンパク質のことで、これがメトヘモグロビンになることで、酸素を運ぶことができなくなってしまいます。
メトヘモグロビンが増えると、赤血球の内部の膜に集まってハインツ小体という塊になります。このハインツ小体ができると、赤血球が破壊されるために、溶血性貧血を引き起こします。
貧血とは、一般的には血液中の赤血球の数が減った状態です。赤血球が減り貧血になると、体の細胞に十分な量の酸素を行き渡らせることができなくなるので、体に様々な症状が現れます。
◆最悪の場合命を落とすことも…
玉ねぎは、加熱されていても、食べたのが皮であっても、少量であっても、玉ねぎの絞り汁や玉ねぎが入った液体であっても、猫の体に悪影響を及ぼすことがあります。
そして、猫が玉ねぎを食べたことにより、貧血を起こし、色々な体調不良が見られるだけでなく、場合によっては命を落とすこともあります。
玉ねぎを食べた時に現れる症状は?
猫が玉ねぎを食べてしまい中毒を起こした時には、次のような症状が見られます。
・元気がなくなる
・嘔吐する
・下痢をする
・発熱する
・呼吸が弱い
・脈が弱い
・血尿が出る
・ショック症状で意識がなくなる
猫が玉ねぎを食べたことによって貧血になると、体の様々な組織に酸素を運ぶことができなくなることで、上記のような症状が出ます。これらは、貧血の二次的な症状と言えます。
疲れやすくなって、少し動いただけでも息切れがしていたり、じっと動かなくなったりします。
赤血球の破壊が進んで重症になると、ショック症状を起こして倒れて意識がなくなってしまうこともあり、最悪の場合には死に至ることもあります。
◆玉ねぎの中毒症状はすぐにはでない
しかし、猫が玉ねぎを食べたことで中毒の症状が出るのは、食べてすぐではなく、12時間後から2~5日と時間があいています。
猫の行動に異常が見られても、すぐに原因が玉ねぎ中毒とは気づかないかも知れません。
◆注意したい玉ねぎの中毒症状
次のような猫の様子が見られたら、中毒症状が始まっている可能性があります。
・足元がふらついている
・目の粘膜部分や、口の中(歯茎)が白っぽくなっている
その後に、嘔吐や下痢、血尿などが始まることもあるので、症状が進む前に動物病院で適切な応急処置ができると、回復も早くなると考えられます。
軽度な貧血であっても、そのまま処置をしなければ症状が進んでいくので、放置しないで病院へ猫を必ず連れて行きましょう。
玉ねぎの致死量はどれくらい?
◆玉ねぎの致死量には個体差がある
猫が玉ねぎをどれくらい食べると致死量となるのか、ということについては、猫の個体差もあるため、はっきりとした量は決まっていません。
しかし、猫の体の大きさは人間よりもずっと小さいので、人間にとって少ないという量でも、猫にとっては多い摂取量となると考えられます。
◆一般的な玉ねぎの致死量
一般的には、体重1kgあたり玉ねぎを15g程度、大さじ1杯ほどで中毒を起こす量で、致死量にもなりうるとされています。
つまり体重が4kgから5kgの成猫であれば、60gが致死量と考えられるので、大さじ4杯ほどの量で致死量に相当すると考えられます。
玉ねぎ1個を200gとすると、4分の1は50gとなります。
生の玉ねぎを4分の1ほども猫が齧ることはあまりないと思われますが、調理されたものだと、どのくらい猫が食べてしまうかはわかりません。
◆わずかな量でも玉ねぎを与えるべきではない
玉ねぎが入ったスープを舐めただけも、猫に貧血の症状が出たという例もあります。玉ねぎを致死量まで与えていないから大丈夫、ということでは済みません。
猫によっても個体差があるということなので、玉ねぎひとかけらだから、皮だけだから、といったものでも猫にとっては危険だということです。
さらに、貧血が起きてすぐには猫の命に別条がなくても、貧血が進んで二次的な症状が出ることで、命に関わる状態になることもあります。
ほんのわずかでも玉ねぎが入っていたり、玉ねぎの成分が混ざっていたりすれば猫には与えない、といった考え方でいた方が良いでしょう。
玉ねぎを食べた時の対処法、応急処置は?
◆飼い主さんができる応急処置は?
猫が目の前で玉ねぎを食べて飲み込んでしまった、という時には、指や先の丸いもので猫の舌の付け根を押すと、うまくいけば吐き出してくれることもあります。
ただし、指を噛まれたり、喉に物を入れることで気管に傷をつけたりする可能性もあるので、判断が難しいところです。
塩水を与えて吐き気を催させるという方法がよく知られていますが、塩の量を間違えると、塩水によって急性食塩中毒を起こしてしまう可能性があり、安全とは言えません。
猫の催吐剤として使われるのは、オキシドール溶液やトラネキサム酸です。ただし、知識のない人が適切に応急処置として猫に与えるのは簡単ではないでしょう。
飲み込んでしまって吐かせることは難しいと判断したら、動物病院に電話して猫が玉ねぎを食べてしまったことを伝えて、早めに診察を受けさせましょう。
◆動物病院で行われる応急処置
猫が玉ねぎを食べてしまった場合の応急処置としては、次のようなものがあります。
・胃洗浄を行う
・ビタミン剤を与える
・下剤を与える
・利尿剤を与える
玉ねぎを食べて中毒を起こした時には、解毒剤はないので、飼い主さんができることとしては、できるだけ早く動物病院へ連れていくことです。
食べたものを吐かせる時には催吐剤を与え、反応がない、またはより緊急性の高い場合には胃洗浄が行われることがあります。
ビタミン剤、下剤、利尿剤にしても、猫の状態によって適切に使われるべきものなので、動物病院で診察を受けた上で行う処置です。
◆猫を動物病院に連れて行く時の注意点
猫を病院に連れて行く時には、動物病院に電話をして緊急なことを伝え、食べたものを説明できるようにして、気づいてから1時間以内には連れていくようにしましょう。
また、中毒症状が出はじめるのは玉ねぎを食べてすぐではなく、12時間後から数日といった幅があります。玉ねぎを食べてしまってすぐには猫が元気に見えても、後から症状が出てくることも多いということです。
そこでどのくらいの量を食べてしまったのか、獣医さんに伝えられると良いですが、見ていなくてわからないこともありますね。
たとえ少量でも玉ねぎを食べれば猫にとって致死量の場合もありますから、食べたもの(料理など)がどんな状態のものかを獣医さんに伝えると良いでしょう。
応急処置が終わって家に帰ることになっても、猫の様子がおかしいと気づいたら、放っておかずに、早く動物病院へ連絡するようにしましょう。
猫が玉ねぎを食べないようにするには?
◆人間の食卓によく出る玉ねぎ
玉ねぎ中毒になってしまうと、解毒剤がないため、猫が玉ねぎを食べないようにしたいものです。
玉ねぎは人間の食卓には欠かせないものなので、一緒に暮らす猫の口に入らないように、普段から注意することが大切です。
人間の食卓によく出るものとして、味噌汁、カレー、シチュー、ハンバーグ、コンソメスープ、チャーハン、サンドイッチ、ハンバーガー、肉じゃが、サラダ、鍋物など、玉ねぎを使ったものは全て猫が食べないように注意する必要があるということになりますね。
◆猫に玉ねぎを与えない対策
室内に玉ねぎを保管していて猫が接触できる状況にあると、爪で引っ掻いてその足を舐めてしまったり、玉ねぎをおもちゃにして遊ぶことで齧ってしまったりすることもあるので、猫が触れないところに保管する必要があります。
普段の保管場所を猫が触れないようなところにして、調理中の台所には猫が近づかないようにしましょう。
家で玉ねぎを使って調理されたものだけでなく、市販されている食品にも玉ねぎが入っているものがあります。お菓子やベビーフードなどにも玉ねぎが使われていることがあるため、猫には安易に与えないように気をつけてください。
火を通した玉ねぎでも毒性は変わらず、玉ねぎが入ったスープを飲んでも中毒を起こすことがあるので、どんなものでも玉ねぎは与えないようにしましょう。
まとめ
人間にとっては美味しい玉ねぎも、猫が食べると中毒を起こし、貧血になって、命にかかわることもあります。
もし猫が玉ねぎを食べてしまったら、できるだけ早く動物病院に連れていって、適切な処置をしてもらいましょう。
猫には普段からどんな時でも玉ねぎを与えないように気をつけて、少量でも猫の口に入れないようにすることが大切です。
飼い主さんと同じ空間で暮らす猫ですが、食べるものに関しては人間と同じではないということに気をつけてあげてくださいね。
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