アメリカンショートヘアは短毛種
猫の毛の種類は、毛が長い「長毛種」、短めの毛を持つ「短毛種」と毛の長さによって分類されています。
長毛種は、長くて美しい毛が見た目にも影響するので、絡まないように、毛のお手入れが日常的に欠かせません。長毛タイプの猫を飼うときには、小まめで丁寧な毛のお手入れが飼い主さんの心得となるでしょう。
一方、短毛種の場合、長毛と比べると「お手入れが楽」と言われるケースがほとんど。被毛のお手入れ時間が短いことが決め手となって、短毛種を選ぶという飼い主さんもいるかもしれませんね。
アメリカンショートヘアは、後者の短毛種。一般的にお手入れがしやすいと言われている猫種です。
毛がすっきり短い分、体格もガッチリと筋肉が強調されています。太めの骨格で厚めの胸板、「運動神経が良さそう」という印象を受けることでしょう。
しかし、短毛種とは言え、被毛は厚めに覆われている猫ちゃんなので、抜け毛はそれなりにあります。
アメリカンショートヘアは抜け毛が多い…?その理由は?
抜け毛が多いと言われているアメリカンショートヘア。「短毛なはずなのに、抜け毛が多いってどういうこと!?」と疑問に思う方も多いでしょう。
抜け毛が多い理由は、アメリカンショートヘアの毛の構造や毛質と深く関係しています。
◆アメリカンショートヘアの毛の生え方は二層
アメリカンショートヘアの被毛は、オーバーコートとアンダーコートから成る二層式で、「ダブルコート」と言われている種類です。
オーバーコートは上毛のことで、空気中の刺激から皮膚を守るための表面的な毛です。アンダーコートは下毛のことで、オーバーコートと皮膚の間に生え、保温的な意味合いがあります。
アメリカンショートヘアのようにダブルコートの猫は、保温機能を持つアンダーコートの量を調整するときに抜けるため、抜け毛が多いのです。
◆アメリカンショートヘアの毛質
アメリカンショートヘアの表面の毛であるオーバーコートは、アンダーコートと比べると、少し硬めに感じるかもしれません。
一方で、保温効果で時期によって毛の分量が増減するアンダーコートの方は、ふわふわ感を保つために細めで柔らか。時期によっては量も増え、不要になったときは抜け毛となって、体から離れていきます。
同じようにダブルコートの条件を持つ「小型猫」と比べると、中型サイズの体格のアメリカンショートヘアは体の面積も広いので、抜け毛量が多く感じるのかもしれませんね。
特に抜け毛が気になるのは換毛期
アメリカンショートヘアは短毛ですが抜け毛は多めで、ダブルコートのため、特に換毛期には抜け毛は目立ちます。
◆換毛期ってそもそも何?
換毛期とは、猫の被毛の生え変わりを指します。
夏に向かって暖かな気候になると、「毛で保温しなくてもよい」と、アンダーコートが抜けます。夏毛となってスッキリするでしょう。
逆に、冬になると「もっと暖かなモコモコ毛にしなきゃ」と、保温効果がばっちりの冬毛が新たに生えていきます。
一般的に換毛期は、1年に2回。暑い夏への準備期間となる春、そして寒い冬へ備える時期となる秋です。
◆抜け毛は換毛期だけ注意すればいいの?
昔は、「ネズミを捕まえてもらう」と家畜的に飼われていた時代もありましたが、今では「家族の一員」と愛に溢れた暮らしをしているアメリカンショートヘアが多いかと思います。
暖房や冷房で快適な温度環境で暮らしていると、夏でも冬でも極端な暑さや寒さを感じず、年中過ごしやすいものです。そのため、換毛期に限らず、抜けていく毛があります。
愛猫のために抜け毛対策をしていくことが大事です。
アメリカンショートヘアの毛のお手入れは「ブラッシング」が基本
アメリカンショートヘアの抜け毛ケアで大事なのはブラッシングです。
◆抜け毛を人為的に取るためのブラッシング
アメリカンショートヘアは短毛のため、長毛の猫ちゃんと比較すると、飼い主さんが行うブラッシングはそれほど頻繁には必要ない…というのが一般的な見解でしょう。
ただ、換毛期の時期になると、硬めのオーバーコートに覆われているアンダーコートの抜け毛は、落ちにくくなっています。つまり「抜けている毛」が、体にくっついている状態です。
こんな抜け毛を取り除くには、飼い主さんの手によるブラッシングが欠かせません。
◆どのくらいの頻度がいいの?
アメリカンショートヘアはフレンドリーで甘えん坊な性格ですが、スキンシップが苦手という子もいて、ブラッシングがなかなか上手にできないこともあるでしょう。でも、ブラッシングをしないと抜け毛ケアができないため、少しずつでも慣れさせていきましょう。
換毛期には、次から次へと抜け毛が増えるので、ブラッシングは毎日でもしてあげたいところです。
ただ、抜け毛量が減る季節に関しては、 ブラッシングのし過ぎが猫の皮膚への負担になることも。
愛猫の毛の様子をチェックしながら、数日に1回、もしくは1週間に1回と飼い主さんの判断で適度なタイミングを見つけてみてくださいね。
◆ブラッシングにおすすめのアイテム
猫ちゃんの皮膚に優しいラバーブラシが短毛種にはおすすめです。被毛にツヤを与えるために、獣の毛でできた獣毛ブラシも準備しておくといいですね。
また、細かい目のコームがあると、柔らかな抜け毛もしっかりと密着して取ることができます。
ブラッシングのアイテムを選ぶときには、必ず「短毛種用かどうか」をチェックしてくださいね。
◆抜け毛はフワフワ舞ってしまうもの…
アンダーコートは柔らかく細いので、ブラッシング中に部屋中を浮遊するのが気になるかもしれません。エアコンや暖房、扇風機を使っている時期なら、ブラッシング中に部屋のあちこちに飛びまくることもあるでしょう。
毛が飛ばないようにするには、猫用のブラッシングスプレーで猫の体を濡らしてからとかしてあげるのもいいでしょう。フワフワ飛ぶのを軽減してくれます。
ただ、香りが強すぎると嗅覚がよい猫ちゃんが気になることもあります。飼い主さんにとっては「いい香り」と心地よいかもしれませんが、猫が嫌がっていないか様子を見ながら使ってみましょう。
スプレーがないときには、濡れタオルなどで猫の体をちょっぴり湿らせるのも効果があります。
「毛並みに沿ってブラシをかける」「力を入れすぎない」「猫が嫌がるときは様子を見ながら」を心がけましょう。
◆ブラッシングのコツはある?
普段のスキンシップで「触られても平気だよ」と慣れている部分のブラッシングはしやすいかと思います。
ブラッシングで気をつけたいのは、怖がらせないという点です。目の前にいきなりブラシを近づけたり、嫌がっているときに無理やりブラッシングしたり…などすると、なかなか上手くいきません。
ブラッシングが気持ちのよいことと理解させるため、愛猫とのスキンシップのときに取り入れてみましょう。
◆マッサージ効果も嬉しいブラッシング
ブラッシングには、抜け毛を取るという目的もありますが、皮膚を活性化させるというマッサージ効果もあります。
ブラシやコームだけでなく、飼い主さんの手で撫でるのもマッサージ効果大。愛猫の血行を促進し、被毛の健康と保ちましょう。
シャンプーはした方がいいの?
シャンプーすると抜け毛が取れるので、時々やってあげたくなるかもしれません。抜け毛の時期には、シャンプーでケアしてあげるべきなのか、疑問に思いますよね。
基本的には猫のシャンプーは、あまり回数がいらず、頻繁なシャンプーはNGと言えるでしょう。
やり過ぎると水をはじくために付いている被毛の油がなくなり、被毛が乾燥気味に…。余計にパサパサしてしまうので、半年に1回程度でもいいとも言われています。
猫は、ザラザラした舌を使って、体の汚れを取り除く綺麗好きさん。「かなり汚れている」「ニオイが強烈」というケースなら状況に応じてシャンプーが必要ですが、基本的に猫は自分の体を自分でお手入れできる動物です。
そのため、「汚れを綺麗にする」という意味でのシャンプーはほとんど必要ありません。
毛玉を吐きやすいアメリカンショートヘア
アメリカンショートヘアは毛玉を吐きやすい傾向です。
◆猫の毛玉ってなに?
猫には「グルーミング」と言って、自分自身で体を綺麗にする習慣があります。
ただ、その時に抜け毛も一緒にペロペロと飲み込んでしまいます。飲み込んだ毛は、猫の胃に少しずつ溜まり、「毛玉」となります。
◆抜け毛の季節は毛玉を吐きやすい
抜け毛量が多い猫は、毛玉を吐きやすい傾向にあります。毛玉を吐く様子は、なんだか苦しそうに見えるかもしれません。
しかし、毛のなかに溜まっている異物を吐くのは本能的なもの。アメリカンショートヘアに限らず、多くの猫ちゃん達がやっていることです。
吐き出すことで、お腹のなかに毛玉が溜まってしまう「毛球症」を防げているので、むしろ安心してもいいことなのかもしれませんね。
・毛球症って?症状は?
通常、グルーミングで飲み込んだ毛は、便に混ざって猫の体内から排出されます。便として出ずに「毛玉」となっても、吐ける猫ちゃんは体外へと出すことができます。
しかし、毛玉を吐きだせない場合には、胃や腸に留まった毛玉がさらに大きなものに…。「便での排出」「吐き出すこと」のどちらもできなくなった毛玉は、出すことができずに詰まってしまうこともあります。
毛球症になると「吐きたいのに吐けない」ため、吐くポーズの後に毛玉が出てこなかったりします。胃液のようなものだけで苦しそうに見えることもあるでしょう。
胃腸で異変が起きているので、食欲も落ちて便秘や下痢などが起こり、普段元気なアメリカンショートヘアの元気がなくなってしまうことがあります。
ひどくなると腸閉塞となり、発熱や下痢、お腹の痛みなどかなり重い症状が見られるようになります。
毛球症の初期の場合、薬で症状を回復させることもできますが、重症になったときには緊急手術になることも。
病状が重くなる前に気付いてあげられることが重要です。
◆毛玉ができない対策
毛玉を吐くのは猫の生理現象のひとつです。しかし、抜け毛量が多いことで吐く回数が増えるのは、猫にとって辛いことでしょう。1日に何度も吐くと、猫の内臓への負担が大きくなります。
毛玉ができない対策は、猫が飲み込む前に飼い主さんが抜け毛を取り除いてあげることです。抜け毛をしっかりケアできていれば毛玉もできないので、吐く行動はあまり見られないかと思います。
また、猫の消化を促進して「食事と一緒に毛玉を排出させる」という機能を持つ、毛玉コントロールのキャットフードも市販されています。食物繊維が増えて便通も促せるので、愛猫の毛玉対策として取り入れてみてもいいかもしれませんね。
まとめ
換毛期には特に抜け毛が増えるので、愛猫の被毛を健康に保つには、ブラッシングやシャンプーなどのお手入れが大事です。
ただ、抜け毛をすべて取り切ろうと何度も何度もブラッシングすると、アメリカンショートヘアの皮膚への負担が大きくなります。なかには「禿げてしまった!」ということもあるので注意しましょう。
また、グルーミングで抜け毛を飲み込むと「毛玉を吐く」で外に出せますが、ひどくなると開腹手術で猫への負担が大きくなります。
日々のブラッシングで、アメリカンショートヘアが飲み込む抜け毛をおさえてあげることも飼い主さんができる愛情のひとつと言えるでしょう。
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